【完結】煙にまかれた記憶

すみ 小桜(sumitan)

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三好の余裕

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 「では、お聞きしますが、腕時計を紛失したのに気が付いたのはいつですか?」

 「……予約を入れた後ですね」

 山本の質問に、少し間があってから答えが返って来た。
 だがその答えに、憲一けんいち細谷ほそたには顔を見合わせる。
 三好の回答からすると、泊まる前に落としたと言っている事になるからだ。

 「実は、火事の前の週にも一泊しているんです。結構よかったので、予約の電話を入れようとしたらもう旅館を閉めると言うので、次の週にも予約を入れたんです」

 「なるほど。でも何故直ぐに掛け直して聞かなかったのですか?」

 三好は、火事の前の週にも宿泊していてその時に落としたと言っていた。彼の話し方だと、予約を入れた後に気が付くも、腕時計が落ちていたかの確認をしていない事になる。

 「実は、四階に上がったんですよ。勿論部屋には入っていませんよ。防犯カメラがあるなら確認してください。教師ですし、勝手に四階に上がったって言いづらかったんです。なので、来週まで待ったんです」

 「では……」

 三好の言葉で、山本は署に戻った平野に連絡を取った。

 「あの腕時計って先生のお気に入りなんだよね? だったら普通直ぐに探さない?」

 「細谷の言う通りだ! 火事のあった日だってすぐに探してないだろう?」

 「さっき、言った通りだ! 落とし物に届いていないようだったので、四階にまだあると思っていた」

 しつこいと言わんばかりに三好は答える。

 「映っていた? それ、持ってこれそうか? じゃお願いする」

 山本は電話を切ると、顔を上げた。

 「あなたの言う通り、前の週に四階に上がる姿が映っていたそうです」

 嘘ではなかった。
 じゃ、先週から火事になるような仕掛けをしていた? ――三好が言う通り、四階に行っていた。火事の日ではなく、その前の週に仕掛けをしてその時に腕時計を落とした。そして、それに気が付いた三好は、次の週も泊まる手配をした。
 筋は通る気がするが、下手したら証拠となる腕時計だ。何故、それをチェックインしてすぐに、取りに行かなかったかという疑問は残る。

 「嘘は言っていませんから」

 三好は、余裕そうに山本に返した。

 「ですが、大切な腕時計なのですよね? 火事の現場に取りに行くぐらいなのですから。何故、すぐに取りに行かなかったのです?」

 「忘れ物をして、取りに戻っていたんです」

 「何を?」

 「そこまで話さなくてはいけませんか? 映像を確認すれば本当かどうかわかるじゃないですか!」

 三好は、ムッとして答えた。
 これはもう、映像を見て確認するしかないと、山本達は思った。
 きっと、三好が戻る姿は映っているのだろう。だが何か手がかりも映っているかもしれない! それに三人は賭けた。
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