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第37話 アンナ視点
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お母様の言う通り、聞き取り調査される事になるなんてね。
でも大丈夫。返り討ちにしてやるわ。
「アンナ・ウルミーシュ子爵令嬢。あなたは、ダマレドゴ嬢にクラブを見張るように提案しましたね?」
学園長が神妙な顔つきで聞いてきた。
まさか、学園長が問い詰めてくるとは思わなかったけど、ちゃんと答えはあるわ。
「はい。彼女は二人の関係に不信感を抱いていたようなので、噂の確認を提案しましたの。ちゃんと結果が出れば、感情に整理がつくと思いましたの」
お母様に言われた通り、申し訳なさそうに言った。
今この場にいるのは、学園長にマスティラン子息。
それに、ダマレドゴ嬢とクラブを見に行ったパスータン子息。二人は、私の言葉に頷いている。
「噂についてがだ、君に聞いたと言う者が複数いるのだが? 噂は君が流したのだろう?」
「まあ、酷いですわ! 聞かれたから答えただけで噂を流したと言われるのですか? あなたがレネットを馬車に乗せ屋敷に来た事や仕事を手伝っていた事は内緒でしたの?」
知らなかったの。ごめんなさいと泣きながら言えば、ダマレドゴ嬢が慰めてくれた。
「いや、秘密ではないが……」
「そうですわよね? あんな堂々と馬車へ何度も乗せて屋敷に通ってお出ででしたもの」
「2回だけだ!」
ダマレドゴ嬢がキッとマスティラン子息を睨みつつ言えば、マスティラン子息が反論する。
「本当の事だと言う事なら、彼女らを責める事は出来ないのではないかね?」
驚く事に学園長が私の味方をしてくれた。
「申し訳ありません。軽率ではありました」
「婚約者がいるご令嬢のお宅へ通うなど、誤解で変な噂が流れても仕方がないだろう」
学園長の言葉につい、顔がにやけてしまう。
「はい。その通りです。ですがグリンマトル嬢が、ウルミーシュ嬢を私が訪問している間、外へ追い出すと言う噂は事実無根です。仕事場にしか顔を出していない私とウルミーシュ嬢が顔を合わせる事がないのですから、追い出す必要はないでしょう」
「ご、ごめんなさい。そんな風には言っていないのに、そんな噂になってしまったのです! その……」
私は怯えた様にダマレドゴ嬢の後ろに隠れた。
「私! マスティラン子息が苦手なんです! だから怖くて屋敷に居られなくて……。外へ出かけていたのです」
「怖い? 私が?」
「わかるわ。凄んでくるものね」
ダマレドゴ嬢が私に同意すれば、マスティラン子息が困り顔になった。
これで、強く言えなくなったわよね?
「あ、あの、グリンマトル嬢の婚約者と一緒に居たというのも間違った噂なのですか?」
なんで余計な事を聞いてくるのよ、パスータン子息!
「あれは、たまたま街をぶらついていたら、ガス……ルトルン子息が送って下さると言って。それを見られた様なのです」
「それに偽りはないですか?」
「ないわよ!」
マスティラン子息の問いにムッとしてしまう。
だって、ジド―っとした目で見ているのですもの。
自分だって、レネットを乗せて屋敷に来ていたじゃないの。
「その話はそれぐらいにして、本題に入ろうか。クラブで見たのは、ウルミーシュ嬢だと言うのだが、心当たりはあるかね?」
「まあ、なぜ私が?」
「馬車がいつも学園の通学に使っていたウルミーシュ子爵家の馬車だったそうだ」
マスティラン子息が、私を責める様に言う。
「あらそうですの? ではなぜあの時、レネットだと断言して言ったのですか。パスータン令息?」
「え? そ、それは、思い込みで……」
「そう言えば、相手もマスティラン子息だと思い込んでいらっしゃったのですよね?」
「う……。それは、はい。でも誤解でした」
「レネットでもなかった。それも誤解だった。だから私だと言うのですか? それって言い逃れではありませんか」
「ち、違います! 確かに馬車は……」
「まあ! 今度は似ている馬車だったから私だと言うのですか! 酷いですわ! クラブが見張られているとわかっていて、私が誰かと逢瀬をしていたと言うの?」
両手で顔を覆い泣き崩れて見せる。
「え! いや、その……」
「あぁ。あれよね。私がレネットに迷惑を掛けた事にしたいがためにそう言う事に……」
「何の話をしている? まるで私が君を嵌めたみたいな言い方だね?」
う。こわ!
私は、演技ではなく恐怖でダマレドゴ嬢に抱き着いた。
「これ、マスティラン子息。落ち着きなさい。嵌める為にそんなリスクを冒すわけないだろうに。もう一度確認しよう。パスータン令息。あなたが見た馬車は、ウルミーシュ子爵の馬車だったかね?」
「それは……思い返してみると、思い込みだったかもしれません」
やったわ。お母様。彼の証言に信憑性がなくなったみたいよ。
パスータン令息の返事を聞き、マスティラン子息が悔しそうにしている顔が愉快だわ。
もう邪魔させないんだから!
でも大丈夫。返り討ちにしてやるわ。
「アンナ・ウルミーシュ子爵令嬢。あなたは、ダマレドゴ嬢にクラブを見張るように提案しましたね?」
学園長が神妙な顔つきで聞いてきた。
まさか、学園長が問い詰めてくるとは思わなかったけど、ちゃんと答えはあるわ。
「はい。彼女は二人の関係に不信感を抱いていたようなので、噂の確認を提案しましたの。ちゃんと結果が出れば、感情に整理がつくと思いましたの」
お母様に言われた通り、申し訳なさそうに言った。
今この場にいるのは、学園長にマスティラン子息。
それに、ダマレドゴ嬢とクラブを見に行ったパスータン子息。二人は、私の言葉に頷いている。
「噂についてがだ、君に聞いたと言う者が複数いるのだが? 噂は君が流したのだろう?」
「まあ、酷いですわ! 聞かれたから答えただけで噂を流したと言われるのですか? あなたがレネットを馬車に乗せ屋敷に来た事や仕事を手伝っていた事は内緒でしたの?」
知らなかったの。ごめんなさいと泣きながら言えば、ダマレドゴ嬢が慰めてくれた。
「いや、秘密ではないが……」
「そうですわよね? あんな堂々と馬車へ何度も乗せて屋敷に通ってお出ででしたもの」
「2回だけだ!」
ダマレドゴ嬢がキッとマスティラン子息を睨みつつ言えば、マスティラン子息が反論する。
「本当の事だと言う事なら、彼女らを責める事は出来ないのではないかね?」
驚く事に学園長が私の味方をしてくれた。
「申し訳ありません。軽率ではありました」
「婚約者がいるご令嬢のお宅へ通うなど、誤解で変な噂が流れても仕方がないだろう」
学園長の言葉につい、顔がにやけてしまう。
「はい。その通りです。ですがグリンマトル嬢が、ウルミーシュ嬢を私が訪問している間、外へ追い出すと言う噂は事実無根です。仕事場にしか顔を出していない私とウルミーシュ嬢が顔を合わせる事がないのですから、追い出す必要はないでしょう」
「ご、ごめんなさい。そんな風には言っていないのに、そんな噂になってしまったのです! その……」
私は怯えた様にダマレドゴ嬢の後ろに隠れた。
「私! マスティラン子息が苦手なんです! だから怖くて屋敷に居られなくて……。外へ出かけていたのです」
「怖い? 私が?」
「わかるわ。凄んでくるものね」
ダマレドゴ嬢が私に同意すれば、マスティラン子息が困り顔になった。
これで、強く言えなくなったわよね?
「あ、あの、グリンマトル嬢の婚約者と一緒に居たというのも間違った噂なのですか?」
なんで余計な事を聞いてくるのよ、パスータン子息!
「あれは、たまたま街をぶらついていたら、ガス……ルトルン子息が送って下さると言って。それを見られた様なのです」
「それに偽りはないですか?」
「ないわよ!」
マスティラン子息の問いにムッとしてしまう。
だって、ジド―っとした目で見ているのですもの。
自分だって、レネットを乗せて屋敷に来ていたじゃないの。
「その話はそれぐらいにして、本題に入ろうか。クラブで見たのは、ウルミーシュ嬢だと言うのだが、心当たりはあるかね?」
「まあ、なぜ私が?」
「馬車がいつも学園の通学に使っていたウルミーシュ子爵家の馬車だったそうだ」
マスティラン子息が、私を責める様に言う。
「あらそうですの? ではなぜあの時、レネットだと断言して言ったのですか。パスータン令息?」
「え? そ、それは、思い込みで……」
「そう言えば、相手もマスティラン子息だと思い込んでいらっしゃったのですよね?」
「う……。それは、はい。でも誤解でした」
「レネットでもなかった。それも誤解だった。だから私だと言うのですか? それって言い逃れではありませんか」
「ち、違います! 確かに馬車は……」
「まあ! 今度は似ている馬車だったから私だと言うのですか! 酷いですわ! クラブが見張られているとわかっていて、私が誰かと逢瀬をしていたと言うの?」
両手で顔を覆い泣き崩れて見せる。
「え! いや、その……」
「あぁ。あれよね。私がレネットに迷惑を掛けた事にしたいがためにそう言う事に……」
「何の話をしている? まるで私が君を嵌めたみたいな言い方だね?」
う。こわ!
私は、演技ではなく恐怖でダマレドゴ嬢に抱き着いた。
「これ、マスティラン子息。落ち着きなさい。嵌める為にそんなリスクを冒すわけないだろうに。もう一度確認しよう。パスータン令息。あなたが見た馬車は、ウルミーシュ子爵の馬車だったかね?」
「それは……思い返してみると、思い込みだったかもしれません」
やったわ。お母様。彼の証言に信憑性がなくなったみたいよ。
パスータン令息の返事を聞き、マスティラン子息が悔しそうにしている顔が愉快だわ。
もう邪魔させないんだから!
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