13 / 58
騎士と令嬢 3
しおりを挟む
「ふう。ご馳走様」
「どうなされました? お元気がないようですが……」
リラは、昨日はモリモリと食べていたのに、朝食は半分も残しているランゼーヌを心配する。
「そんな事ないわ」
(はぁ。ワンちゃんが戻ってきていない。迷子なのかしら? どうしたら……)
結局朝目覚めても、ワンちゃんは戻って来ていなかった。不安で食べ物が喉を通らない。
とんとんとん。
ドアがノックする音に二人は振り向く。
「パラキードです」
「あ、クレイ様ですね」
リラが立ち上がり、ドアを開けた。
「おはようございます。朝早くに申し訳ありません」
「「おはようございます」」
軽くお辞儀をしてクレイは顔を上げたが、なぜか目が泳いでいる。
「どうかなさいましたか?」
「いいえ」
リラが聞くと、何ともないとクレイは軽く首を横に振った。
「精霊の儀ですが、今日開いていると言う事で、今日行う事が決定しました」
「え? 今日ですか?」
「はい。昨日お伝えしに来たのですが、寝ているご様子でお返事がなかったものですから……二時間後に迎えに参りますので、ご用意お願いします。と言っても特に必要なモノはございません。では、失礼します」
「はい。ご苦労様です」
クレイは、お辞儀をしてドアを閉めた。
(うーん。やっぱり私に気があるようには思えないのだけど……)
「では、ドレスに着替えておきましょうか」
「そうね。もしかしたら早く来るかもしれないものね」
ワンピースには着替えていたが、精霊の儀の為に持ってきた婚約の顔合わせに着たドレスをリラが手に取る。
「………」
(なんかそのドレスを見ると、婚約の顔合わせの時の事を思い出すわ)
「どうかなさいました?」
「婚約破談になった事を思い出して……」
「破談……」
リラは、はぁっとため息をついてしまう。せめてもう一着あればと。
「リラが思っているような思いは、クレイ様はお持ちではないと思うわ」
「そうでしょうか」
「さっきだって、仕事として伝えに来ただけですし。もしかしたら早く終わらせて、縁を切りたいのかもしれないわ」
「え? 逆にですか?」
そうだとランゼーヌは、頷く。
リラは、しょんぼりとしてしまう。
「もうリラが、落ち込んでどうするのよ。私は別に失恋をしたわけではないのよ」
「ですが、今回がダメだった場合、旦那様がまた違う方を探しそうで」
「……そうね。十分ありえるわ。戻ったら爵位を継ぐと言うわ!」
「え!」
リラが驚いた顔をランゼーヌに向けた。
(爵位が宙ぶらりんなのがいけないのよ。本当は、赤字だし継ぎたくない。継いだとしても、今までと何もかわらないだろうし。ただ嫁に出される事はなくなるわ)
「素直に、頷いてくれるでしょうか」
「ここで手続きをしていけばいいのでは?」
「それ可能でしょうか?」
「わからないけど……クレイ様にご相談しましょう。きっと相談に乗ってくれるわ」
「そうですね……」
「もうリラったらまだクレイ様が私をって思っているの?」
「いえ。私は、ランゼーヌ様についていきます」
二人は、笑いあう。
それから二人は、お茶を飲みながらクレイを待った。
時間通りにクレイは二人を迎えに来た。
宿の前に停まっていたいた馬車は、昨日乗って来たパラキード子爵家の馬車ではなく、こじんまりとしているが、王家の紋章が入った馬車だ。
「うわぁ。お嬢様、王家の紋が入っています!」
「こちらは、精霊の儀に向かう専用の馬車になります。乗り込むのがお二人なので、お二人用の小さい馬車ですがご了承下さい」
「え? クレイ様はいかないのですか?」
「私は、御者として乗り込みます」
「そうなのですね」
見れば、御者はいなかった。
二人が乗り込むと、クレイが馬車を走らせる。静かに動き出し、真っ直ぐと王宮へと向かう。
精霊の儀専用の門から馬車が王宮内と入った。
「わぁ、緑のアーチね」
「アーチの棒に蔦を巻き付けたのですね」
二人は、緑のトンネルになっている蔦を見上げる。
(素敵だわ。それにやっぱり精霊が多い)
ランゼーヌの瞳には、アーチの周りを飛ぶ、七色の蝶が見え鮮やかだ。
緑のトンネルを抜けると、白い壁の平屋の大きな建物が見えた。その建物は、四角ではなく円の形をした建物だった。
建物は、等間隔で通路だと思われる場所があり、そこには兵士が一人必ず立っている。
暫くして馬車が停まった。
クレイが扉を開けると、建物の中へと続く通路が見える。
「お待たせいたしました。こちらの通路から中へ入ります」
「はい……」
(何だか緊張してきたわ)
降りた二人は、立っている兵士に軽くお辞儀をしてクレイについて行く。
二人の歩みに合わせ、ゆっくりとクレイは進んだ。
通路は、二人が並んで歩けるほどの広さがあり、ずっと奥に扉が見える。そこへ行くのだと二人は思っていた。
「こちらが、控室となります」
途中で歩みを止めたクレイが、左側にあったドアに手を掛ける。
「え? あ、はい」
中は、窓がない部屋だ。
「奥の扉には、ベッドがありますので、お疲れでしたら仮眠をとられてもかまいません。私は、この扉の外で待機しておりますので、何かありましたら扉を開けずにノックしてお呼び下さい」
「あ、はい」
「中にありますティーやお菓子は、ご自由に召し上がり下さい」
「ありがとうございます。あの、どれくらい待ちますか?」
「一人30分ほどかかりますので、一時間ほどでしょう。他にご質問はありますか?」
「……あの! あとで相談に乗ってほしい事があります。精霊の儀の後も会えますでしょうか?」
「はい。また宿へ戻り、聖女にならなかった場合は、一泊して明日お帰りになる予定ですので、その間なら」
「ありがとうございます。助かります」
「では」
パタンと、クレイはドアをしめた。
(やっぱり義務ね。私には、興味はないわ)
何となく寂しい気もするが、元から破談になった相手なのだから期待する方がおかしいのだ。
リラが、ティーの用意をしてくれて、それを飲んで待つのだった。
「どうなされました? お元気がないようですが……」
リラは、昨日はモリモリと食べていたのに、朝食は半分も残しているランゼーヌを心配する。
「そんな事ないわ」
(はぁ。ワンちゃんが戻ってきていない。迷子なのかしら? どうしたら……)
結局朝目覚めても、ワンちゃんは戻って来ていなかった。不安で食べ物が喉を通らない。
とんとんとん。
ドアがノックする音に二人は振り向く。
「パラキードです」
「あ、クレイ様ですね」
リラが立ち上がり、ドアを開けた。
「おはようございます。朝早くに申し訳ありません」
「「おはようございます」」
軽くお辞儀をしてクレイは顔を上げたが、なぜか目が泳いでいる。
「どうかなさいましたか?」
「いいえ」
リラが聞くと、何ともないとクレイは軽く首を横に振った。
「精霊の儀ですが、今日開いていると言う事で、今日行う事が決定しました」
「え? 今日ですか?」
「はい。昨日お伝えしに来たのですが、寝ているご様子でお返事がなかったものですから……二時間後に迎えに参りますので、ご用意お願いします。と言っても特に必要なモノはございません。では、失礼します」
「はい。ご苦労様です」
クレイは、お辞儀をしてドアを閉めた。
(うーん。やっぱり私に気があるようには思えないのだけど……)
「では、ドレスに着替えておきましょうか」
「そうね。もしかしたら早く来るかもしれないものね」
ワンピースには着替えていたが、精霊の儀の為に持ってきた婚約の顔合わせに着たドレスをリラが手に取る。
「………」
(なんかそのドレスを見ると、婚約の顔合わせの時の事を思い出すわ)
「どうかなさいました?」
「婚約破談になった事を思い出して……」
「破談……」
リラは、はぁっとため息をついてしまう。せめてもう一着あればと。
「リラが思っているような思いは、クレイ様はお持ちではないと思うわ」
「そうでしょうか」
「さっきだって、仕事として伝えに来ただけですし。もしかしたら早く終わらせて、縁を切りたいのかもしれないわ」
「え? 逆にですか?」
そうだとランゼーヌは、頷く。
リラは、しょんぼりとしてしまう。
「もうリラが、落ち込んでどうするのよ。私は別に失恋をしたわけではないのよ」
「ですが、今回がダメだった場合、旦那様がまた違う方を探しそうで」
「……そうね。十分ありえるわ。戻ったら爵位を継ぐと言うわ!」
「え!」
リラが驚いた顔をランゼーヌに向けた。
(爵位が宙ぶらりんなのがいけないのよ。本当は、赤字だし継ぎたくない。継いだとしても、今までと何もかわらないだろうし。ただ嫁に出される事はなくなるわ)
「素直に、頷いてくれるでしょうか」
「ここで手続きをしていけばいいのでは?」
「それ可能でしょうか?」
「わからないけど……クレイ様にご相談しましょう。きっと相談に乗ってくれるわ」
「そうですね……」
「もうリラったらまだクレイ様が私をって思っているの?」
「いえ。私は、ランゼーヌ様についていきます」
二人は、笑いあう。
それから二人は、お茶を飲みながらクレイを待った。
時間通りにクレイは二人を迎えに来た。
宿の前に停まっていたいた馬車は、昨日乗って来たパラキード子爵家の馬車ではなく、こじんまりとしているが、王家の紋章が入った馬車だ。
「うわぁ。お嬢様、王家の紋が入っています!」
「こちらは、精霊の儀に向かう専用の馬車になります。乗り込むのがお二人なので、お二人用の小さい馬車ですがご了承下さい」
「え? クレイ様はいかないのですか?」
「私は、御者として乗り込みます」
「そうなのですね」
見れば、御者はいなかった。
二人が乗り込むと、クレイが馬車を走らせる。静かに動き出し、真っ直ぐと王宮へと向かう。
精霊の儀専用の門から馬車が王宮内と入った。
「わぁ、緑のアーチね」
「アーチの棒に蔦を巻き付けたのですね」
二人は、緑のトンネルになっている蔦を見上げる。
(素敵だわ。それにやっぱり精霊が多い)
ランゼーヌの瞳には、アーチの周りを飛ぶ、七色の蝶が見え鮮やかだ。
緑のトンネルを抜けると、白い壁の平屋の大きな建物が見えた。その建物は、四角ではなく円の形をした建物だった。
建物は、等間隔で通路だと思われる場所があり、そこには兵士が一人必ず立っている。
暫くして馬車が停まった。
クレイが扉を開けると、建物の中へと続く通路が見える。
「お待たせいたしました。こちらの通路から中へ入ります」
「はい……」
(何だか緊張してきたわ)
降りた二人は、立っている兵士に軽くお辞儀をしてクレイについて行く。
二人の歩みに合わせ、ゆっくりとクレイは進んだ。
通路は、二人が並んで歩けるほどの広さがあり、ずっと奥に扉が見える。そこへ行くのだと二人は思っていた。
「こちらが、控室となります」
途中で歩みを止めたクレイが、左側にあったドアに手を掛ける。
「え? あ、はい」
中は、窓がない部屋だ。
「奥の扉には、ベッドがありますので、お疲れでしたら仮眠をとられてもかまいません。私は、この扉の外で待機しておりますので、何かありましたら扉を開けずにノックしてお呼び下さい」
「あ、はい」
「中にありますティーやお菓子は、ご自由に召し上がり下さい」
「ありがとうございます。あの、どれくらい待ちますか?」
「一人30分ほどかかりますので、一時間ほどでしょう。他にご質問はありますか?」
「……あの! あとで相談に乗ってほしい事があります。精霊の儀の後も会えますでしょうか?」
「はい。また宿へ戻り、聖女にならなかった場合は、一泊して明日お帰りになる予定ですので、その間なら」
「ありがとうございます。助かります」
「では」
パタンと、クレイはドアをしめた。
(やっぱり義務ね。私には、興味はないわ)
何となく寂しい気もするが、元から破談になった相手なのだから期待する方がおかしいのだ。
リラが、ティーの用意をしてくれて、それを飲んで待つのだった。
9
あなたにおすすめの小説
短編)どうぞ、勝手に滅んでください。
黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。
あらすじ)
大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。
政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。
けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。
やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。
ーーー
※カクヨム、なろうにも掲載しています
「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。
しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
感情の無い聖女様は、公爵への生贄にされてしまいました
九条 雛
恋愛
「――私など、ただの〝祈り人形〟でございます。人形に感情はありませぬ……」
悪逆非道の公爵の元へと生贄として捧げられてしまった聖女は、格子の付いた窓を見上げてそう呟く。
公爵は嗜虐に満ちた笑みを浮かべ言い放つ。
「これからは、三食きちんと食べてもらおう。こうして俺のモノとなったからには、今までのような生活を送れるとは思わぬことだな」
――これは、不幸な境遇で心を閉ざしてしまった少女と、その笑顔を取り戻そうとする男の物語。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係
紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。
顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。
※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる