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47話
「確かにラボランジュ公爵夫人の言う通りだが、そもそも抜けたら継げないという法がおかしいのだ。それさえなければ、問題など起こらなかった!」
イヒニオが、悔しそうに叫ぶ。問題なく、自分が当主になれたのにと。
「そうだな。今回の事の起こりは、法によるものだろう。代理を立てれば、五年以上当主がいなくても継げるように改正が必要だろう」
陛下が頷いてそういうも、イヒニオは懇願するような顔つきで叫んだ。
「それだけではなく、抜けた者でも継げるようにして下さい! そうすれば、余計ないざこざが起きないでしょう!」
「いや、その法はそのままだ」
「なぜ、です!?」
「もしそれがなくなれば、余計、いざこざが増えるだろう。メルティがいるのに、あなたが継ぐ事になってしまうようにな」
「………」
抜けた者が爵位を継げないと言う法は、女性が爵位を継げるように法改正があった時に出来た法だ。
娘しかいない場合、当主の兄妹で息子が居ればその子が爵位を継いでいた。娘が継げる様になったとしても、男児が継ぐ方がいいと、異議を唱える親族がいるのでしばし問題が起きたのだ。
そこで出来た法だった。
五年以上当主がいないと廃爵は、もっと前からある法だ。
「さて、話を戻すとしよう。レドゼンツ伯爵。今まで聞いた事を精査すると、あなたは自分の娘を当主にする事を企んでいた。それも聖女の件の事より以前から。少なくともクラリサ嬢が当主教育を受けていた五年前からだと思われる。どうかね?」
「……そ、その通りです。申し訳ありません」
もう言い逃れは出来ない。
イヒニオは、素直に白状し謝った。
「申し訳ありませんでした」
ファニタも、深々と頭を下げた。
クラリサは、俯いたままだ。
「しかし、バレると思わなかったのか。聖女の件がなければどうやってクラリサ嬢を当主とするつもりだった。おかしいと思われれば、この様に裁判で審議されるのだぞ」
「……クラリサの方が優秀なら可能だと思っておりました」
「優秀ね……」
イヒニオの言葉に、冷ややかな視線を向けラボランジュ公爵夫人が呟く。
クラリサは、我がままに育っており当主になる教育も受けてはいたが、受けているだけで身になっていなかった。
それでも、メルティがクラリサより出来が悪ければ大丈夫だと思っていたのだから、考え方がお粗末としか言いようがない。
「さらに問おう。その企みはいつからだ?」
「ご、五年前から――」
「いや違う! レドゼンツ伯爵。いや、バレダバレ男爵よ。チャンスをもう一度与える。嘘偽りなく答えよ」
陛下がそう言うと、悲しみに満ちた顔つきでクラリサが父親であるイヒニオを見つめる。本当に男爵だったのだと。
「引き受けた最初からです。申し訳ありません。メルティが、錯乱しているからと思いつきました……。ですが、兄や親が亡くなってメルティが当主になれないのに、私は法に阻まれ当主になれなくて、悔しかったのです」
「法がなくともあなたでは当主にはなれなかったと思いますよ」
そう言った人物に驚いて皆視線を向けた。驚く事にマクシムだった。
「父がよく言っていました。弟だから王になれなかったのではなく、陛下の方が優れていたからだと。だから自分は、兄である陛下を補佐する役割を果たすと。あなたも父と同じ考え方が出来ていれば、メルティ嬢を――兄の忘れ形見である彼女をきちんと支えてあげられたのでしょう」
「はい。そうですね……」
娘のクラリサと同じ年のマクシムに諭され、イヒニオは愕然として俯いた。
「審議を言い渡す。イヒニオ・レドゼンツからメルティ・レドゼンツに当主を受け渡す事を命じる。そして、イヒニオ・バレダバレ男爵に戻るモノとするが、契約違反金の支払いが不可能な為、男爵の爵位を国で買い取る事とする。また、貴族ではなくなったイヒニオには、仕事を辞してもらう事となる。またその他の刑罰は、この後書面にて通達する。以上」
「いやぁ~!!!」
陛下の判決にクラリサが泣き叫ぶ声が、部屋に響き渡った。
「すまない、クラリサ」
「謝るのならメルティ嬢にではないですか?」
イヒニオがクラリサに謝れば、ラボランジュ公爵夫人が厳しい顔つきでそう言った。
「……すまなかった、メルティ」
「一つ聞いてもいいですか? 父が亡くなった事を悲しんでいますか? それとも喜んでいましたか?」
「それは……」
「いえ、もういいです」
口籠るイヒニオに、悲しい顔つきでメルティは言う。
父親が亡くなった事をチャンスだと思っていたのだ。少しは悲しんでくれたかと思っていたが、やはりそうではなかったと確信する。
「皆さん、私の為にありがとうございました」
メルティは、ラボランジュ公爵夫人やリンアールペ侯爵夫人にお礼を述べた。
ラボランジュ公爵夫人は、メルティを抱きしめる。
「もっと早く動かなくてごめんなさい。周りに何と言われたとしても私がレドゼンツ伯爵になればよかったわ」
「いいえ。本来なら私はレドゼンツ家を継げなかったのですから。ここまでして頂きありがとうございました」
事は解決したが、心の整理がつくまでには時間が要するだろう。
これにて、当主の件は方が付いたのだった。
イヒニオが、悔しそうに叫ぶ。問題なく、自分が当主になれたのにと。
「そうだな。今回の事の起こりは、法によるものだろう。代理を立てれば、五年以上当主がいなくても継げるように改正が必要だろう」
陛下が頷いてそういうも、イヒニオは懇願するような顔つきで叫んだ。
「それだけではなく、抜けた者でも継げるようにして下さい! そうすれば、余計ないざこざが起きないでしょう!」
「いや、その法はそのままだ」
「なぜ、です!?」
「もしそれがなくなれば、余計、いざこざが増えるだろう。メルティがいるのに、あなたが継ぐ事になってしまうようにな」
「………」
抜けた者が爵位を継げないと言う法は、女性が爵位を継げるように法改正があった時に出来た法だ。
娘しかいない場合、当主の兄妹で息子が居ればその子が爵位を継いでいた。娘が継げる様になったとしても、男児が継ぐ方がいいと、異議を唱える親族がいるのでしばし問題が起きたのだ。
そこで出来た法だった。
五年以上当主がいないと廃爵は、もっと前からある法だ。
「さて、話を戻すとしよう。レドゼンツ伯爵。今まで聞いた事を精査すると、あなたは自分の娘を当主にする事を企んでいた。それも聖女の件の事より以前から。少なくともクラリサ嬢が当主教育を受けていた五年前からだと思われる。どうかね?」
「……そ、その通りです。申し訳ありません」
もう言い逃れは出来ない。
イヒニオは、素直に白状し謝った。
「申し訳ありませんでした」
ファニタも、深々と頭を下げた。
クラリサは、俯いたままだ。
「しかし、バレると思わなかったのか。聖女の件がなければどうやってクラリサ嬢を当主とするつもりだった。おかしいと思われれば、この様に裁判で審議されるのだぞ」
「……クラリサの方が優秀なら可能だと思っておりました」
「優秀ね……」
イヒニオの言葉に、冷ややかな視線を向けラボランジュ公爵夫人が呟く。
クラリサは、我がままに育っており当主になる教育も受けてはいたが、受けているだけで身になっていなかった。
それでも、メルティがクラリサより出来が悪ければ大丈夫だと思っていたのだから、考え方がお粗末としか言いようがない。
「さらに問おう。その企みはいつからだ?」
「ご、五年前から――」
「いや違う! レドゼンツ伯爵。いや、バレダバレ男爵よ。チャンスをもう一度与える。嘘偽りなく答えよ」
陛下がそう言うと、悲しみに満ちた顔つきでクラリサが父親であるイヒニオを見つめる。本当に男爵だったのだと。
「引き受けた最初からです。申し訳ありません。メルティが、錯乱しているからと思いつきました……。ですが、兄や親が亡くなってメルティが当主になれないのに、私は法に阻まれ当主になれなくて、悔しかったのです」
「法がなくともあなたでは当主にはなれなかったと思いますよ」
そう言った人物に驚いて皆視線を向けた。驚く事にマクシムだった。
「父がよく言っていました。弟だから王になれなかったのではなく、陛下の方が優れていたからだと。だから自分は、兄である陛下を補佐する役割を果たすと。あなたも父と同じ考え方が出来ていれば、メルティ嬢を――兄の忘れ形見である彼女をきちんと支えてあげられたのでしょう」
「はい。そうですね……」
娘のクラリサと同じ年のマクシムに諭され、イヒニオは愕然として俯いた。
「審議を言い渡す。イヒニオ・レドゼンツからメルティ・レドゼンツに当主を受け渡す事を命じる。そして、イヒニオ・バレダバレ男爵に戻るモノとするが、契約違反金の支払いが不可能な為、男爵の爵位を国で買い取る事とする。また、貴族ではなくなったイヒニオには、仕事を辞してもらう事となる。またその他の刑罰は、この後書面にて通達する。以上」
「いやぁ~!!!」
陛下の判決にクラリサが泣き叫ぶ声が、部屋に響き渡った。
「すまない、クラリサ」
「謝るのならメルティ嬢にではないですか?」
イヒニオがクラリサに謝れば、ラボランジュ公爵夫人が厳しい顔つきでそう言った。
「……すまなかった、メルティ」
「一つ聞いてもいいですか? 父が亡くなった事を悲しんでいますか? それとも喜んでいましたか?」
「それは……」
「いえ、もういいです」
口籠るイヒニオに、悲しい顔つきでメルティは言う。
父親が亡くなった事をチャンスだと思っていたのだ。少しは悲しんでくれたかと思っていたが、やはりそうではなかったと確信する。
「皆さん、私の為にありがとうございました」
メルティは、ラボランジュ公爵夫人やリンアールペ侯爵夫人にお礼を述べた。
ラボランジュ公爵夫人は、メルティを抱きしめる。
「もっと早く動かなくてごめんなさい。周りに何と言われたとしても私がレドゼンツ伯爵になればよかったわ」
「いいえ。本来なら私はレドゼンツ家を継げなかったのですから。ここまでして頂きありがとうございました」
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これにて、当主の件は方が付いたのだった。
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