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第十話

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 お祝いの席で、何を言うかと思えばまともではありませんわ!

 「聞き捨てにならないな。リンリーの妹君を捨てるというのか? しかも、すでに私と結婚しているリンリーを奪いに来たと? あなたは私達を祝いに来たのではなく、式典をぶち壊しに来たというのか!」

 とうとうソルムナード様も声を荒らげました。

 「わかっていてリンリーを妻にしたのだろう?」

 「なに? これ以上侮辱するのならこの国から出て行ってもらう」

 「返せと言っている!」

 「もうおやめになって!」

 私はキッとヘルラード様を睨み付けました。

 「ヘルラード様は、私に何と言ったか覚えておいでではないのですか? 私の妹リンナールが好きだから私との婚約を解消し、リンナールとの婚約を発表すると自分自身で言ったのですよ」

 その言葉に会場はざわめいた。もちろん、それを知らなかったソルムナード様も絶句している。

 「私を聖女だと知っていて妹を取り、ソルムナード様との婚約を進めた。つまり聖女はいらないと自分から手放したのではないですか!」

 「リンリー? 聖女って本当なのか?」

 「白々しい! 聖女の力はなくなった。そう思ったから手放した。本当はあったのだろう! それを知っていて……」

 「黙れ! 何を言っている! 聖女ではない彼女はいらなくて、聖女の力が目覚めたから彼女がほしい? 冗談ではない! リンリーは道具ではない! それに私の妻だ!」

 「聖女だと知っていたのは、ヘルラード様達だけですよ。自分の事しか考えず、自分を優先した結果なのに、リンナールを守るどころか捨てるですって? リンナールをなんだとお思いですか! 私はリンナールの幸せを願っていました。苦しい立場になっても愛する人と共にいられるなら大丈夫だろうと。それなのに……」

 「リンリー……」

 泣き出した私をソルムナード様は、そっと抱きしめて下さいました。

 「リンリーが戻らないと我が国は終わりだ……」

 ぼそりとヘルラード様が呟いた。

 「それは、あなた達のせいではないのか? 他国の者は自分の力で対策を行った。聖女云々という前に対策をちゃんと取っていれば、こうなる事もなかった。今まで聖女の力をあてにし当たり前の事だと思い、それが出来ないならいらないと捨てた。その報いはあなたがた受けるものだろう」

 「ヘルラード様。私が愛しているのはソルムナード様です。あなたの国に戻る事はありません。なにせ愛する者の命を授かったのですから」

 「リンリー? まさか、お腹に私の子が?」

 ソルムナード様が、嬉しさと驚きが混ざった顔で聞いた。それにそうですと頷くと、ギュッと抱きしめられ拍手が沸き起こる。
 ヘルラード様は、膝を折りその場に崩れ落ちた。
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