36 / 58
第35話
しおりを挟む
今日は、ドッと疲れた一日だったわ。
学園から帰って来て経営家の仕事をしながら、学園での事を思いだしため息を一つ。
「レネット、お疲れ様」
執務室で仕事をしていると、ノックもなしにエルダ夫人が入って来た。
「あ、叔母様。どうか致しましたか」
ノックぐらいしてよね。
「アンナから聞いたわよ」
アンナから? もしかして、クラブの話?
「クラブの事ですか?」
「えぇ。まさかとは思うけど、マスティラン子息と逢瀬をしていたの?」
私は大きなため息をついた。
あの時見ていたのなら、少なくともフランシスク様は関係ないとわかったはずなんだけどね。
「私達をクラブから出来てたところを見たという方がいましたが、誤解だとわかっていただきました。それをアンナも見ていたのならわかったと思うのですけど」
「アンナが言うのには、マスティラン子息がうやむやにして、彼らを連れて行ったと言っていたわ」
うやむやって!
確かに確実にフランシスク様ではないとなったわけではないけど、そもそも私は昨日屋敷に居たじゃない!
「叔母様? 私が昨日出かけていないのはご存じでしょう?」
「あら確かに、ウルミーシュ子爵家の馬車は使われてはいないけど、専用の馬車があるのだもの、こっそりと出かける事は可能よね?」
「昨日は、フラ……マスティラン子息が屋敷に来ていたのに、わざわざ外で逢瀬をというのですか!?」
エルダ夫人は、何をしたいのよ。
私とガストン様を別れさせたいの? たったらなぜルトルン伯爵と結託したのよ。
「もう屋敷では会えませんからね」
「いい加減にして下さい! もう出て行って!」
私は、立ち上がりつい怒鳴ってしまった。
「あなたが浮気したとなると、ルトルン子息とは破談。けど、それだけで済むわけではないわ。浮気していたと疑いをかけておきながら、実はあなたが浮気していただなんてね。それに、ルトルン子息と婚約破棄になったからとマスティラン子息と婚約できるわけではないのよ」
何を言っているのよ!
うん? どこかで聞いたセリフね。
私ってそんな悪女に見える?
「今の話がマスティラン侯爵家の耳に入ったら不敬だと、領地から追い出されるわよ。大体、今の話だと……」
「彼の事はどうでもいいのよ」
私の言葉をエルダ夫人は遮って、私を睨みつける様に見つめてきた。
「彼にこれについて、私達からどうこう言うつもりはないわ。実際言えないしね。でも、あなたに対しては違うわ。ルトルン伯爵に噂が耳に入ったら大変な事になるのよ。だからそんな事はありませんと、アピールしないといけないと言いたいの」
「え?」
それって、私の心配をしているって事?
マスティラン領の学園内の噂をルトルン伯爵が知るとなると、あなた達からではないかしらね。
やっぱり何かを企んでいるのかしら?
「だからガストンとデートするのよ」
「へ? でも、誓約書が……」
「デートは、別に誓約書違反にはならないわ。それに、結婚する事になるのでしょう。今までそういう事をしていなかったら、誤解が生まれたのよね?」
本気で言っているのかしら。
エルダ夫人達は、アンナが学園を卒業後出て行く事に納得しているの? だとしても、私は彼とは結婚する気はないのよね。
ガストン様もルトルン伯爵も何を考えているかわからないもの。
「仕事の事なら心配いらないわ。出来る範囲でやっておくから。もしあれだったら経営家の方を教えてくれたら連絡を取り合って……」
「それには及びません。それならガストン様に仕事を手伝ってもらうわ。本来、その為にここにいるのではないのかしら?」
結婚が前提でここに住んでいるのなら、いいえ、お父様にそう言われていたというのなら、フランシスク様が居ようが居まいが手伝うものでしょうに。
だけど、フランシスク様が来なくなった今日も手伝いには来ていない。
「あらそれもそうね。言っておくわ。私も手伝うから一致団結して乗り越えましょう」
「え? えぇ……」
本当に何を考えているのかわからないわ。
その後すぐにガストン様が、エルダ夫人と一緒に執務室を訪ねて来た。
「あ、ごめん。手伝ってよかったのか? ほら、近づくなって言われていたからさ」
こんな軽いノリで、ガストン様に謝れてもねぇ。
「どうせなら、直接経営家の者に教わりたいから……」
「それは、経営家科を卒業なさってからでいいと思いますわ。それと、お手伝いされてもお給金はでませんよ」
私がそう言うと、ガストン様がムッとした顔つきになる。
まあガストン様がお給金欲しさに手伝うと言う訳がないので、経営家に会いたかったのだろうけど。
会ってどうする気なのかしらね? 自分達側に丸め込むつもりなのかしら?
だとしたら、よからぬことを考えているって事よね。
学園から帰って来て経営家の仕事をしながら、学園での事を思いだしため息を一つ。
「レネット、お疲れ様」
執務室で仕事をしていると、ノックもなしにエルダ夫人が入って来た。
「あ、叔母様。どうか致しましたか」
ノックぐらいしてよね。
「アンナから聞いたわよ」
アンナから? もしかして、クラブの話?
「クラブの事ですか?」
「えぇ。まさかとは思うけど、マスティラン子息と逢瀬をしていたの?」
私は大きなため息をついた。
あの時見ていたのなら、少なくともフランシスク様は関係ないとわかったはずなんだけどね。
「私達をクラブから出来てたところを見たという方がいましたが、誤解だとわかっていただきました。それをアンナも見ていたのならわかったと思うのですけど」
「アンナが言うのには、マスティラン子息がうやむやにして、彼らを連れて行ったと言っていたわ」
うやむやって!
確かに確実にフランシスク様ではないとなったわけではないけど、そもそも私は昨日屋敷に居たじゃない!
「叔母様? 私が昨日出かけていないのはご存じでしょう?」
「あら確かに、ウルミーシュ子爵家の馬車は使われてはいないけど、専用の馬車があるのだもの、こっそりと出かける事は可能よね?」
「昨日は、フラ……マスティラン子息が屋敷に来ていたのに、わざわざ外で逢瀬をというのですか!?」
エルダ夫人は、何をしたいのよ。
私とガストン様を別れさせたいの? たったらなぜルトルン伯爵と結託したのよ。
「もう屋敷では会えませんからね」
「いい加減にして下さい! もう出て行って!」
私は、立ち上がりつい怒鳴ってしまった。
「あなたが浮気したとなると、ルトルン子息とは破談。けど、それだけで済むわけではないわ。浮気していたと疑いをかけておきながら、実はあなたが浮気していただなんてね。それに、ルトルン子息と婚約破棄になったからとマスティラン子息と婚約できるわけではないのよ」
何を言っているのよ!
うん? どこかで聞いたセリフね。
私ってそんな悪女に見える?
「今の話がマスティラン侯爵家の耳に入ったら不敬だと、領地から追い出されるわよ。大体、今の話だと……」
「彼の事はどうでもいいのよ」
私の言葉をエルダ夫人は遮って、私を睨みつける様に見つめてきた。
「彼にこれについて、私達からどうこう言うつもりはないわ。実際言えないしね。でも、あなたに対しては違うわ。ルトルン伯爵に噂が耳に入ったら大変な事になるのよ。だからそんな事はありませんと、アピールしないといけないと言いたいの」
「え?」
それって、私の心配をしているって事?
マスティラン領の学園内の噂をルトルン伯爵が知るとなると、あなた達からではないかしらね。
やっぱり何かを企んでいるのかしら?
「だからガストンとデートするのよ」
「へ? でも、誓約書が……」
「デートは、別に誓約書違反にはならないわ。それに、結婚する事になるのでしょう。今までそういう事をしていなかったら、誤解が生まれたのよね?」
本気で言っているのかしら。
エルダ夫人達は、アンナが学園を卒業後出て行く事に納得しているの? だとしても、私は彼とは結婚する気はないのよね。
ガストン様もルトルン伯爵も何を考えているかわからないもの。
「仕事の事なら心配いらないわ。出来る範囲でやっておくから。もしあれだったら経営家の方を教えてくれたら連絡を取り合って……」
「それには及びません。それならガストン様に仕事を手伝ってもらうわ。本来、その為にここにいるのではないのかしら?」
結婚が前提でここに住んでいるのなら、いいえ、お父様にそう言われていたというのなら、フランシスク様が居ようが居まいが手伝うものでしょうに。
だけど、フランシスク様が来なくなった今日も手伝いには来ていない。
「あらそれもそうね。言っておくわ。私も手伝うから一致団結して乗り越えましょう」
「え? えぇ……」
本当に何を考えているのかわからないわ。
その後すぐにガストン様が、エルダ夫人と一緒に執務室を訪ねて来た。
「あ、ごめん。手伝ってよかったのか? ほら、近づくなって言われていたからさ」
こんな軽いノリで、ガストン様に謝れてもねぇ。
「どうせなら、直接経営家の者に教わりたいから……」
「それは、経営家科を卒業なさってからでいいと思いますわ。それと、お手伝いされてもお給金はでませんよ」
私がそう言うと、ガストン様がムッとした顔つきになる。
まあガストン様がお給金欲しさに手伝うと言う訳がないので、経営家に会いたかったのだろうけど。
会ってどうする気なのかしらね? 自分達側に丸め込むつもりなのかしら?
だとしたら、よからぬことを考えているって事よね。
18
あなたにおすすめの小説
辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。
コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。
だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。
それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。
ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。
これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。
虐げられてきた令嬢は、冷徹魔導師に抱きしめられ世界一幸せにされています
あんちょび
恋愛
侯爵家で虐げられ、孤独に耐える令嬢 アリシア・フローレンス。 冷たい家族や侍女、無関心な王太子に囲まれ、心は常に凍りついていた。
そんな彼女を救ったのは、冷徹で誰も笑顔を見たことがない天才魔導師レオン・ヴァルト。
公衆の前でされた婚約破棄を覆し、「アリシアは俺の女だ」と宣言され、初めて味わう愛と安心に、アリシアの心は震える。
塔での生活は、魔法の訓練、贈り物やデートと彩られ、過去の孤独とは対照的な幸福に満ちていた。
さらにアリシアは、希少属性や秘められた古代魔法の力を覚醒させ、冷徹なレオンさえも驚かせる。
共に時間を過ごしていく中で、互いを思いやり日々育まれていく二人の絆。
過去に彼女を虐げた侯爵家や王太子、嫉妬深い妹は焦燥と嫉妬に駆られ、次々と策略を巡らせるが、 二人は互いに支え合い、外部の敵や魔導師組織の陰謀にも立ち向かいながら、愛と絆を深めていく。
孤独な少女は、ついに世界一幸福な令嬢となり、冷徹魔導師に抱きしめられ溺愛される日々を手に入れる――。
断罪するのは天才悪女である私です〜継母に全てを奪われたので、二度目の人生は悪逆令嬢として自由に生きます
紅城えりす☆VTuber
恋愛
*完結済み、ハッピーエンド
「今まで役に立ってくれてありがとう。もう貴方は要らないわ」
人生をかけて尽くしてきた優しい継母。
彼女の正体は『邪魔者は全て排除。常に自分が一番好かれていないと気が済まない』帝国史上、最も邪悪な女であった。
継母によって『魔女』に仕立てあげられ、処刑台へ連れて行かれることになったメアリー。
メアリーが居なくなれば、帝国の行く末はどうなってしまうのか……誰も知らずに。
牢の中で処刑の日を待つ彼女の前に、怪しげな男が現れる。
「俺が力を貸してやろうか?」
男は魔法を使って時間を巻き戻した。
「もう誰にも屈しないわ。私は悪逆令嬢になって、失った幸せを取り戻すの!」
家族を洗脳して手駒にする貴族。
罪なき人々を殺める魔道士。
そして、私を散々利用した挙句捨てたお義母様。
人々を苦しめる悪党は全て、どんな手を使ってでも悪逆令嬢である私が、断罪、断罪、断罪、断罪、断罪するのよ!
って、あれ?
友人からは頼りにされるし、お兄様は急に過保護。公爵様からも求婚されて……。
悪女ムーブしているのに、どうして回帰前より皆様に好かれているのかしら???
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
〇約十一万文字になる予定です。
もし「続きが読みたい!」「スカッとした」「面白い!」と思って頂けたエピソードがありましたら、♥コメントで反応していただけると嬉しいです。
読者様から頂いた反応は、今後の執筆活動にて参考にさせていただきます。
姉の厄介さは叔母譲りでしたが、嘘のようにあっさりと私の人生からいなくなりました
珠宮さくら
恋愛
イヴォンヌ・ロカンクールは、自分宛てに届いたものを勝手に開けてしまう姉に悩まされていた。
それも、イヴォンヌの婚約者からの贈り物で、それを阻止しようとする使用人たちが悪戦苦闘しているのを心配して、諦めるしかなくなっていた。
それが日常となってしまい、イヴォンヌの心が疲弊していく一方となっていたところで、そこから目まぐるしく変化していくとは思いもしなかった。
死にかけ令嬢の逆転
ぽんぽこ狸
恋愛
難しい顔をしたお医者様に今年も余命一年と宣告され、私はその言葉にも慣れてしまい何も思わずに、彼を見送る。
部屋に戻ってきた侍女には、昨年も、一昨年も余命一年と判断されて死にかけているのにどうしてまだ生きているのかと問われて返す言葉も見つからない。
しかしそれでも、私は必死に生きていて将来を誓っている婚約者のアレクシスもいるし、仕事もしている。
だからこそ生きられるだけ生きなければと気持ちを切り替えた。
けれどもそんな矢先、アレクシスから呼び出され、私の体を理由に婚約破棄を言い渡される。すでに新しい相手は決まっているらしく、それは美しく健康な王女リオノーラだった。
彼女に勝てる要素が一つもない私はそのまま追い出され、実家からも見捨てられ、どうしようもない状況に心が折れかけていると、見覚えのある男性が現れ「私を手助けしたい」と言ったのだった。
こちらの作品は第18回恋愛小説大賞にエントリーさせていただいております。よろしければ投票ボタンをぽちっと押していただけますと、大変うれしいです。
見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます
珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。
そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。
そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。
ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。
婚約者と親友に裏切られた伯爵令嬢は侯爵令息に溺愛される
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のマーガレットは、最近婚約者の伯爵令息、ジェファーソンの様子がおかしい事を気にして、親友のマリンに日々相談していた。マリンはいつも自分に寄り添ってくれる大切な親友だと思っていたマーガレット。
でも…
マリンとジェファーソンが密かに愛し合っている場面を目撃してしまう。親友と婚約者に裏切られ、マーガレットは酷くショックを受ける。
不貞を働く男とは結婚できない、婚約破棄を望むマーガレットだったが、2人の不貞の証拠を持っていなかったマーガレットの言う事を、誰も信じてくれない。
それどころか、彼らの嘘を信じた両親からは怒られ、クラスメイトからは無視され、次第に追い込まれていく。
そんな中、マリンの婚約者、ローインの誕生日パーティーが開かれることに。必ず参加する様にと言われたマーガレットは、重い足取りで会場に向かったのだが…
【完結】猫を被ってる妹に悪役令嬢を押し付けられたお陰で人生180度変わりました。
本田ゆき
恋愛
「お姉様、可愛い妹のお願いです。」
そう妹のユーリに乗せられ、私はまんまと悪役令嬢として世に名前を覚えられ、終いには屋敷を追放されてしまった。
しかし、自由の身になった私に怖いものなんて何もない!
もともと好きでもない男と結婚なんてしたくなかったし堅苦しい屋敷も好きでなかった私にとってそれは幸運なことだった!?
※小説家になろうとカクヨムでも掲載しています。
3月20日
HOTランキング8位!?
何だか沢山の人に見て頂いたみたいでありがとうございます!!
感想あんまり返せてないですがちゃんと読んでます!
ありがとうございます!
3月21日
HOTランキング5位人気ランキング4位……
イッタイ ナニガ オコッテンダ……
ありがとうございます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる