Face of the Surface

悟飯粒

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彼らは新人類編

ちゅきちゅき

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 「頼むぅ~。お前も来てくれ遼鋭ぉ~。」

 宏美ちゃんに引きずられながら遼鋭君に電話をかけるミフィー君。めっちゃ器用なことしてるな………

 「君は女の子ともっと喋れるようになった方がいいよ。」

 それだけ言うと遼鋭君は通話を切ったのだろう、絶望した顔でこっちを見つめてくるミフィー君。ひょんなことから私達はカラオケに行くことになった。私、宏美ちゃん、姫崎ちゃん、ミフィー君が乗り込むわけだ。問題があるとすれば男はミフィー君しかおらず、彼からすればとても気まずいところだろう。男友達に必死に電話をかけているわけだが、そもそも彼、友達と言えるような人が遼鋭君しかいないからどうしようもないよね。

 「………カラオケってあれでしょ?唐揚げ桶一杯分の略の方でしょ?」
 「んなわけあるか。カラオーケストラの略の方だ。歌うんだよ。」
 「やだー!やだー!1人で鼻歌口ずさむのは良いけど、みんなの前で大声で歌うのやだー!」
 「子供じゃないんだから駄々こねるなよ。」
 「15才はまだ子供ですぅ!飯田狩虎15ちゃい!」
 「はーいはい、一緒にアンパンマンマーチ歌いましょうねー。」
 「キャッキャッ。」

 あの2人やっぱり仲良いよなぁ。ノリが完璧だよね。

 「飯田さん!ここはアンパンマンマーチではなくてぼくドラえもんを私と一緒に歌いましょう!」

 そして変な対抗の仕方をする姫崎ちゃん。絶対にその仕方は間違ってるんだよなぁ。

 「ドラえもんちゅき。ボクノートもっとちゅき。」
 「心に突き刺さったぁ!」

 キモさしか突き刺さらないと思うけどね。

 「…………」

 そして私をガン見してくるミフィー君。いや、私に振るのやめてくんない?

 「………と、とっとこー走るよはむたろ~。」
 「ハム太郎キライ。」

 ぶっ殺されてねーのかお前。私が頑張って知恵を振り絞ったのにその反応はなんだ。

 「………そ、その…………実は私もカラオケは苦手でして……………」

 カラオケに行く雰囲気が高まっていくのを感じ、今しか断りを入れるタイミングはないなと私は思ってきりだした。

 「そうなのかー。私と狩虎は初めて行くからむしろ丁度良いかもな。」
 「僕カラオケキライ。唐揚げだいちゅき。」

 うーーん、この空気でカラオケ行きたくないなぁ。1人は幼児退行し始めちゃったし………

 「姫崎鈴音は激ウマですよ激ウマ!上北高校のマドンナとは私のことよ!」
 「マドンナキライ。テイラースウィフトとカーペンターズとビヨンセちゅき。」

 やけに具体的だな…………

 「……………」

 だから私をガン見してくるんじゃないよ。なんでそんなに私に何か言わせたいの?

 「………たまにアヴリル・ラヴィーン聞」「キライ。」

 …………マジでぶっ殺すぞ。

 「そ、そう言えばなんで姫崎ちゃんはこんなクソボケごみ男のミフィー君に猛アプローチしてるんですか?やめた方がいいですよ。」
 「イリナちゅき。」

 なんで暴言吐いたら好感度あがるんだよ。

 「そりゃあクソボケゴミ男だからですよイリナさん!」
 「姫崎さんちゅき。」
 「付き合いましょう飯田さん!」
 「キライ。」

 あーもーやだこの空気。姫崎ちゃんと遭遇してからカオスなんだけど。会話がちゃんと成立してない。元に戻ってくれないかなぁミフィー君。

 「で、カラオケが嫌なのなら行かない方が良いんじゃないのか?俺はただ嫌いなだけだけれど、イリナさんの場合は違う理由があるかもしれないだろ?」

 ようやく元に戻ったと思ったら、今度は私をダシにしてカラオケから逃げようとしてるんだけどこの男。

 「いえ、ただ嫌いなだけですから。カラオケにいきましょう。」
 「イリナキライ。」

 また戻りやがったし………まぁいい。そんなにカラオケが嫌なのなら、むしろ聞いてみたくなったわ。いいよ、行ってやろうじゃないの。



 カラオケに来たのはこれで人生2度目だ。最初はそんなに楽しいと思わなかったけれど、今はミフィー君の歌声を聞けると思うと楽しい。あんだけ拒否するってことはとても下手なんだろうからね!バカにしてやる!

 「ひとまず[最後の雨]歌うか。俺大好きなのよあれ。」
 「最後の雨?…………なんですかそれ。」
 「古い歌だよ。多分聞いたことはあると思う。有名だからね、古いけど。」

 機械をいじりながら説明するミフィー君。

 「ここ押せば送信できるの?」
 「そうですよ飯田さん!」

 本当に初めて来るんだな…………こんなに慣れてない人間を見るのは初めてだ。

 「それじゃあいかせていただきましょう!」

 スローテンポの音楽が流れ、ミフィー君はマイクを握り口元に近づけた。そして歌い始めたのだが………うーーん、バカにし辛い上手さだ。頑張って全力で歌ってるのはわかるけれどシンプルに下手。自分の声に慣れてないのがよくわかる。初めてのカラオケだから仕方ないけれど、これをバカにするのはちょっと…………

 「もうちょっと自分を曝け出せよ、オラ。恥ずかしがってないでもっと感情込めろ。」

 しかし宏美ちゃんはズカズカとミフィー君にアドバイスを言い続ける。

 「ふぅー………カラオケキライ。」

 歌い終わったミフィー君は無表情で幼児退行していた。これは気持ちよく歌えなかったんだろうね………

 「つーか俺にそんなボカボカ言ってくるのならお前が手本見せてみろよ!下手だったらぶちぎれるぞ!」
 「あーはいはいはい、いいよそんな演技しなくても。私の美声を聞きたかったんだろ?」
 「お前からは罵声しか聞こえなかったけどな。」

 宏美ちゃんは[奏]を送信して歌い始めた。うわーお、低音がめっちゃ綺麗。そしてたまに入る高音が突き抜けている。聞いていて気持ち良いなぁ…………

 「………どうよ、上手いだろ。」
 「宏美ちゅき。」
 
 実力で黙らせちゃったよ。うわーやだなぁ、この後に歌いたくないなぁ。

 「私も負けていられません!ボクノート歌ってやりますよ!」

 なんでか分からないけどスキマスイッチを歌う流れが出来ちゃったなぁ。姫崎ちゃんも意気揚々と歌うのだが、あーー上手いねぇ。全力で上手いねぇ。全体的にキーが高めで、声が聞いていて可愛らしい。全力で萌え声作ってるな………

 「どうですか飯田さん!」
 「姫崎さんちゅき。」
 「付き合いましょう!」
 「キライ。」

 この流れは定番なのか………

 「………………」

 そして私をガン見してくるミフィー君。この流れも定番なのか…………

 「………じゃ、じゃあ全力少」「キライ。」

 危うく手が出る所だった私は、その衝動性を使って全速力でマイクを引っ掴んだ。あぶなっ。全力で殴りに行く所だったあぶなっ!

 「2人が連続してスキマスイッチ歌うからってイリナさんまで同じの歌う必要はないだろぉ?自分の好きなの歌えよ、どうせ下手なんだから。」
 「………全力少年で。」

 ムカつくなぁこいつ。私の歌唱力でギャフンと言わせてやる。
 ピアノの音が流れていく。軽快に流れるメロディラインを聞くと心がウキウキする。そして………私は歌った。声を作りながらも心の底から響かせるように、大きな声で。歌っていて思ったのは、これは私とミフィー君、2人に当てはまる歌詞だってこと。彼は自分の階級を投げ捨て新しいことを………私に殺されることを決めた。でも私は?私はただ昔のことにしがみついているだけでしかない。私も[既存の私]を壊す時が来始めているのではないだろうか。既存の価値観じゃあもう間に合わない。

 「………………」

 ミフィー君も細い目で歌詞を眺めていた。

 「ほぇーー上手いじゃんイリナちゃん。」
 「凄いですよ!」

 歌い終わった後2人が私を褒めてくれた。

 「…………ちゅき。」

 そしてミフィー君も褒めてくれた。口を尖らせてだけど。

 「じゃあこの中で1番下手なのは狩虎ってわけか。やっぱりお前は冴えないなー。」
 「宏美キライ。」
 「はいはい、コーヒー牛乳やるよ。」
 「宏美ちゅき。」

 やっすいなぁ………

 こうして私達は2時間ほど歌って楽しんだ。カラオケを楽しめたのは人生で初めての経験で………嬉しかったなぁ。



 昨日の一件で呼び出された私達はまたも勇者領の中心地、剣戟の城ホワイトドリームに足を運んでいた。

 「飯田狩虎、きさま、なぜ青ローブを仕留めなかった。」

 話はそう、連続失踪事件の裏にいた青ローブについてだ。

 「それは昨日言った通りです。敵はバカじゃあない、逃げる算段もつけずに俺の前に現れると考える方がどうかしてますよ。」
 「本当にそうなのか?裏で繋がっているのではないか?」

 ………そう疑うのも仕方がないだろう。というか私だってその疑いを払拭することはできない。一年前、彼は私達の目の前で青ローブを殺したのに、なぜか奴は生きていた。彼を助けるために殺したふりをしたのだとすれば、今回もまた逃したのではと考えてしまうのは当然だ。

 「裏で繋がっていたとして、俺になんのメリットがあるんですか?」
 「そ、それは………勇者領を壊滅させるために。」
 「だったら俺が暴れればいいだけですよ。………みなさんが勘違いしているようなのでハッキリ言いますよ。俺が勇者を陥れるのに小細工は必要ない、シンプルな力で全部ぶっ壊せばいいんです。その気があればの話ですけどね。」

 ミフィー君は一切ひかない。それはそうだ、彼は何も窮していないのだからね。当たり前のことを当たり前のように言っている、それだけだ。

 「それにみなさんはボタン一つで俺を殺せるわけじゃあないですか。主導権はそっちが握っているのに何をイラついてるんですか。俺を殺したいのならばボタンを押せばいい………それだけなんですよ。それじゃあ失礼します。」

 そして私達は部屋を後にした。主導権を勇者領が握っているって話………実は本当じゃあない。なぜなら私達はミフィー君の力に縋っているからだ。圧倒的に戦力が足りないこの状況で、意味もなく彼を殺してしまえば私達は壊滅する。ボタンを押せるのは、彼が裏切っていると明確にわかった時だけ。でもそれじゃあ遅すぎる。本当の意味で主導権を握っているのはミフィー君で、ボタンはこの協定を結ぶためのただの彼からの譲渡に過ぎないのだ。

 「さーてと、どうにかしてカースクルセイドを追わないとな。このままダラダラあっちこちをフラついてもなんの解決にもならない。直談判しに行こう。」
 「今日はやけに乗り気だね………前までは積極的に首を突っ込みたがらなかったのに。」
 「そりゃあ青ローブがいるってわかったんた。俺は奴を捕まえたいんだ。」
 「…………気になるんだけどさ。」

 昨日からずっとあった疑問を、私はミフィー君にぶつけてみた。

 「青ローブと君の関係性って何?仲間なの?敵なの?」

 一年前、青ローブが何かをしてミフィー君を呼び出した。しかしその結果、青ローブは彼に殺されてしまう。あの時は炎帝が、ミフィー君が頭の狂ったヤバいやつなのかと思ったけど、彼と喋ってからその考えは変わっている。彼はとても合理的だ。明確なメリットがなければ行動は起こさない。

 「…………1年前まではちゃんと仲良くしてたよ。でも奴に裏切られた。今は敵だ。」
 「…………君はさ、一年前、なんで私達の前に現れたの。なんであんなに勇者を殺したの。」

 もうどうにも我慢できなかった。ずっとずっと聞きたかったことを、今私はようやくいえた。私の言葉を聞いて彼は細い目で私を見てくる。「この時が来たか……」みたいな表情でだ。

 「そんなの決まってるだろ。大切な人を守るためだよ。」

 それだけ言うと、彼はこの城の上階を目指して歩き始める。

 「宏美ちゃんとか?」
 「俺があいつを守る日なんて今後、一生こないよ。俺はあいつに守られる立場だからな。………あいつじゃないよ、もっと身内だ。」
 「じゃ、じゃあ彼女!?」
 「いないって言ってるだろそんな存在。」
 「じゃあ誰さ!君の両親がこの世界に来てるなんて思えないんだけど!」
 「ああその通りだ。………弟妹だよ、弟妹。俺には妹と弟が1人ずついる。そいつらを守るためにあの戦場に乗り込んだ。」
 「ひ、人質に取られたとか?」
 「まぁそんなもんだ。」

 それから先、彼は無言だった。人質に取られたと弟妹を守る為に彼は大量の人間を殺したというのだろうか。確かに身内を守るのは大切だけれど、だからって人を殺すなんて…………もっと上手く立ち回れなかったのだろうか。私の頭の中には更に別の疑問が浮かんだ。それは「魔族だから勇者を殺すことに躊躇いがなかった。」からなのか、それとも「もっと別の事情があった。」からなのか………聞きたくても、彼はもう答えてくれそうにない。
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