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衝撃の告白

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 「な、何の冗談だよ……」

 やっと憲一けんいちはそう言うも、細谷ほそたには首を横に振った。

 「名前すら覚えていない。亡くなったメグムの事も何も思い出せない。だから仏壇の写真を見る度、変な気分になるんだ」

 「………」

 憲一は衝撃的だった! 一日どころか全ての記憶を失っていた!
 こんな嘘つかないだろう。多分、何を聞いてもわからないと言いたいのだろうと思った。

 「あ、違うんだ。別に火事の話を聞き出そうとしたんじゃなくて……」

 「違うの?」

 不思議そうな顔で細谷は憲一を見た。
 じゃ何故、あんな場所に行ったのだという、顔つきだった。

 「は、犯人を捜そうかと思って……」

 「え?」

 細谷は憲一の言葉に凄く驚いた顔をする。
 嘘は言っていない。記憶が戻れば、憲一は犯人がわかると思っていたからだ。

 「それって、腕時計と関係あるの?」

 少し考えを巡らせ、細谷は聞いて来た。それに静かに憲一は頷いた。
 細谷は、スクッと立ち上がり、机の上にあった箱を手に席に戻って来た。

 「これが時計。これ旅館に持って行っていたみたいなんだ」

 「え! それ見せてもらってもいい?」

 細谷は頷くと、箱を開けた。そこには細谷がカタログで指を差していた物と同じ時計があった。
 だが残念な事に、これを見ても何も思い出さない。

 「手に取って見てもいいよ」

 「うん……」

 憲一は恐る恐る時計を手に取った。右手に持ち時計をマジマジと見つめる。そして左手に持ち替えた。

 え? 何だこの感覚! ――左手に持った瞬間。何か記憶が過った気がする。
 確かに手にした事がある感覚! 気が付くと憲一は震えていた!

 「え? ちょっと大丈夫」

 憲一は、無言で腕時計を細谷に突き返していた。それを受け取り細谷は箱にしまう。
 怖い! ――憲一は恐怖におびえていた。
 頭の奥が痛い! 背中も痛い!

 「え? あ、どうしよう……」

 細谷は、憲一の行動に驚き慌てふためく。
 憲一は前かがみになり、ブルブルと震えていた。
 声を返したくても声が出ない! まるで夢と一緒だった!

 「救急車!!」

 細谷のその言葉まで聞いて、憲一は意識を失った。
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