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確信と決心
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憲一は、一か月ぶりにパソコンを立ち上げていた。
今日一日、細谷が座っていたない席を見つめ、ずっと考えていた。
火事は事件として扱われている。つまり犯人がいる。だが犯人はまだ捕まっていない。今までは、自分が犯人だったら? 共犯だったら? と怖くて火事から逃げていた。
だが細谷は、その犯人が捕まらなかったら気持ちのやり場もない。火事で苦しんでいるのは、自分だけではない。
まずは、亡くなったのは細谷の弟か確かめてみる事にした。
自分の事を伏せていても、亡くなった人物は公開されているはず。記事を探し出し名前を確認する。
そこにあった名前は――細谷愛さん(15)――そうあった!
憲一の手は、ガタガタと震えていた。
細谷の弟が火事で亡くなった人だった! ――そうかもしれないとは思っていたものの事実を目にし、恐怖心が彼の心を覆う。
もう逃げられない! 現実から目をそらしたらダメだ! ――そう奮い立たせ、記憶を取り戻す決心を憲一はするのだった。
今度の休日に火事があった旅館に行ってみる事にする。
○ ○
次の日は、細谷は学校に来た。
昨日は病院に行って、安静にしていたらしい。
そして放課後、日誌を持って職員室に向かった。今日は憲一が担当だった。それに細谷も同行していた。
「はい。日誌です」
「あぁ、ご苦労」
「それ……」
三好が見ていた分厚いカタログをジッと見つめ、細谷が呟く。
憲一が覗き込むとそれは、時計のカタログだった。イチズンの腕時計がずらりと並んでいる。
「これ! ねえ、先生って時計好きなの?」
何故か細谷が食いついた。
「え? あぁ。まあ学校にはブランド物はつけてこれないが持っているよ。これなんか新作で、三月に出たばかりなんだ。今の一番のお気に入り。って、これ見ていたの内緒にすれよ」
そう三好はおどけて見せる。
「これも?」
三好が指差した近くの時計を細谷は指差す。
「そう。これの最低ランクのだけど……。時計に興味あるのか?」
「え? いや、見た事があるだけ……」
細谷が自分から何かに食いつく姿を始めて見た憲一は、ぽかんとして見ていた。
「あ……。すみません」
はっとしたように、細谷は軽く頭を下げる。
「驚きだ。細谷って時計に興味あったんだな」
細谷は、学校には時計はしてきていなかった。驚いた憲一はそう聞いた。
「いやそうじゃなくて、家に時計があって……。ずっと気になっていたから」
もしかして形見? ――ふとそう思った。だからあんなに必死になったんじゃないだろうかと。
「土曜でも、一緒に街の時計屋とかに行ってみる?」
何となく提案すると、細谷はこくんと頷いた。よっぽど時計の事を知りたいようだった。
二人はお辞儀をして、職員室を出た。
土曜日に火事の話をしよう。――自分が火事の関係者だと打ち明けようと思った。
記憶はいつ戻るかわからない。話せば関係が壊れるかもしれない。敵として敵視されるかもしれない。でも伝えるべきだと憲一は思ったのである。
今日一日、細谷が座っていたない席を見つめ、ずっと考えていた。
火事は事件として扱われている。つまり犯人がいる。だが犯人はまだ捕まっていない。今までは、自分が犯人だったら? 共犯だったら? と怖くて火事から逃げていた。
だが細谷は、その犯人が捕まらなかったら気持ちのやり場もない。火事で苦しんでいるのは、自分だけではない。
まずは、亡くなったのは細谷の弟か確かめてみる事にした。
自分の事を伏せていても、亡くなった人物は公開されているはず。記事を探し出し名前を確認する。
そこにあった名前は――細谷愛さん(15)――そうあった!
憲一の手は、ガタガタと震えていた。
細谷の弟が火事で亡くなった人だった! ――そうかもしれないとは思っていたものの事実を目にし、恐怖心が彼の心を覆う。
もう逃げられない! 現実から目をそらしたらダメだ! ――そう奮い立たせ、記憶を取り戻す決心を憲一はするのだった。
今度の休日に火事があった旅館に行ってみる事にする。
○ ○
次の日は、細谷は学校に来た。
昨日は病院に行って、安静にしていたらしい。
そして放課後、日誌を持って職員室に向かった。今日は憲一が担当だった。それに細谷も同行していた。
「はい。日誌です」
「あぁ、ご苦労」
「それ……」
三好が見ていた分厚いカタログをジッと見つめ、細谷が呟く。
憲一が覗き込むとそれは、時計のカタログだった。イチズンの腕時計がずらりと並んでいる。
「これ! ねえ、先生って時計好きなの?」
何故か細谷が食いついた。
「え? あぁ。まあ学校にはブランド物はつけてこれないが持っているよ。これなんか新作で、三月に出たばかりなんだ。今の一番のお気に入り。って、これ見ていたの内緒にすれよ」
そう三好はおどけて見せる。
「これも?」
三好が指差した近くの時計を細谷は指差す。
「そう。これの最低ランクのだけど……。時計に興味あるのか?」
「え? いや、見た事があるだけ……」
細谷が自分から何かに食いつく姿を始めて見た憲一は、ぽかんとして見ていた。
「あ……。すみません」
はっとしたように、細谷は軽く頭を下げる。
「驚きだ。細谷って時計に興味あったんだな」
細谷は、学校には時計はしてきていなかった。驚いた憲一はそう聞いた。
「いやそうじゃなくて、家に時計があって……。ずっと気になっていたから」
もしかして形見? ――ふとそう思った。だからあんなに必死になったんじゃないだろうかと。
「土曜でも、一緒に街の時計屋とかに行ってみる?」
何となく提案すると、細谷はこくんと頷いた。よっぽど時計の事を知りたいようだった。
二人はお辞儀をして、職員室を出た。
土曜日に火事の話をしよう。――自分が火事の関係者だと打ち明けようと思った。
記憶はいつ戻るかわからない。話せば関係が壊れるかもしれない。敵として敵視されるかもしれない。でも伝えるべきだと憲一は思ったのである。
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