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騎士と令嬢 2
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「はぁ。幸せです。私までこんな凄いお料理を頂けるなんて」
本当に幸せな顔をしたリラが、ディナーを食べ終わり嬉しそうに言った。
「えぇ。凄く美味しかったわ」
「ですが、本当に私もご一緒の部屋で、あのベッドをお使いになってよろしいのでしょうか?」
リラが、寝室の部屋に続くドアを見つつ言うと、もちろんよとランゼーヌが頷く。
本来なら使用人用の部屋がありそこに寝泊りするのだが、ランゼーヌがリラと二人の為そのままそこに寝る事になったのだ。
未だかつてない待遇に、リラは恐れ多いと恐縮していた。
「いいのよ。リラは私にとって、家族の様なものよ。ううん。家族より大切な人かも」
「ランゼーヌお嬢様」
感動で涙目になるリラ。
ティーゼが亡くなってからと言うもの、寂しい時も嬉しい時もずっと傍にいたのはリラだ。
血のつながった父親のモンドは、アーブリーにゾッコンの為に彼女の傍に寄り添い、アーブリーがランゼーヌにするちょっとした嫌がらせや態度を黙認していた。
半分血が繋がっているアルドは、ランゼーヌを見下し事あるごとに睨みつける。
三人は家族の様に過ごしているが、ランゼーヌは居候の様な存在になっていた。だからと言って、あの中に混ざりたいとは思っていない。
「はぁ。家も借金だらけだし、このまま継いでも大変よね。それに継いだとしても、あの人達は出て行かないわよね?」
両肘をテーブルについて、その手の平に顎を乗せ、ランゼーヌは言った。
お嬢様らしからぬ格好だが、リラは何も言わない。
家庭教師をつけてもらえなかったし、アーブリーが教育を施すわけもなく、ランゼーヌは本からの知識しかない。なので、人前ではそれなりにふるまう様にしようとは思っているが、誰もいなければいつもこんな感じなのだ。
というより、誰とも会う予定などなかったランゼーヌには、必要ないものだった。
カーテシーも昨日の婚約の顔合わせで初めて行ったのだ。
「そうですね。もうクレイ様にお嫁にもらって頂いたらいかがですか?」
「え! でも、向こうは婿に出したいみたいだけど……」
「あの! 王宮務めの騎士ならそれなりにお給金がいいと思います。お嬢様が今までと同じような生活で宜しいのでしたら、クレイ様の稼ぎで暮らしていけると思います」
「え~! それって爵位を放棄するって事?」
真剣な顔つきで、リラは頷いた。本気らしい。
「で、でも……こればかりは、相手の気持ちもあるし」
「何を言っていますか。クレイ様はお嬢様に気がありますよ。たまにお嬢様をジッとお見つめになっていたんですよ」
「………」
(あれってやっぱりそういう事なのかしら?)
ランゼーヌは、肘をテーブルから離し、赤くなった頬に手を添える。
「でも、爵位がない私でもいいのかしら?」
「本来は、家を継ぐ方なのに次男に継がせるつもりだと言っていたのですよね? 二人の間に何かあったのでしょうか?」
「そうねぇ。でもそういう風には見えなかったわ」
「では、仕事を辞めたくないとかで、爵位を継がないとかでしょうか?」
「うーん。騎士の家系だからそれはないでしょう。逆に王宮務めなのだから誇れると思うのですが」
「そうですよね。だったら爵位に興味がないのでは? 面倒なので断ったとか?」
「うーん。パラキード子爵様の言い方だと、そういう感じでもないようだったわ。クレイ様というより、パラキード子爵様が次男に継がせたいという風に私は受け取ったけど……」
二人して、うーんと唸る。
一体パラキード子爵家で何があったのか。気になるが聞くわけにもいかない。
家族の仲は良好に見えた。
クレイに騎士の素質がないのならまだわかるが、国が運営する騎士団に所属しているのだからそれなりの実力はあるだろう。
「ふわぁ。考えてもわかるわけないわね」
「今日は疲れたからもう寝ましょうか」
「そうね。そうしましょうか」
二人は立ち上がり、ワゴンに食べ終わった食器を乗せて廊下に置いておく。食べ終わったらそのようにして置いてと言われたからだ。
(ワンちゃんが帰ってこないけど、迷子とかではないよね?)
今までずっと一緒だったワンちゃんが、初めて訪れた王都で傍にいないのは、寂しいと言うよりは不安があった。
リラも居るし、何かあればクレイが駆け付けるだろう。
それでも物心付いた頃から一緒だったワンちゃんが居ないのは、不安なのだ。
「早く戻って来て」
布団に入りランゼーヌは、小さく呟いた。
不安で眠れないかと思ったが、昼間ずっと馬車に揺られていた事もあり、疲れからかいつの間にか眠りについていた。
本当に幸せな顔をしたリラが、ディナーを食べ終わり嬉しそうに言った。
「えぇ。凄く美味しかったわ」
「ですが、本当に私もご一緒の部屋で、あのベッドをお使いになってよろしいのでしょうか?」
リラが、寝室の部屋に続くドアを見つつ言うと、もちろんよとランゼーヌが頷く。
本来なら使用人用の部屋がありそこに寝泊りするのだが、ランゼーヌがリラと二人の為そのままそこに寝る事になったのだ。
未だかつてない待遇に、リラは恐れ多いと恐縮していた。
「いいのよ。リラは私にとって、家族の様なものよ。ううん。家族より大切な人かも」
「ランゼーヌお嬢様」
感動で涙目になるリラ。
ティーゼが亡くなってからと言うもの、寂しい時も嬉しい時もずっと傍にいたのはリラだ。
血のつながった父親のモンドは、アーブリーにゾッコンの為に彼女の傍に寄り添い、アーブリーがランゼーヌにするちょっとした嫌がらせや態度を黙認していた。
半分血が繋がっているアルドは、ランゼーヌを見下し事あるごとに睨みつける。
三人は家族の様に過ごしているが、ランゼーヌは居候の様な存在になっていた。だからと言って、あの中に混ざりたいとは思っていない。
「はぁ。家も借金だらけだし、このまま継いでも大変よね。それに継いだとしても、あの人達は出て行かないわよね?」
両肘をテーブルについて、その手の平に顎を乗せ、ランゼーヌは言った。
お嬢様らしからぬ格好だが、リラは何も言わない。
家庭教師をつけてもらえなかったし、アーブリーが教育を施すわけもなく、ランゼーヌは本からの知識しかない。なので、人前ではそれなりにふるまう様にしようとは思っているが、誰もいなければいつもこんな感じなのだ。
というより、誰とも会う予定などなかったランゼーヌには、必要ないものだった。
カーテシーも昨日の婚約の顔合わせで初めて行ったのだ。
「そうですね。もうクレイ様にお嫁にもらって頂いたらいかがですか?」
「え! でも、向こうは婿に出したいみたいだけど……」
「あの! 王宮務めの騎士ならそれなりにお給金がいいと思います。お嬢様が今までと同じような生活で宜しいのでしたら、クレイ様の稼ぎで暮らしていけると思います」
「え~! それって爵位を放棄するって事?」
真剣な顔つきで、リラは頷いた。本気らしい。
「で、でも……こればかりは、相手の気持ちもあるし」
「何を言っていますか。クレイ様はお嬢様に気がありますよ。たまにお嬢様をジッとお見つめになっていたんですよ」
「………」
(あれってやっぱりそういう事なのかしら?)
ランゼーヌは、肘をテーブルから離し、赤くなった頬に手を添える。
「でも、爵位がない私でもいいのかしら?」
「本来は、家を継ぐ方なのに次男に継がせるつもりだと言っていたのですよね? 二人の間に何かあったのでしょうか?」
「そうねぇ。でもそういう風には見えなかったわ」
「では、仕事を辞めたくないとかで、爵位を継がないとかでしょうか?」
「うーん。騎士の家系だからそれはないでしょう。逆に王宮務めなのだから誇れると思うのですが」
「そうですよね。だったら爵位に興味がないのでは? 面倒なので断ったとか?」
「うーん。パラキード子爵様の言い方だと、そういう感じでもないようだったわ。クレイ様というより、パラキード子爵様が次男に継がせたいという風に私は受け取ったけど……」
二人して、うーんと唸る。
一体パラキード子爵家で何があったのか。気になるが聞くわけにもいかない。
家族の仲は良好に見えた。
クレイに騎士の素質がないのならまだわかるが、国が運営する騎士団に所属しているのだからそれなりの実力はあるだろう。
「ふわぁ。考えてもわかるわけないわね」
「今日は疲れたからもう寝ましょうか」
「そうね。そうしましょうか」
二人は立ち上がり、ワゴンに食べ終わった食器を乗せて廊下に置いておく。食べ終わったらそのようにして置いてと言われたからだ。
(ワンちゃんが帰ってこないけど、迷子とかではないよね?)
今までずっと一緒だったワンちゃんが、初めて訪れた王都で傍にいないのは、寂しいと言うよりは不安があった。
リラも居るし、何かあればクレイが駆け付けるだろう。
それでも物心付いた頃から一緒だったワンちゃんが居ないのは、不安なのだ。
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