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憲一の記憶
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憲一は、火事があったその日は、母親と一緒に宿にチェックINをした。それは二時頃で四時には来るからと、母親は仕事に戻って行った。
父親も仕事を七時には終わらせて夕飯を食べる事になっていた。それまでの間暇だった。
憲一が泊まっていた階は四階で、奥にある階段を上った右手は立ち入り禁止になっていた。エレベーターは、フロントの近くにありそれに乗って四階に上がり、降りてすぐ向かい側の部屋に泊まっていた。
暇だった憲一は、外に出ても何もない事は来る時に見てわかっていたので、建物内を見学する事にした。
売店をブラブラしたりしたが、そんなに大きくない旅館だ。すぐに見終わってしまった。
そこで、四階の立入禁止の立札の奥へと踏み入った。
廊下を進めば正面に非常口があり、もう一つ部屋があっただけだった。
その部屋は、少し扉が開いていた。そっと覗けば、工事道具などがもうそこに置いてあった。中は埃っぽい。
この旅館は、母親の知り合いの旅館で明日でのれんを下ろすと聞いて、最後に泊まりたいと無理を言ったに違いないと憲一は思っていた。
母親が「部屋がなくて四階だけどいいわよね?」と父親に言っていたのを聞いていた。
憲一は、ついどんな物があるか見たくなり、パタンと扉を閉め部屋の中を見て回る。知らない道具から脚立まで置いてあった。触れはしないが、近づいてジッと見たりして楽しむ。
あっちに行ったりこっちに行ったり、気が付けばそれなりに時間が経っていた。部屋を出ようと扉に向かうと、憲一は盛大にこけた。
せき込む程埃が舞った。
「いって~。うん?」
膝を付き、体の誇りを払いながら立ち上がろうとすると、何かがきらりと光った。四つん這いになり見れば、腕時計だ。黒に白い文字。結構高価そうな時計だ。
なぜこんなところにと左手を伸ばし時計を見れば、動いている。
「あ、やば」
チリっと痛いなと思えば、親指が切れて血が出ていた。その血がベルトに付着している。慌てて服にこすりつけ、血を拭き取る。
血は、綺麗に落ちた。
安堵して立ち上がりながら右手を扉のノブに伸ばす。
憲一は、フロントに時計を届けるつもりだった。
まあ部屋に入ったのは叱られるかもしれないが仕方がない。勝手にはいったのだから。
だが憲一は、届ける事が出来なかった――。
バン!
憲一は、その音と衝撃で気を失った。
扉を開けた途端、憲一は吹き飛ばされていた!
ふと気が付けば、火災報知器が鳴っていて、辺りは真っ白だった。何が起こったのがわからず、取りあえず立ち上がろうとするもあちこち痛くて動けない。
俺、死ぬのか……? ――ここには、人は来ない。そう思ったからだ。
だが意識が遠のく直前、人の気配がした。
あぁ、助けが来た。――憲一は助かったと思ったが、何か声が聞こえるとその気配は遠ざかって行く。
待ってくれ、助けてくれ! ――そう叫びたいが発する事も出来ず、憲一は意識を手放した――。
○ ○
気づけばベットの上で、体中痛いが特に背中が痛かった。
憲一は、ここが病院だろうという事はわかったが、何故自分がここにいるかがわからない。
寝ている間に何があったのだ? ――そう思っていた。
病院の先生と両親の話を聞いて、宿で火事にあった事がわかった。だが憲一の記憶は、その日の前日までしかない。
寝て覚めたら病院だったのだ!
訳がわからなく、怖かった!
しかも警察が来て、色々聞いて行ったがどうも記憶がない事を疑っている様子だ。
火事は、爆発して起こった様な事を言い、憲一が現場の一番近くにいたのだった。
自分が関わっているかもしれない。そう思うと、怖くて仕方がなかった。
入院中は、母親が毎日傍に居てくれた。
仕事は? と聞けば、元々今の職場は辞めるつもりだったから早く退職したと言う。気にしなくていいと言われても自分のせいだと思わずにはいられない。
そして、記憶が戻らないまま退院したのである。
父親も仕事を七時には終わらせて夕飯を食べる事になっていた。それまでの間暇だった。
憲一が泊まっていた階は四階で、奥にある階段を上った右手は立ち入り禁止になっていた。エレベーターは、フロントの近くにありそれに乗って四階に上がり、降りてすぐ向かい側の部屋に泊まっていた。
暇だった憲一は、外に出ても何もない事は来る時に見てわかっていたので、建物内を見学する事にした。
売店をブラブラしたりしたが、そんなに大きくない旅館だ。すぐに見終わってしまった。
そこで、四階の立入禁止の立札の奥へと踏み入った。
廊下を進めば正面に非常口があり、もう一つ部屋があっただけだった。
その部屋は、少し扉が開いていた。そっと覗けば、工事道具などがもうそこに置いてあった。中は埃っぽい。
この旅館は、母親の知り合いの旅館で明日でのれんを下ろすと聞いて、最後に泊まりたいと無理を言ったに違いないと憲一は思っていた。
母親が「部屋がなくて四階だけどいいわよね?」と父親に言っていたのを聞いていた。
憲一は、ついどんな物があるか見たくなり、パタンと扉を閉め部屋の中を見て回る。知らない道具から脚立まで置いてあった。触れはしないが、近づいてジッと見たりして楽しむ。
あっちに行ったりこっちに行ったり、気が付けばそれなりに時間が経っていた。部屋を出ようと扉に向かうと、憲一は盛大にこけた。
せき込む程埃が舞った。
「いって~。うん?」
膝を付き、体の誇りを払いながら立ち上がろうとすると、何かがきらりと光った。四つん這いになり見れば、腕時計だ。黒に白い文字。結構高価そうな時計だ。
なぜこんなところにと左手を伸ばし時計を見れば、動いている。
「あ、やば」
チリっと痛いなと思えば、親指が切れて血が出ていた。その血がベルトに付着している。慌てて服にこすりつけ、血を拭き取る。
血は、綺麗に落ちた。
安堵して立ち上がりながら右手を扉のノブに伸ばす。
憲一は、フロントに時計を届けるつもりだった。
まあ部屋に入ったのは叱られるかもしれないが仕方がない。勝手にはいったのだから。
だが憲一は、届ける事が出来なかった――。
バン!
憲一は、その音と衝撃で気を失った。
扉を開けた途端、憲一は吹き飛ばされていた!
ふと気が付けば、火災報知器が鳴っていて、辺りは真っ白だった。何が起こったのがわからず、取りあえず立ち上がろうとするもあちこち痛くて動けない。
俺、死ぬのか……? ――ここには、人は来ない。そう思ったからだ。
だが意識が遠のく直前、人の気配がした。
あぁ、助けが来た。――憲一は助かったと思ったが、何か声が聞こえるとその気配は遠ざかって行く。
待ってくれ、助けてくれ! ――そう叫びたいが発する事も出来ず、憲一は意識を手放した――。
○ ○
気づけばベットの上で、体中痛いが特に背中が痛かった。
憲一は、ここが病院だろうという事はわかったが、何故自分がここにいるかがわからない。
寝ている間に何があったのだ? ――そう思っていた。
病院の先生と両親の話を聞いて、宿で火事にあった事がわかった。だが憲一の記憶は、その日の前日までしかない。
寝て覚めたら病院だったのだ!
訳がわからなく、怖かった!
しかも警察が来て、色々聞いて行ったがどうも記憶がない事を疑っている様子だ。
火事は、爆発して起こった様な事を言い、憲一が現場の一番近くにいたのだった。
自分が関わっているかもしれない。そう思うと、怖くて仕方がなかった。
入院中は、母親が毎日傍に居てくれた。
仕事は? と聞けば、元々今の職場は辞めるつもりだったから早く退職したと言う。気にしなくていいと言われても自分のせいだと思わずにはいられない。
そして、記憶が戻らないまま退院したのである。
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