居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)

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第41話

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 「遅かったわね」
 「役所に寄って来たのか?」

 お帰りと言わず、役所に寄って来たのかと聞く当たり、役所の人が言った様に態度に出ていたわね。

 「そうよ、書類を持っていたわ。でも中身が違って、書き直しよ」
 「え! 書き直し!?」

 ガストン様が驚いている。
 私を騙すつもりで、内容を変えて書いたのだろうけど、中身が一緒でなければ受理されるわけないでしょう。
 それとも、サインしか確認されないと思ったのかしら。

 「私、仕事があるから執務室に行くから。あ、そうだ。叔母様。もうお手伝いして下さらなくていいわ。間違いだらけで書き直しているから」
 「な……」
 「そんな言い方しなくても……」
 「ガストン様もお手伝いは結構よ。というか、私が書くので仕事がないわ」
 「そうかよ!」

 嫌味を言えば、ムッとしてガストン様は去っていく。
 私も執務室へと向かった。
 執務室の椅子に体を預け、天を仰ぐ。

 いつからなのかしら――って、手紙をやり取りしていたのってまさかアンナ?

 私は、ガバッと体を起こした。
 もしそうだとして、どうして私と婚約解消をしないのかしら?
 いや浮気を続行するのにちょうどよかったのよね。

 ルトルン伯爵も婚約したままでと言っていたから、従うしかなかった。
 だからと言って、この屋敷に乗り込んでくるなんて!
 きっと、エルダ夫人も知っているのだわ。ルトルン伯爵と手を組んだのではなく、ガストン様の協力をしていたのね。

 「とんだ間抜けね」

 もういっその事、休業にしちゃうかな。
 ううん。ダメよ。お金が入らなくなったって、ウルミーシュ子爵家は出て行かないわ。
 それより証拠を突き出して、ガストン様共々追い出すしかないわ。
 でもそれは、私一人では無理よね。

 プロンテヌ侯爵にお手紙を書く?
 この前の返答も戻ってきていない。時間が掛かるわ。その間に、ガストン様達がまた何かするかもしれない。
 相手は、領主の息子なのよ。見張り役のフランシスク様も屋敷に来る事もできなくなってしまったし。
 彼にお願いするのも違うわよね。
 役所の方は、私のせいでフランシスク様の婚約が解消になったと思われている。これ以上、ご迷惑をお掛けできないわ。

 そうだわ!
 甘味処よ。何かあればプロンテヌ侯爵家を出していいと言っていた。そうすればすぐに、連絡がつくと!
 明日はちょうど学園が休みの日。自由に使える馬車があるのっていいわね。自由に行動ができるわ。
 きっと出かけたとしても役所に行くと思うでしょう。この世界では、役所などは休みはない。まあ職員は、交代で休んでいるけどね。
 さあ、そうとなればさっさと仕事を片付けて、夕飯を食べてしまいましょう。

 「ふう。やっと終わったわ」

 ダイニングルームで、独り言を呟くと執事長が食事を運んできてくれた。

 「あれ? 温めてある?」

 ガストン様に文句を言われた日から、食事は冷めたものに戻されていたのに。
 執事長が温めてくれたのかしら。

 「レネットお嬢様。ご不憫をお掛けして大変申し訳ありませんでした。今日から暖かいものを提供するように伝えました」

 並べ終わると執事長は、深々と頭を下げた。

 「あなたのせいではないわ。ガストン様が変な言いがかりをつけたのよ」
 「であっても、これは私の失態でございます。暫くの間、気づかずにいて、恥ずかしい限りです」
 「いいえ。あなたが残っていてくれて本当に有難いわ」

 執事長だけは、エルダ夫人でも解雇はできないはず。家主の承諾がいるからね。

 「それと、こちらをお預かりしております」
 「ありがとう!」

 プロンテヌ侯爵から返事だわ。
 こっそり出す事が出来ても、こっそり受け取るのは大変なのよね。執事長がいなかったら、この手紙もどうなっていたか。

 「まずは、食事を頂くわね」
 「はい。ごゆっくり」

 うん。大丈夫。この前の返事も届いたし、何とかなるわよ。
 食事を済ませた私は、自室へと戻った。
 プロンテヌ侯爵から手紙を読んだ。
 抗議文を送るって書いてあるわね。

 そうね。今日の事を書いて甘味処に行きましょう。すぐに届けてくれる手段があるかもしれないわ。

 次の日私は、出かけてくると午前中に屋敷を出て甘味処に向かった。
 予約制なので混雑はしていないけど、買って行く事は出来る為、そちらには列が出来ていた。
 本当に人気ね。

 「すみません。プロンテヌ侯爵の姪の娘レネットです。ここで連絡を取れると伺ったのですが」
 「レネット様ですか? レリーフをお持ちでしょうか」

 私は、判を押し身分を証明した。

 「こちらへどうぞ」

 確認を終えた従業員が私を二階奥へと案内する。
 窓がないけど、ソファーやテーブルは逸品のものだわ。さすが、侯爵家が使う部屋ね。
 関心していると、ノックの後「失礼するよ」と言う声ののち、私が入って来た時とは別のドアが開いた。

 「え? なんで?」

 振り向いた先には、驚く人物が立っていた――。
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