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魔王との邂逅編
始まりの始まりは単純に終わる
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死が押し寄せている。圧倒的で壊滅的な死。それは色を持ち、熱を持ち、恐怖そのもののように振る舞い人々を焼き払う。人々の目に映るその炎は死そのものだ。
魔王:炎帝が勇者領を侵略し始めて10分が経った。彼を倒す為に編纂された第一類勇者達は善戦したが、そもそも敵は1人ではない。全ての魔力を操る勇者と伝説の炎の聖剣を持った魔王を相手にしているのだ、彼らは破れてしまい焼け焦げた死体が積まれていく。
「………………」
しかし彼らの死は無駄ではない。時間を稼いだお陰で第二類勇者であるグレンが間に合ったのだ。彼とその従者である亜花(あわな)はカースクルセイドの進路上に降り立ち、炎帝と昴を睨みつける。そしてもう1人、この城に常駐している王様の護衛役である慶次(けいじ)が城から出てきた。
「グレンさんと一緒に戦うのは初めてですね。」
「そもそもお前、いつも戦わないだろ。」
昴は舌なめずりをする。この戦いに勝つだけで、第二類勇者2人分の力を得られるのだ。第二類勇者は勇者領の最高戦力…………仲間に炎帝がいる以上、これほど美味しいものはない。
「後10分~20分もすれば、全域に拡散されている第二類勇者が集結してしまう。さっさと僕達で彼を倒そう。」
「勿論だ。」
昴と炎帝が剣を構えた。それを見て慶次とグレンも身構える。
炎帝が振り払った聖剣が生み出す巨大な炎の刃が空気を焼いて衝撃波が発生!さらに返す刀によって再度生まれる炎の斬撃。空間はあっという間に炎で埋め尽くされ、勇者領の中心地は灼熱の地へと変貌する!
ビュゥゥーー!!
しかしグレンが生み出した突風がその炎を浮き上がらせ、生み出した隙間にグレンと慶次が滑り込み距離を詰める!
グンッ!!
さらに亜花の能力で炎の軌道はねじ曲がり、発射元へとその矛先を向けグレンと慶次と炎が炎帝を追い詰める!しかしその炎すらも焼き払う高威力の青色の炎が生み出され、その圧倒的な火力は触れたものを一瞬で消滅させた。
「…………あの聖剣が生み出す青色の炎、亜花の魔力でも操れないな。」
青色の炎をかわしたグレンがつぶやいた。物理法則を根本から無視しているのだろう。そうじゃなきゃ物理法則を変化させられる亜花の魔力が通じない理由がわからない。
「たとえどれほど強い勇者だろうと、近づかなきゃ敵は倒せない。炎帝が生み出す炎はあらゆる魔力と生物を消滅させることができる圧倒的な破壊だ。勝てないんだよ、たとえ君たちがどう足掻こうとね。」
「いいや、私達はその炎を絶対にかき消すんだよ。」
遅れてやったきた私は、息を切らせながら昴達の背後をとった。私の背中には大地の聖剣を持ったウンモがおぶられている。
「………まさか倒しきったのかい?10分かそこらで。」
「山一個消すだけだもん、余裕よあんなの。」
やっば、全速力で走りすぎた。酸欠で足が震えてる。しかもさっきまで全力で戦ってたせいで筋肉が悲鳴を上げてるよ。どうしようこれ。
「しかし、良いのかい。君の苦手な炎、しかも君の相棒を倒した炎帝と戦おうとしているんだよ?恐怖で足がすくんじゃうじゃあないかな?」
「…………怖いよ、そりゃあ。私からたくさんのものを奪った張本人だからね。炎を見ただけでいまだに私は恐怖するもん。足だってすくむし、どうしてもネガティブな思いが頭を駆け巡ってしまう。」
またあの炎によって身近な誰かが死んでしまうのではないだろうか。今度は私が死んでしまうのではないだろうか。また守ることができずに私は敗北するかもしれない…………そんな思いを簡単に拭うことはできない。でも私は一歩前に踏み出した。そんな呪縛から抜け出すように、大きく一歩!
「だから倒すんだ!私が私らしくある為に!恐怖を打ち消す為に!」
「…………ふっ、恐怖とは自己防衛に必要なものだよ。君がそれを無視したらまた同じ結末を迎えるだけさっ!」
炎帝が振り下ろした炎の刃が私に向かって飛んでくる!
ドォォオオンンン!!!
しかし到達しきる前に目の前の岩盤がめくりあがりその炎を受け止めた!!しかし岩盤は凄まじい火力によって溶けて一瞬でガラスになってしまう!!
「よし!ウンモ!その調子でガンガン壁作っちゃって!」
「我にまかせろ!」
やはり思った通りだ、大地の聖剣を使うことで炎の聖剣の攻撃を防ぐことができる!これならば近づいて一撃を加えるのも満更不可能ではない!大地の聖剣によって生み出された大量の土壁に隠れるように私とグレンと慶次は走り出す!
しかし相手もすぐに対応してきて、今度は地面に炎の聖剣を突き刺し、大地そのものを溶岩に変える!私達は飛び上がり、空中に障害物を作り上げ立体的に動き回る!1人でいい!1人でいいからなんとかして辿り着くんだっ!?
ヂッ
私が乗っていた浮遊する岩石を青色の炎が貫いた。なんとかして直撃は免れたが、炎が頬を掠めた。一瞬掠めただけなのに、皮膚は焼け溶け瞬時に冷え固まる!私の耐熱性能でもあの青色の炎はまずいのか!
「ウンモ!もっと硬いやつ作れないの!?」
「わ、我じゃこれが限界でしゅ。」
やはりウンモじゃ最大値まで引き出せないか!………だが足場を作り、赤色の炎を防げるだけでも十分だ!一年前と違ってまだやれることがある!
「倒す!絶対に!今ここで!」
ッパァァアアアアンンン!!!
大地を蹴飛ばし私は突っ込む!嵐のように渦巻く青色の炎をかわし、地を這う灼熱の波を飛んでかわし、建物の側面を駆け抜ける!飛んでくる幾万の炎の刃が岩盤や壁を溶かしきるが、それでも私は恐れない!立ち止まらない!恐怖に打ち克つ!
更に動きは加速していく!私の姿は炎の光の中に溶け込み、その速さと相まって誰からも視認されなくなっていた!
ギィイイインンッ!!!
炎帝が背後を守る為に生み出していた炎の壁が、凄まじい音を立てながら崩壊した!そして2秒後、別の炎の壁が崩壊!壁がドンドン消えていく!
「…………そこっ!!」
しかし探知魔力によって私が次に行く予測地点を導き出した昴は炎帝に指示を出して攻撃させる!青色の炎の槍が飛んできたっ!
キンッ!
青色の槍が切り裂かれた。大地の聖剣と光剣を両手で持ち刀身をクロスさせて防いだのだ。この時を待っていた!「当てたら勝ち。」と思っている相手の逆をつくために私はかわし続けてきたんだ!咄嗟に大技を放った炎帝は隙だらけ!終わりだ!
勇者と魔族の戦いの基本は魔族が遠距離攻撃をし、それをかいくぐった勇者が近接攻撃で倒すというとてもシンプルなものだ。しかし圧倒的な魔力を持つ魔族………魔王はその例外にいる。イリナが近づいた瞬間、彼を中心に炎が噴き出した。青色の炎が彼を包むと、それは空高くまで伸び上がり炎の柱を形成する。並の魔族の魔力ならばイリナの突進力で突破できるのだが、魔王のそれは掠めただけで死を直感するほどの高威力。とても受け切れるものではない。
「…………くそっ。」
その衝撃によって吹き飛ばされた私はまた突撃するためにすぐに起き上がった。しかし次に私の目に入ってきたのは巨大な炎。前方の全てを覆い尽くした巨大な炎の塊だ。この光景は2度目だ。前はこれから私を守る為にカイが身代わりになって死んでしまったのだ。でも今回は大丈夫、私はかわせる。しかし周りを見てみると、先ほどの私たちの戦いのせいで振り撒かれた青い炎がそこかしこにあって逃げ道がない。…………なら、打ち壊すまで!私は大地の聖剣と光剣を構えた。
いつの間にか私は炎帝の右側に立っていた。私に迫ってくる炎の塊はなく………いや、あるのだが、私はそれの側面を見ていた。位置が………変わってる!私は急いでさっきまで私がいた場所を見ると、そこにはミフィー君が!
「そんなっ!ミフィ」
ドォォオオオンンン!!!!
青色の爆発がミフィー君を飲み込んだ。そんな、また同じ相手に、同じようなシチュエーションで相棒を………友達を失うなんて。
「…………言っただろ、俺は死なないって。」
しかし彼は炎帝の、しかも炎の聖剣の攻撃を喰らったというのに、ケロッとした表情でその爆炎から出てきた。……………は?
「それと…………お前、お前だ。炎帝。」
ミフィー君はこの状況に驚いている炎帝を指さした。
「別に炎帝を名乗るのは構わないが、それならもっと実力をつけなきゃダメだろ。こんなんじゃダメ、ダメダメよ。炎帝の足元にも及ばない。」
そんなことを言いながら彼は悠長に歩いていく。ゆっくり、ゆっくり、無防備に炎帝へと近づいていく。
「こんなんじゃあ勇者領を壊滅させるなんて夢のまた夢だなぁ。」
焦る炎帝が炎を放つが、ミフィー君は防御することなくその攻撃を全て受ける。だが彼には一切のダメージがなく、のんびりと炎帝へと近づいていく。
「お、おまえ!嘘だろ!?なんでこんなところに………っ!!」
「なんでってそんなの決まってるだろ。」
そしてミフィー君が腕を振るうと赤色の炎が発生した。しかしその規模は今までの比ではなく、この城下町の半分を飲み込んでしまった。炎によって吹き飛ばされてしまったのか炎帝と昴の姿はここにはなく、あるのは巨大な穴だけ。
「俺がここにいるのは簡単なことだ。」
そう言うとミフィー君は振り返って私を見つめてきた。そして自身の心臓を親指で示してきた。
「イリナに殺してもらう為だよ。この俺、炎帝が罪滅ぼしのためにな。」
「…………というのが3日前にあったわけだよ。どう思う?」
俺は一時限目が始まる自由時間で、後ろにいる幼馴染、岩村遼鋭に話しかけた。
「ああ、君の夢の話でしょ。いいんじゃない君が死なないで済んで。君が死んでたら僕泣いてたよ。………で、それが今の君の憂鬱と何か関係あるわけ?」
「めっちゃ関係してるに決まってんだろ。俺はもうあれよ、マジで。人生で1番と言っていいほど今落ち込んでる。」
「君の人生で一番の落ち込みはこんなもんじゃないから安心していいよ。…………イマイチ全貌が見えないな。」
「おーーっす!何話してんだ!?」
「あ、宏美!聞いてよ!実は今俺憂鬱で……」
「ホームルーム始めるぞー席につけー。」
入ってきた先生の言葉で俺たち学生は一瞬で自分の席に座ると、黙ったまま先生の話を聞く。
「…………なんだ、また変な夢でも見たのか。」
隣の宏美が小さな声で聞いてくる。
「夢っていうか現実っていうか…………その、あれだ、イリナがな………」
「転入生が新しくこのクラスに来ることになった。今日からクラスの一員として仲良くしてやってほしい。…………はーい、入ってきてください。」
ガラララララッ
扉が開く音を目を閉じながら俺は聞いた。あーーいやだぁ、マジで嫌だぁ。俺はチラッと、指の隙間から教卓の方を見るとそこには…………
「新しく転校してきたイリナ・ヘリエルです。以後お見知り置きを、皆さん。」
そして俺と目があったイリナはそっぽを向いた。俺もまた両手で自身の目を隠してふさぎこんだ。
こうして、俺とイリナの奇妙な物語が始まった。
魔王:炎帝が勇者領を侵略し始めて10分が経った。彼を倒す為に編纂された第一類勇者達は善戦したが、そもそも敵は1人ではない。全ての魔力を操る勇者と伝説の炎の聖剣を持った魔王を相手にしているのだ、彼らは破れてしまい焼け焦げた死体が積まれていく。
「………………」
しかし彼らの死は無駄ではない。時間を稼いだお陰で第二類勇者であるグレンが間に合ったのだ。彼とその従者である亜花(あわな)はカースクルセイドの進路上に降り立ち、炎帝と昴を睨みつける。そしてもう1人、この城に常駐している王様の護衛役である慶次(けいじ)が城から出てきた。
「グレンさんと一緒に戦うのは初めてですね。」
「そもそもお前、いつも戦わないだろ。」
昴は舌なめずりをする。この戦いに勝つだけで、第二類勇者2人分の力を得られるのだ。第二類勇者は勇者領の最高戦力…………仲間に炎帝がいる以上、これほど美味しいものはない。
「後10分~20分もすれば、全域に拡散されている第二類勇者が集結してしまう。さっさと僕達で彼を倒そう。」
「勿論だ。」
昴と炎帝が剣を構えた。それを見て慶次とグレンも身構える。
炎帝が振り払った聖剣が生み出す巨大な炎の刃が空気を焼いて衝撃波が発生!さらに返す刀によって再度生まれる炎の斬撃。空間はあっという間に炎で埋め尽くされ、勇者領の中心地は灼熱の地へと変貌する!
ビュゥゥーー!!
しかしグレンが生み出した突風がその炎を浮き上がらせ、生み出した隙間にグレンと慶次が滑り込み距離を詰める!
グンッ!!
さらに亜花の能力で炎の軌道はねじ曲がり、発射元へとその矛先を向けグレンと慶次と炎が炎帝を追い詰める!しかしその炎すらも焼き払う高威力の青色の炎が生み出され、その圧倒的な火力は触れたものを一瞬で消滅させた。
「…………あの聖剣が生み出す青色の炎、亜花の魔力でも操れないな。」
青色の炎をかわしたグレンがつぶやいた。物理法則を根本から無視しているのだろう。そうじゃなきゃ物理法則を変化させられる亜花の魔力が通じない理由がわからない。
「たとえどれほど強い勇者だろうと、近づかなきゃ敵は倒せない。炎帝が生み出す炎はあらゆる魔力と生物を消滅させることができる圧倒的な破壊だ。勝てないんだよ、たとえ君たちがどう足掻こうとね。」
「いいや、私達はその炎を絶対にかき消すんだよ。」
遅れてやったきた私は、息を切らせながら昴達の背後をとった。私の背中には大地の聖剣を持ったウンモがおぶられている。
「………まさか倒しきったのかい?10分かそこらで。」
「山一個消すだけだもん、余裕よあんなの。」
やっば、全速力で走りすぎた。酸欠で足が震えてる。しかもさっきまで全力で戦ってたせいで筋肉が悲鳴を上げてるよ。どうしようこれ。
「しかし、良いのかい。君の苦手な炎、しかも君の相棒を倒した炎帝と戦おうとしているんだよ?恐怖で足がすくんじゃうじゃあないかな?」
「…………怖いよ、そりゃあ。私からたくさんのものを奪った張本人だからね。炎を見ただけでいまだに私は恐怖するもん。足だってすくむし、どうしてもネガティブな思いが頭を駆け巡ってしまう。」
またあの炎によって身近な誰かが死んでしまうのではないだろうか。今度は私が死んでしまうのではないだろうか。また守ることができずに私は敗北するかもしれない…………そんな思いを簡単に拭うことはできない。でも私は一歩前に踏み出した。そんな呪縛から抜け出すように、大きく一歩!
「だから倒すんだ!私が私らしくある為に!恐怖を打ち消す為に!」
「…………ふっ、恐怖とは自己防衛に必要なものだよ。君がそれを無視したらまた同じ結末を迎えるだけさっ!」
炎帝が振り下ろした炎の刃が私に向かって飛んでくる!
ドォォオオンンン!!!
しかし到達しきる前に目の前の岩盤がめくりあがりその炎を受け止めた!!しかし岩盤は凄まじい火力によって溶けて一瞬でガラスになってしまう!!
「よし!ウンモ!その調子でガンガン壁作っちゃって!」
「我にまかせろ!」
やはり思った通りだ、大地の聖剣を使うことで炎の聖剣の攻撃を防ぐことができる!これならば近づいて一撃を加えるのも満更不可能ではない!大地の聖剣によって生み出された大量の土壁に隠れるように私とグレンと慶次は走り出す!
しかし相手もすぐに対応してきて、今度は地面に炎の聖剣を突き刺し、大地そのものを溶岩に変える!私達は飛び上がり、空中に障害物を作り上げ立体的に動き回る!1人でいい!1人でいいからなんとかして辿り着くんだっ!?
ヂッ
私が乗っていた浮遊する岩石を青色の炎が貫いた。なんとかして直撃は免れたが、炎が頬を掠めた。一瞬掠めただけなのに、皮膚は焼け溶け瞬時に冷え固まる!私の耐熱性能でもあの青色の炎はまずいのか!
「ウンモ!もっと硬いやつ作れないの!?」
「わ、我じゃこれが限界でしゅ。」
やはりウンモじゃ最大値まで引き出せないか!………だが足場を作り、赤色の炎を防げるだけでも十分だ!一年前と違ってまだやれることがある!
「倒す!絶対に!今ここで!」
ッパァァアアアアンンン!!!
大地を蹴飛ばし私は突っ込む!嵐のように渦巻く青色の炎をかわし、地を這う灼熱の波を飛んでかわし、建物の側面を駆け抜ける!飛んでくる幾万の炎の刃が岩盤や壁を溶かしきるが、それでも私は恐れない!立ち止まらない!恐怖に打ち克つ!
更に動きは加速していく!私の姿は炎の光の中に溶け込み、その速さと相まって誰からも視認されなくなっていた!
ギィイイインンッ!!!
炎帝が背後を守る為に生み出していた炎の壁が、凄まじい音を立てながら崩壊した!そして2秒後、別の炎の壁が崩壊!壁がドンドン消えていく!
「…………そこっ!!」
しかし探知魔力によって私が次に行く予測地点を導き出した昴は炎帝に指示を出して攻撃させる!青色の炎の槍が飛んできたっ!
キンッ!
青色の槍が切り裂かれた。大地の聖剣と光剣を両手で持ち刀身をクロスさせて防いだのだ。この時を待っていた!「当てたら勝ち。」と思っている相手の逆をつくために私はかわし続けてきたんだ!咄嗟に大技を放った炎帝は隙だらけ!終わりだ!
勇者と魔族の戦いの基本は魔族が遠距離攻撃をし、それをかいくぐった勇者が近接攻撃で倒すというとてもシンプルなものだ。しかし圧倒的な魔力を持つ魔族………魔王はその例外にいる。イリナが近づいた瞬間、彼を中心に炎が噴き出した。青色の炎が彼を包むと、それは空高くまで伸び上がり炎の柱を形成する。並の魔族の魔力ならばイリナの突進力で突破できるのだが、魔王のそれは掠めただけで死を直感するほどの高威力。とても受け切れるものではない。
「…………くそっ。」
その衝撃によって吹き飛ばされた私はまた突撃するためにすぐに起き上がった。しかし次に私の目に入ってきたのは巨大な炎。前方の全てを覆い尽くした巨大な炎の塊だ。この光景は2度目だ。前はこれから私を守る為にカイが身代わりになって死んでしまったのだ。でも今回は大丈夫、私はかわせる。しかし周りを見てみると、先ほどの私たちの戦いのせいで振り撒かれた青い炎がそこかしこにあって逃げ道がない。…………なら、打ち壊すまで!私は大地の聖剣と光剣を構えた。
いつの間にか私は炎帝の右側に立っていた。私に迫ってくる炎の塊はなく………いや、あるのだが、私はそれの側面を見ていた。位置が………変わってる!私は急いでさっきまで私がいた場所を見ると、そこにはミフィー君が!
「そんなっ!ミフィ」
ドォォオオオンンン!!!!
青色の爆発がミフィー君を飲み込んだ。そんな、また同じ相手に、同じようなシチュエーションで相棒を………友達を失うなんて。
「…………言っただろ、俺は死なないって。」
しかし彼は炎帝の、しかも炎の聖剣の攻撃を喰らったというのに、ケロッとした表情でその爆炎から出てきた。……………は?
「それと…………お前、お前だ。炎帝。」
ミフィー君はこの状況に驚いている炎帝を指さした。
「別に炎帝を名乗るのは構わないが、それならもっと実力をつけなきゃダメだろ。こんなんじゃダメ、ダメダメよ。炎帝の足元にも及ばない。」
そんなことを言いながら彼は悠長に歩いていく。ゆっくり、ゆっくり、無防備に炎帝へと近づいていく。
「こんなんじゃあ勇者領を壊滅させるなんて夢のまた夢だなぁ。」
焦る炎帝が炎を放つが、ミフィー君は防御することなくその攻撃を全て受ける。だが彼には一切のダメージがなく、のんびりと炎帝へと近づいていく。
「お、おまえ!嘘だろ!?なんでこんなところに………っ!!」
「なんでってそんなの決まってるだろ。」
そしてミフィー君が腕を振るうと赤色の炎が発生した。しかしその規模は今までの比ではなく、この城下町の半分を飲み込んでしまった。炎によって吹き飛ばされてしまったのか炎帝と昴の姿はここにはなく、あるのは巨大な穴だけ。
「俺がここにいるのは簡単なことだ。」
そう言うとミフィー君は振り返って私を見つめてきた。そして自身の心臓を親指で示してきた。
「イリナに殺してもらう為だよ。この俺、炎帝が罪滅ぼしのためにな。」
「…………というのが3日前にあったわけだよ。どう思う?」
俺は一時限目が始まる自由時間で、後ろにいる幼馴染、岩村遼鋭に話しかけた。
「ああ、君の夢の話でしょ。いいんじゃない君が死なないで済んで。君が死んでたら僕泣いてたよ。………で、それが今の君の憂鬱と何か関係あるわけ?」
「めっちゃ関係してるに決まってんだろ。俺はもうあれよ、マジで。人生で1番と言っていいほど今落ち込んでる。」
「君の人生で一番の落ち込みはこんなもんじゃないから安心していいよ。…………イマイチ全貌が見えないな。」
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「あ、宏美!聞いてよ!実は今俺憂鬱で……」
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隣の宏美が小さな声で聞いてくる。
「夢っていうか現実っていうか…………その、あれだ、イリナがな………」
「転入生が新しくこのクラスに来ることになった。今日からクラスの一員として仲良くしてやってほしい。…………はーい、入ってきてください。」
ガラララララッ
扉が開く音を目を閉じながら俺は聞いた。あーーいやだぁ、マジで嫌だぁ。俺はチラッと、指の隙間から教卓の方を見るとそこには…………
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