Face of the Surface

悟飯粒

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魔王との邂逅編

待っている人といない人

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 魔物が集合し形成された山が動き出した。人型というよりかは獣に近く、しかし獣というには生き物から逸脱している。脚はなく腕もない。長い首の先にある頭と、それに酷似した6本の可動部位。その魔物は大地を這いずり地鳴りを起こしながら俺達の元へと来る。

 「さて、壊すといったけどどうやったもんかな」

 保ってくれよ俺の身体。俺は魔力を発動させ、身体の中で生まれる爆発的なエネルギーを一点に閉じ込め走り出す。しかし俺を迎撃するために伸びる6本の可動部位。とてもゆっくり動いているように見えるが、全長1600m、約8000tの化け物の一部だ、俺の元に到達するのはあっという間だろう。

 ドォオオンンッ!!!!

 先端にある口のような部分が大地を深々とえぐりその岩盤を3km先まで吹き飛ばした!!俺は身体の動きに爆発の推進力を合わせて爆発的な加速を得るとその攻撃をかわし、その可動部位………亜脚部を駆け上がっていく!そして頭に到達すると俺は魔力を解放した!
 溜め込まれ続けたエネルギーの本流は頭部の一部を吹き飛ばし空気を震わせる!しかし全壊とはいかない。てか頭部の1割も壊れてない。空中で何回も爆発し軌道を変えながら亜脚部に着地し、地上へと降りた俺はイリナの元に駆け寄った。

 「イリナさん無理っす。あれ壊すとかどう頑張っても無理っす」
 「うん、見てて私も思った」

 やっぱり質量差が圧倒的すぎるんだよなぁ。たとえ魔力がすごかろうと山を一個壊すのって非常識じゃない?人間がやるべきことじゃないよ。自然を破壊するのは自然の役目だよ、長時間かけてさ。

 ポーーン

 「…………ノミ?」

 巨大な魔物から一粒の何かが飛び出た。相対的にノミに見えてるだけで、山自体の大きさが1600メートルだからね。比べて小さいからって俺らよりも圧倒的にでかいのは間違いない。なんだろうあれ………目を凝らして見てみると、それは岩石だった。ウンモのような魔物が5体合体した魔物の集合体。それが脈絡もなく飛び出たのだ。

 「ふふふっ、相変わらず脳筋じゃないか君達」

 聞いたことのある声が背後から聞こえてきた。

 「イリナちゃんはともかく、狩虎ちゃんまでそうだと今後大変だよ。もっとちゃんと頭を使いたまえよ」

 振り返るとそこには昴さんがいた。チノパンのポケットに右手だけをつっこみ、左手を上げながら近づいてくる。

 「…………大地の聖剣を取りに来たんですか」
 「まぁそんなところだ。しかし君達がいるのには驚いたよ。てっきりカースクルセイドを迎撃しに行ってるものとばかり思っていたからね」
 「俺が魔族なばかりにハブられてるんですよ。だからこんな辺境の地でウダウダやってるんです」
 「だからってイリナちゃんまでハブるのは間違ってると思うけどなぁ。…………上の奴らの考え方はわからんね」

 …………敵の俺達を前にしてこの余裕だ。全ての魔力を操れると全ての物事に柔軟に対応できるし、すぐに逃げることも出来るのだから当然か。

 「また私達と戦うつもり?いっとくけど今度は全力でぶっ飛ばすよ」
 「ふふっ、それもいいんだけどね」

 昴さんは左目を閉じて瞼に触れた。

 「君達がいるのなら話は変わってきてしまってね、面倒くさいから君達に聖剣はあげることにするよ」

 …………なんかくさいなぁ。

 「聖剣を集めるのが目的なあんたらのその言葉を信じるって言うの?」
 「聖剣はあくまで手段だ。最終目標は勇者領および魔族領を滅ぼし、世界を破壊すること。、喜んで僕は君達に聖剣をあげるよ」

 左目から離した手で巨大な魔物を指さした。

 「今、[解除]の魔力をあの魔物に施した。時間が経つたびに魔物同士の結合が解除され徐々に小さくなることだろうね。時間にして………1時間ぐらいかな、あそこまでデカいのを解除したことがないから正確な数値は分からないけれど、多分それぐらいで済むはずさ」


 なるほど、さっき魔物がノミみたく飛び出したのは昴さんの魔力が発動したからなのか。

 「1時間待てばなんの労力もなく大地の聖剣を手に入れることができるんだ、嬉しいだろう?」
 「…………なに企んでんの?敵に塩を送ったりなんかしてさ」
 「送ったんじゃないよ、傷口に塗ったくったんだ」

 昴さんは空間に穴を開けた。

 「これから勇者領の中心地、剣戟の城ホワイトドリームに僕達が攻めこむんだ。その間君達がここにいてくれるのならば僕は喜んで聖剣をあげるよ」
 「は!?いや、ばっ!!そんなこと言われたら待つわけないじゃん!私達も戦いに参戦するに決まってるでしょ!」
 「んーーそうかぁ。じゃあ中心地にきたまえ。そうしたならばその間に複数の魔族をここに来させて、早めに聖剣を取り出して僕がそれを使って暴れてあげよう。君達がお留守番できないのならそうするしかないよね」

 なるほど…………大地の聖剣を人質に取られてしまったなこりゃ。ここで待って聖剣を守るか、中心地に向かって聖剣を取られるか…………勇者側とカースクルセイドの実力を分かってない俺からすれば判断できない二者択一だ。

 「まぁよく考えてくれ。僕はすぐに行くよ炎帝が待ってるからね」

 そして昴さんは消えていった。王様や重役が常駐している勇者領の中心地へとカースクルセイドが侵攻するという今の情報は確かに衝撃的だった。しかしそれ以上に俺達の心を揺らしたのは、その最後の僅かな言葉だけ。

 「…………炎帝」

 イリナの拳が更に硬く握られた。

 「壊すよこんな魔物。今すぐにでも」
 「…………倒しに行くのか?炎帝を」
 「決着をつけなきゃ、私の過去に」
 「……………そっか」

 俺は魔剣を引き抜く。
 イリナは光剣を引き抜く。
 紫色と黄色の刃が互いに交錯し、火花を散らすことなくすぐに離れた。

 ドドドドドンンンン!!!

 俺達目掛けて放たれる攻撃の全てをかわして魔物に近づく!そしてイリナの持つ光剣が巨大なハンマーに変化すると、亜脚部をぶん殴った!勇者最強の怪力によって放たれる渾身の一撃とはいえ相手の質量は圧倒的で、全体の1%も壊せず身体が僅かに欠けただけだ。

 「光剣の能力って形態変化だろ!?他に何か良い形ないの!?」
 「ないよ!これがデカブツ相手に1番効果的な形なの!」

 光剣は七種類の武器に変化することができる。敵に合わせて丁度良い武器を使って戦うのがイリナの戦闘スタイルだ。

 「…………良いこと思いついた。深い亀裂とか作れる?あの魔物に」
 「亀裂!?亀裂でいいんだね!?」
 「ああ、細くても構わない。とにかく深い亀裂だ」

 パァァアアアンンンン!!!

 イリナが雷を纏いながら飛び出した!!音速を圧倒的に超えた速度で魔物に突撃し、稲妻を帯びた光剣を魔物に突き刺す!放たれた電撃は細い針のように内部を貫き約1kmほどの穴を開けた!そして俺はその細い穴に水を流し込み急いで離れる!

 「あの穴にありったけの電撃を叩き込んでやれ!」
 「え!?なんか効果あるの!?」
 「あるから!俺を信じてやってみろ!」

 戸惑いながらもイリナは電撃を放った。1匹の電気の龍が細い穴に流し込まれる!

 ッッッッッォォオオオン!!!!

 すると一瞬で蒸発した水によって巨大な爆発が魔物の内部で発生した!!
 雷とは莫大な電気エネルギーの流動である。だから世間一般的には電気にしか注目されないが、実は熱もやばい。電気抵抗とかのせいで熱が発生するのだが、その熱は空気を30000°cにまで跳ね上げるほどであり、その圧倒的なエネルギーは水を音速以上で蒸発させ衝撃波を生み出すのだ。補足しておくと30000°cというのは太陽の表面の温度を5倍した温度であり、太陽を体感する最も手軽な方法は電気が地面に逃げるのを防いだ状態で雷に直撃することである。

 隙間に流し込んだ量は約1000L、1t近くの真水が爆発したのである。その衝撃は凄まじく魔物の身体を2割近く破壊した。しかしそれでもまだ2割である。まだまだ全然足りない!もっと効率よく破壊していかなくては!

 「……………」
 「次は!?どうする!?」

 イリナが急ぎたくて仕方ないって顔をしてる。待ってくれ、俺だって考えてるんだから。山を破壊しようだなんて今までの人生で考えたことないんだから時間をくれ。
 考え方としては亀裂を入れて内部から破壊するってのが1番効率的なはずだ。圧倒的なエネルギーを持つ雷と、起爆剤になりうる水。一応要素は揃っている。これを更に強力にする+αさえあればなんとかなるんだ!それが見つからない!…………ああそうか、そうだった。この世界で常識的に考えるのは普通じゃないんだ。もっと非常識に振る舞わないと。
 俺は魔剣の刀身を撫で上げ優しく語りかける。

 「お前はなにが出来る?教えてくれ」
 「…………空間の支配。」

 魔剣の言葉を聞いた瞬間、俺の頭に情報が流れ込んでくる。いや、正確に言えば情報を掘り起こすの方が正しいだろう。いままでインプットした知識を全て遡り回答を見つけ出そうとしているのだ。

 パチンッ

 指を弾くと小さな爆発が魔物の胸部で発生し、内側から突き破った。自身の爆発を魔剣の転移能力を使って魔物の内側で発生させたのだ。俺は内側から、イリナは外側からこの魔物を破壊し尽くす!

 「20分………20分で破壊し切るぞ」

 爆発が連鎖していく。



 ~勇者領中心地・剣戟の城ホワイトドリーム~

 勇者領中心地に存在する剣戟の城、そこを中心に発展する城下町は高い壁によって守られている。高さ100m、第一類勇者以上の力じゃないと壊れないそれは、並みいる敵の攻撃を遮断する。

 ザッザッザッ………

 しかし今回相手にしているのは並ではない。最低が第一類勇者と最高幹部という精鋭部隊。簡単に壁を破壊するとあっという間に城下町の制圧を始めていた。

 「異変に気がついたグレンやイリナが駆けつけるにはあと何分必要だ?」
 「グレンなら………まぁ、10分もあれば来れるだろうね。でもイリナの方は30分はかかると踏んでるよ。相手してるのが巨大な山まるまる一個だからね」

 生物が相手ならイリナはあっという間に倒しきる。しかし圧倒的な質量を持つ頑丈な無生物を相手にしては、持ち前の瞬間的な超火力を効果的に発揮するのは難しい。
 先に待っていた炎帝が遅れてきた昴に話しかける。このカースクルセイドというのは炎帝によって作られた組織である。リーダーは彼であり、彼を中心に勇者と魔族が集い世界を破壊することを目論んでいるのだ。

 「ひとまず今回のメインは慶次けいじを倒すことだ。王の討伐までは考えていない」
 「自信がないから?」
 「ああ、聖剣を持って初めて倒せる相手だ。無理せずに戦力を強化することに今は務めるべきだ」
 「ふーーん…………分かったよ。」

 異変に気がついた第一類勇者や常駐している第二類勇者とこれから戦うことになる。激戦は避けられないだろう。しかし僕達にはこれがある。

 炎帝が引き抜いたのは赤色の剣、炎の聖剣だ。ただそこにあるだけで周りの気温を上昇させ水分を蒸発させる灼熱の武器。炎を操る炎帝が持てばその威力は相乗し他を寄せ付けない圧倒的な破壊力を生む。
 炎帝が剣を振り下ろすと生み出された炎の大刃が城を両断した。

 「いくぞ、この世界を脅かす」


 ~10分後~

 爆発が魔物の身体に亀裂を生み出し、その隙間にねじ込まれた電撃がその裂傷をさらに押し広げ破壊していく!振り下ろされる攻撃をかわし、体の上を高速で駆け上がり、魔剣と光剣の一撃を叩き込む!それを嫌った魔物は高速で移動し俺達に強烈なタックルをかまそうとしてくる!
 魔物を4割ほど破壊した時、バランスを保つためなのか魔物の形が変形しムカデのような姿になった。高さ200m、幅2.6km、長さ14kmの細長い身体に着いた何千もの節足。その巨体をもって大地を高速で駆け巡るせいで攻撃が当たらない!今度は攻撃を受けるのではなくかわす形になったのか!

 ドンッ!!!!

 しかしどれほど大きかろうが高速で動こうが、イリナよりも速い生物なんてまずいない。イリナは一瞬で魔物の頭部に到達すると強烈な踵落としを炸裂させ顔を叩き落とした!!

 そして相手が止まることで空間指定ができるようになった俺は、近くの脚三本を爆発させ吹き飛ばす!!攻撃を当てづらくなったが、相手が自身の動きを優先するようになったおかげで体がスマートになりさっきよりも衝撃に脆くなってる!!今度は効率的な攻撃を叩き込むのではなく攻撃をいかにして当てるかを考えなくてはいけない!!

 「渾身の力で地面を叩けイリナ!!」
 「あいよ!!」

 ッッパァァアアンンン!!!!

 イリナが全力で地面を殴り飛ばすと巨大な穴が空いた!!この地下は大地の聖剣の影響で巨大な空洞になっている!!だからちょっとでも破壊すれば………その穴は更に大きくなり、自立している巨大な魔物を飲み込んだ!!

 「ようやくチャンスが巡ってきたな」

 俺は落ちゆく魔物の胴体の中心に標準を合わせ人差し指を向ける。身体の中で水が爆発の影響によって水蒸気化しその圧力を増していく。しかしまだ、まだだ。もっと限界まで溜めて放たなければやつに致命傷を与えることはできない。この絶好の機会を逃すな。

 「ふっ!!!」

 限界まで溜め込まれた水の弾丸が指先から放たれた!!その水は魔物の胸部に当たると身体の約半分ほど進み、そこから更に爆発!!水分がまるで山に染み込む雨水のように枝分かれし、身体中に侵食した!!
 それを見ていたイリナが光剣を構えた。剣に溜め込まれる電撃が激しく明滅し火花を散らす!!そして………

  「グォォオオアア!!!!」

 放たれた一撃は1匹の光龍となって亀裂に直撃した!!その瞬間身体の内部から連鎖的に発生する爆発と電撃!!衝撃波が洞窟内部に響き渡り身体を破壊し切る!!

 そして魔物は地下深くに墜落すると身体は粉々に砕け散った。しかしその衝撃でこの地下に広がる大空洞は崩落し、今その瓦礫で埋まろうとしている!!まずい、まずいぞ。ここに大地の聖剣が埋まってしまうと、また聖剣の影響によって魔物化が発生してしまう!!どうにかして取り出さなくては!!

 「イリナ先に城に行ってろ!俺はここがうまる前に聖剣を手に入れておく!」
 「危ないって!それなら私の方が良いって!」
 「俺と違ってお前を必要としている奴が別の場所で待っている。さっさと行け、後で遅れて俺は行く」
 「で、でも…………」
 「俺は死なない。約束しただろ」

 俺は指を鳴らした。すると俺がいたところに大地の聖剣を持ったウンモが座っていた。そう、俺とウンモの位置を変えたのだ。だから今俺がいるのはこの埋まろうとしている地下深くなのである。空を見上げると岩盤が落ちてきてドンドン光が消えていく。

 「さっさと行け!こっちはなんとかするからさ!」
 「………わ、分かった!後で絶対に会おうね!」

 俺は親指を立てイリナに見せた。それを見たイリナは苦い顔をしながらこの場を走って離れていく。…………まったく、手間取らせやがって。ヒーローはちゃんと助けに行くもんだぞ大衆を。さて、ここからどうやって脱出したもんか。俺は地下に生き埋めにされた。
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