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観念した三好

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 「はぁ……。なんで、部屋になんか入った? 本当ならあの日は、爆発なんか起きなかったはずなんだ!」

 観念したのか、三好は叫んだ!

 「何だよそれ! 何で俺が悪くなるんだよ!」

 「お前が! お前が……あの日に爆発させたから何もかも狂った!」

 「狂ったって……狂ったのは、俺達の人生だ! 俺は、細谷ほそたにの家族を殺してしまった! あんたのせいで……」

 憲一けんいちは、悔しくて涙が出て来た。
 犯人がわかっても苦しみは消えない!

 「何でそんな事を? あの旅館ってやめるって聞いていたけど。意味ないんじゃ……」

 細谷が聞く。目的がわからなかった。
 三好は、項垂れている。

 「後は、署で聞きましょう」

 「さあ……」

 刑事の平野に促され三好は歩き始める。

 「……巻き込んですまなかった。でも、本当に爆発するなんて思っていなかった。気持ちのやり場がなかった……」

 そう三好は言って、平野と一緒に出て行った。

 「二人共ご協力ありがとう」

 「あ、あの俺……」

 「君も被害者だ。爆弾だと知らずに届いた荷物を開けて爆発させても、犯人にはならないだろう?」

 山本の言葉に、憲一は頷いた。

 「あの……」

 声を掛け憲一の母親が部屋に入って来た。その後ろには、細谷の母親と父親もいた。

 「どうぞ。私はこれで署に戻ります。ご協力ありがとうございました」

 山本は、礼を言って部屋を出て行った。
 最初から、三好をおびき寄せ口を割らせる為に、協力頂く事を二人の両親に許可をもらっていたのだ。
 何せ、証拠が一つもなかった。動機もわからない。
 まず腕時計を見てからだとなったのだった。

 「ごめんね。めぐむ。あなたを騙すつもりなんてなかったの」

 細谷の母親言うと、細谷は首を横に振った。

 「まさかお前が、記憶をなくしているなんて思わなくてな……」

 細谷の父親もボソッと言った。

 「聞いてほしいの……」

 細谷の両親は、愛をめぐみとしてしまった経緯を語り始めた――。
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