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第六話

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 あれから三日間、お父様は私を避けていてちゃんと話し合いをする機会がありませんでした。
 明日、私は、お帰りなるソルムナード様と一緒にジムナージュ国へ旅立つ決意をしました。この国にいてもしかたがありませんので。

 「もうお父様! 最後に挨拶ぐらいさせて頂きたいのですが」

 またもや私の姿を見て逃げようとしたお父様を私は呼び止めました。

 「す、すまない……」

 「もう今更ですわ。謝るなら国民にでしょう」

 そう私が言うと、お父様は驚いた顔に。思いもよらない言葉だったのでしょう。

 「私は別にヘルラード様をお慕いしていたわけではありませんので、リンナールと結婚する事自体は別に宜しいのです。ただ国を守る為、聖女と結婚しなくてはいけないのに、それを放棄した事が問題だと思っています」

 「リンリー……」

 「しかも聖女である私を国外追放……」

 「そういうつも……」

 「いいえ!」

 私が強く否定すると、お父様は口を閉ざした。

 「ワグナー領土の事をご存知ですよね?」

 ワグナー領土という言葉を聞き、お父様はビクッと体を震わせ、知っている確信しました。

 「進言の答えが返って来ていたのでしょう?」

 「い、言えなかったのだ。でも、相手は王子だ。苦労する事はないだろう」

 「えぇ。幸せになりますわ。ですが……」

 そこで一旦言葉を切るとお父様は、ごくりと唾を飲み込む。

 「リンナールは苦労するでしょう」

 「な、なに?」

 「わからないのですか? 本来なら聖女の力で難を逃れていたのに、聖女を追放したのですよ? 聖女の恵があるわけがありません。そして国民は、リンナールが聖女だと思っています。彼女に抗議するでしょう」

 「………」

 お父様は、顔面蒼白になった。
 今更、大変な事になるかもしれないと気がついたようです。

 「しかし、リンリーには力はないのだろう?」

 「どうしてそうお思いですか?」

 「ふ、不作なったではないか」

 「そうですね。ですが、私は聖女です。お見せしますよ、聖女の力。条件があるのです」

 「条件?」

 「えぇ、愛さる事。それが力の源です。もちろん、夫となる方に愛されるものそうですが、国民に愛されてこそだと私は思っております。ソルムナード様は、私を愛して下さっていますので、私は幸せになり聖女の力を発揮できるでしょう」

 「……そんな」

 「せめてリンナールを聖女ではなく、普通の者として向かい入れればリンナールが非難される事もなかったでしょうけど。私は、隣国ジムナージュ国の者になります。ですので、この国の事はご自分達で何とかして下さいとお伝え願います。私からは以上ですわ。今まで育てて頂きありがとうございます。そうそう、ワグナー領土も頂き感謝しますと重ねてお伝えお願い致しますね、お父様」

 軽く頭を下げ私は自室へと戻る。
 お父様は、私に手を伸ばし何か言いたそうでしたが、振り向きもせずスタスタと歩くと、何も言わずポツンと佇んでおりました。

 王子と結婚出来るからいいだろうと言いますが、やっている事が乱暴ですわ。
 お母様、この国を捨てて行く我が儘をお許し下さい。
 そう許しを請い、慣れ親しんだベッドで眠りについたのでした。
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