【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
39 / 51

39話

しおりを挟む
 「な、なんという事だ」

 イヒニオは、青ざめ震えだす。
 メルティのデビュタントを終えたに召致の通達が届いたのだ。早すぎる。午後には行かなくてはいけない。

 メルティは、結局ラボランジュ公爵家に泊まる事になり、きっとそこから向かうのだろう。クラリサも名指しされており、連れて行かなくてはいけない。

 「いいかクラリサ。問われた事以外は、口にするな」
 「お、お父様。どうして……本当にルイス殿下が告発したのですか? メルティが話したのでしょうか」
 「いいや。あの様子を見ると、メルティは話していないだろう」
 「ではどうしてバレたの?」

 クラリサの問いに、無言で二人は彼女を見つめる。
 きっと何だかのクラリサの行動が目についたに違いない。

 「な、なに? 私のせいだと……」

 クラリサは今にも泣きそうだ。

 「いいや。今はそんな事を言っても仕方ない。いいか。お前は、熱を出したメルティの代わりに行っただけ。それ以外はわからないで通すのだ。いいな」

 こくこくと、クラリサは頷く。
 下手な事を言えば、それを突かれる可能性がある。クラリサは、何も知らない事にするのが一番だ。
 こうして、何の準備もないまま、イヒニオ達は裁判へ挑む事になった。



 「あの、本当にこれを着て行ってもいいのですか?」

 さすが公爵家。用意されたドレスは、デビュタントに来たドレス並みに立派だった。だが、おとなしめのデザインなので、悪目立ちはしないだろう。

 「当たり前よ。あなたの為に用意したドレスよ。この前、サイズを測ったでしょう。それで数着作っておいたのよ」
 「え?」

 嬉しそうに言うラボランジュ公爵夫人。
 メルティもあのドレスを作らせた本当の目的が、姪のドレスをこっそりと用意して送る為だったとは気づいていない。

 「あぁ、楽しみね。他のドレスも着てちょうだいね。そうね、ルイス殿下とデートの時でも」
 「え! で、デート……」

 ポッと、メルティが顔を赤らめる。
 可愛い反応を見せる彼女を優し気にラボランジュ公爵夫人は見つめた。自分の娘として育てていれば、メルティに苦労させなかったのにと思うも、今更だ。
 それにこれは、メルティの当然の権利なのだ。

 「はぁ……。母上、あまりからかったら、ルイス殿下に何を言われるか」
 「あら、私はルイス殿下とは同志ですもの」
 「……そうですか」

 なぜか納得するマクシムだった。

 「あの、マクシム様にまで付き添って頂き、申し訳ありません」
 「いいや。僕も召致されたからね」
 「え! そうなのですか。ますます、ご迷惑をかけもうしわけありません」
 「迷惑だなんて思っていないよ。それに気づいている? 僕達、ハトコだから。もう少し、気楽でいいよ」
 「………」

 こくりとメルティは頷くも、ピンとこない。
 ラボランジュ公爵夫人が叔母なのだからそうなるのだろうけど、公爵家と親族だと言うのが信じられないでいた。

 公爵家は何もかも違った。
 泊まった部屋は自宅にはない立派な部屋で、料理も逸品。
 何より、ラボランジュ公爵夫人やマクシムなど、公爵家の皆との食事は楽しかった。

 思い返せば、朝食はイヒニオが仕事に出かけるので、先に食べる為、別々に取りましょうという事になっていた。なので好きな時間に取っていたが、たまにファニタやクラリサと一緒になる事もあったが、その時はいつも二人が一緒にいたのだ。
 二人は、いつも一緒に食べていたのだろう。

 体が弱いから散歩程度しか許してもらえず、買い物についていったことなどない。
 クラリサだけ連れて行っていた。自分が体が弱いからだと思っていたから、おかしいなど思った事もなかったが、今思えば自分の娘にだけ買い与えていただけだったのだ。

 イヒニオが買って来る時も、二人に買い与えている様に見せていたのは、メルティにではなくアールにだろう。同じ扱いをしているとアピールし、こっそりとクラリサにだけ別に買って与えていた。

 教育も最低限でも、クラリサが跡を継ぐと思っていたから何も不思議に思わずにいたのだ。もちろん、教師も。

 そして、メルティが自分達に逆らわない様に、マインドコントロールしていたのだ。
 姉のクラリサは優秀で、メルティは無能で出来損ない。
 口答えをさせず従う様に躾けた。愛情を与えている様に見せて、実は見せかけだけだった。

 それに気づいたのは、リンアールペ侯爵夫人の教育を受けてからだ。一般的な常識を習い、自分の置かれている立場に違和感を覚えたのは。
 そして、クラリサが取る態度が姉が取る態度ではないと気が付いた。両親が、自分を愛していないと気が付いた。

 なぜ、どうしてが、どんどんと膨らんでいく中、自分が養女だと知らされた時のショックは計り知れない。
 だが、リンアールペ侯爵夫人やラボランジュ公爵夫人のお陰で、頑張れた。

 (今まで両親だと思っていた叔父や叔母と対立するのは怖いけど、私にはラボランジュ公爵夫人がついているわ。きっと大丈夫)

 ラボランジュ公爵夫人が、そっと何も言わずメルティの手を握る。
 思いつめた表情をしていたからだ。
 ラボランジュ公爵夫人が大丈夫だと頷けば、メルティも頷いた。
 二人は、目の前の王城を見上げる。決戦の時は来た!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか

まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。 己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。 カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。 誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。 ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。 シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。 そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。 嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。 カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。 小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。

【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」  第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。  夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!  彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります! /「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。 基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。

【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】

との
恋愛
「彼が亡くなった?」 突然の悲報に青褪めたライラは婚約者の葬儀の直後、彼の弟と婚約させられてしまった。 「あり得ないわ⋯⋯あんな粗野で自分勝手な奴と婚約だなんて! 家の為だからと言われても、優しかった婚約者の面影が消えないうちに決めるなんて耐えられない」 次々に変わる恋人を腕に抱いて暴言を吐く新婚約者に苛立ちが募っていく。 家と会社の不正、生徒会での横領事件。 「わたくしは⋯⋯完全なる婚約破棄を準備致します!」 『彼』がいるから、そして『彼』がいたから⋯⋯ずっと前を向いていられる。 人が亡くなるシーンの描写がちょっとあります。グロくはないと思います⋯⋯。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

シスコン婚約者の最愛の妹が婚約解消されました。

ねーさん
恋愛
リネットは自身の婚約者セドリックが実の妹リリアをかわいがり過ぎていて、若干引き気味。 シスコンって極めるとどうなるのかしら…? と考えていた時、王太子殿下が男爵令嬢との「真実の愛」に目覚め、公爵令嬢との婚約を破棄するという事件が勃発! リネット自身には関係のない事件と思っていたのに、リリアの婚約者である第二王子がリネットに…

お姉様優先な我が家は、このままでは破産です

編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。 だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!  愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理! 姉の結婚までにこの家から逃げたい! 相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

処理中です...