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二人の痛み

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 「ごめん。謝ってすむ問題じゃないけど、警察に話して……」

 「それでも僕がめぐみを殺したんだ……」

 「え?」

 憲一けんいちは驚いた。
 火事で亡くなった双子の兄弟のかたきになるはずの内容だ。それでも細谷ほそたには、自分だと言い張った。

 「何、言ってんの? 俺が、火事を引き起こして……」

 「だから火事で死んだけど、本当は火事で死なずにすんだんだ! 僕のせいで……あの、腕時計のせいで!」

 「腕時計?」

 そう言えば、妙に腕時計を気にしていたっけ? ――ふと、担任の三好のカタログに食いついた時の事を憲一は思い出す。

 「あんな物を取りに戻らなければ、恵は……」

 「ちょっと待て! 恵って、お前だろう? 亡くなったのはメグムじゃなかったか? 前にそう言ったよな」

 憲一がそう聞くと、ぶんぶんと細谷は顔を横に振った。

 「僕が、めぐむで、亡くなったのが恵だったんだ……」

 「いや、でも……」

 憲一は、にわかに信じ難かった。
 もし、細谷の言った通りなら親が二人を間違えた事になる。それか、わざとそうしたかもしれない。親は、間違わないだろう。

 「本当は、恵に生きて欲しかったんだ! そうじゃなかったら……」

 「それは違うんじゃないのか? 何かわけがあるんだ! ほら前に寝ている時に、メグムごめんねって言っていたって言っていただろう? だから何か事情が……」

 「違う! 僕が……僕が生きていちゃいけなかったんだ!」

 「それを言うなら俺だろう? 君の兄弟は俺の身代わりになったようなもんだ。俺は死んでいてもおかしくなかったんだから……。本当にごめん。責めるなら俺を責めてくれ!」

 憲一は、泣きながら床に座り頭を下げた。土下座だ。

 「だから真倉まくらのせいじゃないって!」

 「火事さえ起きなかったら死ななかったんだから俺のせいだ!」

 「なんでそんなに頑固なのさ! バカ!!」

 細谷は、憲一の隣に膝たちすると、ぽかぽかと叩いた。
 口で自分が殺したと言ったが、本音を言えば憲一が言ったように『火事さえ起きなければ死ななかった』そう思ってもいた!
 最後には、細谷は土下座をしたままの憲一に覆いかぶさるように泣く。二人は、暫く泣いていた――。


 ○ ○


 細谷は、体を起こした。
 そして、ハッとしたように言う。

 「ごめん! 背中痛いんだったよね!?」

 「こんなの……お前の痛みに比べたら……」

 「大丈夫?」

 「あぁ……」

 憲一も何とか体を起こし、二人はぺたんと床に座っていた。

 「本当はさ。僕達出会う事がなかったんだ……」

 「え? それって俺が死んでたらって事か?」

 憲一が聞くも違うと、細谷は首を横に振る。

 「僕は、違う学校に通う事になっていたから。愛のままだったら出会えなかったって事……」

 細谷はそう言って涙を拭った――。
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