47 / 51
47話
しおりを挟む
「確かにラボランジュ公爵夫人の言う通りだが、そもそも抜けたら継げないという法がおかしいのだ。それさえなければ、問題など起こらなかった!」
イヒニオが、悔しそうに叫ぶ。問題なく、自分が当主になれたのにと。
「そうだな。今回の事の起こりは、法によるものだろう。代理を立てれば、五年以上当主がいなくても継げるように改正が必要だろう」
陛下が頷いてそういうも、イヒニオは懇願するような顔つきで叫んだ。
「それだけではなく、抜けた者でも継げるようにして下さい! そうすれば、余計ないざこざが起きないでしょう!」
「いや、その法はそのままだ」
「なぜ、です!?」
「もしそれがなくなれば、余計、いざこざが増えるだろう。メルティがいるのに、あなたが継ぐ事になってしまうようにな」
「………」
抜けた者が爵位を継げないと言う法は、女性が爵位を継げるように法改正があった時に出来た法だ。
娘しかいない場合、当主の兄妹で息子が居ればその子が爵位を継いでいた。娘が継げる様になったとしても、男児が継ぐ方がいいと、異議を唱える親族がいるのでしばし問題が起きたのだ。
そこで出来た法だった。
五年以上当主がいないと廃爵は、もっと前からある法だ。
「さて、話を戻すとしよう。レドゼンツ伯爵。今まで聞いた事を精査すると、あなたは自分の娘を当主にする事を企んでいた。それも聖女の件の事より以前から。少なくともクラリサ嬢が当主教育を受けていた五年前からだと思われる。どうかね?」
「……そ、その通りです。申し訳ありません」
もう言い逃れは出来ない。
イヒニオは、素直に白状し謝った。
「申し訳ありませんでした」
ファニタも、深々と頭を下げた。
クラリサは、俯いたままだ。
「しかし、バレると思わなかったのか。聖女の件がなければどうやってクラリサ嬢を当主とするつもりだった。おかしいと思われれば、この様に裁判で審議されるのだぞ」
「……クラリサの方が優秀なら可能だと思っておりました」
「優秀ね……」
イヒニオの言葉に、冷ややかな視線を向けラボランジュ公爵夫人が呟く。
クラリサは、我がままに育っており当主になる教育も受けてはいたが、受けているだけで身になっていなかった。
それでも、メルティがクラリサより出来が悪ければ大丈夫だと思っていたのだから、考え方がお粗末としか言いようがない。
「さらに問おう。その企みはいつからだ?」
「ご、五年前から――」
「いや違う! レドゼンツ伯爵。いや、バレダバレ男爵よ。チャンスをもう一度与える。嘘偽りなく答えよ」
陛下がそう言うと、悲しみに満ちた顔つきでクラリサが父親であるイヒニオを見つめる。本当に男爵だったのだと。
「引き受けた最初からです。申し訳ありません。メルティが、錯乱しているからと思いつきました……。ですが、兄や親が亡くなってメルティが当主になれないのに、私は法に阻まれ当主になれなくて、悔しかったのです」
「法がなくともあなたでは当主にはなれなかったと思いますよ」
そう言った人物に驚いて皆視線を向けた。驚く事にマクシムだった。
「父がよく言っていました。弟だから王になれなかったのではなく、陛下の方が優れていたからだと。だから自分は、兄である陛下を補佐する役割を果たすと。あなたも父と同じ考え方が出来ていれば、メルティ嬢を――兄の忘れ形見である彼女をきちんと支えてあげられたのでしょう」
「はい。そうですね……」
娘のクラリサと同じ年のマクシムに諭され、イヒニオは愕然として俯いた。
「審議を言い渡す。イヒニオ・レドゼンツからメルティ・レドゼンツに当主を受け渡す事を命じる。そして、イヒニオ・バレダバレ男爵に戻るモノとするが、契約違反金の支払いが不可能な為、男爵の爵位を国で買い取る事とする。また、貴族ではなくなったイヒニオには、仕事を辞してもらう事となる。またその他の刑罰は、この後書面にて通達する。以上」
「いやぁ~!!!」
陛下の判決にクラリサが泣き叫ぶ声が、部屋に響き渡った。
「すまない、クラリサ」
「謝るのならメルティ嬢にではないですか?」
イヒニオがクラリサに謝れば、ラボランジュ公爵夫人が厳しい顔つきでそう言った。
「……すまなかった、メルティ」
「一つ聞いてもいいですか? 父が亡くなった事を悲しんでいますか? それとも喜んでいましたか?」
「それは……」
「いえ、もういいです」
口籠るイヒニオに、悲しい顔つきでメルティは言う。
父親が亡くなった事をチャンスだと思っていたのだ。少しは悲しんでくれたかと思っていたが、やはりそうではなかったと確信する。
「皆さん、私の為にありがとうございました」
メルティは、ラボランジュ公爵夫人やリンアールペ侯爵夫人にお礼を述べた。
ラボランジュ公爵夫人は、メルティを抱きしめる。
「もっと早く動かなくてごめんなさい。周りに何と言われたとしても私がレドゼンツ伯爵になればよかったわ」
「いいえ。本来なら私はレドゼンツ家を継げなかったのですから。ここまでして頂きありがとうございました」
事は解決したが、心の整理がつくまでには時間が要するだろう。
これにて、当主の件は方が付いたのだった。
イヒニオが、悔しそうに叫ぶ。問題なく、自分が当主になれたのにと。
「そうだな。今回の事の起こりは、法によるものだろう。代理を立てれば、五年以上当主がいなくても継げるように改正が必要だろう」
陛下が頷いてそういうも、イヒニオは懇願するような顔つきで叫んだ。
「それだけではなく、抜けた者でも継げるようにして下さい! そうすれば、余計ないざこざが起きないでしょう!」
「いや、その法はそのままだ」
「なぜ、です!?」
「もしそれがなくなれば、余計、いざこざが増えるだろう。メルティがいるのに、あなたが継ぐ事になってしまうようにな」
「………」
抜けた者が爵位を継げないと言う法は、女性が爵位を継げるように法改正があった時に出来た法だ。
娘しかいない場合、当主の兄妹で息子が居ればその子が爵位を継いでいた。娘が継げる様になったとしても、男児が継ぐ方がいいと、異議を唱える親族がいるのでしばし問題が起きたのだ。
そこで出来た法だった。
五年以上当主がいないと廃爵は、もっと前からある法だ。
「さて、話を戻すとしよう。レドゼンツ伯爵。今まで聞いた事を精査すると、あなたは自分の娘を当主にする事を企んでいた。それも聖女の件の事より以前から。少なくともクラリサ嬢が当主教育を受けていた五年前からだと思われる。どうかね?」
「……そ、その通りです。申し訳ありません」
もう言い逃れは出来ない。
イヒニオは、素直に白状し謝った。
「申し訳ありませんでした」
ファニタも、深々と頭を下げた。
クラリサは、俯いたままだ。
「しかし、バレると思わなかったのか。聖女の件がなければどうやってクラリサ嬢を当主とするつもりだった。おかしいと思われれば、この様に裁判で審議されるのだぞ」
「……クラリサの方が優秀なら可能だと思っておりました」
「優秀ね……」
イヒニオの言葉に、冷ややかな視線を向けラボランジュ公爵夫人が呟く。
クラリサは、我がままに育っており当主になる教育も受けてはいたが、受けているだけで身になっていなかった。
それでも、メルティがクラリサより出来が悪ければ大丈夫だと思っていたのだから、考え方がお粗末としか言いようがない。
「さらに問おう。その企みはいつからだ?」
「ご、五年前から――」
「いや違う! レドゼンツ伯爵。いや、バレダバレ男爵よ。チャンスをもう一度与える。嘘偽りなく答えよ」
陛下がそう言うと、悲しみに満ちた顔つきでクラリサが父親であるイヒニオを見つめる。本当に男爵だったのだと。
「引き受けた最初からです。申し訳ありません。メルティが、錯乱しているからと思いつきました……。ですが、兄や親が亡くなってメルティが当主になれないのに、私は法に阻まれ当主になれなくて、悔しかったのです」
「法がなくともあなたでは当主にはなれなかったと思いますよ」
そう言った人物に驚いて皆視線を向けた。驚く事にマクシムだった。
「父がよく言っていました。弟だから王になれなかったのではなく、陛下の方が優れていたからだと。だから自分は、兄である陛下を補佐する役割を果たすと。あなたも父と同じ考え方が出来ていれば、メルティ嬢を――兄の忘れ形見である彼女をきちんと支えてあげられたのでしょう」
「はい。そうですね……」
娘のクラリサと同じ年のマクシムに諭され、イヒニオは愕然として俯いた。
「審議を言い渡す。イヒニオ・レドゼンツからメルティ・レドゼンツに当主を受け渡す事を命じる。そして、イヒニオ・バレダバレ男爵に戻るモノとするが、契約違反金の支払いが不可能な為、男爵の爵位を国で買い取る事とする。また、貴族ではなくなったイヒニオには、仕事を辞してもらう事となる。またその他の刑罰は、この後書面にて通達する。以上」
「いやぁ~!!!」
陛下の判決にクラリサが泣き叫ぶ声が、部屋に響き渡った。
「すまない、クラリサ」
「謝るのならメルティ嬢にではないですか?」
イヒニオがクラリサに謝れば、ラボランジュ公爵夫人が厳しい顔つきでそう言った。
「……すまなかった、メルティ」
「一つ聞いてもいいですか? 父が亡くなった事を悲しんでいますか? それとも喜んでいましたか?」
「それは……」
「いえ、もういいです」
口籠るイヒニオに、悲しい顔つきでメルティは言う。
父親が亡くなった事をチャンスだと思っていたのだ。少しは悲しんでくれたかと思っていたが、やはりそうではなかったと確信する。
「皆さん、私の為にありがとうございました」
メルティは、ラボランジュ公爵夫人やリンアールペ侯爵夫人にお礼を述べた。
ラボランジュ公爵夫人は、メルティを抱きしめる。
「もっと早く動かなくてごめんなさい。周りに何と言われたとしても私がレドゼンツ伯爵になればよかったわ」
「いいえ。本来なら私はレドゼンツ家を継げなかったのですから。ここまでして頂きありがとうございました」
事は解決したが、心の整理がつくまでには時間が要するだろう。
これにて、当主の件は方が付いたのだった。
188
あなたにおすすめの小説
差し出された毒杯
しろねこ。
恋愛
深い森の中。
一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。
「あなたのその表情が見たかった」
毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。
王妃は少女の美しさが妬ましかった。
そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。
スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。
お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。
か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。
ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。
同名キャラで複数の作品を書いています。
立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。
ところどころリンクもしています。
※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!
虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。
ラディ
恋愛
一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。
家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。
劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。
一人の男が現れる。
彼女の人生は彼の登場により一変する。
この機を逃さぬよう、彼女は。
幸せになることに、決めた。
■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です!
■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました!
■感想や御要望などお気軽にどうぞ!
■エールやいいねも励みになります!
■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。
※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。
【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか
まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。
己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。
カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。
誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。
ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。
シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。
そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。
嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。
カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。
小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。
【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!
風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」
第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。
夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!
彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります!
/「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。
基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。
【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】
との
恋愛
「彼が亡くなった?」
突然の悲報に青褪めたライラは婚約者の葬儀の直後、彼の弟と婚約させられてしまった。
「あり得ないわ⋯⋯あんな粗野で自分勝手な奴と婚約だなんて!
家の為だからと言われても、優しかった婚約者の面影が消えないうちに決めるなんて耐えられない」
次々に変わる恋人を腕に抱いて暴言を吐く新婚約者に苛立ちが募っていく。
家と会社の不正、生徒会での横領事件。
「わたくしは⋯⋯完全なる婚約破棄を準備致します!」
『彼』がいるから、そして『彼』がいたから⋯⋯ずっと前を向いていられる。
人が亡くなるシーンの描写がちょっとあります。グロくはないと思います⋯⋯。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済。
R15は念の為・・
シスコン婚約者の最愛の妹が婚約解消されました。
ねーさん
恋愛
リネットは自身の婚約者セドリックが実の妹リリアをかわいがり過ぎていて、若干引き気味。
シスコンって極めるとどうなるのかしら…?
と考えていた時、王太子殿下が男爵令嬢との「真実の愛」に目覚め、公爵令嬢との婚約を破棄するという事件が勃発!
リネット自身には関係のない事件と思っていたのに、リリアの婚約者である第二王子がリネットに…
お姉様優先な我が家は、このままでは破産です
編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。
だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!
愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理!
姉の結婚までにこの家から逃げたい!
相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる