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トムが宣言した通り、3回目をこなした今日、昇格を言い渡された。
めでたくDランクギルドになり、アイリさんを除く5人で祝賀会だ。
「本当にDランク上がるなんて! 頑張った甲斐があった」
シューさんが本当に嬉しそうに言った。
「しかも拠点にすぐに住めるんですよね?」
「あぁ。明日から5日間休みだ。その間に整えておく」
「「すげー!!」」
トムの言葉に、全員が歓喜する。
僕も嬉しい。数日宿に泊まれば拠点に住めるようになるんだから。
「その間、個人でクエストを受けてもいい。ただし採取な」
「おー」
3人は上機嫌だ。
いや、トムも。機嫌が良さそう。
明日は体を休めるとして、明後日から採取してお金を稼いでおこうかな。
今日から拠点に住めるようになるまでは、宿代がかかる。だから一番安い宿屋に移るつもりだ。毛布があるし。
お開きになり、僕は格安宿屋へと向かい歩き始めた。
「ラシル」
「うん?」
振り向くと、近づいて来るトムの姿が見える。
「えーと。どうかした?」
「俺のお願い聞いてくれないか? この通り」
ワザとらしく胸の前で手を合わせ、その手を顔の位置まで上げた。酔っているっぽい。僕以外は、お酒を飲んでいたからね。
「いいけど。明日でもいい?」
クエストから帰って来てそのまま祝賀会を上げたので、真夜中になっている。疲れているし眠い。
「これ……」
って、背負っていたリュックから魔石が大量に入っているだろう大きな袋を取り出し、僕の方へ突き出してきた。
「使って……」
ガシッと、僕の肩に手を回す。
やっぱり酔ってるよ、この人。
「拠点修繕して」
耳元で囁き、僕にグイっと袋を押しつけてきた。
「今日、お前、泊まるとこないだろう?」
「いや、あそこは契約きれましたけど、格安宿に泊まりますので大丈夫で……おわぁ」
肩に手を回したまま、後ろに引っ張られた。
「俺んとこ、泊めてやる」
「はい? いや、今日はやめておきます」
酔っ払いの相手なんて嫌だよ。
断ったのに来た方向に引っ張られ、来た道を肩を抱かれて歩くはめに。とほほ。
歩きづらい……って、え!
凄い形相で僕を睨むミードさんの横を僕達は通り過ぎた。
たぶんミードさんもお金がないから、僕と同じく格安の宿に泊まるつもりだったのだろう。
そこで、トムに肩を抱かれ大きな袋を持った僕を見てしまった。
これ、絶対に誤解しているよ。
この袋は、貰ったんじゃなくて預けられたんだ。
よくわからないけど、これを使って何かをすれってことみたいだ。
「あの、わかったから。歩きづらいから手を離して」
「何だよ。肩ぐらいいいじゃないか。あ、すぐそこね」
ここって、拠点がない高レベルギルドのメンバーが泊っている宿じゃないか。
「一回、ここに泊まるとここがいいと思っちゃうんだよね。ビワードに合わせてあっちに泊まっていたけどさ。こっちだ」
宿屋の建物に入り2階へと上った奥の部屋だった。
「ただいま~」
ドアを開け、トムが言うも返事はない。
「やっぱり寝てるか。ほら入れよ」
「失礼します」
今まで泊っていた部屋と同じだけ広い。
いやもっと広いかも。だってベッドがある。というか、初めて見た。
そこには、スース―と寝息を立てるアイリさんが寝ている。
「こ、ここに2人で泊まってるの?」
「あぁ、そうだ」
「あれで寝てるの?」
「そう。2人でな」
「狭くない?」
「っぶ。感想はそれかよ。ベッドはいいぞ。寝心地最高だ。拠点にも置くつもりだ」
え? それってメンバーの分もって事?
ベッドから目線を移しトムを見ると、笑顔で頷く。
「まあ今日は、ベッドは諦めてくれ」
トムは、窓の下に座り壁によりかかった。
そして、隣をポンポンと叩くので、隣に座る。
「明日、拠点になる建物を買う。お願いして売らずにいてもらったんだ」
「へえ」
「お前、冒険者ギルドタウンって知ってるか?」
「ギルドタウン?」
「冒険者ギルド協会から南に向かう錬金市場を通り抜けた先にあるのが、冒険者ギルドタウンさ。そこには、冒険者ギルドの拠点の建物が立ち並んでいる」
「そうなの? え? もしかしてそこの建物を買ったの?」
「そ。中古。建てると時間もお金もかかる。立地的には、森に一番近くはなるが大丈夫だ」
よくわからないけど、遠いって事だよね。
「明日、一緒に行くぞ」
「え? 僕も」
「そう3人で」
あ、アイリさんも行くんだ。
「そして、明日から住む!」
「えー!!」
どうやら僕達3人で先にその建物に住むつもりらしい。
また僕だけって、ミードさんが文句を言いそうだけど、楽しみかも。
「でさ、さっきの話に戻るんだけど」
「さっきの話?」
「お願いってやつだ。テリトリーの能力に拠点にするのあっただろう。その能力で、ギルドの建物を拠点に登録して欲しいんだ」
「え……」
よくそんな事覚えていたよね。
僕はすっかり忘れていたというのに。
「でも拠点にして何かメリットあるの?」
「あぁ。たぶんある。俺は、『拠点』というスキルを持っているやつを知っている」
「え!」
そんなスキルも存在するんだ。僕のテリトリーと似ているのだろうか。
「そいつが出来た事は、お前にも出来る。何せお前のスキルは、それを含めてというスキルだ。つまり、拠点よりランクが上だ」
「ランク?」
「シルバーが持って生まれたスキルは、ランクがない。けど、実際は固定ランクは存在すると言われている。だとすれば、拠点を含んでいるお前のスキルの方がランクが上って事になるだろう」
「確かに……」
僕のスキルって、ランク的には凄かったかもしれないんだ!
直接魔獣を倒す力がなくても、拠点でもサポートできれば文句も言われない。特にミードさんに。
そう思うと、更に明日、拠点に行くのが楽しみになった。
めでたくDランクギルドになり、アイリさんを除く5人で祝賀会だ。
「本当にDランク上がるなんて! 頑張った甲斐があった」
シューさんが本当に嬉しそうに言った。
「しかも拠点にすぐに住めるんですよね?」
「あぁ。明日から5日間休みだ。その間に整えておく」
「「すげー!!」」
トムの言葉に、全員が歓喜する。
僕も嬉しい。数日宿に泊まれば拠点に住めるようになるんだから。
「その間、個人でクエストを受けてもいい。ただし採取な」
「おー」
3人は上機嫌だ。
いや、トムも。機嫌が良さそう。
明日は体を休めるとして、明後日から採取してお金を稼いでおこうかな。
今日から拠点に住めるようになるまでは、宿代がかかる。だから一番安い宿屋に移るつもりだ。毛布があるし。
お開きになり、僕は格安宿屋へと向かい歩き始めた。
「ラシル」
「うん?」
振り向くと、近づいて来るトムの姿が見える。
「えーと。どうかした?」
「俺のお願い聞いてくれないか? この通り」
ワザとらしく胸の前で手を合わせ、その手を顔の位置まで上げた。酔っているっぽい。僕以外は、お酒を飲んでいたからね。
「いいけど。明日でもいい?」
クエストから帰って来てそのまま祝賀会を上げたので、真夜中になっている。疲れているし眠い。
「これ……」
って、背負っていたリュックから魔石が大量に入っているだろう大きな袋を取り出し、僕の方へ突き出してきた。
「使って……」
ガシッと、僕の肩に手を回す。
やっぱり酔ってるよ、この人。
「拠点修繕して」
耳元で囁き、僕にグイっと袋を押しつけてきた。
「今日、お前、泊まるとこないだろう?」
「いや、あそこは契約きれましたけど、格安宿に泊まりますので大丈夫で……おわぁ」
肩に手を回したまま、後ろに引っ張られた。
「俺んとこ、泊めてやる」
「はい? いや、今日はやめておきます」
酔っ払いの相手なんて嫌だよ。
断ったのに来た方向に引っ張られ、来た道を肩を抱かれて歩くはめに。とほほ。
歩きづらい……って、え!
凄い形相で僕を睨むミードさんの横を僕達は通り過ぎた。
たぶんミードさんもお金がないから、僕と同じく格安の宿に泊まるつもりだったのだろう。
そこで、トムに肩を抱かれ大きな袋を持った僕を見てしまった。
これ、絶対に誤解しているよ。
この袋は、貰ったんじゃなくて預けられたんだ。
よくわからないけど、これを使って何かをすれってことみたいだ。
「あの、わかったから。歩きづらいから手を離して」
「何だよ。肩ぐらいいいじゃないか。あ、すぐそこね」
ここって、拠点がない高レベルギルドのメンバーが泊っている宿じゃないか。
「一回、ここに泊まるとここがいいと思っちゃうんだよね。ビワードに合わせてあっちに泊まっていたけどさ。こっちだ」
宿屋の建物に入り2階へと上った奥の部屋だった。
「ただいま~」
ドアを開け、トムが言うも返事はない。
「やっぱり寝てるか。ほら入れよ」
「失礼します」
今まで泊っていた部屋と同じだけ広い。
いやもっと広いかも。だってベッドがある。というか、初めて見た。
そこには、スース―と寝息を立てるアイリさんが寝ている。
「こ、ここに2人で泊まってるの?」
「あぁ、そうだ」
「あれで寝てるの?」
「そう。2人でな」
「狭くない?」
「っぶ。感想はそれかよ。ベッドはいいぞ。寝心地最高だ。拠点にも置くつもりだ」
え? それってメンバーの分もって事?
ベッドから目線を移しトムを見ると、笑顔で頷く。
「まあ今日は、ベッドは諦めてくれ」
トムは、窓の下に座り壁によりかかった。
そして、隣をポンポンと叩くので、隣に座る。
「明日、拠点になる建物を買う。お願いして売らずにいてもらったんだ」
「へえ」
「お前、冒険者ギルドタウンって知ってるか?」
「ギルドタウン?」
「冒険者ギルド協会から南に向かう錬金市場を通り抜けた先にあるのが、冒険者ギルドタウンさ。そこには、冒険者ギルドの拠点の建物が立ち並んでいる」
「そうなの? え? もしかしてそこの建物を買ったの?」
「そ。中古。建てると時間もお金もかかる。立地的には、森に一番近くはなるが大丈夫だ」
よくわからないけど、遠いって事だよね。
「明日、一緒に行くぞ」
「え? 僕も」
「そう3人で」
あ、アイリさんも行くんだ。
「そして、明日から住む!」
「えー!!」
どうやら僕達3人で先にその建物に住むつもりらしい。
また僕だけって、ミードさんが文句を言いそうだけど、楽しみかも。
「でさ、さっきの話に戻るんだけど」
「さっきの話?」
「お願いってやつだ。テリトリーの能力に拠点にするのあっただろう。その能力で、ギルドの建物を拠点に登録して欲しいんだ」
「え……」
よくそんな事覚えていたよね。
僕はすっかり忘れていたというのに。
「でも拠点にして何かメリットあるの?」
「あぁ。たぶんある。俺は、『拠点』というスキルを持っているやつを知っている」
「え!」
そんなスキルも存在するんだ。僕のテリトリーと似ているのだろうか。
「そいつが出来た事は、お前にも出来る。何せお前のスキルは、それを含めてというスキルだ。つまり、拠点よりランクが上だ」
「ランク?」
「シルバーが持って生まれたスキルは、ランクがない。けど、実際は固定ランクは存在すると言われている。だとすれば、拠点を含んでいるお前のスキルの方がランクが上って事になるだろう」
「確かに……」
僕のスキルって、ランク的には凄かったかもしれないんだ!
直接魔獣を倒す力がなくても、拠点でもサポートできれば文句も言われない。特にミードさんに。
そう思うと、更に明日、拠点に行くのが楽しみになった。
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