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第12話 マカリーの想い

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 マカリーとルナードは、自宅に帰りそのままマカリーの部屋へと向かった。

 「何を考えているんだ、まったく。あそこまでしなくとも何とかなっただろう?」

 「彼を排除したかったもので」

 「神官をやめさせたかったという事か?」

 「いえ。彼女から遠ざけたかったという意味です。注意したぐらいでは、ダメだったようなので。しかし、彼には効き目がありませんでした。ご迷惑をお掛けし、申し訳ありません」

 深々とここでもルナードは頭を下げた。

 「これで、結婚の儀が遠のいたな」

 「結婚の儀? それまで行うつもりだったのですか?」

 「逆にしなければ、不自然だろう」

 ごもっとだ。神託が下った相手という事になっていれば尚更だ。それに、神託などしばらくなかった事。

 「一体何をお考えですか? 私にはあなたの考えがさっぱりわかりません」

 「これでもお前の幸せを考えているんだよ」

 「幸せ? 魔女の私にですか? だったら神官を全うさせて欲しかったですね! 私は生涯、結婚せずに神官に骨を沈める覚悟で、務め上げるつもりでした! それなのに! どうして! どこに幸せがあると言うのですか!!」

 あまり自分の思っている事を口にしないルナードだが、今回ばかりは留めておく事ができなかった。
 ディアルディに、自分の正体を知られないようにびくびくして過ごす日々が、ずっと続くのだ。そして知られた時自分は、ディアルディをどうするかわからない。そういう恐怖もあった。

 マカリーも、ルナードが神官として立派に誇り持ってくれた事は嬉しかった。しかしそれは、男性の幸せだ。マカリーは、ルナードが女性として幸せになって欲しかった。
 自分でルナードを神官にしておきながら随分と勝手だと、自分でも思っていた。だが、特別な力を持つ神官の孫が神官でなければまた、不自然だったのだ。

 マカリーにとって、これは賭けだった。いやこの方法しか思いつかなかった。せめて、ルナードに恋というものを体験して欲しかったのだ。
 ルナードは勘がいい。きっと、ディアルディが男性だときづくだろう。それに、彼になら――ディアルディにならルナードを任せられるとも思っていた。

 ただこればかりは、本人次第。
 マカリーは、偽物が本物になる事を願っていたのだった。

□□□

 ディアルディは、二人が帰ってきてから落ち着かなかった。
 帰りが遅かった上に、そのままマカリーの部屋へ向かったのだ。ダンザルが何か言ってきたに違いない。そう思うもどうしていいかわからなかった。

 パタン。

 ルナードが部屋へ戻って来た。

 ドン!

 壁を叩く音が聞こえた。

 荒れているな。マカリーさんに絞られたのかもしれない。
 ちゃんとマカリーさんに言った方がいいかも。

 ディアルディは、マカリーの部屋へ向かった。ルナードは悪くないと伝えに向かったのだ。それで追い出されたのなら仕方がない。そう思って、マカリーの部屋のドアをノックした――。
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