【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!

すみ 小桜(sumitan)

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◇208◇守るのに十分な理由

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 何か音が聞こえる。コーリゼさんが向かった先だ。
 まさか、モンスターが入って来た?
 そう思って通路を曲がった。
 何となく明かりが漏れていると思っていたけど、通路の行き止まりに誰かが倒れている。そして、外へのドアが開けっ放しになっていた。

 「何!?」

 驚いてアベガルさんは、僕達より先に走った。

 「止まれ!」

 アベガルさんは、剣を抜いた。
 そして、横になる人物をつついている。

 「死んでるの? その人……」

 恐る恐るイラーノが聞いた。

 「人じゃ無いな。モンスターだ。コーリゼは外へ出たみたいだな。他にモンスターがいるとしたらやばいな」

 モンスターが待ち構えていたっていう事?
 アベガルさんは、ドアから外へ出て行った。

 「どうしようか。って、エルフは何故モンスターを使ってこんな事を?」

 「僕に聞かれても」

 「そっか。そこまで聞いてないか」

 ルイユがそれを教えてくれているかもって思って聞いたみたいだ。

 「お前達はそこにいろ。このドアは本来、外からは開かない様になっている。たぶん森に出るよりは、そこに居る方が安全だろう」

 っていう事は、コーリゼさんはそのドアを自ら開けたって事か。
 まあ、足元の光が消えたら真っ暗だから開けちゃったのかもしれないけど……。

 「ほら」

 ポイッと何かを投げてよこした。僕はそれをキャッチする。ボタンだ。

 「ここ開けるなよ!」

 「待って! ここより森がいいんだけど!」

 イラーノがモンスターの死体をみながら叫ぶ。

 「死んでいるから大丈夫だ。いいな、開けるなよ!」

 アベガルさんは、バタンとドアを閉めた。

 「まじか~」

 はぁっと、盛大なため息をイラーノがつく。
 モンスターの死体と一緒に、しばらくいなくてはいけない。

 「アベガルさんって、僕達が逃げないと思っているのかな?」

 「もしかしたらまた作戦かもよ。ルイユを待っているとか」

 「あ、なるほど」

 ワザとコーリゼさんを逃がしそれを追うフリをして、二人っきりになった僕達を迎えに来るまたは襲いに来るルイユを待つ作戦。あり得るかもしれない。

 「あ、あのさ……ルイユの事を恨んでるよね。毒まで使って……」

 「うん? あぁ、あれね。さすがに驚いたけどルイユって感じだよね。でも今回は、それでも俺達とルイユの繋がりは絶てなかったね」

 「え? 作戦だったの?」

 「いや。それは聞いてない。けど毒を使って俺を殺そうとする手間は、必要ないでしょう? それに腕を斬られたのは、あの時ルイユに名を呼ばれたからなんだ」

 「どういう意味?」

 「そのままだよ。イラーノって呼ばれたから振り向いたらルイユに斬られた。そしたらアベガルさんが助けに入ったから、この人に襲った様に見せる為かと思ったんだ。でもそこで、気を失っちゃって……」

 イラーノは、最初からルイユの意図がわかっていたんだ。

 「あの人達も疑い深いよね。協力したのに、君じゃなく俺を疑っていたなんて」

 「うん。どうしたらいいんだろうね」

 「うーん。ルイユがエルフ側だと思っているみたいだからね。エルフが何をしようとしているのかを知らないと、俺達も対策の立てようがないよ。彼らは一体、誰を探しているんだろうね」

 「うん。冒険者なんだから人間だよね? あ、あのさ、僕って事ないよね? 女性だと思って探している……」

 「あ、消える……」

 イラーノがそう言うから慌ててボタンを渡した。
 一瞬暗くなったけど、もう一つのボタンですぐに明かりが灯った。

 「……たぶん、それはないよ」

 光るボタンを見つめ、イラーノはさっきの答えを言った。

 「ジュダーノさんが候補だった事も知らない事みたいだし。違う人物だと思う」

 「あ、そっか。そうだよね」

 僕は、イラーノの言葉に安堵する。

 「君、それで死ぬとか言ったの?」

 「え? えーと……」

 「大丈夫。俺も君を守るから」

 「え?」

 「今の俺があるのは、君の父親のドドイさんのお蔭。そして、君がそうなったのは、僕のもう一人の父親のせい。君を守る理由には十分でしょう? たぶんルイユには、それは伝わっていると思う」

 ルイユには伝わっているってどういう意味だろう?
 リゼタの方が裏切らないって言っていた。
 僕が気を失っている間に、二人は何を話したんだ。

 「一体何をルイ……」

 《主様! ここを開けて下さい! モンスターが一斉にここに集まって来ています。力ずくでここを開けてもいいですが、そちらからの方がいいでしょう》

 ルイユ? ドアの外にいるの?

 「もしかして、ルイユから連絡が来た?」

 「うん。ドアを開けてだって!」

 僕達は頷き合う。そして、ドアを開けた。
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