英雄になんてなりたくないから!

すみ 小桜(sumitan)

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小さな宝箱の価値 2

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 「あの欲しいのなら差し上げますけど……」
 「いや、そうではない。これに何が入っていた?」
 「これです」

 僕は腰にくくり付けていた無限革袋を指差した。

 「それか。鑑定はしたか?」
 「え? なぜですか? もしかして、必ず鑑定して使用するものなんですか?」
 「してないようだな。普通はするだろう。まあこういう物ならそのまま使うかもしれないが。ただ、それはレア物かもしれない」

 う、さすがガーナラルド。鋭い。

 「宝箱の特徴は知っているか?」
 「え? あ、はい。地下に行くほどレアなのを手に入れる確率があるんですよね? あと、毎日増える」
 「そうだが、それだけではない。宝箱の大きさにもよってもレア度の確率は変わる。人が入れる程の大きな宝箱なら君が持っている剣ぐらいの価値しかない装備品が入っている事が多いが逆に、この様に宝石箱程の大きさならレアなのはほぼ確定だろう」

 え? そんな事、レメゼールさんは言っていなかったけど!?

 「それって、ダンジョンハンターならみんなが知っている常識ですか?」
 「当たり前だ。知らない者はいないだろう。君ぐらいだ」
 「………」

 それじゃレメゼールさんは、レアだとわかっていて鑑定させた。しかも僕が嘘を言ったのもわかっていて、知らないふりをしたんだ。
 それでも一生懸命指導してくれた。

 「これ、無限革袋っていうレアです。本当は自分で鑑定して、嘘までついて……。でもそれって、バレバレだった」
 「自分で鑑定した!?」

 俯いて正直に言うと、無限革袋に驚くのではなく、自分で鑑定した事に驚かれた。

 「鑑定も覚えたのか?」
 「え? あ、はい。でも、ダンジョンから出たら消えちゃっいましたけどね」
 「……それが、レアだと言う事は誰にも言うなよ」
 「え?」
 「無限という名がついているぐらいだ。無限に入る袋なんだろうからな。奪われるぞ」
 「えぇ!? それって、ダンジョンハンターにですか?」
 「そうだ。ダンジョンに入ったら密室も同然だ。私と一緒だから殺されはしないだろうが、どさくさに紛れて奪うだろうな。奪われれば、君のだという証拠がないのだから」
 「証拠がないって……」
 「ダンジョンハンターも普通の人間だ。君が思った様に、他の者も死にたくないと思うのも普通だ。そして、ダンジョンで生き残る為に必要なのは、より良い装備だ。その中で一番欲しい物が、そういう物を入れれる装備品だ」

 え? 武器ではなく袋が欲しいの?

 「いいか。どんな凄い武器などを手にしても、それだけでダンジョンに乗り込んでは行けないだろう? 食料や傷薬。ずっと奥に潜るなら休憩用のテントなど身を守る装備品を手に入れる為に、持って進まなくてはいけない。どんなに大変な事か」
 「そっか。そういう者達から見ると、これがあれば凄くラクして進めるって事か」

 まあ入れられるのは、食料と薬ぐらいだろうけど。手ぶらまでとは行かないけど軽くなってラクにはなる。それに食料は腐らない。確かにほしいかも。
 って、そういう話を手に入れた時に聞きたかった……。

 あ、僕、嘘ついたから普通の袋って事になってたんだった。

 「普通は、君の様な奥に行けない者が持っているモノでないから身に付けていたとしても、誰もレアだとは思わないだろう」

 よかった。
 レアを持って歩くのも命がけだなんて、思わなかったよ。
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