12 / 14
第一二話
しおりを挟む
店を出ると、行き交う人々が楽しそうに歩いている。王都なので人が多く、大半が普通の一般人なのだろう。そう思ってちょっと眺めていたら僕と同じ耳の人を発見!
「ツティーちゃん、エルフがいるよ」
「うん? あぁ、あの人はハーフよ」
「ハーフ!」
「そんなに驚く事? 森から出て行ったエルフが人間と関係を持ってできた子よ。そして、エルフのように見える彼らはその子孫」
「……いや、それはわかっている。ただあまり中が良くないのかと思ったから」
「そうね……」
なぜかツティーちゃんは、間を置いた。
「私はあまり好ましく思っていないわ。でも憧れはあるの。人間にではなく、この世界にね。森の外ってどんなところなの? 海ってどういう感じ? とかね。あの人には、エルフの様なアニマを感じないわ」
「アニマか。それで判断をしているのか。じゃ僕は?」
「凄いわよ。クロバー様を凌ぐ量よ!」
エルフ並みにあるのかと聞けばそれどころではなく、たぶんツティーちゃんが知る中で一番多そうだ。だから勇者だと思っているのだと納得。もしかして僕、魔法を使えちゃったりして。
「逃げろ!」
のほほんとしていたらいきなり逃げろと言う声。見れば必死に逃げて来る人々が公園の方から駆けて来る。なんだろう? まさか、通り魔なんていうのが出たとか?
「モンスターだ!」
あ、そっち。そうだよね……って、
「モンスター!? この世界って街の中って安全じゃないの? しかもここ王都だよね?」
「おかしいわね。街には結界を張っているって聞いていたのに。というか、張ってあるのに」
「え? 張ってあるの?」
そうよとツティーちゃんが頷く。
僕には気づけなかったけど、ではなぜにモンスターが現れたの?
「どうやら何か裏がありそうね」
「へ? 裏?」
「外から侵入したのではないでしょう? 公園から逃げて来ているわ。つまり発生した」
「モンスターってどこでも沸くの?」
「うーん。どういう風に発生しているかわかってないけど、アニマに群がるから基本的に結界内に発生はしないと思うのだけど。行ってみましょう!」
ツティーちゃんが目をキラキラさせて僕に言った。
いや自分から危険な事に飛び込む事なんてしたくないのだけど。
「いや危険だよ。皆と同じく逃げよう。うん。それがいい!」
「何を言っているの? 勇者なのだからここは活躍の場でしょう」
え! そういうスタンスなの? いやいやいや……これは早めに勇者じゃないとわかってもらわないと、僕の命がいくつあっても足りないかもしれない。
「おい、あんた。来てくれ。なぜか公園にモンスターが出現したようだ!」
逃げる人混みの中、流れに逆らって公園に向かう冒険者だろう男に声を掛けられた。
この人、僕より強そうなのになぜだ。
「あんたSランクだろう?」
「あ……」
そういう事か! 失敗した。まさかまた外套でランクを判別されるとは思わなかったよ。今さっき、ギルドに所属した成りたてだって言っても通じないだろうか。
「ほら彼もそう言っているわ。行くわよ」
「ちょ、ツティーちゃん!」
ツティーちゃんが公園に向かって走り出したので仕方なく僕も駆け出した。声を掛けた男も一緒に向かう。
勇者の像がある公園には、先程はなかった大きな樹が生えていた。いやあれがモンスターなのかも。だって、枝が動いている。あれは風になびいているって感じではない。
「何あれ……」
「たぶん、ドレンドよ……」
「ドレンド? トレントではなくて?」
トレントなら聞いた事がある。それこそ樹の精霊とかそういうのだったかと。
「彼らと一緒にしたらかわいそうだわ。でもそうね、元はそうだった。それを私達はそう呼んでいるわ」
「元は? もしかしてモンスター化したとかいう事?」
ツティーちゃんが、険しい顔つきで頷く。
もしかして、邪気でモンスター化というのもあるのか。
「彼らは、人間によって作り上げられたモンスターよ!」
「なんだって!」
どういう事? モンスターが増えたら何とかしてほしいと願って勇者を遣わしてもらいながら、モンスターを作り出しているっていうの?
「トレントも私達と同じく森に住むモノなの。しかも浄化もできるのよ」
「え……それが真逆になっている」
こくんとツティーちゃんが頷く。
「人間は、自分たちが助かる為に彼らを狩った」
「え? もしかしてモンスターと間違って?」
「いいえ。自分たちの周りに置いて浄化する為よ」
なるほど。浄化も出来ると気づいたって事か。
「人間は、私利私欲の為に彼らを改良しようとした。ビジネスっていうの? その為に森から連れ出され、森から彼らの姿が消えた。そうしたらどんどんモンスターが増えたのよ」
バカなのか人間は! というか、その人間達の願いを叶えてやる神様も何を考えているのやら。
「しかも、その過程でモンスターを作り上げてしまった。一部の人間がそれを悪用していると聞いたけど本当だったのね」
「で、突然現れたのはなぜ?」
「そのモンスターは、普通の植木にしか見えない。それを土に植えると地中のアニマを吸い取り、ドレンドに変貌する。そして、邪気をバラまく。実際に見たのは初めてよ」
「なんて事を……って、知らないで植えちゃったの?」
「さあどうでしょうね……早く倒してね。でないと私もどうなるか」
そうだった! 邪気の中に居たら正気を無くすのだった。って、冒険者達が向かって行っているけど、振り払われている。結構強い。
「くそう、さすが上位モンスターだ」
「上位モンスター!? なんてもの作り出したんだよ」
「おい、君。ぼーっとしてないで加勢しろ」
ただ突っ立いる僕に振り向いた冒険者が言った。
仕方がないから剣を抜いたけど、一度も戦闘を経験した事がない僕に何ができると言うのだろう。大ピンチ!
「ツティーちゃん、エルフがいるよ」
「うん? あぁ、あの人はハーフよ」
「ハーフ!」
「そんなに驚く事? 森から出て行ったエルフが人間と関係を持ってできた子よ。そして、エルフのように見える彼らはその子孫」
「……いや、それはわかっている。ただあまり中が良くないのかと思ったから」
「そうね……」
なぜかツティーちゃんは、間を置いた。
「私はあまり好ましく思っていないわ。でも憧れはあるの。人間にではなく、この世界にね。森の外ってどんなところなの? 海ってどういう感じ? とかね。あの人には、エルフの様なアニマを感じないわ」
「アニマか。それで判断をしているのか。じゃ僕は?」
「凄いわよ。クロバー様を凌ぐ量よ!」
エルフ並みにあるのかと聞けばそれどころではなく、たぶんツティーちゃんが知る中で一番多そうだ。だから勇者だと思っているのだと納得。もしかして僕、魔法を使えちゃったりして。
「逃げろ!」
のほほんとしていたらいきなり逃げろと言う声。見れば必死に逃げて来る人々が公園の方から駆けて来る。なんだろう? まさか、通り魔なんていうのが出たとか?
「モンスターだ!」
あ、そっち。そうだよね……って、
「モンスター!? この世界って街の中って安全じゃないの? しかもここ王都だよね?」
「おかしいわね。街には結界を張っているって聞いていたのに。というか、張ってあるのに」
「え? 張ってあるの?」
そうよとツティーちゃんが頷く。
僕には気づけなかったけど、ではなぜにモンスターが現れたの?
「どうやら何か裏がありそうね」
「へ? 裏?」
「外から侵入したのではないでしょう? 公園から逃げて来ているわ。つまり発生した」
「モンスターってどこでも沸くの?」
「うーん。どういう風に発生しているかわかってないけど、アニマに群がるから基本的に結界内に発生はしないと思うのだけど。行ってみましょう!」
ツティーちゃんが目をキラキラさせて僕に言った。
いや自分から危険な事に飛び込む事なんてしたくないのだけど。
「いや危険だよ。皆と同じく逃げよう。うん。それがいい!」
「何を言っているの? 勇者なのだからここは活躍の場でしょう」
え! そういうスタンスなの? いやいやいや……これは早めに勇者じゃないとわかってもらわないと、僕の命がいくつあっても足りないかもしれない。
「おい、あんた。来てくれ。なぜか公園にモンスターが出現したようだ!」
逃げる人混みの中、流れに逆らって公園に向かう冒険者だろう男に声を掛けられた。
この人、僕より強そうなのになぜだ。
「あんたSランクだろう?」
「あ……」
そういう事か! 失敗した。まさかまた外套でランクを判別されるとは思わなかったよ。今さっき、ギルドに所属した成りたてだって言っても通じないだろうか。
「ほら彼もそう言っているわ。行くわよ」
「ちょ、ツティーちゃん!」
ツティーちゃんが公園に向かって走り出したので仕方なく僕も駆け出した。声を掛けた男も一緒に向かう。
勇者の像がある公園には、先程はなかった大きな樹が生えていた。いやあれがモンスターなのかも。だって、枝が動いている。あれは風になびいているって感じではない。
「何あれ……」
「たぶん、ドレンドよ……」
「ドレンド? トレントではなくて?」
トレントなら聞いた事がある。それこそ樹の精霊とかそういうのだったかと。
「彼らと一緒にしたらかわいそうだわ。でもそうね、元はそうだった。それを私達はそう呼んでいるわ」
「元は? もしかしてモンスター化したとかいう事?」
ツティーちゃんが、険しい顔つきで頷く。
もしかして、邪気でモンスター化というのもあるのか。
「彼らは、人間によって作り上げられたモンスターよ!」
「なんだって!」
どういう事? モンスターが増えたら何とかしてほしいと願って勇者を遣わしてもらいながら、モンスターを作り出しているっていうの?
「トレントも私達と同じく森に住むモノなの。しかも浄化もできるのよ」
「え……それが真逆になっている」
こくんとツティーちゃんが頷く。
「人間は、自分たちが助かる為に彼らを狩った」
「え? もしかしてモンスターと間違って?」
「いいえ。自分たちの周りに置いて浄化する為よ」
なるほど。浄化も出来ると気づいたって事か。
「人間は、私利私欲の為に彼らを改良しようとした。ビジネスっていうの? その為に森から連れ出され、森から彼らの姿が消えた。そうしたらどんどんモンスターが増えたのよ」
バカなのか人間は! というか、その人間達の願いを叶えてやる神様も何を考えているのやら。
「しかも、その過程でモンスターを作り上げてしまった。一部の人間がそれを悪用していると聞いたけど本当だったのね」
「で、突然現れたのはなぜ?」
「そのモンスターは、普通の植木にしか見えない。それを土に植えると地中のアニマを吸い取り、ドレンドに変貌する。そして、邪気をバラまく。実際に見たのは初めてよ」
「なんて事を……って、知らないで植えちゃったの?」
「さあどうでしょうね……早く倒してね。でないと私もどうなるか」
そうだった! 邪気の中に居たら正気を無くすのだった。って、冒険者達が向かって行っているけど、振り払われている。結構強い。
「くそう、さすが上位モンスターだ」
「上位モンスター!? なんてもの作り出したんだよ」
「おい、君。ぼーっとしてないで加勢しろ」
ただ突っ立いる僕に振り向いた冒険者が言った。
仕方がないから剣を抜いたけど、一度も戦闘を経験した事がない僕に何ができると言うのだろう。大ピンチ!
0
あなたにおすすめの小説
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる