【完結】煙にまかれた記憶

すみ 小桜(sumitan)

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仏壇の前の約束

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 細谷ほそたにも目を覚まし、二人共今日はこのまま泊まる事になった。
 消灯の時間になり部屋の電気が消された。部屋は窓から差し込む微かな明かりだけで暗かった。

 どうしよう。いつ細谷に言おう。――憲一けんいちは仏壇の前で約束した通り、一番最初に細谷に話すつもりだった。だがいざとなると尻込みしてしまう。相手は記憶がないのだ。言わない方がいいのではないか。そう何だかんだと理由を付けて黙って置こうかと思うも、ずっと言わずにいるのも苦しい。

 「ひっく……くすん」

 うん? 泣いてる? ――隣からすすり泣く声が聞こえて来た。

 憲一は体を起こし、ライトを付けた。

 「大丈夫か? どこか痛むのか?」

 そっと声を掛けるも返事は帰ってこない。
 そう言えば叫んで走り去ったんだっけ? フラッシュバックして、混乱したとか? ――憲一は、もしかしてと思った。細谷も記憶を取り戻したのではないかと。
 だったらちゃんと話さないと! ――憲一は、意を決してベットから降りた。

 「細谷。大丈夫か? カーテンを開けるぞ」

 シャー。
 憲一は答えを待たずに、間にあったカーテンを開けた。
 細谷は、憲一に背を向ける形で丸まって泣いている。
 憲一は、大きく息を吸った。

 「あのさ。もしかして記憶が戻った?」

 憲一がそう問いかけると、細谷はビクッと体を震わせる。
 やっぱり戻ったぽい。兄弟が死んだと実感したんだろうな。――それでも話さなくてはと、細谷の前に立つ。

 「あのさ……」

 「僕が殺したんだ……」

 「え?」

 「僕が!」

 「ちょっと待て! 落ち着けって!」

 憲一が話し出す前に、細谷は驚く言葉を発した!
 記憶が戻ったみたいだけど、混乱している? ――そう思い憲一は、違うと呟く。

 「違うから……」

 「違わない!」

 「違うから! だって火事が起きた原因は俺にあるから!」

 「え……」

 憲一の言葉に驚いて、上半身を少し起こし細谷は振り向いた。

 「な、何言ってるの?」

 「ごめん。今更だけど、俺は重要参考人なんだ……」

 「ど、どういう事?」

 細谷は、腫らした目でジッと憲一を見上げていた。
 憲一はごくりと喉を鳴らし唾を飲み込む。

 「お、俺が現場に一番近かったんだ。でも、俺も記憶をなくしていて……。って言ってもその日の記憶だけな」

 「そんな都合のいい……。どちらにしても僕のせいだし……」

 憲一が、自分が犯人だと言ったのにも関わらず、細谷は自分のせいだと言い張った。

 「そうだな。自分でも笑っちゃうくらい都合よく記憶が消し飛んでいた。ずっと自分は関係ありませんようにと思っていたけど……。よく考えれば、記憶を消したい事があったから消えていたんだよな」

 「つ、都合がいいなんて言ってゴメン……」

 「なんで細谷が謝るんだよ! 謝るなら俺だろ? その……話を聞いてくれないか? 仏壇の前で約束したんだ。思い出したら細谷に一番に話すって……」

 細谷は頷く。ベットの上に座るもそのまま俯いた。
 憲一は、横に垂らした両手のこぶしをギュッと握る。
 覚悟は決めたはずなのに、中々声が出ない。

 「お、俺だけ先に部屋に行って、待っていたんだけど暇でさ……」

 やっと出た言葉は、震えていた。
 憲一は、ぽつりぽつりと、細谷に話始める。それを細谷は、黙って聞いていた――。
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