【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
30 / 245

◆027◆母の想い◎

しおりを挟む
 「ただいま~」

 「クテュール!」

 扉を開けた途端、母さんは今まで見たことがない速さで僕に抱き着いて来た!
 いたたた! 母さん力強すぎ!

 「ちょっと! 痛いって!」

 「もうあなたは、どこに行っていたのよ。心配したのよ」

 僕は、腕をさすりながら苦笑いする。
 そう言えば、何て言い訳するか考えてなかった!!

 「えっと。ごめんなさい」

 「ううん。もういいわ。戻って来てくれたし。あなたは、冒険者にならなくてもいいのよ。ね!」

 「うん。ありがとう。でも、ほら! 僕でも冒険者になれたんだ」

 「え……?」

 僕は、左手につけている冒険者の証のブレスレッドを見せる。それを驚いた顔で、母さんは見つめていた。

 「ぼ、冒険者にならないんではなかったの? 何で! いやで逃げ出したんでしょ?」

 「え?」

 「冒険者にならないって言っていたじゃない! どこかのお店で働くって!」

 「………」

 母さんは、僕にすがるようにして泣き出してしまった!
 どういう事? 母さんは僕に冒険者になって欲しくなかったって事?
 確かに父さんが生きていた時は、剣の稽古を付けてもらった事もあった。でも剣士には向いていないって言われて、いじけて剣の稽古はしなくなった。

 その後、父さんが亡くなった。
 その頃には、冒険者になりたいと思うのも薄れて、だから父さんが亡くなってからは冒険者になりたいなんて、言った事が無かった。それどころか、母さんが言ったように、お店屋で働くって言って、それを目指していた。
 だから母さんが、どう思っているかなんて考えた事もなかった。
 でもよく考えれば、父さんの跡を継いでとか、冒険者にならないの? と言われた事はない。

 「母さんは、僕に冒険者になって欲しくないの?」

 「ならなくていいわ! ならなくても生きていけるもの! 貧乏でもいい。だから、ね。お店屋さんで働いて!」

 「……うん」

 僕が頷くと、母さんはパッと顔が明るくなった。
 父さんと同じ冒険者になって欲しくなかったんだね。僕知らなかったよ。
 成り行きでテイマーにって思ったけど、よく考えれば、エジンが僕を殺そうとしたのは、僕が冒険者になってリゼタと組む事になるからだ。
 ならなければもう襲ってこない。
 冒険者になろうと思ったのもエジンに対抗する為だったんだし、別に無理してなる事ないよね?
 辞退しよう! 今年中に仕事を探せばいい!

 「あらやだ。何か買って来ないと晩御飯がないわ」

 「いや、僕たぶん、入らないと思う」

 「そう? でも何か買って来るわね」

 「あ、じゃ僕も一緒に行くよ」

 「じゃ行きましょう」

 僕は、母さんの笑顔にホッとする。
 そうだよ。別にテイマーにならなくたって、キュイ達に会いにいけばいいだし。僕は、そう簡単に思っていた。でも人生はそう上手くいかないようだ――。
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

処理中です...