【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
119 / 192
第十一章 彼らの選択

第百十九話

しおりを挟む
 まだ夜が明ける前の森は不気味な影を落としている。
 森の中に空中高く、魔法陣が描かれていた。その魔法陣の上に一人の人物がいた。そして、その真下は明るかった。そこには、城がそびえ立っていたからだ。
 ヴィルターヌ帝国の城だ!
 少し時間を遡り、ティモシーがトンマーゾと夢で接触する前の時刻――。



 「まさか、こんな所だったとは。盲点だよ。お蔭で探すのに時間が掛かってしまった」
 「……エイブなのか?」

 呟いた人物に魔法陣の中にいる人物は話しかけた。

 「えーそうですよ。モゼレス様。お久しぶりです」

 エイブは、そう言って頭を下げた。

 「戻って来たのか!」

 モゼレスは嬉しそうに言うが、エイブは首を横に振る。

 「俺は、あなたに恩を返しにきました。この魔法陣は、下から見ても見えない様になっているので、誰も気づかなかったようです」

 モゼレスは、何か言いたげにエイブをジッと見つめる。

 「では何故、俺がここにいるかですか? 今、体の方は捕らわれていまして。精神で動いているんです。ですので、俺が直接助け出す事は出来ないので、誰かに伝えておきます」
 「誰から聞いたのだ? 私がこうなっていると……」

 エイブは、目を伏せた。

 「俺は、あなたの味方ではありません。……俺は組織の人間です。ただ、生きている間に恩だけは返しておこうと思っただけです。ですのでここにはもう、戻ってきません……」

 モゼレスは、エイブの言葉に表情を曇らせる。

 「そんな事をして大丈夫なのか?」
 「俺の心配などしなくていいです! では、失礼します」
 「エイブ!」

 モゼレスが叫ぶもエイブはスッと下におりて行き、城の内部に入って行った。
 そして、ある部屋に入ると机に寝潰している人物がいた。それは、皇太子ピルッガだ。

 「寝るならベットで寝ればいいのに。まあ、それも無理な相談か……」

 エイブはそう呟くと、ピルッガの精神に語り掛ける――。



 「ピルッガ様……」

 暗闇の中に佇むピルッガは、エイブに振り向き驚いた顔を見せた。

 「……夢の中か?」
 「お疲れなら、ちゃんとベットで寝た方が宜しいかと思いますよ」
 「なるほど。夢は夢でも、現実か……。もしかして、イリスはあなたに助けを求めに行ったのか?」

 ピルッガの言葉にエイブは首を横に振る。

 「俺になど求めに来るわけないではありませんか。彼女は、エクランド国におります。そこに今、魔術師の国の王子が来ているので、そちらにではないですか?」

 ピルッガは、眉を顰める。

 「では、何しに来た? それを伝えにか?」
 「いえ。皇帝を探しに」

 そう返しエイブは、上を指差した。それにつられるようにピルッガは、目線を上に向けた。

 「城の上に魔法陣があり、そこに捕らわれております。下から見ても見えませんので、気づけなかったのでしょう。浮遊出来る者に魔法陣を解除させれば、体に戻れるはずです」
 「やはりイリスに会って聞いたんだろう? 無事なんだな?」

 エイブは困り顔になる。

 「たぶんとしか、申し上げれません。俺は、あなた方の敵なので。たまたまこうやって会った時に、お聞きしました」
 「言っている意味がわからないな……」
 「俺は魔術師の組織側って事です。ですが恩を返しに来たんです」
 「なんだと……」

 ピルッガは、エイブを睨み付ける。

 「恩ねぇ。で、何故そこだとわかった?」
 「罠かもとお疑いですか? 精神には触れる事が出来ませんが、魔法陣を用いれば可能かもしれないと思いまして。でもそうなると、範囲が限定されます。だとしたら近くだと思ったのです……この話し方疲れるなぁ。もういい? 信じるも信じないも好きにしてよ」

 ふっとピルッガの口元が緩む。

 「相変わらずだな。ありがとう。助かった」
 「ふ~ん。信じるんだ」
 「そこは、探してないからな。ところで、さっき言った事は本当なのか? 組織の一員というのは……」
 「そんな冗談言っても仕方ないだろう? 俺はもうここには戻らない。医者にならないからね」

 ピルッガは溜息をついた。

 「だから俺はやめておけと言ったんだ」
 「うん。そうだね。……じゃ、そういう事で! さようなら」
 「おい! エイブ!」

 叫ぶピルッガを残し、エイブは夢から離脱しエクランド国へ向かう。

 「朝までに間に合うかな……」

 物体を通り抜けるので、一直線に移動できる。しかも馬車よりも早いスピードだ!
 エイブは、後ろを振り返った。

 「さようなら。俺のふるさと……」
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

処理中です...