【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)

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第五章 疑惑の彼

第五十話

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 「離せ!」

 考え込んでいたら、そう声が聞こえた。ダグの声ではない。
 ティモシーは、そっと顔を上げるもタグの姿は視界に入らない。だが、二人の男の姿は目に入った。『離せ』と言った男が二人の仲間なのは間違いないが、二人は動こうとしない。何故加勢しないのかと思ったが、動けないのだとティモシーは気づく。
 ダグが魔術を使い、三人の動きを塞いだのだろう。

 (もしかして、普通に魔術を使えるのか?)

 よく考えれば、試験の時に使っていたのだからティモシーよりは使えるのは間違いないだろう。

 「お持ち帰りとはどういう事だ? どこに連れて行く気だった?」
 「さあな」

 ダグが質問するが、当たり前だが素直には答えない。

 「仕方がない」
 「な、何を……」

 ドサッという音が聞こえた。見えはしないが男が倒れたのだろう。
 二人の男を観察していると、二人は青ざめた顔をしている。そして二人の前にタグは立ちはだかる。その時に見えた。ダグの手が男の首元に添えられたのを!

 (もしかして、首を絞めているのか?)

 「さっきの男の様になりたくなかったら言え!」

 ダグがそう言うも男たちは苦しみだす。彼が手を離すと二人共倒れ込んだ。ダグの頭も直ぐに視界から消える。屈んだのだろう。

 「ぐわー」
 「く、くるし……」
 「おい!」

 ダグが話しかけるも返事がないようだ。

 (首を絞めて殺した! まじかよ!)

 加勢して魔術師だとバレていたら自分も同じ目に……。ティモシーは、背中に寒気が走った。

 「こっちだ!」

 複数の足音と共にそう声が聞こえた。巡回兵が先ほどの音を聞きつけここに来たに違いない。ティモシーは、そう思い安堵する。

 「人が倒れているぞ!」
 「おい、しっかりしろ!」
 「いたたた……」
 「大丈夫か? 一体何があった?」

 ダグが巡回兵に起こされたフリを後ろでしているのがわかった。不自然ではないように、彼も倒れたフリをしたのだ。

 「班長! この二人息がないようです!」

 巡回兵の一人が叫んだ。首を絞められた二人の男だろう。

 「何!」

 駆け寄る足音が聞こえる。皆が、二人の男の安否に注目しているのがわかった。

 「ダメだな……」

 そう呟きが聞こえ、本当に殺したのだとティモシーは愕然とした。

 「王宮に連絡を! あと、応援と馬車を!」
 「っは!」

 巡回兵数名が遠ざかる足音が聞こえる。
 班長がダグに近づき聞く。

 「王宮専属薬師ですね。お名前は?」
 「ダグです」
 「あの者達は、知り合いですか?」
 「いいえ。仲間とここでその木を見ていたら声を掛けられ……」

 ダグがそう言うと、一瞬シーンとなった。仲間が見当たらないからだ。

 「もしかしてあれか!」

 ティモシーは、自分達に近づく複数の足音を聞き、やっと気が付いてくれたと安堵する。
 結構土砂が積もっているのか、乱暴に払われる。
 バシっと肩の辺りの払われ、痛みに声を上げてしまう。

 「いた!」
 「大丈夫ですか?」

 目を開けると、巡回兵三人がティモシー達を覗き込む様に上から見ていた。

 「………」

 『はい』と答えようとした時、ダグも覗き込み、その声を飲み込んだ。

 「アリック起きろ」

 ダグが揺り起こす。その時、微かに魔力を感じる。掛けられた術を解除したのだろう。アリックは、目を覚ました。

 「うん? え? あれ? いった!」

 目を覚ましたアリックは、すぐさま顔をしかめた。

 「大丈夫ですか? 今すぐ馬車がきますので」
 「え? 馬車?」

 痛みに耐えながらアリックは上半身を起こした。そして、驚いた顔をしてティモシーの後ろを凝視する。

 「何あれ……」

 その言葉に、ティモシーも体を起こし、痛みを我慢し後ろを振り向いた。ティモシーも驚き、目が見開く。
 木の向こう側は、地面が深くえぐられていた。ティモシー達に降り注いだ土砂は、その地面が吹き飛んだモノだったのだ。あまりの事に二人はボー然とその穴を眺めていた。
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