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◆087◆お誘い

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 「お前のせいで、外に出なくちゃいけなくなった!」

 「だからリゼタと街に残ればよかっただろう?」

 「君達は、本当にいっつも喧嘩しているんだな」

 文句を言うエジンに返しただけなのに、ナットスさんにため息交じりに言われた。
 昨日受けた大量の採取の依頼をこなす為、森へ向かっている。連れて行くならエジンじゃなくてイラーノさんがよかったんだけど、戦えない彼は危ないとなったみたい。
 僕から言わせれば、エジンも戦えないと思うんだけど?

 ナットスさんとエジンの他に護衛として、ミーレンさんとオダリゼさんがついて来た。
 ミーレンさんは、ナットスさんのお友達みたいで同じ20代。髪は濃い紫色。彼も魔剣士らしい。
 オダリゼさんは、ミーレンさんの父親の護衛をしている人。40代で淡い黄色い髪。
 何でもミーレンさんの父親は、冒険者の才能より商人の才能があったらしく、商人に転職して今はこの国に移り住んで商売をしている。
 オダリゼさんは凄く腕の立つ冒険者で、ミーレンさんの父親の専属として仕事についている人。
 強くなれば、そういう依頼もあるらしい。僕には無理だけどね。
 取りあえず、黒髪でなくてよかった!


 森についた僕達は、今日中にあの大量の依頼をこなす為に採取を始める。ってエジンは、役に立つのか?

 「ねえ君、クテュールだっけ? 薬草に詳しいんだよね」

 そう声を掛けて来たのは、ミーレンさんだ。
 僕は、ミーレンさんに振り返って息をのむ。一瞬、髪が黒く見えた!

 「どうした?」

 「あ、いえ。えっと……薬剤師の資格を取ろうと思っています」

 「へえ。そうなんだ。凄いな。俺の父親もその資格持ってるよ。それ取って冒険者辞めて商人になった。まあ、父さんにしたら合っていた仕事らしく、俺にもなるかなんて言っていたけど俺には無理だな」

 「はぁ……」

 何でいきなりそんな話を振って来る?
 もしかして、僕に近づく為か?
 この人まさか……テイマー? さっき黒髪に見えたけど、違うよね?

 「あ、ごめん。いきなりこんな話して。実はさ、父さん後継者を探しているみたいなんだ。ほらでも、ほとんど商人になんてなり手いないだろう? だから商人に向きそうな奴いたら声掛けてくれって言われていてさ……」

 「え? 商人?」

 「そうそう。父さんも冒険者だったけどお飾り剣士だったみたいでさ……」

 それって僕もお飾り剣士だと言っているんだよね? まあ、そうだけど。
 この人、僕がテイマーだとは知らないみたい。
 商人かぁ。本来なら嬉しい誘いなんだけど。
 テイマーでさえなければ、二つ返事でこの場で返していたかもしれない。

 「どう? もし興味があったら教えて」

 「うん……考えてみる」

 ミーレンさんは、とびきりの笑顔で頷いた。
 ロドリゴさんに相談してみよう。たぶん、ずっと冒険者なんて無理だ。
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