終活を異世界で~モフモフする為に旅立ったのに世界を救う事になりそうです

すみ 小桜(sumitan)

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第一一話

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 店員さんに案内されたコーナーは、剣コーナーだった。同じ剣がずらっと置いてある。

 「一番武器として使われているのが剣です。初心者用ですので軽めに出来ております。鞘は別売りになっており、シンプルなモノから凝ったデザインまであります。色も十種類以上ありますので、好みの色や他の装備と合わせて選ぶ事ができます。奥には、弓やハンマーなどもございます」
 「すご……」

 量販店のように同じ剣が持ち手が手前に刃が奥になるように置いてあった。鞘で個性をアピールするのか。おしゃれな世界だな。うん? あれは杖?

 「あの、なんで杖が売っているのですか? あれを使うと魔法が使えるとか?」
 「いえいえ。魔法を使える方用に置いてあります。まあ魔法が扱える者ならここでは買わないとは思いますが、壊れた時に代替え用に買って行く方もおられますので。ここは初心者用の売り場になりますので、魔石入りの武器はおいておりません」

 うん? 魔法が使える人がそれなりにいるって事? もしかしてツティーちゃんの言っていた事とちょっと違う?

 「あの、魔法って勇者様の子孫しか使えないって聞いたのですけど……」
 「はい。先祖帰りで使える方が多数いるようです。羨ましい限りです。そういう方は、ほとんどは国営魔法団に入ってしまわれますが、前線に出るのが嫌な……ごほん。冒険者の方が自分に合っていると、冒険者になる方もいらっしゃいます」
 「そうなのですか。魔法いいですよねぇ」
 「ですので、杖をお買い上げいただいても魔法は使えるようになりませんので、お気をつけください」
 「あ、はい。ありがとうございます。色々見てみます」

 軽くお辞儀をして店員は、去って行った。

 「先祖返りねぇ。かなり血が薄くても使える人がそれなりにいるのね。びっくりだわ」
 「うん。いいなぁ」
 「大丈夫よ! 使える魔法が徐々に増えていくそうだから」

 ツティーちゃんが、にっこりと微笑んで教えてくれたその情報は、僕にはあてはまりません。
 それにしても武器ってこんなに種類があったんだ。無難に剣とかがいいのかもしれないけど、できるだけ近づきたくないから弓とかどうだろうか? でも当たりそうもないか。うーん。
 僕は、武器を見てまわる。定番のモノから使い方がわからない武器まで色々あった。

 うん? これは? 斬る・突く・断つ・払うといった様々な攻撃ができる武器――ハルバード。
 僕は、それを手に取った。棒だと思ったそれは、引っ張りだすと先に斧と槍がついている武器だった。初心者用なのか、見た目より重くはない。
 これデザインが凝っていたらカッコいい武器かも。

 「まさかそれを使う気!?」
 「え? いや違うけど。どんなのかなって手に取っただけ」
 「よかったぁ。それじゃ勇者って感じではないもの。やっぱり勇者は剣よ!」
 「イメージですか……」

 まあ無難なのは剣だよね。ツティーちゃんのリクエストでもあるし。鞘は何色にしようかな。外套と同じ緑にしようかな。
 剣を下げる為のベルトも買う事にした。
 剣が銅貨三百枚、鞘はシンプルので銅貨百枚、ベルトも銅貨百枚で計銅貨五百枚。カードには、最初から銅貨五十枚分入っていて、追加で銀貨二枚入れてもらった。それぐらいあれば、装備は整うっていわれたからだけど、本当だ。
 そして、カードをかざしただけで、お買い物終了。楽ちん。
 外套を羽織っているので、見た目変わらないけどね。

 後は、採取用のお店にも寄っていく。
 ここも目移りするほど色々と売っていた。スコップからハサミまで。しかも鑑定魔道具という物も売っている。欲しいなぁ。安いのはなんと銀貨五枚! 高いのか安いのか。いや武器などから比べると凄く高いけど、魔道具としては安いのではないだろうか。
 安いので鑑定できるのは、魔道具自体に登録されているものに限り判別できるだけ。採取用なので、それに伴った物が登録されているらしい。ただ魔石は別売りなので、これとは別に魔石を買わないといけない。

 「いらないと思うわ。勇者ってそのうち、そういう魔法も覚えるらしいの」
 「ゆ、勇者ならいらないかもしれないけど……僕、勇者じゃないし」
 「大丈夫よ。自信を持って!」

 やっぱり通じなかった。僕が勇者だと、信じきっている。
 まあ必要ならおいおい買おう。魔石が高いからね。
 採取用に買ったのは、小さなスコップ、ハサミ、袋、軍手、折り畳みバケツ。これがセットになった採取セット。銅貨三百枚。
 その後、アイテム屋に行って傷薬と水筒、携帯食を買った。本当は、即効性のあるポーションが欲しかったけど、銀貨1枚もした。いや全然今なら買えるけど、傷薬なら銅貨三百枚。採取セットと同じ金額だ。効果的にはほぼ同じらしい。時間がかかるか、かからないかだけ。
 最初にSランクのお店に行ってよかったかも。他の買い物の後なら高いと感じて今の装備は買ってない。何となく、やってしまった感があるけどずっと使える装備だと思えば。うん。安い買い物をしたに違いない……と思いたい。

 「ねえ、もう準備できたよね?」
 「え? まあ大丈夫だと思う」
 「だったら向かいましょう!」

 ツティーちゃんが、目をキラキラさせて言った。
 凄く楽しみにしているみたい。
 モンスターさえ出て来なければ、ピクニック感覚だよね。
 それにしてもこの鞄、いくらでも入りそう。買った採取セット、傷薬、水筒、携帯食を入れたのに、鞄の重さが変わらない。見た目もぽっこりとならず、中身を覗けば鞄の見た目より広く感じる。いや絶対に広がっているよ!
 授かった恩恵を本当の意味で実感できた瞬間だった。
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