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第二章
第十六話
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少しして。セレナは着替えてクリーニング代をもらって戻ってきた。
「本当に申し訳ありませんでした。こちら、先ほどの注文の品です。ごゆっくりどうぞ」
再度深く頭を下げた店員さんは、そう言い残して席を後にした。
「じゃあ、食うか」
「そ、そうねッ」
セレナの語尾が裏返った。まだ緊張しているらしい。
黙々と食べる。
俺に至っては、さっきの見つめあった時に意識してしまって、もう味もわからん。
ただ、セレナの真っ赤な顔が頭をよぎる。そのせいで、まともにセレナの顔も見られない。
「ね、ねぇ」
そんな時、小声だったがセレナが話しかけてきた。
「な、なんだ?」
すこし声が裏返った気がするが、気のせいだ。そう思わないと、話すらままならん!
「あの、覚えてるでしょ? パーティの件」
「え? あ、あぁ。もちろん。それが?」
「その、さ。組んでくれない? 私と。この際だから話すけどさ、私、へっぽこなの」
さっきまでだったら、とうとう認めた、とでも突っ込んでいただろう。
けれど、そう話すセレナの顔は、ひどく落ち込んだもので。面白半分で聞く気にはなれなかった。
「私ね、疫病神って呼ばれてたんだ。パーティを組んでは、すぐに迷惑を掛けるから。そんなわけで取り分を減らされて、赤字になって焦ってた。『こんなはずじゃなかったのに』って」
「それで、ソロで?」
「テストのとき、あんた、ううん。レインに言われたのを思い出してね」
俺に言われた? 何か言ったか?
記憶を辿る。
そう言えば、「俺はソロだから」とかなんとか言って断ったな。
「もしかして、それでソロをやろうと?」
「うん。そうすれば、取り分を引かれることはないし、赤字も回避できるんじゃ、って」
なるほど。
俺の一言が、追い詰められたセレナにとって希望になってしまったらしい。
結果は、あの様だったが。
「まぁ、1階層を余裕でクリアできたからって、調子に乗ってた。それが、あの結果。私、多分一人だと、何度やっても失敗すると思う。それに、もうソロは嫌。一人だと、怖い……」
そういうセレナの体は震えていた。
女の子があんな体験をして、普通でいられる方がおかしいよな。
だとすると、セレナの今朝の態度は強がりだったのかもな。
ああしてないと、怖くて押しつぶされそうで。
「わかったよ。組む」
「へ?」
俺の返答に、セレナがぽかんと口を開ける。
いや、なんでそんな顔をするんだ?
「組むって言ったんだ。パーティを」
「ほ、本当に?」
「ああ。それにお前、金ないんだろ? それで無茶して死にでもされたら、後でミリヤさんになんて言われるかわかったもんじゃない」
多分そうなっても、何も言わないだろうが。と、俺は内心では思う。
が、ここまで事情を知った今、見捨てるのは出来そうにない。
「ただし、パーティを組む以上は、指示に従ってもらうぞ。ポンコツなお前は、まずは戦い方からだ」
「うん、わかった」
ポンコツを否定してくるかと思ったが、セレナは頷いただけ。
というか、笑顔で頷かれると、なんか俺が一人だけ悪者みたいなんだが……。
何とも、居心地が悪い。
「さて、それじゃあ行くぞ。お前、武器ないんだろ?」
「あ、そうだった!」
こいつ、忘れてたのか?
「金は貸してやる。ただ、絶対返せよ?」
「うん、ありがとう!」
残っていたケーキと紅茶はおいしくいただき、先ほどの女性店員に見送られて、店を後にした。
その後は数件の武器屋を回って、新たに杖を購入した。
このまま迷宮に行ってもよかったが、セレナの服は先の一件で一度洗った方がいい。
そういう訳で、今日は解散。明日、パーティ結成の報告も兼ねて、一緒に冒険に行こうという約束をして、今日は別れた。
「ただいまー」
まだ日が沈んでおらず、いつもよりもだいぶ早い時間に家に帰ってくる。
「ん? おかえり! 随分早いね?」
フィル姉は笑顔で迎えてくれたが、すぐに首を傾けた。
「ああ、うん。実は今日、昨日助けた子とパーティを組むことになって。それで、まぁ少し話をするがてらカフェに行って、少し買い物に付き合って帰ってきたんだ」
「昨日のって……。それ、女の子じゃなかった?」
「へ? そうだけど……」
「むっ」
なんだ? フィル姉の頬が膨れたぞ?
「ねぇ、レイン」
「はい」
背筋がピンと伸びる。なぜだかわからないが、そうしないといけない気がする。
「なんだか最近、レインの周りに女の子が多くない?」
「へ? そう、かな?」
女の子。それで真っ先に思い出されるのはティナさんだ。金髪が特徴的な、可愛くて綺麗な女の子。
そのほかには、リアがいる。あいつも水色の綺麗な髪に、整った顔立ち。綺麗だな。
後は、セレナか。なんだかんだ、今日の一件で仲が良くなった気がする。それに、途中から意識しちゃう程度には可愛かった。
そう考えると、俺の周りの女子のレベル、かなり高いのでは?
「うん、そうかも」
「むー。お姉ちゃんのことはほったらかして、他の女の子ばっかり。お姉ちゃん悲しいな。寂しいな」
えーん、とウソ泣きまでされてしまう。
が、そんな仕草すらもフィル姉がやると可愛いのだから不思議だ。
「あー、えっと。そうだ。今日は俺が料理作るよ。最近はフィル姉に頼ってばっかりだったし、お礼も込めてさ」
「え、本当⁉」
泣き止んだ。まぁ、ウソ泣きだったが。
ともあれ、フィル姉の顔には笑顔がある。
それを見ると、俺まで笑顔になれるのだから、不思議だ。
「フィル姉、一緒に具材、採りにいこ?」
「うん、行く!」
そんなこんなで、今日はフィル姉と久々に二入で過ごすことになった。
俺としても、こうしてフィル姉と過ごせるのはとても楽しかった。
「本当に申し訳ありませんでした。こちら、先ほどの注文の品です。ごゆっくりどうぞ」
再度深く頭を下げた店員さんは、そう言い残して席を後にした。
「じゃあ、食うか」
「そ、そうねッ」
セレナの語尾が裏返った。まだ緊張しているらしい。
黙々と食べる。
俺に至っては、さっきの見つめあった時に意識してしまって、もう味もわからん。
ただ、セレナの真っ赤な顔が頭をよぎる。そのせいで、まともにセレナの顔も見られない。
「ね、ねぇ」
そんな時、小声だったがセレナが話しかけてきた。
「な、なんだ?」
すこし声が裏返った気がするが、気のせいだ。そう思わないと、話すらままならん!
「あの、覚えてるでしょ? パーティの件」
「え? あ、あぁ。もちろん。それが?」
「その、さ。組んでくれない? 私と。この際だから話すけどさ、私、へっぽこなの」
さっきまでだったら、とうとう認めた、とでも突っ込んでいただろう。
けれど、そう話すセレナの顔は、ひどく落ち込んだもので。面白半分で聞く気にはなれなかった。
「私ね、疫病神って呼ばれてたんだ。パーティを組んでは、すぐに迷惑を掛けるから。そんなわけで取り分を減らされて、赤字になって焦ってた。『こんなはずじゃなかったのに』って」
「それで、ソロで?」
「テストのとき、あんた、ううん。レインに言われたのを思い出してね」
俺に言われた? 何か言ったか?
記憶を辿る。
そう言えば、「俺はソロだから」とかなんとか言って断ったな。
「もしかして、それでソロをやろうと?」
「うん。そうすれば、取り分を引かれることはないし、赤字も回避できるんじゃ、って」
なるほど。
俺の一言が、追い詰められたセレナにとって希望になってしまったらしい。
結果は、あの様だったが。
「まぁ、1階層を余裕でクリアできたからって、調子に乗ってた。それが、あの結果。私、多分一人だと、何度やっても失敗すると思う。それに、もうソロは嫌。一人だと、怖い……」
そういうセレナの体は震えていた。
女の子があんな体験をして、普通でいられる方がおかしいよな。
だとすると、セレナの今朝の態度は強がりだったのかもな。
ああしてないと、怖くて押しつぶされそうで。
「わかったよ。組む」
「へ?」
俺の返答に、セレナがぽかんと口を開ける。
いや、なんでそんな顔をするんだ?
「組むって言ったんだ。パーティを」
「ほ、本当に?」
「ああ。それにお前、金ないんだろ? それで無茶して死にでもされたら、後でミリヤさんになんて言われるかわかったもんじゃない」
多分そうなっても、何も言わないだろうが。と、俺は内心では思う。
が、ここまで事情を知った今、見捨てるのは出来そうにない。
「ただし、パーティを組む以上は、指示に従ってもらうぞ。ポンコツなお前は、まずは戦い方からだ」
「うん、わかった」
ポンコツを否定してくるかと思ったが、セレナは頷いただけ。
というか、笑顔で頷かれると、なんか俺が一人だけ悪者みたいなんだが……。
何とも、居心地が悪い。
「さて、それじゃあ行くぞ。お前、武器ないんだろ?」
「あ、そうだった!」
こいつ、忘れてたのか?
「金は貸してやる。ただ、絶対返せよ?」
「うん、ありがとう!」
残っていたケーキと紅茶はおいしくいただき、先ほどの女性店員に見送られて、店を後にした。
その後は数件の武器屋を回って、新たに杖を購入した。
このまま迷宮に行ってもよかったが、セレナの服は先の一件で一度洗った方がいい。
そういう訳で、今日は解散。明日、パーティ結成の報告も兼ねて、一緒に冒険に行こうという約束をして、今日は別れた。
「ただいまー」
まだ日が沈んでおらず、いつもよりもだいぶ早い時間に家に帰ってくる。
「ん? おかえり! 随分早いね?」
フィル姉は笑顔で迎えてくれたが、すぐに首を傾けた。
「ああ、うん。実は今日、昨日助けた子とパーティを組むことになって。それで、まぁ少し話をするがてらカフェに行って、少し買い物に付き合って帰ってきたんだ」
「昨日のって……。それ、女の子じゃなかった?」
「へ? そうだけど……」
「むっ」
なんだ? フィル姉の頬が膨れたぞ?
「ねぇ、レイン」
「はい」
背筋がピンと伸びる。なぜだかわからないが、そうしないといけない気がする。
「なんだか最近、レインの周りに女の子が多くない?」
「へ? そう、かな?」
女の子。それで真っ先に思い出されるのはティナさんだ。金髪が特徴的な、可愛くて綺麗な女の子。
そのほかには、リアがいる。あいつも水色の綺麗な髪に、整った顔立ち。綺麗だな。
後は、セレナか。なんだかんだ、今日の一件で仲が良くなった気がする。それに、途中から意識しちゃう程度には可愛かった。
そう考えると、俺の周りの女子のレベル、かなり高いのでは?
「うん、そうかも」
「むー。お姉ちゃんのことはほったらかして、他の女の子ばっかり。お姉ちゃん悲しいな。寂しいな」
えーん、とウソ泣きまでされてしまう。
が、そんな仕草すらもフィル姉がやると可愛いのだから不思議だ。
「あー、えっと。そうだ。今日は俺が料理作るよ。最近はフィル姉に頼ってばっかりだったし、お礼も込めてさ」
「え、本当⁉」
泣き止んだ。まぁ、ウソ泣きだったが。
ともあれ、フィル姉の顔には笑顔がある。
それを見ると、俺まで笑顔になれるのだから、不思議だ。
「フィル姉、一緒に具材、採りにいこ?」
「うん、行く!」
そんなこんなで、今日はフィル姉と久々に二入で過ごすことになった。
俺としても、こうしてフィル姉と過ごせるのはとても楽しかった。
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