居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)

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第26話

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 あぁ、経費を抑えようと馬車を作らずにウルミーシュ家の馬車で送り迎えしてもらっていたけど、やっぱり小さくていいから作ろうかしら。

 「あら、噂の方に乗せてもらったの?」

 失礼だとは思ったけどお礼を言ってそのまま帰って頂こうと思ったけど、フランシスク様がご挨拶をすると言うので、屋敷に招き入れたら、彼を目にしたアンナがニヤリとして言った。

 「あなたが、私を置いて行くからでしょう」
 「ごめんなさい。忘れちゃった」
 「な……」

 あなたが忘れていたって、従者が忘れるわけないでしょうに。

 「まあマスティラン子息。わざわざレネットを送って下さり、ありがとうございます」

 娘って……。そこは姪でしょう。

 「彼女が困っていたからね。それと、明日から営業開始と伺いご挨拶に参りました」

 雇う薬師が見つかり、明日から営業を開始する事になった。
 指示書はもう作ってある。

 「まあ、ありがとうございます。薬師は一人だけしか雇わない事になってしまって、今まで通りではないとは思いますが、きちんと営業していきますわ」
 「………」

 まるでエルダ夫人が、経営者みたいな口ぶりなんだけど。
 そもそも今までだって、お父様一人だったじゃない。

 「一人? 君は何もしないのかい?」

 と、フランシスク様が私に問う。

 「行います。我が家独特の薬の調合と、在庫管理は私がやりますわ」
 「あら在庫整理なら私がするわ。あなたは、学園の勉強もあるから大変でしょう」
 「叔母様。在庫管理は、しかできませんの。まあ在庫整理ならお願いできるかしらね」

 ちょっと嫌味を言ってみた。
 だって、仕切るのだもの。

 「そうだね。それがいいかも」
 「マスティラン子息。領主の息子とは言え、過度の干渉は控えてくれないか」

 驚く言葉をひょこっと顔を出したガストン様が言った。
 私の婚約者とはいえ、他の領主の息子がそんな事を言ったら角が立つでしょうが。

 「あぁ、失礼。言い忘れていたよ。プロンテヌ侯爵に頼まれてきました。フランシスク・マスティランです。私は、将来経営家になるつもりですので、こちらで勉強させてもらうつもりです」
 「は? なんだって! おま……あなたは、そいつと噂になった相手じゃないか!」

 そいつですって!
 やっぱり私に好意など一ミリも抱いていないようね。

 「そうですわ。公平ではありませんわ」

 エルダ夫人が、ガストン様に同意する。

 「おや私と彼女の噂があなた達にも伝わっておりましたか。この度は、ご迷惑をお掛け致しました。ご存じの通り、彼女と私の間には、何もございません。婚約者だったダマレドゴ令嬢が浮気を認め、婚約は解消になりました」

 そんな堂々と婚約解消しましたと言うなんて。
 普通なら浮気されたのも恥となるし、当然言いふらす内容でもない。まあこの状況ならハッキリ言っておいた方がいい事でもあるけど。

 「だったら余計に……」
 「余計に浮気の心配ですか? 私はプロンテヌ侯爵にあなたに浮気癖があるとお聞きしたのですが?」
 「う……」
 「そもそもどうしてあなたにお話が言ったのかしら? 他の者に家庭の事を探られるのは、あまりいい気はしませんわ。使用人とかなら……」
 「いえ、仕事場の下働きにきたのです。あ、お給料の心配はありません。父上にも話を付けてあります。天候も相まって起きた事故とはいえ、それゆえに拗れた事柄だと伺っております。我がマスティラン家に少なからず責任があると言えるでしょう。それで、何が不公平になるのでしょうか」

 こんなに口早に話す彼を初めて見たわ。
 しかも、ほほ笑んではいるけど目が笑っていない。
 もしかして、自分と重ねていたりしないわよね?

 プロンテヌ侯爵は、どこまでフランシスク様にお話したのかしら?
 エルダ夫人が言う様に、家庭の事情を知られるのはちょっと恥ずかしいのですが。

 「あらレネット側の人間になるからではないですか。ねえお母様」

 アンナ、あなたねえ。
 確かにクラスメイトではあるけど、そう言うのは言い掛かりというのよ。

 「彼女側の人間とは、彼女の知り合いだからですか? 領主の息子である私が、彼女の肩を持ってあなた方に不利を被ろうとしていると思っているのですか」
 「そ、それは……」
 「どちらかというと、ウルミーシュ嬢がレネット嬢に迷惑を掛けているのではないですか? 先ほどの馬車の件などを含め……」

 フランシスク様の言葉に、アンナ達はギョッとする。
 迷惑を掛けたとなれば、ここを出て行かなくてはならないのだから。
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