居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
58 / 58

最終話

 色々あったから薬師の事業は休業する手続きをした。
 アンナとウルミーシュ子爵は、部屋に籠っている。
 食事も部屋でとっているので、騒がしかった屋敷の中は今までが嘘のように静か。
 まあアンナは相当ショックを受けたようだし、口うるさい二人が居なくなったのだから当たり前よね。

 そんな寂しさを知っているかのように、次の日からフランシスク様は、本当に家にやってきた。
 ほんの一時間程、たわいもない話をして帰って行く。

 そうしているうちに一か月が経ち、アンナとウルミーシュ子爵は、出ていった。
 ウルミーシュ子爵は、エルダ夫人と離婚する事によって子爵でいる事ができ、アンナと一緒に暮らす事になった。
 だけど、アンナは学園を退学する事になる。
 まあ身籠ったし、学園では噂が流れているからね。

 私の両親が、馬車の事故で亡くなった真実が広まったのだ。
 ルトルン伯爵とガストン様……いえ、ガストンの逮捕。もちろん、ルトルン伯爵家は廃爵になり、一時的にマスティラン侯爵家が領地を管轄する事になったことが明るみなった。

 アンナが妊娠しているのは、知られてはいないけど時間の問題かもしれない。
 子供には罪はないので、きちんと子を育てる事を条件にマスティラン侯爵家の配慮でウルミーシュ子爵は仕事を請け負い、これから生まれる子と三人で生きていく事になった。

 エルダ元夫人は、裁判にかけられグリンマトル伯爵家とは縁が切られ平民となった。
 自分の兄の死を利用してグリンマトル伯爵家を乗っ取ろうとし、殺人には加担していないが悪質だと判断されたのだ。

 ガストンは殺そうとしたわけではないが、反省せずにグリンマトル伯爵家を乗っ取る事に加担した罪で、終身刑になった。

 そして、元ルトルン伯爵は今も裁判中だ。私の両親の事だけではなく、色々と悪事が出てきて裁判が長引いている。
 フランシスク様の話では、人は殺していないが罪状が多いのでガストンと同じ終身刑だろうと言う。

 「大丈夫? 寂しくない? ここにもう移ろうか?」
 「え! 早くない?」
 「早くない。遅いくらいだよ」

 たった一か月でほだされてしまったようで、私達は昨日婚約をした。
 彼が向けて来る眼差しが優し気で安心でき、いつの間にか傍にいてほしいと思う様になっていた。

 バレない様に毎日通うのだもの、そりゃほだされるよ。
 でも、彼のこの眼差しで思い出したんだ。
 あのパーティーでプロンテヌ侯爵に「気になった者はいたか」と聞かれて、「みんなぐいぐい来て。私は伯爵家の娘なのにね。そういえば、その中に銀の瞳で柔らかく私を見てくる彼は、かわいかったかも!」って言った事を。

 きっと、そのセリフをプロンテヌ侯爵は覚えていたんだろうなぁ。
 よく見れば、面影がある。
 でもあのパーティーがお見合いみたいなもので、そこに侯爵家の息子が来ているなんて思わないじゃない。

 もしあの時、「好きかも」みたいな事を言っていたらフランシスク様と婚約していたのだろうか。
 そう考えた時、ありと思ってしまったんだよね。
 ガストンが嫌だからフランシスク様がいいではなく、フランシスク様がいいと思ってしまった。

 「うん? 何?」

 ボーっとパーティーの事を思いだし、フランシスク様を見つめていたら、不思議そうな顔でフランシスク様が問う。

 「うん。この柔らかな視線は知ってるって。パーティーの時から変わってないなぁって」
 「え!」

 一瞬でフランシスク様が赤面した。

 「私の事を覚えてくれていた……」

 そう呟いたフランシスク様の声が聞こえた。嬉しそうだわ。
 この日もこうして、一時間程で帰っていた。
 やっぱり一緒に住もうかな? 一時間では寂しい。ずっと一緒にいたい。そんな想いが募っていった。



 さらに一か月後、私は密会場所の甘味処に来ていた。
 私の隣には、プロンテヌ侯爵が座っている。
 そして、向かい側にはマスティラン侯爵とフランシスク様が座っていた。

 突然、プロンテヌ侯爵から手紙が来て大事な話があると言って、今日ここに連れて来られたのよね。

 「そんな不安がらなくてよい。まあ、少し大変だろうがな」

 緊張した顔つきでいたので、プロンテヌ侯爵が隣でそう言った。
 よかった。破談ですという話ではなさそう。

 「突然だが、息子のフランシスクと結婚後、元ルトルン伯爵が治めていた領地を治めてほしい」

 うん? 領地を治める?
 目をぱちくりとしていると、フランシスク様がにっこりとほほ笑んだ。

 「つまり、元ルトルン伯爵領は、グリンマトル伯爵領になるって事だよ」
 「えー!! む、無理です。そんなの!」

 あまりの事に驚いて、大声を上げてしまった。

 「大丈夫だ。私もサポートするし、領地経営は主に彼がする」

 プロンテヌ侯爵の言葉にフランシスク様を見れば、こくんと頷く。

 「君は、場所は移るが薬師としてまたは経営家として仕事をしていいって事だよ」
 「で、でも……」
 「元々、ルトルン伯爵領はマスティラン領地だったのだ。フランシスクのように、結婚して婿に行く際に領地を分けたという経緯があってね。彼らは遠い親戚でもあった。まあそういう記録が残っていただけというぐらい、かなり昔の話だ」

 マスティラン侯爵がそう言った。
 という事は、フランシスク様が領地を継いでもおかしくないって事なのよね? 婿に来る事になるからマスティラン領ではなくグリンマトル領と名が変わるだけ。

 「実はもう、そういう話で進めていてね。調合部屋などの打ち合わせをしようとなったのだ」
 「今、新たに二人の屋敷を作っているところだ。卒業と共に今住んでいるところから、そっちへ移る事になる」

 マスティラン侯爵が驚く事を言うと、続けてプロンテヌ侯爵も驚く事を続けた。
 私抜きで、そこまで話を進めていたですって!!
 これ絶対に、遠い親族だと知ってプロンテヌ侯爵が持ち掛けた話よね。

 そんなこんなで、学園卒業後私達は、領地を持つ貴族になった。
 新しい屋敷は、前に住んでいた屋敷の倍以上ある大きな屋敷で、使用人達も一変。
 執事長と従者の二人だけは、ついて来てくれた。

 新しい調合室に執務室。
 なんだか、不思議な気持ちだわ。

 「これからも末永くよろしくね。レネット」

 私の右手をとり、甲にキスを落とすフランシスク様。

 「こちらこそよろしくね。フランシスク様」
 「今日はゆっくりしようか。明日からは色々と忙しくなるのだから」
 「そ、そうね」

 私達は、そのまま寝室へと向かうのだった。
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

agi21
2026.02.11 agi21

ストレスのたまるシーンが非常に長く基本相手のペースで話が進んでいて、最終話直前まで続いたので
ざまぁって感じがあまりしなかったです。確定した判決しか書かれてなかったし
ざまぁされた側のその後でもあるとストレス部分との帳尻があって良いなと思いました

2026.02.14 すみ 小桜(sumitan)

感想ありがとうございます

解除

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。

たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。 彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。 『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』 「……『愛している』、ですか」 いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。

婚約者の王太子が平民と結婚するそうです──どうぞ、ご勝手に【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王太子エドモンが平民との“真実の愛“を宣言した日、王国の均衡は崩れた。 エドモンの婚約者である公爵令嬢エヴァは、公衆の面前で婚約破棄され、更には婚約者のいるクラウディオ・レンツ公爵との結婚を命じられる。 ──そして舞踏会の夜。 王太子妃になった元平民ナタリーは、王宮の礼儀も政治も知らぬまま混乱を引き起こす。 ナタリーの暴走により、王家はついにエヴァを敵に回した。 王族は焦り、貴族は離反し、反王派は勢力を拡大。 王国は“内乱寸前”へと傾いていく。 そんな中、エヴァの前に跪いたのは王太子の従弟アレクシス・レンツ。 「僕と結婚してほしい。  僕以外が王になれば、この国は沈む」 冷静で聡明な少年は、エヴァを“未来の国母”に据えるためチャンスを求めた。 「3ヶ月以内に、私をその気にさせてご覧なさい」 エヴァは、アレクシスに手を差し伸べた。 それからの2人は──? ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。視点が頻繁に変わります。

【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです

唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。 すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。 「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて―― 一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。 今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。

王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!

ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。 なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。

刺繍妻

拓海のり
恋愛
男爵令嬢メアリーは魔力も無くて、十五歳で寄り親の侯爵家に侍女見習いとして奉公に上がった。二十歳まで務めた後、同じ寄り子の子爵家に嫁に行ったが。九千字ぐらいのお話です。

婚約破棄? ありがとうございます。やっと本当の人生が始まります

たくわん
恋愛
婚約破棄された令嬢がすべきことといえば、泣くか、喚くか、復讐を誓うか——らしい。 リーナ・フォスター公爵令嬢がしたことは、荷造りだった。 「冷たくて人を愛せない」と王太子に切り捨てられた夜、リーナは一度も振り返らずに王城を出た。向かった先は辺境の荒れ地。目的は薬草の栽培と薬品事業の立ち上げ。前世の記憶から温めてきた、誰にも言えなかった計画の実行だ。 リーナはそこで不器用だが誠実な騎士ヴァルターと出会う。一方、残された王太子とその新しい婚約者は、少しずつ、静かに、取り返しのつかない方向へと歩んでいたーー。

【完結】私のことを愛さないと仰ったはずなのに 〜家族に虐げれ、妹のワガママで婚約破棄をされた令嬢は、新しい婚約者に溺愛される〜

ゆうき
恋愛
とある子爵家の長女であるエルミーユは、家長の父と使用人の母から生まれたことと、常人離れした記憶力を持っているせいで、幼い頃から家族に嫌われ、酷い暴言を言われたり、酷い扱いをされる生活を送っていた。 エルミーユには、十歳の時に決められた婚約者がおり、十八歳になったら家を出て嫁ぐことが決められていた。 地獄のような家を出るために、なにをされても気丈に振舞う生活を送り続け、無事に十八歳を迎える。 しかし、まだ婚約者がおらず、エルミーユだけ結婚するのが面白くないと思った、ワガママな異母妹の策略で騙されてしまった婚約者に、婚約破棄を突き付けられてしまう。 突然結婚の話が無くなり、落胆するエルミーユは、とあるパーティーで伯爵家の若き家長、ブラハルトと出会う。 社交界では彼の恐ろしい噂が流れており、彼は孤立してしまっていたが、少し話をしたエルミーユは、彼が噂のような恐ろしい人ではないと気づき、一緒にいてとても居心地が良いと感じる。 そんなブラハルトと、互いの結婚事情について話した後、互いに利益があるから、婚約しようと持ち出される。 喜んで婚約を受けるエルミーユに、ブラハルトは思わぬことを口にした。それは、エルミーユのことは愛さないというものだった。 それでも全然構わないと思い、ブラハルトとの生活が始まったが、愛さないという話だったのに、なぜか溺愛されてしまい……? ⭐︎全56話、最終話まで予約投稿済みです。小説家になろう様にも投稿しております。2/16女性HOTランキング1位ありがとうございます!⭐︎