【完結】偽り神官様は恋をする

すみ 小桜(sumitan)

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第13話 神官への思い

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 バタン!

 マカリーの部屋から戻って来たルナードは、静かにドアを閉めたつもりだったが、思ったより力が入っていたようで音を立て閉まった。

 私の幸せなんて、生まれた時からないだろう――。

 ルナードは、唇をかみしめる。
 神官になったのだって、マカリーに言われたからだ。初めは、神なんてと思っていた。しかしマカリーは言ったのだ。

 『我々が敬っている神は、精霊の王様だ』

 それを聞き、精霊が大好きなルナードは、神官になるのを決めた。なので、神が存在するとは思ってはいない。だが、精霊の王様は敬っている。
 憎い力だが同時に、自分を守ってくれる力でもあった。

 本当に小さい時は、近くの子供達とも遊んだ。だが物心つく頃には、神官としての修業が始まり、そして自分が女で男として生きている事を悟ったのだ。ただし漠然として。

 事の重大さがわかると、両親も祖父であるマカリーも呪った。
 自分が魔女で、知られてはいけない存在。そうしたらもう精霊の王様にすがるしかなかった。

 精霊が自分を守ってくれるように祈り日々過ごす。
 神官見習いになると、街のみんなは自分を神官様と慕ってくれた。それが、自分の価値なんだと思った。

 神官で居れば生きていける。早く本当の神官になりたい!
 そういう思いでやっと神官になれたのに――!

 ダン!

 気づけばルナードは、壁を思いっきりた叩いていた。

 怒りで人を傷つけてしまった。
 相手を脅すつもりでもあったが、ディアルディを物扱いしたのを許せなかった。元々ルナードは、彼を認めてはいなかった。こんな奴がなぜ、神官になれたと。

 そして、自分に嫌がらせをするつもりで、ディアルディに手を出そうとした! ディアルディを自分を「傷つける道具」にしようとした!
 それをわざと見せつけられた時、沸点に達したのだ。自分がこんなに怒りの沸点が低いとは思わなかった。

 自業自得――。

 マイトラの言う通り、まだまだだなとルナードは、自分が情けなくなった。
 壁に背中を預けると、ズルズルと座り込む。

 「うううう……」

 泣いても仕方がないと思うも、涙が止まらない。
 悔しくてたまらない。
 明日からまた、神官見習いに戻るのだ。一からやり直し。

 別に神官見習いの仕事は嫌ではない。朝早く行って、掃除から始めるだけだ。
 ただただ、自分が情けない。

 自分の感情をコントロールしないと、また人を傷つける。
 ディアルディでさえ、傷つけるかもしれない。いや、自分はディアルディを守る立場だ。
 仮初めの婚約者から仮初めの夫婦になったとしても――。
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