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8 おとつー勢揃い
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ビアンカと申します。
王都には邸もあるのですが、我儘を通して、女子寮にも部屋を借りています。
キャロラインの所のマリーさんが呼びにいらしたので、何事かと淑女らしからぬ小走りで参りましたら、
ザビーネがまた、やらかしていたようで。
キャロラインと、青筋立てた笑顔のマリーさんと、耳の垂れたわんこのようなザビーネと。
キャロラインが肩を抱いてはなさない、赤茶金の髪の小柄な子。
「失礼ながら私から名乗り申し上げます。ビアンカ・アズーロと申します。シャロン・アネット・マルグリット伯爵令嬢とお見受けいたしました。以後お見知り置き下さい」
私は礼をとりました。
「ご丁寧にありがとうございます。アズーロ様」
マルグリット嬢も礼を返します。
瓶底メガネの令嬢博士。
何故この時間にキャロラインの部屋にいるのでしょう。
「ほら!ザビーネ。ビアンカが正しいの!しっかりしてよ男爵令嬢」
キャロラインが叱り付けます。
「……失礼の数々お許し下さいませ。ライグラス男爵が娘のザビーネと申します…」
「ザビーネ・ライグラスさま…」
そして何故キャロラインはザビーネの挨拶の時は、マルグリット嬢の肩をかき抱いているのでしょう。
そして何故マルグリット嬢は明らかに泣いた後の顔なのでしょう。
「ザビーネ。貴女何やらかしたの?
いたいけな下級生泣かせて」
「してない!してないって!
……ちょっとコスプレを」
「はあ?私の時と同じ事したの?
泣くわ!そりゃ」
「違うーっ」
ザビーネは、私と初対面の時に
(出たーっ、巨乳ロリ!いいーっ!)
と、その当時は意味不明だった単語をのたまって、呆然とする私を尊い尊いと、着せ替え人形化したのでした。
キャロライン?
あの子には怖いマリーさんが居ますもの……
そのキャロラインが苦い顔で
「泣かせたのは私。ザビーネ、ビアンカ、座って。マルグリット様、こちらにどうぞ」
泣いた泣かせたで、真っ赤になったマルグリット嬢をキャロラインがカウチに座らせます。そして横に座るので、いつものキャロライン席にザビーネが座りました。
「恥ずかしい、です。人前で泣いてしまって」
「大丈夫。それ以上にザビーネから被った羞恥の方が酷いから」
「申し訳ありませーん」
「「懲りてないでしょ!」」
くすっと、マルグリット様が小さく笑います。
「ほらビアンカ。笑顔もカワイイでしょ?」
「わ、私なんか!」
ウキウキのたまうザビーネにかぶせ気味にマルグリット嬢が謙遜します。
「度の強い眼鏡だし、痩せっぽちだし、髪もゴワゴワで」
「編み込みお団子カワイイわよ?」
「これは美魔、っと、オクタビア先生がしてくださったので、いつもは」
「まあー、美魔女がー」
「あの先生がねー。マルグリット様きっと気に入られてるのよ」
「そんな。頭からスープ被ってたから見てられなかっただけで」
マルグリット嬢は謙遜を過ぎて、やや自虐的です。
「そう、スープ!
ビアンカ、ランチルームの一件ご存知?」
情報通のビアンカと、二つ名のある私です。
「知らないわけないじゃない。マルグリット様災難でしたよね。あの子達、ミリア様に媚びるためなら何だってやるんだから」
で、目の前でおどおどしているマルグリット様は、その喧嘩を買ったとか。元は勝気なんだろうな。
キャロラインは、どうやって泣かせたんだろう。
「それで、マルグリット嬢は乙女通信の代表である私に、事前に了解なくすっぱ抜いた事への謝罪を求めなさったの。その一点においては、私も愚かだったわ。謝罪文を次号に掲載する事を約束したのだけど、2人ともいいわね?」
成る程。それでここに。
「公爵令嬢の反応は予測できなかったわね。申し訳なく存じます。マルグリット様」
私も賛同しました。
「これ程の反応とは思わなかったものね」
「主に女性陣の肉食ぶりはね」
またもマルグリット様は、少し俯いて、
「……コール様に釣り合う器量なら、良かったのでしょう……」
と、呟くのです。
「ジュゼッペ様の仰る通りです。縁が繋がれば、お相手の言動の手綱を握るのが、淑女のならわしなのですね。私、自分の家のことばかり考えていて……」
私は少々、苛々しつつ
「キャロラインが何を言ったか知らないけど、マルグリット様が卑屈になれば成る程、あいつらはつけ上がるわよ?
貴女は北の名門マルグリット家の嫡子。しかも学園一の才女。あれほど浮名を流すローランにしたら玉の輿よ?今までふらふらしていた男が収まるにふさわしいお相手なのよ?」
と、まくしたてました。
「そ、うですね。ですが、私のような器量が悪くて、暗くて、友も居ない、社交のできない者が」
「あーもう!」
ザビーネがキレました。
そして、ビシッと無礼にも指差して
「あーだこーだ、言い訳しない!
そーゆー子前世にもいたわ!どうせどうせと自虐に逃げて!
マルグリット様はカワイイ!
ちょーカワイイ!
そして愛されキャラ!
でなきゃこのキャロラインがこんなに人にくっついてるわけないもの!」
と、まくしたてて、
「まだ12歳でしょ?
これから女らしくなっていくのよ。遅咲きなのよ。ビアンカみたいな早熟なワガママボディのロリっ子もいるけど!
五年生になってごらんなさい、女らしい身体になって、めっちゃ愛らしいお嬢様になってるわ、いや!このザビーネがしてあげる!」
何だか知らないけど、今軽く私をdisりましたか?
あっけに取られたマルグリット様は、はしたなくも口をぽかんと開けていましたが、それ以上にはしたない奴がここにいるので帳消しです。
キャロラインが、ため息をつき
「ザビーネ」
「眼鏡っ子をプロデュース……なに?」
「ステイ!」
「ぐっ」
いつもの儀式です。
「くっくっくっ」
マルグリット様がそのやり取りに、笑い出します。
「……いい人なんですね。ライグラス様って」
そう言って、
「おかしいわ。笑ってるのに涙が」
と、眼鏡をはずしました。
え。
ええええ。
「ゲボッ!グアー!
せ、セオリー通り!
鉄板のーギャップ萌えっ!うぷ!」
キャロラインとマリーさんが動かないように、いち早く私がザビーネの口を塞ぎました。
それにしても
何ということでしょう。
マルグリット様の瞳は深く青く、涙でうるんでキラキラと光り、長い金茶のまつ毛がまとい、白い肌に珊瑚色の唇、うっすらとほのかに紅い頬、形の良い額……
「まあ、なんて愛らしいお嬢様でしょう」
マリーさんが嬉しそうに微笑みつつ、ザビーネの身体を椅子に縫い付けました。
王都には邸もあるのですが、我儘を通して、女子寮にも部屋を借りています。
キャロラインの所のマリーさんが呼びにいらしたので、何事かと淑女らしからぬ小走りで参りましたら、
ザビーネがまた、やらかしていたようで。
キャロラインと、青筋立てた笑顔のマリーさんと、耳の垂れたわんこのようなザビーネと。
キャロラインが肩を抱いてはなさない、赤茶金の髪の小柄な子。
「失礼ながら私から名乗り申し上げます。ビアンカ・アズーロと申します。シャロン・アネット・マルグリット伯爵令嬢とお見受けいたしました。以後お見知り置き下さい」
私は礼をとりました。
「ご丁寧にありがとうございます。アズーロ様」
マルグリット嬢も礼を返します。
瓶底メガネの令嬢博士。
何故この時間にキャロラインの部屋にいるのでしょう。
「ほら!ザビーネ。ビアンカが正しいの!しっかりしてよ男爵令嬢」
キャロラインが叱り付けます。
「……失礼の数々お許し下さいませ。ライグラス男爵が娘のザビーネと申します…」
「ザビーネ・ライグラスさま…」
そして何故キャロラインはザビーネの挨拶の時は、マルグリット嬢の肩をかき抱いているのでしょう。
そして何故マルグリット嬢は明らかに泣いた後の顔なのでしょう。
「ザビーネ。貴女何やらかしたの?
いたいけな下級生泣かせて」
「してない!してないって!
……ちょっとコスプレを」
「はあ?私の時と同じ事したの?
泣くわ!そりゃ」
「違うーっ」
ザビーネは、私と初対面の時に
(出たーっ、巨乳ロリ!いいーっ!)
と、その当時は意味不明だった単語をのたまって、呆然とする私を尊い尊いと、着せ替え人形化したのでした。
キャロライン?
あの子には怖いマリーさんが居ますもの……
そのキャロラインが苦い顔で
「泣かせたのは私。ザビーネ、ビアンカ、座って。マルグリット様、こちらにどうぞ」
泣いた泣かせたで、真っ赤になったマルグリット嬢をキャロラインがカウチに座らせます。そして横に座るので、いつものキャロライン席にザビーネが座りました。
「恥ずかしい、です。人前で泣いてしまって」
「大丈夫。それ以上にザビーネから被った羞恥の方が酷いから」
「申し訳ありませーん」
「「懲りてないでしょ!」」
くすっと、マルグリット様が小さく笑います。
「ほらビアンカ。笑顔もカワイイでしょ?」
「わ、私なんか!」
ウキウキのたまうザビーネにかぶせ気味にマルグリット嬢が謙遜します。
「度の強い眼鏡だし、痩せっぽちだし、髪もゴワゴワで」
「編み込みお団子カワイイわよ?」
「これは美魔、っと、オクタビア先生がしてくださったので、いつもは」
「まあー、美魔女がー」
「あの先生がねー。マルグリット様きっと気に入られてるのよ」
「そんな。頭からスープ被ってたから見てられなかっただけで」
マルグリット嬢は謙遜を過ぎて、やや自虐的です。
「そう、スープ!
ビアンカ、ランチルームの一件ご存知?」
情報通のビアンカと、二つ名のある私です。
「知らないわけないじゃない。マルグリット様災難でしたよね。あの子達、ミリア様に媚びるためなら何だってやるんだから」
で、目の前でおどおどしているマルグリット様は、その喧嘩を買ったとか。元は勝気なんだろうな。
キャロラインは、どうやって泣かせたんだろう。
「それで、マルグリット嬢は乙女通信の代表である私に、事前に了解なくすっぱ抜いた事への謝罪を求めなさったの。その一点においては、私も愚かだったわ。謝罪文を次号に掲載する事を約束したのだけど、2人ともいいわね?」
成る程。それでここに。
「公爵令嬢の反応は予測できなかったわね。申し訳なく存じます。マルグリット様」
私も賛同しました。
「これ程の反応とは思わなかったものね」
「主に女性陣の肉食ぶりはね」
またもマルグリット様は、少し俯いて、
「……コール様に釣り合う器量なら、良かったのでしょう……」
と、呟くのです。
「ジュゼッペ様の仰る通りです。縁が繋がれば、お相手の言動の手綱を握るのが、淑女のならわしなのですね。私、自分の家のことばかり考えていて……」
私は少々、苛々しつつ
「キャロラインが何を言ったか知らないけど、マルグリット様が卑屈になれば成る程、あいつらはつけ上がるわよ?
貴女は北の名門マルグリット家の嫡子。しかも学園一の才女。あれほど浮名を流すローランにしたら玉の輿よ?今までふらふらしていた男が収まるにふさわしいお相手なのよ?」
と、まくしたてました。
「そ、うですね。ですが、私のような器量が悪くて、暗くて、友も居ない、社交のできない者が」
「あーもう!」
ザビーネがキレました。
そして、ビシッと無礼にも指差して
「あーだこーだ、言い訳しない!
そーゆー子前世にもいたわ!どうせどうせと自虐に逃げて!
マルグリット様はカワイイ!
ちょーカワイイ!
そして愛されキャラ!
でなきゃこのキャロラインがこんなに人にくっついてるわけないもの!」
と、まくしたてて、
「まだ12歳でしょ?
これから女らしくなっていくのよ。遅咲きなのよ。ビアンカみたいな早熟なワガママボディのロリっ子もいるけど!
五年生になってごらんなさい、女らしい身体になって、めっちゃ愛らしいお嬢様になってるわ、いや!このザビーネがしてあげる!」
何だか知らないけど、今軽く私をdisりましたか?
あっけに取られたマルグリット様は、はしたなくも口をぽかんと開けていましたが、それ以上にはしたない奴がここにいるので帳消しです。
キャロラインが、ため息をつき
「ザビーネ」
「眼鏡っ子をプロデュース……なに?」
「ステイ!」
「ぐっ」
いつもの儀式です。
「くっくっくっ」
マルグリット様がそのやり取りに、笑い出します。
「……いい人なんですね。ライグラス様って」
そう言って、
「おかしいわ。笑ってるのに涙が」
と、眼鏡をはずしました。
え。
ええええ。
「ゲボッ!グアー!
せ、セオリー通り!
鉄板のーギャップ萌えっ!うぷ!」
キャロラインとマリーさんが動かないように、いち早く私がザビーネの口を塞ぎました。
それにしても
何ということでしょう。
マルグリット様の瞳は深く青く、涙でうるんでキラキラと光り、長い金茶のまつ毛がまとい、白い肌に珊瑚色の唇、うっすらとほのかに紅い頬、形の良い額……
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マリーさんが嬉しそうに微笑みつつ、ザビーネの身体を椅子に縫い付けました。
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