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魔王との邂逅編
パルス・N・アダンソン
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イリナが開けた穴の深さはざっと100mはあった。地上だとそこまで長く感じないが、地下に垂直に落ちていくととても長く感じる。それに恐怖も増していく。光からドンドン遠ざかっていく感じがたまらなく嫌だ。暗闇は人の心に湧く恐怖を映し出し、ロールシャッハのように闇が蠢めき形を作る。落下しながら見続けた俺には、闇は薪をくべた炎のように見えた。
「遅いよミフィー君」
最深部に辿り着くとイリナが体を発光させて待っていた。雷の魔力を持つだけあって光のコントロールはお手の物だ。
「…………眩しいからちょっと光弱めてくんない?」
「図々しいなぁ」
そう言うと光を消しやがった!
「すんませんした。その強さで構わないので光をつけてくれないでしょうか」
「仕方ないなぁ」
ついた灯りを頼りに俺達はこの地下空洞を進んでいくことにした。先頭はイリナ、真ん中は俺、最後尾は黒垓君だ。1番俺が弱いからね前も後ろも張れないんですよ。みんなで俺を守ってくれ。
「黒垓君っていつもどう呼ばれてる?」
俺の監視役とはいえ旅する仲間だ。仲良くするためにもあだ名は聞かなきゃな。
「黒垓君?白始君?もしかしてハク?」
クロちゃん呼びはしてほしくないらしいのでその呼び名は避けながら、言われてそうなあだ名を次々出していく。
「そこらへんがメインっすかねぇ。たまーにモノちゃんとか言われるっすよ。モノクロのモノちゃん」
「白と黒だからモノクロねぇ。結構凝ったあだ名じゃん」
「ミフィー君ほどじゃないっすよ」
「あれは凝ってないのよ………ただ馬鹿にしてるだけなのよ」
兎年で3月21日生まれだからミフィー言われてるだけだからなぁ。虎だからね俺?狩虎なのよ?
「じゃあこれからは黒垓君のことはモノちゃんって呼ぶ?」
「それじゃあ面白くないでしょ、他の面白いあだ名考えようよ。………たとえばモノトーンから着想を得てノンちゃんとか」
「幼児番組のマスコットキャラでいそうその名前」
「シロクロのロとロを合わせれば回じゃん?だからシク回とか?シークレットエピソードみたいでカッコいいじゃん」
そもそも黒垓白始って名前がすごいからなぁ。いじろうと思えば幾らでもいじれる気がする。黒白ちゃんとか…………簡単に思いつくなぁ。
「いやーー名前を文字るだけじゃなくて、オラの性格とかエピソードを聞いてくださいよぉ。そっち経由のあだ名の方が覚えやすくないっすか?」
あーたしかに。漏らした奴をモラシって呼ぶとすぐに定着するように、そのエピソードだけで会話が盛り上がってしまう。
「なんとなくだけどさぁ黒垓君って友達多そうだよね」
「うわ、でたよ、外見から判断して相手の性格を決めつけてくる奴。うざいよそういうの」
「俺は外見からじゃなくて彼の言動から推測してんだよ!」
「じゃあ肉じゃが好き?なんて質問を魔剣にすることはないと思うよ」
「あれはふっと思いついた言葉がそうだったんだ、許してくれよ」
肉じゃがって美味しいから誰だって好きじゃん!?同じ好きなものを共有できると会話って弾むじゃん!?
「飯田さんの言うように、オラは結構友達多いっすよー。女装趣味の男だったり、男装趣味の女だったり、逆立ちでいつも歩いている奴だったり…………変な友達が多いっすね」
うん、男装女装はともかく逆立ちでいつも歩いているのは流石にちょっと怖いね。新手の妖怪かな?
「コミュ力お化けって凄いよなぁ。人脈が広いからネット君とかはどう?」
「インターネットのネット?」
「うんうん」
「私だったらウェブから拾ってスパイダーかなぁ。白黒も使ってアダンソンハエトリのアダンソンとか?」
「オラなら人脈の脈を英語にしてパルスにしますかねぇ。パルスってカッコいいでしょ」
「確かに確かに。名前をつけるだけでいろんなものが出てきて面白いな」
こういうくだらない会話から、人ってやっぱり多様な考え方を持っているんだなぁって思う。その言葉から連想される知識が全然違う。コミュ力から蜘蛛に繋げようだなんて俺思わなかったもん。
「じゃあもう全部まとめて、パルス・N・アダンソンにする?」
「ダッセェ!もっとカッコいいやつにして欲しいっすよ!」
「えーー…………黒垓君でいいか」
「ギブアップ早すぎません!?もっとあるでしょアイデア!」
「なんかもう黒垓白始でオチついちゃってるんだよなぁ。上質な肉に安物のステーキソースぶっかけるみたいでやなんだよ、君にあだ名つけるの」
「嬉しいけど嫌っすよ!もっとあだ名考えましょうよ!」
グイグイくるなぁ。出会ったの今日だぜ俺達?面白エピソードなんてそう簡単に出てこないし、そう簡単に人に愛着なんて湧かないって。無理よすぐにしっくり来るあだ名をつけるのなんて。
「そ、そうだ。それじゃあ先にイリナのあだ名を考えて、それを参考にして黒垓君のあだ名を決めよう。行き詰まったのなら別の切り口からせめようじゃないか!」
「なるほど!頭いいっすねぇ!」
俺をガクンガクンと揺らしていた黒垓君の手が外れた。
「いつもイリナはなんて呼ばれてた?やっぱりイリナちゃんとかイリナさん?奇をてらって光ちゃんとか?」
「女の子が遊ぶお人形みたいで可愛らしい名前っすねぇ!」
お人形という言葉に反応してイリナの体が揺れた。おっ、当たりか?
「………私、あだ名をつけてくれるような友達とかいなかったから」
「…………い、イリナさん?」
「お高く止まってるように見えてたみたいで、誰も近寄らなかったんだよね。それに私も全然人に近づかないし、ニコニコ笑いながら座ってるだけで………気味悪がられて[お人形]って呼ばれてた」
クリーンヒットしちゃったみたいだな。
「ははははっ!い、いやぁやっぱりイリナの友達はパンチがあるなぁ!」
「友達じゃないし。他人だし」
「……………な、なるほど!?じゃあお人形はなしだな!もっと可愛くて明るいあだ名にしよう!」
地下深くへとドンドン降りていく。
イリナの後ろにいるのキツいよぉ!この雰囲気のイリナと会話するのキツいよぉ!今だけ位置変わってくれないかな黒垓君!後ろを見たら黒垓君は絶対に嫌だって感じの顔で首を横に振った。……キツいよぉ!
「どうせ私なんて陰気な女ですよ………ちょっと顔とスタイルと頭がいいだけの根暗な女…………笑うがいいさ」
ネガティブなのかポジティブなのかわからないな。いや、いつもなら「私は天才でナイスバディで超絶美少女だもんね!凄いんだからね!」って言うはずだから、間違いなく傷心している。
「友達もカイしかいなかったけど、そのカイもいきなり魔王に殺されちゃうし……友達なんかできない運命なんだよ私は。いいもん、1人でも生きてやるもん」
「…………お、俺達が友達になるもんな!なぁ黒垓君!」
「そ、そうっすよ!出会った時からマブダチっすよオラ達!」
「一緒に楽しい思い出作ろうな!そ、そうだ!これが終わったら旅行でもしようぜ!ちょっと遠くまで行って写真撮ってお土産買ってさ!」
「そうそう!もしかしたら旅行先でナンパでもされて運命の人に出会えるかもしれないし!かぁあっっ!夢が膨らむなぁ!」
「…………私と違ってそういう楽しい思い出多くて羨ましいね」
ネガティブすぎだろぉ!!盛り上げようとしてる雰囲気が伝わらないのか!?この頑張ってる感じは伝わっていないのか!?伝わってくれぇえ!!
「…………はっ!まさかあの噂は本当だったのか!?」
「う、噂ってなんなんだ黒垓君!」
「イリナさんは地下に行けば行くほど、もしくは暗くなるほどネガティブ思考に陥るって!」
「そんな太陽の化神みたいな性質してるのこいつ!?」
電気消した真夜中とか最悪じゃん!ずっと死について考えて眠れなくなっちゃうじゃん!負のサイクルだよ!
「友達もいない、元気もない、おっぱいもない………私なんて何もないんだ。爪のお手入れしてから死のう………」
「爪のお手入れはするんだ!?」
や、やばい!イリナが自身の貧乳を認めてしまうなんて相当だぞ!本当に自殺一歩手前の心境なんじゃないか!?
「い、飯田さん!ここはあんたしかいないっすよ!」
「お、俺ぇ!?俺に責任押し付けるのやめてくれない!?」
「いやでも出会ったばかりのオラじゃあ今のイリナさんを励ますなんて無理っすもん!ここは飯田さんがやるべきっすよ!」
地下100mよりも更に深い場所で、俺と黒垓君は[どっちがイリナを褒めるか]なんてことで喧嘩をしている。何をやってるんだ俺たちは緊張感を持った方がいい。一応魔物退治のために来てるんだからね?
「それにここで好感度上げとけば、縛られて顔面を削られるなんて鬼畜の所業もされなくなるかもしれないっすよ!」
「いやでもそれぐらいならまだ耐えられる………」
「マゾの鑑だなあんた!じゃ、じゃあ!もしかしたらパンツ見たぐらいじゃ許してもらえるかも!」
「もう一声!」「大好きっていってくれるかも!「それはなんか違うんだよなぁ」「貧乳馬鹿にしても攻撃されないかも!」「のった!」
俺はイリナの前に立つと、イリナの両肩に手を置いた。
「大丈夫だよ、イリナ………俺たちがついてる」
「君ごときがいても安心できないよ」
「…………死んでいい?」
「飯田さんまでそっちに行かないで!!
そうなったら流石のオラでも無理!!逃げ出すしかないっすよ!?」
イリナの心の闇は相当深そうだ。人生一頑張って振り絞ったイケメンボイスを無惨に突っぱねられた。恥ずかしさと絶望のあまり死にそうだ。
しかし、しかしだ。俺がイリナと約束した[炎帝を倒す]ということは、拡大解釈すればイリナの心の闇を払うということだ。ここで諦めていては炎帝を倒すなど夢のまた夢になってしまう。払って見せようじゃないか、この俺が!
「安心しろ!たくさん修行して、安定して魔力を使えるようになって、必ずお前を守ってみせる!それに俺は絶対にお前のそばからいなくならない!絶対に死なない!約束する!」
「…………ミフィー君」
暗かったイリナの顔に光が戻った。
「言質とったからね」
そしてニヤリと笑うと、懐に隠していたボイスレコーダーを俺に見せてきた。
「ミフィー君から[強くなる宣言]頂きました~!これで私が君に死ぬほど辛い練習メニューをさせても文句言えないよね!」
「…………地獄に堕ちろやぁあ!!」
俺は魔剣を振り回してイリナに斬りかかった。しかしイリナに攻撃が届く前に俺は殴り倒される。
「君が全然やる気にならないのが悪いんだよ。君がもっと私に協力的だったらこんなことしなかったんだから」
そう言いながらイリナは前に進んでいく。でもま、嬉しかったのは本当だよ。両手を後ろに組み、楽しそうにスキップしながら………
「遅いよミフィー君」
最深部に辿り着くとイリナが体を発光させて待っていた。雷の魔力を持つだけあって光のコントロールはお手の物だ。
「…………眩しいからちょっと光弱めてくんない?」
「図々しいなぁ」
そう言うと光を消しやがった!
「すんませんした。その強さで構わないので光をつけてくれないでしょうか」
「仕方ないなぁ」
ついた灯りを頼りに俺達はこの地下空洞を進んでいくことにした。先頭はイリナ、真ん中は俺、最後尾は黒垓君だ。1番俺が弱いからね前も後ろも張れないんですよ。みんなで俺を守ってくれ。
「黒垓君っていつもどう呼ばれてる?」
俺の監視役とはいえ旅する仲間だ。仲良くするためにもあだ名は聞かなきゃな。
「黒垓君?白始君?もしかしてハク?」
クロちゃん呼びはしてほしくないらしいのでその呼び名は避けながら、言われてそうなあだ名を次々出していく。
「そこらへんがメインっすかねぇ。たまーにモノちゃんとか言われるっすよ。モノクロのモノちゃん」
「白と黒だからモノクロねぇ。結構凝ったあだ名じゃん」
「ミフィー君ほどじゃないっすよ」
「あれは凝ってないのよ………ただ馬鹿にしてるだけなのよ」
兎年で3月21日生まれだからミフィー言われてるだけだからなぁ。虎だからね俺?狩虎なのよ?
「じゃあこれからは黒垓君のことはモノちゃんって呼ぶ?」
「それじゃあ面白くないでしょ、他の面白いあだ名考えようよ。………たとえばモノトーンから着想を得てノンちゃんとか」
「幼児番組のマスコットキャラでいそうその名前」
「シロクロのロとロを合わせれば回じゃん?だからシク回とか?シークレットエピソードみたいでカッコいいじゃん」
そもそも黒垓白始って名前がすごいからなぁ。いじろうと思えば幾らでもいじれる気がする。黒白ちゃんとか…………簡単に思いつくなぁ。
「いやーー名前を文字るだけじゃなくて、オラの性格とかエピソードを聞いてくださいよぉ。そっち経由のあだ名の方が覚えやすくないっすか?」
あーたしかに。漏らした奴をモラシって呼ぶとすぐに定着するように、そのエピソードだけで会話が盛り上がってしまう。
「なんとなくだけどさぁ黒垓君って友達多そうだよね」
「うわ、でたよ、外見から判断して相手の性格を決めつけてくる奴。うざいよそういうの」
「俺は外見からじゃなくて彼の言動から推測してんだよ!」
「じゃあ肉じゃが好き?なんて質問を魔剣にすることはないと思うよ」
「あれはふっと思いついた言葉がそうだったんだ、許してくれよ」
肉じゃがって美味しいから誰だって好きじゃん!?同じ好きなものを共有できると会話って弾むじゃん!?
「飯田さんの言うように、オラは結構友達多いっすよー。女装趣味の男だったり、男装趣味の女だったり、逆立ちでいつも歩いている奴だったり…………変な友達が多いっすね」
うん、男装女装はともかく逆立ちでいつも歩いているのは流石にちょっと怖いね。新手の妖怪かな?
「コミュ力お化けって凄いよなぁ。人脈が広いからネット君とかはどう?」
「インターネットのネット?」
「うんうん」
「私だったらウェブから拾ってスパイダーかなぁ。白黒も使ってアダンソンハエトリのアダンソンとか?」
「オラなら人脈の脈を英語にしてパルスにしますかねぇ。パルスってカッコいいでしょ」
「確かに確かに。名前をつけるだけでいろんなものが出てきて面白いな」
こういうくだらない会話から、人ってやっぱり多様な考え方を持っているんだなぁって思う。その言葉から連想される知識が全然違う。コミュ力から蜘蛛に繋げようだなんて俺思わなかったもん。
「じゃあもう全部まとめて、パルス・N・アダンソンにする?」
「ダッセェ!もっとカッコいいやつにして欲しいっすよ!」
「えーー…………黒垓君でいいか」
「ギブアップ早すぎません!?もっとあるでしょアイデア!」
「なんかもう黒垓白始でオチついちゃってるんだよなぁ。上質な肉に安物のステーキソースぶっかけるみたいでやなんだよ、君にあだ名つけるの」
「嬉しいけど嫌っすよ!もっとあだ名考えましょうよ!」
グイグイくるなぁ。出会ったの今日だぜ俺達?面白エピソードなんてそう簡単に出てこないし、そう簡単に人に愛着なんて湧かないって。無理よすぐにしっくり来るあだ名をつけるのなんて。
「そ、そうだ。それじゃあ先にイリナのあだ名を考えて、それを参考にして黒垓君のあだ名を決めよう。行き詰まったのなら別の切り口からせめようじゃないか!」
「なるほど!頭いいっすねぇ!」
俺をガクンガクンと揺らしていた黒垓君の手が外れた。
「いつもイリナはなんて呼ばれてた?やっぱりイリナちゃんとかイリナさん?奇をてらって光ちゃんとか?」
「女の子が遊ぶお人形みたいで可愛らしい名前っすねぇ!」
お人形という言葉に反応してイリナの体が揺れた。おっ、当たりか?
「………私、あだ名をつけてくれるような友達とかいなかったから」
「…………い、イリナさん?」
「お高く止まってるように見えてたみたいで、誰も近寄らなかったんだよね。それに私も全然人に近づかないし、ニコニコ笑いながら座ってるだけで………気味悪がられて[お人形]って呼ばれてた」
クリーンヒットしちゃったみたいだな。
「ははははっ!い、いやぁやっぱりイリナの友達はパンチがあるなぁ!」
「友達じゃないし。他人だし」
「……………な、なるほど!?じゃあお人形はなしだな!もっと可愛くて明るいあだ名にしよう!」
地下深くへとドンドン降りていく。
イリナの後ろにいるのキツいよぉ!この雰囲気のイリナと会話するのキツいよぉ!今だけ位置変わってくれないかな黒垓君!後ろを見たら黒垓君は絶対に嫌だって感じの顔で首を横に振った。……キツいよぉ!
「どうせ私なんて陰気な女ですよ………ちょっと顔とスタイルと頭がいいだけの根暗な女…………笑うがいいさ」
ネガティブなのかポジティブなのかわからないな。いや、いつもなら「私は天才でナイスバディで超絶美少女だもんね!凄いんだからね!」って言うはずだから、間違いなく傷心している。
「友達もカイしかいなかったけど、そのカイもいきなり魔王に殺されちゃうし……友達なんかできない運命なんだよ私は。いいもん、1人でも生きてやるもん」
「…………お、俺達が友達になるもんな!なぁ黒垓君!」
「そ、そうっすよ!出会った時からマブダチっすよオラ達!」
「一緒に楽しい思い出作ろうな!そ、そうだ!これが終わったら旅行でもしようぜ!ちょっと遠くまで行って写真撮ってお土産買ってさ!」
「そうそう!もしかしたら旅行先でナンパでもされて運命の人に出会えるかもしれないし!かぁあっっ!夢が膨らむなぁ!」
「…………私と違ってそういう楽しい思い出多くて羨ましいね」
ネガティブすぎだろぉ!!盛り上げようとしてる雰囲気が伝わらないのか!?この頑張ってる感じは伝わっていないのか!?伝わってくれぇえ!!
「…………はっ!まさかあの噂は本当だったのか!?」
「う、噂ってなんなんだ黒垓君!」
「イリナさんは地下に行けば行くほど、もしくは暗くなるほどネガティブ思考に陥るって!」
「そんな太陽の化神みたいな性質してるのこいつ!?」
電気消した真夜中とか最悪じゃん!ずっと死について考えて眠れなくなっちゃうじゃん!負のサイクルだよ!
「友達もいない、元気もない、おっぱいもない………私なんて何もないんだ。爪のお手入れしてから死のう………」
「爪のお手入れはするんだ!?」
や、やばい!イリナが自身の貧乳を認めてしまうなんて相当だぞ!本当に自殺一歩手前の心境なんじゃないか!?
「い、飯田さん!ここはあんたしかいないっすよ!」
「お、俺ぇ!?俺に責任押し付けるのやめてくれない!?」
「いやでも出会ったばかりのオラじゃあ今のイリナさんを励ますなんて無理っすもん!ここは飯田さんがやるべきっすよ!」
地下100mよりも更に深い場所で、俺と黒垓君は[どっちがイリナを褒めるか]なんてことで喧嘩をしている。何をやってるんだ俺たちは緊張感を持った方がいい。一応魔物退治のために来てるんだからね?
「それにここで好感度上げとけば、縛られて顔面を削られるなんて鬼畜の所業もされなくなるかもしれないっすよ!」
「いやでもそれぐらいならまだ耐えられる………」
「マゾの鑑だなあんた!じゃ、じゃあ!もしかしたらパンツ見たぐらいじゃ許してもらえるかも!」
「もう一声!」「大好きっていってくれるかも!「それはなんか違うんだよなぁ」「貧乳馬鹿にしても攻撃されないかも!」「のった!」
俺はイリナの前に立つと、イリナの両肩に手を置いた。
「大丈夫だよ、イリナ………俺たちがついてる」
「君ごときがいても安心できないよ」
「…………死んでいい?」
「飯田さんまでそっちに行かないで!!
そうなったら流石のオラでも無理!!逃げ出すしかないっすよ!?」
イリナの心の闇は相当深そうだ。人生一頑張って振り絞ったイケメンボイスを無惨に突っぱねられた。恥ずかしさと絶望のあまり死にそうだ。
しかし、しかしだ。俺がイリナと約束した[炎帝を倒す]ということは、拡大解釈すればイリナの心の闇を払うということだ。ここで諦めていては炎帝を倒すなど夢のまた夢になってしまう。払って見せようじゃないか、この俺が!
「安心しろ!たくさん修行して、安定して魔力を使えるようになって、必ずお前を守ってみせる!それに俺は絶対にお前のそばからいなくならない!絶対に死なない!約束する!」
「…………ミフィー君」
暗かったイリナの顔に光が戻った。
「言質とったからね」
そしてニヤリと笑うと、懐に隠していたボイスレコーダーを俺に見せてきた。
「ミフィー君から[強くなる宣言]頂きました~!これで私が君に死ぬほど辛い練習メニューをさせても文句言えないよね!」
「…………地獄に堕ちろやぁあ!!」
俺は魔剣を振り回してイリナに斬りかかった。しかしイリナに攻撃が届く前に俺は殴り倒される。
「君が全然やる気にならないのが悪いんだよ。君がもっと私に協力的だったらこんなことしなかったんだから」
そう言いながらイリナは前に進んでいく。でもま、嬉しかったのは本当だよ。両手を後ろに組み、楽しそうにスキップしながら………
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