53 / 58
婚約破棄して下さい 2
しおりを挟む
パレルモは、にっこりとほほ笑んでいる。
今までそんな素振りを見せなかったというのに、いきなり婚約してほしいと言われ、ランゼーヌは頭が真っ白になった。
「もしかして、好きな方でもおられますか?」
「………」
パレルモに問われ、ランゼーヌの頭にはもちろんクレイの顔が浮かぶ。頬を染めるランゼーヌを見て、パレルモは掴んでいる手に力をこめる。
「クレイを好きになったのですか?」
「は、はい!?」
なぜわかったと、ランゼーヌは顔を真っ赤に染めた。
「あなたは、箱入り娘だったようですね。初めてずっといた異性にときめいた。なら、私にもチャンスをくれませんか? あなたが聖女としている数か月の間でいいです。無理なら諦めますので」
「えーと……」
「おや、タイムリミットですね」
どうしらたと考えている間に、パレルモがランゼーヌの手を離し立ち上がる。
訪問を知らせるライトがついたのだ。クレイが戻って来る。
(びっくりしたわ。まさか婚約してくれという人が現れるなんて……)
「凄いです。聖女マジックです」
リラがボソッと呟いた。
(聖女マジック……そうか。私が聖女だから。納得だわ)
「あぁ、そうそう。私の事は、マテウスと呼んで頂けると嬉しいです」
「え!?」
無理だと、ランゼーヌは首を横に振った。
「ただいま戻りました」
クレイが、部屋へと入って来る。
「では交代です。負けませんよ」
「え……」
帰り際にパレルモにそう言われ驚くクレイだが、何の事だかわからない。
「あの、何かありましたか?」
「ううん。別に何も! ねえ、リラ」
「あ、はい。そうですね」
二人がよそよそしいと思うも、そうですかとクレイは頷いた。
◇
「ランゼーヌ様、モテ期ですかね」
寝室に入ると嬉しそうにリラが言うが、ランゼーヌは暗い顔だ。
「嬉しくないわ」
「そうなんですか? パレルモ様は好みではないと」
「そうではなくて、パレルモ様は私自身を選んだのではなく、聖女を選んだという事でしょう?」
「まあ、そうですが。でも貴族なら爵位で選んだりしますよね? クレイ様と婚約なさっていなかったら、パレルモ様も考えてみてはとお薦めするところです」
「……そうね。男爵の婿になる人がいないからどうしようと悩んでいたのですものね。でもそんなに聖女って魅力的なのかしら?」
「そりゃそうですよ。選ばれた人ですもの」
(選ばれた、か。それだけの価値ある事なのだろうけど、私は聖女ではない。たまたま精霊が見えたというだけで選ばれ、あの呪いの箱庭の結界を壊す役割をしただけ。私が聖女ではないと知ってもパレルモ様は、私と婚約をしたがるのかしら?)
「ランゼーヌ様。そう難しく考えなくてもよろしいかと。身分は関係ないなら断然クレイ様を私も推します」
「うん。ありがとう、リラ」
「おやすみなさいませ。ランゼーヌ様」
「おやすみなさい、リラ」
布団に入るとランゼーヌは目を瞑ったが、なかなか寝付けない。
『眠れないか? あ、俺っちが子守唄を歌ってやろうか』
「子守唄? 私、もうお子様ではないわよ。でも、ワンちゃんの子守唄聞くと、何だか穏やかな気持ちになるのよね」
『そうなのか? ティーゼが歌っていた歌だからかな? 俺っちでも効果あったんだ』
「え? お母様が歌っていた歌?」
(そうか。記憶はないけど、体は覚えていたのね)
「歌ってワンちゃん」
『任せておけ。~♪』
(ふふふ。お母様と違う声なのに、何となくお母様の声が聞こえるような気がするわ)
いつの間にか、ランゼーヌは安らいだ顔つきで眠りについていたのだった。
◇
「では、行ってきます」
「留守は任せておいてくれ」
クレイが、約束通り本を買いに出かける。
まさか、言った次の日には買いに出かけると思っていなかったランゼーヌは、緊張気味だ。
朝食と昼食は、クレイが立って一緒に食べてくれる事になっていたから、交代せずにジャナの付き添いで来るだけだったが、まさか一、二時間も一緒にいる事になるなんてと、ランゼーヌは困っていた。
「そんなに緊張しなくても宜しいですよ。ただ私の話に少し耳を傾けてくれるだけでいいのですから」
「は、話ですか?」
「あ、では、お茶入れますね」
リラが三人分のティーを用意する。
パレルモが毒味を終えると、ランゼーヌはそのティーを一口飲んだ。
「まず私は、あなたが聖女だから婚約の申し出をしたわけではありません」
「え?」
突然そう言われ、あやうくティーをこぼすところだった。
「こうやって、私たちの事も思いやれる方だからです。ですので、全力で口説かせて……」
「待って下さい!」
ランゼーヌは、絞り出すような声で言うと、パレルモが驚いた顔をしてランゼーヌを見る。
「き、昨日は突然すぎて言えなかったのですが、私はクレイ様と婚約しています」
「……え」
「す、すみません」
「いや、そんなはずはない」
「本当です。枢機卿も知っています」
「それって、聖女になってから婚約をしたという事ですか?」
「えーと。そうなります……」
「なるほど……そうですか。彼もやりますね」
「誤解のないように言っておきますが、婚約自体は聖女になる前から話があったのです」
リラが、少し低い声音で呟くパレルモに言った。
「そうですか。だからあなたの騎士になったと」
「そ、そういう訳では。成り行きで精霊の騎士にはなったけど……」
「普通は聖女の騎士になりたいと申請しても選ばれるのは、それなりのものです。その中に年齢も含まれます。なぜ私ぐらいの年齢からでないとなれないかわかりますか? 騎士としての熟練が必要だからです。それを飛び越えあなたの聖女の騎士となった。特別以外のなにものでもない!」
「………」
二人は、少し興奮気味に言うパレルモに何も言い返せない。
あれよあれよと気が付けば聖女になったランゼーヌは、クレイの申し出が通ったのでそういうモノだと思っていた。
だが、騎士側から見れば、クレイは棚から牡丹餅だったのだ。
今までそんな素振りを見せなかったというのに、いきなり婚約してほしいと言われ、ランゼーヌは頭が真っ白になった。
「もしかして、好きな方でもおられますか?」
「………」
パレルモに問われ、ランゼーヌの頭にはもちろんクレイの顔が浮かぶ。頬を染めるランゼーヌを見て、パレルモは掴んでいる手に力をこめる。
「クレイを好きになったのですか?」
「は、はい!?」
なぜわかったと、ランゼーヌは顔を真っ赤に染めた。
「あなたは、箱入り娘だったようですね。初めてずっといた異性にときめいた。なら、私にもチャンスをくれませんか? あなたが聖女としている数か月の間でいいです。無理なら諦めますので」
「えーと……」
「おや、タイムリミットですね」
どうしらたと考えている間に、パレルモがランゼーヌの手を離し立ち上がる。
訪問を知らせるライトがついたのだ。クレイが戻って来る。
(びっくりしたわ。まさか婚約してくれという人が現れるなんて……)
「凄いです。聖女マジックです」
リラがボソッと呟いた。
(聖女マジック……そうか。私が聖女だから。納得だわ)
「あぁ、そうそう。私の事は、マテウスと呼んで頂けると嬉しいです」
「え!?」
無理だと、ランゼーヌは首を横に振った。
「ただいま戻りました」
クレイが、部屋へと入って来る。
「では交代です。負けませんよ」
「え……」
帰り際にパレルモにそう言われ驚くクレイだが、何の事だかわからない。
「あの、何かありましたか?」
「ううん。別に何も! ねえ、リラ」
「あ、はい。そうですね」
二人がよそよそしいと思うも、そうですかとクレイは頷いた。
◇
「ランゼーヌ様、モテ期ですかね」
寝室に入ると嬉しそうにリラが言うが、ランゼーヌは暗い顔だ。
「嬉しくないわ」
「そうなんですか? パレルモ様は好みではないと」
「そうではなくて、パレルモ様は私自身を選んだのではなく、聖女を選んだという事でしょう?」
「まあ、そうですが。でも貴族なら爵位で選んだりしますよね? クレイ様と婚約なさっていなかったら、パレルモ様も考えてみてはとお薦めするところです」
「……そうね。男爵の婿になる人がいないからどうしようと悩んでいたのですものね。でもそんなに聖女って魅力的なのかしら?」
「そりゃそうですよ。選ばれた人ですもの」
(選ばれた、か。それだけの価値ある事なのだろうけど、私は聖女ではない。たまたま精霊が見えたというだけで選ばれ、あの呪いの箱庭の結界を壊す役割をしただけ。私が聖女ではないと知ってもパレルモ様は、私と婚約をしたがるのかしら?)
「ランゼーヌ様。そう難しく考えなくてもよろしいかと。身分は関係ないなら断然クレイ様を私も推します」
「うん。ありがとう、リラ」
「おやすみなさいませ。ランゼーヌ様」
「おやすみなさい、リラ」
布団に入るとランゼーヌは目を瞑ったが、なかなか寝付けない。
『眠れないか? あ、俺っちが子守唄を歌ってやろうか』
「子守唄? 私、もうお子様ではないわよ。でも、ワンちゃんの子守唄聞くと、何だか穏やかな気持ちになるのよね」
『そうなのか? ティーゼが歌っていた歌だからかな? 俺っちでも効果あったんだ』
「え? お母様が歌っていた歌?」
(そうか。記憶はないけど、体は覚えていたのね)
「歌ってワンちゃん」
『任せておけ。~♪』
(ふふふ。お母様と違う声なのに、何となくお母様の声が聞こえるような気がするわ)
いつの間にか、ランゼーヌは安らいだ顔つきで眠りについていたのだった。
◇
「では、行ってきます」
「留守は任せておいてくれ」
クレイが、約束通り本を買いに出かける。
まさか、言った次の日には買いに出かけると思っていなかったランゼーヌは、緊張気味だ。
朝食と昼食は、クレイが立って一緒に食べてくれる事になっていたから、交代せずにジャナの付き添いで来るだけだったが、まさか一、二時間も一緒にいる事になるなんてと、ランゼーヌは困っていた。
「そんなに緊張しなくても宜しいですよ。ただ私の話に少し耳を傾けてくれるだけでいいのですから」
「は、話ですか?」
「あ、では、お茶入れますね」
リラが三人分のティーを用意する。
パレルモが毒味を終えると、ランゼーヌはそのティーを一口飲んだ。
「まず私は、あなたが聖女だから婚約の申し出をしたわけではありません」
「え?」
突然そう言われ、あやうくティーをこぼすところだった。
「こうやって、私たちの事も思いやれる方だからです。ですので、全力で口説かせて……」
「待って下さい!」
ランゼーヌは、絞り出すような声で言うと、パレルモが驚いた顔をしてランゼーヌを見る。
「き、昨日は突然すぎて言えなかったのですが、私はクレイ様と婚約しています」
「……え」
「す、すみません」
「いや、そんなはずはない」
「本当です。枢機卿も知っています」
「それって、聖女になってから婚約をしたという事ですか?」
「えーと。そうなります……」
「なるほど……そうですか。彼もやりますね」
「誤解のないように言っておきますが、婚約自体は聖女になる前から話があったのです」
リラが、少し低い声音で呟くパレルモに言った。
「そうですか。だからあなたの騎士になったと」
「そ、そういう訳では。成り行きで精霊の騎士にはなったけど……」
「普通は聖女の騎士になりたいと申請しても選ばれるのは、それなりのものです。その中に年齢も含まれます。なぜ私ぐらいの年齢からでないとなれないかわかりますか? 騎士としての熟練が必要だからです。それを飛び越えあなたの聖女の騎士となった。特別以外のなにものでもない!」
「………」
二人は、少し興奮気味に言うパレルモに何も言い返せない。
あれよあれよと気が付けば聖女になったランゼーヌは、クレイの申し出が通ったのでそういうモノだと思っていた。
だが、騎士側から見れば、クレイは棚から牡丹餅だったのだ。
4
あなたにおすすめの小説
「醜い」と婚約破棄された銀鱗の令嬢、氷の悪竜辺境伯に嫁いだら、呪いを癒やす聖女として溺愛されました
黒崎隼人
恋愛
「醜い銀の鱗を持つ呪われた女など、王妃にはふさわしくない!」
衆人環視の夜会で、婚約者の王太子にそう罵られ、アナベルは捨てられた。
実家である公爵家からも疎まれ、孤独に生きてきた彼女に下されたのは、「氷の悪竜」と恐れられる辺境伯・レオニールのもとへ嫁げという非情な王命だった。
彼の体に触れた者は黒い呪いに蝕まれ、死に至るという。それは事実上の死刑宣告。
全てを諦め、死に場所を求めて辺境の地へと赴いたアナベルだったが、そこで待っていたのは冷徹な魔王――ではなく、不器用で誠実な、ひとりの青年だった。
さらに、アナベルが忌み嫌っていた「銀の鱗」には、レオニールの呪いを癒やす聖なる力が秘められていて……?
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
噂の聖女と国王陛下 ―婚約破棄を願った令嬢は、溺愛される
柴田はつみ
恋愛
幼い頃から共に育った国王アランは、私にとって憧れであり、唯一の婚約者だった。
だが、最近になって「陛下は聖女殿と親しいらしい」という噂が宮廷中に広まる。
聖女は誰もが認める美しい女性で、陛下の隣に立つ姿は絵のようにお似合い――私など必要ないのではないか。
胸を締め付ける不安に耐えかねた私は、ついにアランへ婚約破棄を申し出る。
「……私では、陛下の隣に立つ資格がありません」
けれど、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「お前は俺の妻になる。誰が何と言おうと、それは変わらない」
噂の裏に隠された真実、幼馴染が密かに抱き続けていた深い愛情――
一度手放そうとした運命の絆は、より強く絡み合い、私を逃がさなくなる。
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
白い結婚に、猶予を。――冷徹公爵と選び続ける夫婦の話
鷹 綾
恋愛
婚約者である王子から「有能すぎる」と切り捨てられた令嬢エテルナ。
彼女が選んだ新たな居場所は、冷徹と噂される公爵セーブルとの白い結婚だった。
干渉しない。触れない。期待しない。
それは、互いを守るための合理的な選択だったはずなのに――
静かな日常の中で、二人は少しずつ「選び続けている関係」へと変わっていく。
越えない一線に名前を付け、それを“猶予”と呼ぶ二人。
壊すより、急ぐより、今日も隣にいることを選ぶ。
これは、激情ではなく、
確かな意思で育つ夫婦の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる