居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
37 / 58

第36話

しおりを挟む
 次の日、学園に行くと昨日クラブで私を見たと言った令息が、謝りに来た。

 「思い込みでした。申し訳ありませんでした。馬車が……」
 「ごほん」
 「いえ、髪色が似ていたのでそう思ってしまって。本当に申し訳ありませんでした」

 何か今、フランシスク様が咳ばらいをして、彼の言葉を遮ったように感じたけど、そんなわけないわよね。

 「いえ。わかってくれてよかったわ」
 「あの、ひとつ聞きたいのですが……」

 何かしら? オドオドしてフランシスク様の反応を伺いながら私に訪ねている。

 「今日乗っていた馬車は、いつからあったのですか!」

 はい? なぜそんな質問を?
 しかも勇気を振り絞って聞いて来ていない?

 「いつって。一昨日の夕方に届いて、昨日から通学に使っているわ。おかげで置いて行かれる事もなくなって、フランシスク様にもご迷惑を掛けずに済みますわ」
 「え? 一昨日? 一昨日の夜にはあったのですか!?」
 「はい。そうです」

 なんだろう。凄く驚いている。

 「本当にごめんなさい」

 そして、また謝って来たのだけど?

 「もういいわ。でも聞くなら考えた行動を取って欲しかったわ。今みたいに」

 フランシスク様に呼ばれて、人が来ない場所で彼は謝って来た。昨日もこうやって聞いてくれば、大事になっていないと思うわ。

 「そう言えば、ダマレドゴ嬢は?」

 彼女が主犯でしょうに。

 「彼女は、停学中だ」

 フランシスク様が困り顔でそう答えた。

 「そう……」
 「君が気に病む必要はないからね。彼女が、私達を貶めようとして、やった事だから。こうやって陰で君に確認をしていれば、停学になんてならなかったのに」
 「俺もちゃんと彼女に確かな情報を伝えていれば、こうはならなかった」
 「彼には、君にきちんと謝る事とクラスメイトにきちんと誤解だったと伝えるが条件で停学が免れた」

 まあ彼も正義感でこうなったからね。間違ったやり方だったけど。
 ユゲット嬢は、私達を嵌めようとしたと言うより、噂に踊らされてる感じがしたわね。
 クラブに出入りしているというのは、彼女が流した噂ではないみたいだし。

 「それと今日、ウルミーシュ子爵令嬢にも話を聞く事になっている」
 「え? アンナに?」
 「詳しくは言えないが、彼女の事だ。君のせいだと言ってくるかもしれないからね」
 「はい……」

 アンナが嘘の噂を流したの?
 私を貶める為に? どうして?
 あれ? でもパスータン令息は、本当に私を見たと思ったのよね? 昨日は、私だったと言い切っていたわ。でも私ではない。ではどうしてそう思ったのかしら。

 『いつもの馬車に乗り込んだのを見ました』

 そうだわ。馬車で判断したんだわ。
 え? じゃ、私とアンナを間違えたって事?
 嘘! もうそんな相手がいるの!?

 落ち着いて私。
 まずは、家に帰ったらエルダ夫人に……待って。昨日、エルダ夫人は何と言った?

 『ウルミーシュ子爵家の馬車は使われてはいない』

 と言っていたわ。
 でも実際は使われていた。
 エルダ夫人も知っているんだわ。アンナにそういう方がいる事を。……あれ? 何か変。

 あ! その噂がアンナの事だと知っていて私の噂がどうとか言ったのよね?
 ではそもそもあの噂ってエルダ夫人が仕組んだって事?
 フランシスク様を屋敷に来なくする為に!? これ知れたらただじゃすまないと思うけど。

 でも相手はだれ? 本当にそういう相手がいたのを利用したの?
 いやいや。そもそも、学園に通う年齢で隠れて行く場所ではないわ。だって、婚約者になればいいのだもの。
 そうなれないのなら、相手に婚約者がいるって事よね。それを利用しようとは思わないわよね。
 
 それに、クラブで私達が逢瀬しているなどという噂は、立てないとそんな噂は生まれないわ。
 数時間屋敷に居れば、逢瀬の場所は屋敷になるのだから。
 それなのにユゲット嬢は、確信をしていたのよね。まあクラブで私達を見たと言う噂があったからだけど。

 あ、私を置いて行くのも作戦の内だったのね。私をフランシスク様の馬車に乗せて真実味を持たせる為に!
 でも一昨日、急にフランシスク様がこれで最後といい、新しい馬車が急に届いた。
 本当はきっと、一昨日に決行するつもりはなかったけど、その日にしかできなくなってしまったのよ。
 学校に通っていた馬車でないと、私だと思わせる事ができないもの。通学と同じウルミーシュ子爵家の馬車をさせるのは、その日しかなかった。
 だから見張りを始めたその日の目撃になったのよ。

 じゃ、急遽頼める相手って、ガストン様!?
 ま、まさかよね? 何事がなかったとしても、誓約に触れるでしょう!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。

コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。 だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。 それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。 ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。 これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。

虐げられてきた令嬢は、冷徹魔導師に抱きしめられ世界一幸せにされています

あんちょび
恋愛
 侯爵家で虐げられ、孤独に耐える令嬢 アリシア・フローレンス。 冷たい家族や侍女、無関心な王太子に囲まれ、心は常に凍りついていた。  そんな彼女を救ったのは、冷徹で誰も笑顔を見たことがない天才魔導師レオン・ヴァルト。  公衆の前でされた婚約破棄を覆し、「アリシアは俺の女だ」と宣言され、初めて味わう愛と安心に、アリシアの心は震える。   塔での生活は、魔法の訓練、贈り物やデートと彩られ、過去の孤独とは対照的な幸福に満ちていた。  さらにアリシアは、希少属性や秘められた古代魔法の力を覚醒させ、冷徹なレオンさえも驚かせる。  共に時間を過ごしていく中で、互いを思いやり日々育まれていく二人の絆。  過去に彼女を虐げた侯爵家や王太子、嫉妬深い妹は焦燥と嫉妬に駆られ、次々と策略を巡らせるが、 二人は互いに支え合い、外部の敵や魔導師組織の陰謀にも立ち向かいながら、愛と絆を深めていく。  孤独な少女は、ついに世界一幸福な令嬢となり、冷徹魔導師に抱きしめられ溺愛される日々を手に入れる――。

断罪するのは天才悪女である私です〜継母に全てを奪われたので、二度目の人生は悪逆令嬢として自由に生きます

紅城えりす☆VTuber
恋愛
*完結済み、ハッピーエンド 「今まで役に立ってくれてありがとう。もう貴方は要らないわ」  人生をかけて尽くしてきた優しい継母。  彼女の正体は『邪魔者は全て排除。常に自分が一番好かれていないと気が済まない』帝国史上、最も邪悪な女であった。  継母によって『魔女』に仕立てあげられ、処刑台へ連れて行かれることになったメアリー。  メアリーが居なくなれば、帝国の行く末はどうなってしまうのか……誰も知らずに。  牢の中で処刑の日を待つ彼女の前に、怪しげな男が現れる。 「俺が力を貸してやろうか?」  男は魔法を使って時間を巻き戻した。 「もう誰にも屈しないわ。私は悪逆令嬢になって、失った幸せを取り戻すの!」  家族を洗脳して手駒にする貴族。  罪なき人々を殺める魔道士。  そして、私を散々利用した挙句捨てたお義母様。  人々を苦しめる悪党は全て、どんな手を使ってでも悪逆令嬢である私が、断罪、断罪、断罪、断罪、断罪するのよ!  って、あれ?  友人からは頼りにされるし、お兄様は急に過保護。公爵様からも求婚されて……。  悪女ムーブしているのに、どうして回帰前より皆様に好かれているのかしら??? ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 〇約十一万文字になる予定です。 もし「続きが読みたい!」「スカッとした」「面白い!」と思って頂けたエピソードがありましたら、♥コメントで反応していただけると嬉しいです。 読者様から頂いた反応は、今後の執筆活動にて参考にさせていただきます。

姉の厄介さは叔母譲りでしたが、嘘のようにあっさりと私の人生からいなくなりました

珠宮さくら
恋愛
イヴォンヌ・ロカンクールは、自分宛てに届いたものを勝手に開けてしまう姉に悩まされていた。 それも、イヴォンヌの婚約者からの贈り物で、それを阻止しようとする使用人たちが悪戦苦闘しているのを心配して、諦めるしかなくなっていた。 それが日常となってしまい、イヴォンヌの心が疲弊していく一方となっていたところで、そこから目まぐるしく変化していくとは思いもしなかった。

死にかけ令嬢の逆転

ぽんぽこ狸
恋愛
 難しい顔をしたお医者様に今年も余命一年と宣告され、私はその言葉にも慣れてしまい何も思わずに、彼を見送る。  部屋に戻ってきた侍女には、昨年も、一昨年も余命一年と判断されて死にかけているのにどうしてまだ生きているのかと問われて返す言葉も見つからない。  しかしそれでも、私は必死に生きていて将来を誓っている婚約者のアレクシスもいるし、仕事もしている。  だからこそ生きられるだけ生きなければと気持ちを切り替えた。  けれどもそんな矢先、アレクシスから呼び出され、私の体を理由に婚約破棄を言い渡される。すでに新しい相手は決まっているらしく、それは美しく健康な王女リオノーラだった。  彼女に勝てる要素が一つもない私はそのまま追い出され、実家からも見捨てられ、どうしようもない状況に心が折れかけていると、見覚えのある男性が現れ「私を手助けしたい」と言ったのだった。  こちらの作品は第18回恋愛小説大賞にエントリーさせていただいております。よろしければ投票ボタンをぽちっと押していただけますと、大変うれしいです。

見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。 そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。 そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。 ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。

婚約者と親友に裏切られた伯爵令嬢は侯爵令息に溺愛される

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のマーガレットは、最近婚約者の伯爵令息、ジェファーソンの様子がおかしい事を気にして、親友のマリンに日々相談していた。マリンはいつも自分に寄り添ってくれる大切な親友だと思っていたマーガレット。 でも… マリンとジェファーソンが密かに愛し合っている場面を目撃してしまう。親友と婚約者に裏切られ、マーガレットは酷くショックを受ける。 不貞を働く男とは結婚できない、婚約破棄を望むマーガレットだったが、2人の不貞の証拠を持っていなかったマーガレットの言う事を、誰も信じてくれない。 それどころか、彼らの嘘を信じた両親からは怒られ、クラスメイトからは無視され、次第に追い込まれていく。 そんな中、マリンの婚約者、ローインの誕生日パーティーが開かれることに。必ず参加する様にと言われたマーガレットは、重い足取りで会場に向かったのだが…

【完結】猫を被ってる妹に悪役令嬢を押し付けられたお陰で人生180度変わりました。

本田ゆき
恋愛
「お姉様、可愛い妹のお願いです。」 そう妹のユーリに乗せられ、私はまんまと悪役令嬢として世に名前を覚えられ、終いには屋敷を追放されてしまった。 しかし、自由の身になった私に怖いものなんて何もない! もともと好きでもない男と結婚なんてしたくなかったし堅苦しい屋敷も好きでなかった私にとってそれは幸運なことだった!? ※小説家になろうとカクヨムでも掲載しています。 3月20日 HOTランキング8位!? 何だか沢山の人に見て頂いたみたいでありがとうございます!! 感想あんまり返せてないですがちゃんと読んでます! ありがとうございます! 3月21日 HOTランキング5位人気ランキング4位…… イッタイ ナニガ オコッテンダ…… ありがとうございます!!

処理中です...