【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
44 / 51

44話

しおりを挟む
 「クラリサ嬢。そなたは、自身が何を言っているかわかっているか。自身が嘘をついているのにも拘らず、メルティ嬢を嘘つき呼ばわりにしたのだぞ」

 陛下にそう言われたクラリサは、えっと言う顔つきをする。
 今まで、両親に自分が正しいと言われ育った。聖女の件もメルティが予言をして自分が聖女として、人前に立つ。
 そうする事になったのに、メルティが言おうとするからだけだった。

 クラリサが、イヒニオを見る。私は、正しい事をしたのだよねと。

 「クラリサ嬢。あなた、今でも自分が正しいと思っているのね」

 ラボランジュ公爵夫人にそう言われ、クラリサが初めて何とも言えない表情をした。

 「み、認めよう。クラリサを我がままに育ててしまった。自信を付けさせる為に、褒める教育をしていた。今回も、聖女になれると褒めてしまった。申し訳ありませんでした。クラリサは悪くありません。どうか、これ以上クラリサを責めないでやってほしい」

 イヒニオは、陛下にそう言って頭を下げる。

 「私も娘が可愛くて、甘やかしてしまいました。悪いのは私達です」

 ファニタもそう言って頭を下げた。

 「お父様、お母様……」

 クラリサは俯く。自分の行動が正しくなかったのだとやっとわかったのだ。

 「わかった。彼女に聞く事はやめよう。その代わり、邪魔をしないよう彼女をだまらせて置くように。クラリサ嬢、あなたも口を挟まない様に」
 「……はい」
 「わかりました。ご配慮ありがとうございます」

 クラリサは俯き答え、イヒニオは深々と頭を下げる。陛下は、これ以上クラリサに問うのをやめた。
 クラリサを庇った様に見えたが、実のところクラリサに質問をされて、彼女が暴露しないようにする為だ。
 ラボランジュ公爵夫人が言った様に、悪いと思っていなければ色々話してしまうだろう。それに、12年前の契約の事を知らないのだから、契約違反だと言われる様な事も口にするかもしれない。
 だからクラリサを黙らせたのだ。

 「さて、クラリサ嬢は我がままに育ったようだが、メルティ嬢は違う様に思う。そこで、教育に関してわかる者を証言者として呼んである」

 陛下の言葉に、イヒニオはギョッとする。誰だかわかったからだ。

 「証言者を」
 「っは」
 「失礼したしますわ」

 皆が知っている人物が入って来た。

 「名を述べよ」
 「はい。私は、ミリィ・リンアールペと申します」
 「メルティ嬢との関係は」
 「メルティ嬢の教師を務めさせて頂きました」
 「メルティ嬢。彼女から習った事に間違いないか」
 「はい。間違いございません」

 リンアールペ侯爵夫人が現れた事により、クラリサが怒りを宿した瞳で彼女を見る。
 クラリサにとって、リンアールペ侯爵夫人から教育を受けるに値しないと言われた事は、メルティに負ける事になった汚点だった。
 自分の方が勝っていると思っているクラリサにすれば、納得がいかない事だったのだ。

 「さて、メルティ嬢の教育状況と彼女の能力について実直な意見を聞きたい」
 「はい。彼女は素直な子で、教えた事をすぐに吸収し、遅れていた分をすぐに取り戻しました」
 「遅れていたとは? 教師はついて教育は受けていたようだが」

 陛下の問いに、教育は受けていたようだと頷く。

 「教育は受けていたようですが、最低限のようでした」
 「当主としての教育は施されていたと思われるか」
 「いいえ。特に自尊心が足りないと感じました。また人と接する機会が少なったのだと感じました。ですが今は、私の指導により、当主になる地盤は出来たと自信を持って言えます」

 凛として立つリンアールペ侯爵夫人は、自信満々だ。

 (ありがとうございます。感謝しかないわ。後でもう一度、お礼を言いましょう)

 彼女がいなければ、デビュタントを成功させられなかっただろう。厳しかったが楽しい日々だった。できれば、まだまだ色々と教わりたいと思ってもいる。

 「リンアールペ侯爵夫人はこう言っているが、レドゼンツ伯爵はどう思っていたのだ?」
 「ど、どうと申されましても……」
 「契約では、当主になる為の教育を受けさせる事になっていた。足りていると思っていたのかと聞いているのだ」

 足りているはずがない。メルティを当主にする気などなく、クラリサを当主にするつもりだったのだから。だがこれに関しては、手を打ってあった。

 「私としましては、二人共同じ教師についてもらい、分け隔てなく教育を施しました。手は抜いておりません」

 そう答えると、陛下はうむと頷く。
 足りているかどうかの問いには答えていないが、契約違反はしていないと回答したのだ。足りないのなら、メルティの問題だと。
 嘘を答えていない事は、アールの報告書を見ているのでわかっていた。
 ただ彼女達が受けた教育は、一年間と短い。男爵家で当主にならない者ならあり得るが、普通ではあり得ない短さだ。

 「確かにそのようだ。しかし、一年で通常より教育期間が短いようだが」
 「人それぞれでしょう。クラリサは、それで事足りています。彼女もそうだと思っておりました」

 イヒニオは、義務は果たしたと返した。
 つまり、文句を言われる筋合いはないという事だ。契約ではそうなっているのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか

まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。 己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。 カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。 誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。 ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。 シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。 そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。 嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。 カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。 小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。

【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」  第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。  夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!  彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります! /「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。 基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。

【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】

との
恋愛
「彼が亡くなった?」 突然の悲報に青褪めたライラは婚約者の葬儀の直後、彼の弟と婚約させられてしまった。 「あり得ないわ⋯⋯あんな粗野で自分勝手な奴と婚約だなんて! 家の為だからと言われても、優しかった婚約者の面影が消えないうちに決めるなんて耐えられない」 次々に変わる恋人を腕に抱いて暴言を吐く新婚約者に苛立ちが募っていく。 家と会社の不正、生徒会での横領事件。 「わたくしは⋯⋯完全なる婚約破棄を準備致します!」 『彼』がいるから、そして『彼』がいたから⋯⋯ずっと前を向いていられる。 人が亡くなるシーンの描写がちょっとあります。グロくはないと思います⋯⋯。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

シスコン婚約者の最愛の妹が婚約解消されました。

ねーさん
恋愛
リネットは自身の婚約者セドリックが実の妹リリアをかわいがり過ぎていて、若干引き気味。 シスコンって極めるとどうなるのかしら…? と考えていた時、王太子殿下が男爵令嬢との「真実の愛」に目覚め、公爵令嬢との婚約を破棄するという事件が勃発! リネット自身には関係のない事件と思っていたのに、リリアの婚約者である第二王子がリネットに…

お姉様優先な我が家は、このままでは破産です

編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。 だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!  愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理! 姉の結婚までにこの家から逃げたい! 相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

処理中です...