居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)

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第35話

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 今日は、ドッと疲れた一日だったわ。
 学園から帰って来て経営家の仕事をしながら、学園での事を思いだしため息を一つ。

 「レネット、お疲れ様」

 執務室で仕事をしていると、ノックもなしにエルダ夫人が入って来た。

 「あ、叔母様。どうか致しましたか」

 ノックぐらいしてよね。

 「アンナから聞いたわよ」

 アンナから? もしかして、クラブの話?

 「クラブの事ですか?」
 「えぇ。まさかとは思うけど、マスティラン子息と逢瀬をしていたの?」

 私は大きなため息をついた。
 あの時見ていたのなら、少なくともフランシスク様は関係ないとわかったはずなんだけどね。

 「私達をクラブから出来てたところを見たという方がいましたが、誤解だとわかっていただきました。それをアンナも見ていたのならわかったと思うのですけど」
 「アンナが言うのには、マスティラン子息がうやむやにして、彼らを連れて行ったと言っていたわ」

 うやむやって!
 確かに確実にフランシスク様ではないとなったわけではないけど、そもそも私は昨日屋敷に居たじゃない!

 「叔母様? 私が昨日出かけていないのはご存じでしょう?」
 「あら確かに、ウルミーシュ子爵家の馬車は使われてはいないけど、専用の馬車があるのだもの、こっそりと出かける事は可能よね?」
 「昨日は、フラ……マスティラン子息が屋敷に来ていたのに、わざわざ外で逢瀬をというのですか!?」

 エルダ夫人は、何をしたいのよ。
 私とガストン様を別れさせたいの? たったらなぜルトルン伯爵と結託したのよ。

 「もう屋敷では会えませんからね」
 「いい加減にして下さい! もう出て行って!」

 私は、立ち上がりつい怒鳴ってしまった。

 「あなたが浮気したとなると、ルトルン子息とは破談。けど、それだけで済むわけではないわ。浮気していたと疑いをかけておきながら、実はあなたが浮気していただなんてね。それに、ルトルン子息と婚約破棄になったからとマスティラン子息と婚約できるわけではないのよ」

 何を言っているのよ!
 うん? どこかで聞いたセリフね。
 私ってそんな悪女に見える?

 「今の話がマスティラン侯爵家の耳に入ったら不敬だと、領地から追い出されるわよ。大体、今の話だと……」
 「彼の事はどうでもいいのよ」

 私の言葉をエルダ夫人は遮って、私を睨みつける様に見つめてきた。

 「彼にこれについて、私達からどうこう言うつもりはないわ。実際言えないしね。でも、あなたに対しては違うわ。ルトルン伯爵に噂が耳に入ったら大変な事になるのよ。だからそんな事はありませんと、アピールしないといけないと言いたいの」
 「え?」

 それって、私の心配をしているって事?
 マスティラン領の学園内の噂をルトルン伯爵が知るとなると、あなた達からではないかしらね。
 やっぱり何かを企んでいるのかしら?

 「だからガストンとデートするのよ」
 「へ? でも、誓約書が……」
 「デートは、別に誓約書違反にはならないわ。それに、結婚する事になるのでしょう。今までそういう事をしていなかったら、誤解が生まれたのよね?」

 本気で言っているのかしら。
 エルダ夫人達は、アンナが学園を卒業後出て行く事に納得しているの? だとしても、私は彼とは結婚する気はないのよね。
 ガストン様もルトルン伯爵も何を考えているかわからないもの。

 「仕事の事なら心配いらないわ。出来る範囲でやっておくから。もしあれだったら経営家の方を教えてくれたら連絡を取り合って……」
 「それには及びません。それならガストン様に仕事を手伝ってもらうわ。本来、その為にここにいるのではないのかしら?」

 結婚が前提でここに住んでいるのなら、いいえ、お父様にそう言われていたというのなら、フランシスク様が居ようが居まいが手伝うものでしょうに。
 だけど、フランシスク様が来なくなった今日も手伝いには来ていない。

 「あらそれもそうね。言っておくわ。私も手伝うから一致団結して乗り越えましょう」
 「え? えぇ……」

 本当に何を考えているのかわからないわ。
 その後すぐにガストン様が、エルダ夫人と一緒に執務室を訪ねて来た。

 「あ、ごめん。手伝ってよかったのか? ほら、近づくなって言われていたからさ」

 こんな軽いノリで、ガストン様に謝れてもねぇ。

 「どうせなら、直接経営家の者に教わりたいから……」
 「それは、経営家科を卒業なさってからでいいと思いますわ。それと、お手伝いされてもお給金はでませんよ」

 私がそう言うと、ガストン様がムッとした顔つきになる。
 まあガストン様がお給金欲しさに手伝うと言う訳がないので、経営家に会いたかったのだろうけど。
 会ってどうする気なのかしらね? 自分達側に丸め込むつもりなのかしら?
 だとしたら、よからぬことを考えているって事よね。
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