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第一章 分身体
気の合う仲間たち
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かつて、大成を誇った皇国、リナストリア皇国が存在した。
各都市を結ぶ交易路に設けられたその街は、多くの観光客に恵まれ内政としても繁栄を極めた街にはつきもののものがあった。腐敗である。繁栄を極め、港湾施設も立派なものを誇っ地てた皇国も、海賊の襲来や権力争いの中心地に巻き込まれてしまった。
混沌を極める情勢の中で、立ち上がるのは若き王。ルイ一世だった......
と、そんな昔話を聞きながら育った少年、レヴィンはヴァルディアと名を変えた皇国で聖騎士と呼ばれていた。
もとより物覚えのいいレヴィンは隔世遺伝のようで、ハズレとは言えそれなりの魔術も使える。概ね実践向きではないものの、聖騎士として大成したレヴィンにとってはちょうどよかった。
「ん。ここもよし!」
軽装とは言え、簡単な防具を付けたその姿は、城壁を巡るようにして皇都を巡回する。皇歴二十年の周年祭を控える街並みは喧騒に溢れている。腰に携えたものが振るわれることがなく、なまくらと呼ばれる位になれば平和の象徴とも呼べる。
「今日も変化なし!」
こと、確認する所を確認してしまえば、することは限られている。石畳を踏みしめる脚も軽快なステップを踏む。
『うん、剣を振るわないのが一番だ』
『暇、最高!』
コツコツと石畳を歩く軽快な音は、人通りの少ない路地を率先して歩く巡回も兼ね、ひんやりとした建物の壁が音を反響させる。そんな聖騎士と呼ばれる彼を探すようにして、右腕の騎士副団長が顔をのぞかせる。
「あ、レヴィン。こんな所に......」
「ん? あぁ、セリアか......」
「“セリアか”かじゃないわ?」
「いつも、姿をくらますんだから......」
「良いじゃないか。こうして、セリアが見つけてくれる」
「もぅ......」
団長の顔を覗き込むようにして見上げる愛くるしいその澄んだ青い瞳は、レヴィンと同じ髪色を持ちながらも、サファイアのように澄んだ青色の瞳をしていた。赤目と対象的なその瞳は、騎士団の中でもトップを張るのに相応しい身のこなしと容姿を兼ね備える。
長く垂れ下がる綺麗な白髪は団長の短髪とは異なり、しなやかで美しい姿を映し出し、日の光を浴びれば光り輝いていた。その美しさに魅了されるもの曰く、空を溶かしたように美しい瞳。とか、雪のように白い肌に髪。といった具合に表されることがあったが、当の本人は我関せずと言った具合でつかつかと歩く。
『ほんと、セリアは容姿を鼻にかけない』
『だから、余計に魅了するんだろうな...』
『それに腕も良いんだ...』
実際。その美しさから騎士団長に推す声も多く、レヴィンも推薦したこともあるほどだったが、セリアが断った経緯があった。
親しげに話をしながらも路地から顔を出すと、それを見つけた仲間が話しかけてくる。その軽快な声から、姿を見なくとも分かるほどに、小さく、愛らしい特徴を兼ね備えていた。
「団長、せんぱーい~」
その軽快な声から、おおよそ“誰が来ている”のかをおおよそ察していたふたりは、気づかないふりをして声に背を向ける。すると、案の定。駆け出すような音と共に、レヴィン達の元に近づいてくる。
カチャカチャと軽快な音を惜しげもなく振りまくような音と、澄んだ小鳥のような呼び声は、レヴィンやセリアにとっていつもの日常でそれを彼女もしっているようで、ちょうどふたりの間に割って入るようにして突撃してくる。
「どーん!!」
路地を抜け、街道沿いに出ていたレヴィンとセリアの間をするりと抜けたその華奢な体は、
まるでスローモーションのようにふたりの背中に飛び込もうとしたものの、ふたりに交わされてしまった勢いのままで、盛大に大ゴケを披露する。
「ぶえっ!」
「はぁ。エリス......」
ふりふりとした愛らしいミニスカートを風に靡かせたその姿は、前のめりに転んだことで、その見事でしなやかな脚とおしりが露わになってしまう。しかし、彼女は恥じらうどころかむしろ当然のように、ちょこんと座る。
「お前、よくスカートで飛び込むなぁ。恥ずかしくないのか?」
「恥ずかしい? だって、スパッツですよ?」
ほらっ!とこれみよがしにスカートをたくし上げて見せる。その仕草に慌てるセリアと友人にでも見せるかのような笑みをこぼすエリス。いつもと同じ変わらないエリスとレヴィン達の様子に、一気に街道が賑やかになる。
「それでもだ! スパッツとは言え、お前も騎士団のひとりなんだ...」
「えへへ。団長にそう言ってもらえると、嬉しです!」
「まったく......」
そういい、見事なスライディングを披露して鼻の頭を赤くしているエリスに手を差し伸べる。クシャッとした愛くるしい笑みを浮かべながらも、差し伸べられた手を取り立ち上がると、パンパンとホコリを払う。
小麦色の髪と短いポニーテール。両手を広げて警戒に走る様子はさながら子犬で、フリフリと動く短いポニーテールがより、子犬感を出していた。団長の傍らに寄り添う、その小さい体は、おおよそ騎士団の甲冑すら特注と思えるほどに小さかった。
「もぅ、あれほど飛びつくなと。エリスは......」
「良いじゃないですか~」
「団長も副団長も分かって暮れてますし......」
「分かってるから良いということでも......」
「もぅ......」
セリアの肩ほどしか無いエリスも張り合う様子は、騎士団の名物でもあった。そんないつもの日常をつんざくような悲鳴が、三人の鼓膜を震わせる。
各都市を結ぶ交易路に設けられたその街は、多くの観光客に恵まれ内政としても繁栄を極めた街にはつきもののものがあった。腐敗である。繁栄を極め、港湾施設も立派なものを誇っ地てた皇国も、海賊の襲来や権力争いの中心地に巻き込まれてしまった。
混沌を極める情勢の中で、立ち上がるのは若き王。ルイ一世だった......
と、そんな昔話を聞きながら育った少年、レヴィンはヴァルディアと名を変えた皇国で聖騎士と呼ばれていた。
もとより物覚えのいいレヴィンは隔世遺伝のようで、ハズレとは言えそれなりの魔術も使える。概ね実践向きではないものの、聖騎士として大成したレヴィンにとってはちょうどよかった。
「ん。ここもよし!」
軽装とは言え、簡単な防具を付けたその姿は、城壁を巡るようにして皇都を巡回する。皇歴二十年の周年祭を控える街並みは喧騒に溢れている。腰に携えたものが振るわれることがなく、なまくらと呼ばれる位になれば平和の象徴とも呼べる。
「今日も変化なし!」
こと、確認する所を確認してしまえば、することは限られている。石畳を踏みしめる脚も軽快なステップを踏む。
『うん、剣を振るわないのが一番だ』
『暇、最高!』
コツコツと石畳を歩く軽快な音は、人通りの少ない路地を率先して歩く巡回も兼ね、ひんやりとした建物の壁が音を反響させる。そんな聖騎士と呼ばれる彼を探すようにして、右腕の騎士副団長が顔をのぞかせる。
「あ、レヴィン。こんな所に......」
「ん? あぁ、セリアか......」
「“セリアか”かじゃないわ?」
「いつも、姿をくらますんだから......」
「良いじゃないか。こうして、セリアが見つけてくれる」
「もぅ......」
団長の顔を覗き込むようにして見上げる愛くるしいその澄んだ青い瞳は、レヴィンと同じ髪色を持ちながらも、サファイアのように澄んだ青色の瞳をしていた。赤目と対象的なその瞳は、騎士団の中でもトップを張るのに相応しい身のこなしと容姿を兼ね備える。
長く垂れ下がる綺麗な白髪は団長の短髪とは異なり、しなやかで美しい姿を映し出し、日の光を浴びれば光り輝いていた。その美しさに魅了されるもの曰く、空を溶かしたように美しい瞳。とか、雪のように白い肌に髪。といった具合に表されることがあったが、当の本人は我関せずと言った具合でつかつかと歩く。
『ほんと、セリアは容姿を鼻にかけない』
『だから、余計に魅了するんだろうな...』
『それに腕も良いんだ...』
実際。その美しさから騎士団長に推す声も多く、レヴィンも推薦したこともあるほどだったが、セリアが断った経緯があった。
親しげに話をしながらも路地から顔を出すと、それを見つけた仲間が話しかけてくる。その軽快な声から、姿を見なくとも分かるほどに、小さく、愛らしい特徴を兼ね備えていた。
「団長、せんぱーい~」
その軽快な声から、おおよそ“誰が来ている”のかをおおよそ察していたふたりは、気づかないふりをして声に背を向ける。すると、案の定。駆け出すような音と共に、レヴィン達の元に近づいてくる。
カチャカチャと軽快な音を惜しげもなく振りまくような音と、澄んだ小鳥のような呼び声は、レヴィンやセリアにとっていつもの日常でそれを彼女もしっているようで、ちょうどふたりの間に割って入るようにして突撃してくる。
「どーん!!」
路地を抜け、街道沿いに出ていたレヴィンとセリアの間をするりと抜けたその華奢な体は、
まるでスローモーションのようにふたりの背中に飛び込もうとしたものの、ふたりに交わされてしまった勢いのままで、盛大に大ゴケを披露する。
「ぶえっ!」
「はぁ。エリス......」
ふりふりとした愛らしいミニスカートを風に靡かせたその姿は、前のめりに転んだことで、その見事でしなやかな脚とおしりが露わになってしまう。しかし、彼女は恥じらうどころかむしろ当然のように、ちょこんと座る。
「お前、よくスカートで飛び込むなぁ。恥ずかしくないのか?」
「恥ずかしい? だって、スパッツですよ?」
ほらっ!とこれみよがしにスカートをたくし上げて見せる。その仕草に慌てるセリアと友人にでも見せるかのような笑みをこぼすエリス。いつもと同じ変わらないエリスとレヴィン達の様子に、一気に街道が賑やかになる。
「それでもだ! スパッツとは言え、お前も騎士団のひとりなんだ...」
「えへへ。団長にそう言ってもらえると、嬉しです!」
「まったく......」
そういい、見事なスライディングを披露して鼻の頭を赤くしているエリスに手を差し伸べる。クシャッとした愛くるしい笑みを浮かべながらも、差し伸べられた手を取り立ち上がると、パンパンとホコリを払う。
小麦色の髪と短いポニーテール。両手を広げて警戒に走る様子はさながら子犬で、フリフリと動く短いポニーテールがより、子犬感を出していた。団長の傍らに寄り添う、その小さい体は、おおよそ騎士団の甲冑すら特注と思えるほどに小さかった。
「もぅ、あれほど飛びつくなと。エリスは......」
「良いじゃないですか~」
「団長も副団長も分かって暮れてますし......」
「分かってるから良いということでも......」
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