【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!

すみ 小桜(sumitan)

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◇114◇おかしなイラーノ

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 「思ったより重くて、寄りかかるようにしないと開かなかった」

 落ちて横になったまま、言い訳の様にイラーノが言った。
 扉になっていた階段の側面は、踊り場の方がくっついていて、下がかぱっと開くようになっていたようだ。
 横幅は狭いので、座っておしりで押さないと開かない様になっているから気を付けないと首や手足を挟まれていたかも。挟まれなくてよかった!

 「ここって、森? だいぶ移動したもんね。トンネルみたいになっているんだ。上手く隠しているね」

 上半身を起こし、イラーノは辺りを見渡して言った。

 「うん。出れてよかった」

 「まさか下の段だったとはね。さすが隠し通路……」

 イラーノは、感心して言う。

 「あれ、これ……」

 落ちていた、僕が作ったハンチング帽をイラーノは拾った。
 イラーノにあげようと思っていたけど、そのまま手に持ったまま移動していたんだった。

 「それでいいならイラーノにあげるよ。しばらく作る事出来ないだろうし」

 「え? いいの?」

 「うん。古着で作ったのでいいのなら……」

 「ありがとう」

 嬉しそうに、イラーノは被る。
 髪色で狙われる対策で作った物だし、もうその心配はない。
 どちらかと言うと、イラーノはパッと見女の子に見えるし、こういう男っぽい帽子の方がいいかもね。

 「似合う?」

 僕が頷くと、本当に嬉しそうに微笑む。

 「俺、見た目女に見えるからこういう帽子欲しかったんだ!」

 あぁ。本人も気にしていたんだ。
 僕達は立ち上がり、軽く埃をはらった。
 そして、近い方の出口に歩く。
 岩の洞窟といってもそんなに幅はない。たぶん5メートル程。
 森に出た僕達は、改めてぐるりと辺りを見渡した。
 森の奥みたいで、薄暗い。

 「ここってどこら辺なんだろう」

 「どこでも構わないよ。まず、キュイの所に行きたいんだけどいいかな?」

 「キュイって?」

 「ほら、大きな鳥来たでしょ?」

 「えぇ!! ボスの所に行くの?」

 凄くイラーノに驚かれた。
 あ、やっぱり怖いか……。どうしようかな?

 「嫌なら僕一人で行ってくるけど……」

 「ここに置いて行く気?」

 「………」

 「つ、ついて行くよ。置いて行かれるよりマシ!」

 行かないと言う選択肢はないとわかったみたいで、僕にがしっと掴まってイラーノは言った。

 「ジーン!」

 なので、早速ジーンを呼ぶ。

 「やっぱり、モンスターに乗って行くんだ……」

 「嫌なら……」

 「だから、こんな所に置いてかないでよ!」

 はぁっと、イラーノは溜息をついた。
 前一度乗っているのに。

 「こ、来ないね」

 辺りを見渡しイラーノが言う。

 「たぶん、来るとは思うけどね。街の外で呼んでも来るんだし」

 「薄気味悪いね」

 僕を掴んだままイラーノは離さない。
 そんなに怖いかな?
 そう言えば僕も、エジンに連れられて崖に行く時は怖かったっけ?

 ガサガサ。
 イラーノはビクッとしている。
 音の方を見れば、尻尾を振ってジーンが走り寄って来た。

 『待たせたな』

 「ジーン。ありがとう」

 僕は屈んで、ギュッとジーンを抱きしめる。

 「キュイの所まで連れて行って欲しいんだ」

 『了解。彼も連れて行くのか?』

 「うん。一緒に……」

 僕はそう言いつつイラーノに振り返れば、何故か茫然として立っている。

 「だ、大丈夫?」

 「え? あ、うん……」

 どうしたんだろう? 僕はジーンを見るもいつもと変わりない。辺りを見ても驚くような所はないんだけど……。

 「乗れそう?」

 「………」

 一拍置いてからイラーノは頷いた。


 ◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆ 


 『思ったより元気そうね!』

 キュイの住処に着くと、リリンが僕に駆け寄って来た。
 ジーンから降りると、僕の胸にジャンプする。僕は、リリンを撫でた。
 そして、リリンを抱いたままキュイに近づき、ギュッと抱き着く。

 『怪我はなさそうだな』

 「うん。大丈夫」

 「やっぱりそうだ……」

 ボソッとイラーノが呟いた。振り向くと、ジッとこっちを見て目をパチパチとしている。
 うん? キュイがどうしたんだろう?
 僕もキュイを見るもどこも変ではない。
 って、イラーノが変だ!

 「大丈夫?」

 「うん! 凄いよ!」

 イラーノが興奮して言った。
 さっきまでここに来るの嫌がっていたのに、何にそんなに興奮しているんだろう?

 「本当に聞こえていたんだね!」

 聞こえていた?
 何の話?
 耳を澄ましても特段音は聞こえない。
 イラーノの瞳は、キラキラと輝いていた。
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