182 / 192
第十五章 謀略に始まり謀略で終わる
第百八十二話
「魔術師の王子よ。悪いがこれだけは譲れないんでな!」
慌ててレオナールは、サンチナドに駆け寄るが、彼は息絶えていた!
「あなたの気持ちもわかりますが、これでは……」
「俺がこいつの下いたのはこの為だ! 生き証人? こいつがしゃべるかよ! 色々でっち上げるに決まっているだろう!」
二人は睨みあう。
「ティモシー!」
「やばいよこれ。血が止まらない!」
ミュアンが叫び、エイブは青ざめて呟く。
ナイフに塗られていたのは、毒ではなく血が止まらなくなる薬だった!
ティモシーの顔は血の気がひき青白い。
(今度こそ死にそう……)
「これを使いな」
トンマーゾは、袋を渡した。
「止血剤だ。こいつならこういう方法をとるかもしれないと用意しておいた物だ」
「ありがとう」
ミュアンは素直に使おうとする。
「それ使うの? 大丈夫? 逆にあの男に使おうとしていた物かもしれなくない?」
「今それを私に渡したとして、彼は私に何をしたいと? 毒など渡さなくとも放っておけば、ティモシーは死ぬのですよ」
エイブが言うとミュアンはそう返す。トンマーゾを信じているというよりは、今の状況で毒を渡す意味がないという事である。
ためらいなくミュアンは止血剤を使った。少しすると血は止まった。
「止まったみたいね」
ミュアンは安堵して言った。それを聞いた周りも安堵する。
(俺、助かったのか……)
ボーっとする頭でティモシーは思った。
「あ、ありがとう。トンマーゾさん」
「ふん。優秀な魔術師を失うのは勿体ないからな」
「もしかしてあなた、この男に変わって、魔術師の組織を……」
「俺はそんな器じゃねぇよ」
レオナールの言葉にそのつもりないとトンマーゾは返す。
「ただ俺は、魔術師はなくしたくねぇ。どっちにしても今日は魔法陣で結界を解除する事は出来ないだろうけど、やめてくれないかそれ。こいつは死んだ。もうお前らを狙う事もない。それでいいだろう?」
トンマーゾは、ティモシーの横に座っているミュアンを見下ろし真剣な顔で言った。ここに来たもう一つの目的だった。
「それは出来ませんね。彼の意思を継ぐ者がいれば、同じ事が起こる可能性がありますからね。黒い石の事もありますし」
答えたのはレオナールだ。
「あんた、魔術師じゃなくなってもいいのかよ?」
「えぇ、構いません」
「は? じゃ何故魔術師だと名乗った!」
「それは私も軽率だったと後悔しております。魔術師の保護という観点から言えば、魔術師をこの世からいなくなる方法の方がいいでしょう。その方法があるのですから。魔術がなくとも生活していけるのが実証もされています」
「何言ってやがる。魔術を封じられて、殺されかけた奴がよ!」
「な……」
二人はまた睨みあった。
「そうねぇ。私もレオナール王子のいう事は一理あると思うわ。でも私は、あなたと違って偽善者ではないのよ」
「偽善者って……」
「本音を言えば、放っておいてくれるのであればどちらでもいいのよ……。私は国を捨てたのよ。大それた事を言える立場じゃないわ。託された事も放棄した。やろうと思い立ったのは自分と家族の為。他人の為じゃないのよ」
ミュアンはレオナールを見つめ言った。
「でも本当に首謀者がサンチナドなのか聞きたいわね。ステラミリス王女がどうやって殺されたのかも。それを聞いて決めるわ」
今度はトンマーゾを見てミュアンは言う。
「知りたいのなら教えてやるが、サンチナドが死んだんだ。魔術師の組織がサラスチニ国の手の者だったと知れるだろう。そうすれば否が応でもミュアン、お前達の事も知れる事になる」
「そうなるかもしれないわね……」
そう言いつつも目線はトンマーゾから外さない。
トンマーゾは軽くため息をついた。
「わかったよ。まずは話す」
「お願いするわ」
ミュアンはニッコリ微笑んだ――。
慌ててレオナールは、サンチナドに駆け寄るが、彼は息絶えていた!
「あなたの気持ちもわかりますが、これでは……」
「俺がこいつの下いたのはこの為だ! 生き証人? こいつがしゃべるかよ! 色々でっち上げるに決まっているだろう!」
二人は睨みあう。
「ティモシー!」
「やばいよこれ。血が止まらない!」
ミュアンが叫び、エイブは青ざめて呟く。
ナイフに塗られていたのは、毒ではなく血が止まらなくなる薬だった!
ティモシーの顔は血の気がひき青白い。
(今度こそ死にそう……)
「これを使いな」
トンマーゾは、袋を渡した。
「止血剤だ。こいつならこういう方法をとるかもしれないと用意しておいた物だ」
「ありがとう」
ミュアンは素直に使おうとする。
「それ使うの? 大丈夫? 逆にあの男に使おうとしていた物かもしれなくない?」
「今それを私に渡したとして、彼は私に何をしたいと? 毒など渡さなくとも放っておけば、ティモシーは死ぬのですよ」
エイブが言うとミュアンはそう返す。トンマーゾを信じているというよりは、今の状況で毒を渡す意味がないという事である。
ためらいなくミュアンは止血剤を使った。少しすると血は止まった。
「止まったみたいね」
ミュアンは安堵して言った。それを聞いた周りも安堵する。
(俺、助かったのか……)
ボーっとする頭でティモシーは思った。
「あ、ありがとう。トンマーゾさん」
「ふん。優秀な魔術師を失うのは勿体ないからな」
「もしかしてあなた、この男に変わって、魔術師の組織を……」
「俺はそんな器じゃねぇよ」
レオナールの言葉にそのつもりないとトンマーゾは返す。
「ただ俺は、魔術師はなくしたくねぇ。どっちにしても今日は魔法陣で結界を解除する事は出来ないだろうけど、やめてくれないかそれ。こいつは死んだ。もうお前らを狙う事もない。それでいいだろう?」
トンマーゾは、ティモシーの横に座っているミュアンを見下ろし真剣な顔で言った。ここに来たもう一つの目的だった。
「それは出来ませんね。彼の意思を継ぐ者がいれば、同じ事が起こる可能性がありますからね。黒い石の事もありますし」
答えたのはレオナールだ。
「あんた、魔術師じゃなくなってもいいのかよ?」
「えぇ、構いません」
「は? じゃ何故魔術師だと名乗った!」
「それは私も軽率だったと後悔しております。魔術師の保護という観点から言えば、魔術師をこの世からいなくなる方法の方がいいでしょう。その方法があるのですから。魔術がなくとも生活していけるのが実証もされています」
「何言ってやがる。魔術を封じられて、殺されかけた奴がよ!」
「な……」
二人はまた睨みあった。
「そうねぇ。私もレオナール王子のいう事は一理あると思うわ。でも私は、あなたと違って偽善者ではないのよ」
「偽善者って……」
「本音を言えば、放っておいてくれるのであればどちらでもいいのよ……。私は国を捨てたのよ。大それた事を言える立場じゃないわ。託された事も放棄した。やろうと思い立ったのは自分と家族の為。他人の為じゃないのよ」
ミュアンはレオナールを見つめ言った。
「でも本当に首謀者がサンチナドなのか聞きたいわね。ステラミリス王女がどうやって殺されたのかも。それを聞いて決めるわ」
今度はトンマーゾを見てミュアンは言う。
「知りたいのなら教えてやるが、サンチナドが死んだんだ。魔術師の組織がサラスチニ国の手の者だったと知れるだろう。そうすれば否が応でもミュアン、お前達の事も知れる事になる」
「そうなるかもしれないわね……」
そう言いつつも目線はトンマーゾから外さない。
トンマーゾは軽くため息をついた。
「わかったよ。まずは話す」
「お願いするわ」
ミュアンはニッコリ微笑んだ――。
あなたにおすすめの小説
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜
長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。
コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。
ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。
実際の所、そこは異世界だった。
勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。
奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。
特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。
実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。
主人公 高校2年 高遠 奏 呼び名 カナデっち。奏。
クラスメイトのギャル 水木 紗耶香 呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。
主人公の幼馴染 片桐 浩太 呼び名 コウタ コータ君
(なろうでも別名義で公開)
タイトル微妙に変更しました。
何でも押し付けられて拘束されてた役立たずのコミュ障だけど雑用やって脱出したので奪い取られるだけの毎日はやめて目立たずのんびり毎日を満喫する!
迷路を跳ぶ狐
ファンタジー
高名な魔法使いの家に生まれながら、ろくに魔物も倒せず、無能と虐げられるパッとしない僕。
それでも「強力な魔法使いとして名を馳せることが義務だ!」と無理に魔物討伐隊の隊長に任命されたけど、僕は一族が望んだ成果とは程遠い、情けない結果しか残せなかった。
激怒した一族は僕を幽閉、罪人の汚名まで着せられ、その後は城の雑用全てを押し付けられる日々。
こんなところにずっといられるか!!
僕を心配した義兄様と幼い頃からの付き合いの伯爵家の力も借りて、やっと脱出した僕。雑用を担う魔法使いとして働きながら、世界を満喫することを決めた。義兄様は僕が心配なのか、「雑用なんて……」って言うけど、雑用やってくれてる人がいてくれるから世界は回ってるんですよ! と、僕は言い返した。
引きずったコミュ障はそのままだし、思いがけず魔物に襲われたり、恩人が領主の城に連れて行かれるのを目撃してしまったり……いろいろあるけど、せっかく脱出したんだ!! これからのんびり雑用しながら毎日を楽しみます!
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。