英雄になんてなりたくないから!

すみ 小桜(sumitan)

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僕に足りないモノ 2

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 驚いたのは僕だけではなく、ガーナラルドもだった。慌てて近づいて来る。
 って、コボルトも近づいて来て、ナイフで僕を切りつけようとした。

 「うわぁ!」

 目を瞑って屈んだが、一向に攻撃がこない。不思議に思って目を開けると、目の前にガーナラルドが立っていた。
 唖然としていると、倒して魔石になったそれを拾う。

 「一旦、ダンジョンから出るぞ」

 ボソッと一言だけ言った。
 ガーナラルドの声は、凄く低く聞こえ怖かったので、頷く事しか出来なかった。
 立ち上がり飛ばされた剣を拾うと、僕達は一旦ダンジョンを出る。

 もちろん、入り口から出て来るハンターなど僕達だけだろう。最低、5階に降りてワープして戻ってくるのだから。
 今日はやはり止めると言う事で手続きをして、僕達は建物を後にする。

 スタスタと歩くガーナラルドの後を僕は無言でついて行った。
 怒ってるよな。凄く態度に出てる……。
 本来は、僕が王子であるガーナラルドを守る立場だろうけど、守ってもらってしまった。

 建物から離れ、人気が無い場所まで来るとガーナラルドがクルッとこっちに振り向いた。

 「君は、死にたくないのではなかったのか?」
 「え?」
 「コボルトを倒すのに腕力が15はいるのを知っているな? 教科書を見て知っただろう? 君は、私をあてにしていたのか?」
 「え? ま、まさか!」
 「では問うが、昨日私が帰った後に少しでも腕力を上げようと何かしらしたのか?」
 「それは……」

 何もしていない。僕の腕力は今、7しかない。コボルトを倒せる腕力の半分だ。
 どう考えても勝てない。

 「見てみろ」

 そう言ってガーナラルドが僕に見せたのは、自分自身のステータスだった。

 HP:77/77
 MP:20/20
 体力:113
 魔力:11
 腕力:104
 素早さ:32
 ホーリーライト:MP10
 
 うわぁ。これって初心者の平均なの?

 「私のステータスは、初心者にしては少し高いが、鍛錬の賜物だ。本来、ダンジョンハンターになった時に困らない様にと、学校で訓練をする。剣を持っていても使いこなせないなら意味がないだろう!」
 「す、すみません」

 僕は項垂れた。
 ガーナラルドが言う事はごもっともだ。死にたくないなら強くなるしかない。

 「スキルがどうのこうのと言う前に、自分を鍛え直せ。三日後、迎えに行く。その時に私とこのまま組か、それともうじうじと一人いじけているか答えてもらう」

 そう言うと、ガーナラルドはまたスタスタと歩き出す。
 僕はただ、彼をジッと見つめる事しか出来なかった。

 うじうじといじけてるか……。
 僕は、魔神様に選ばれてしまった。それはもうどうしようもできない。死にたくないら強くならないといけないよね。

 僕はやはり、王子を守る役目には向いていないよ。
 ありがとう、ガーナラルド。こんな僕を選んでくれて。しかも三日間の猶予を与えてくれるなんて。

 「クラド!」

 うん? 淡い緑色の髪の見覚えのある男。げ! デモンガリー!
 三か月前に学校を先に卒業した同級生。噂では、ダンジョンハンターになったと聞いていたけど、今の見られていた!?

 「噂で聞いたけど、本当にガーナラルド王子と組んだんだな。驚いたよ」

 やっぱり噂になっていた。しかも丸一日も経ってないのに……。

 「強くなりたいなら、訓練手伝ってやろうか?」
 「え?」

 まさかそんな事を言うなんて驚いた。
 あ、もしかして、ギルドに入りたいとかなのかな?
 彼ならガーナラルドを任せられるかもしれない。腕はピカイチだったはずだ。
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