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彼らは新人類編
天天災才
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狩虎に吹っ飛ばされたイリナはフラつきながら立ち上がる。今のダメージもそうだが、そもそもイリナの身体には穴が空いているのだ。普通に動けていること自体がおかしい話なわけだが、それでもイリナは進み続ける。重要な局面で一度挫折した彼女にはわかるのだ。ここで立ち止まってしまったら二度と立ち直れなくなり、取り返しがつかなくなると。立ち止まってはいられない。意識が朦朧としようがなにをしようが歩かなければいけないのだ。
「ふんっ………ボロボロのくせによーやるよ」
後ろからグレンが追い抜いていった。彼は一度もイリナに振り向くことなく進み続ける。
「うるさいなぁ。彼を止めなきゃいけないんだから仕方ないでしょ」
そしてイリナの歩く速度が増し、グレンに追いつく。
「狩虎かぁ………あいつは大変だな。いろんなもの背負いこんで身動き取れなくなっちまってる。俺の知り合いにも同じようなやつがいるからわかるよ。………しょうがねぇから救ってやるか」
いつのまにか現れていた鎧を着た小間使いが私の穴が空いた身体に触れていた。すると回復の魔法でも働いているのかあっという間に傷口が塞がった。
「新しい組織を作っただけだ。ダメージは残ってるが、まぁ、お前なら大丈夫だろう」
「………昨日とか顔を見せてたのも、ミフィー君を気にしてたから?」
塞がった傷口は確かに痛むがさっきよりはマシだ。これでなんとかして動ける。
「あいつだけじゃねぇ、お前と狩虎とユピテルを見てると不安でな。雰囲気が張り詰めているっていうか……ちゃんと互いに理解しあってないんだなってよく分かったからな。しょうがねぇから見に行ったんだ」
………グレンが昴さんと知り合いだった理由がよく分かった気がする。彼は人に気を使いながら正しい行動が出来る人なのだろう。
「んなことはどうでも良いだろ、狩虎を止める。話はそこからだ」
私は頷いてミフィー君の方を見る。彼は炎を撒き散らし、無差別に人を殺し続けている。真っ赤に燃え上がる世界で赤黒く輝く彼は、他の人からすればとても恐ろしく映るのだろうけれど………やっぱりわたしには彼が泣いているようにしか見えない。
「ひとまず1発ぶん殴るのを目標にして動くぞ、いいな」
「もちろん、言われなくても」
私達は飛び出した。
今この大地は全て炎で満たされている。地上を歩いてはダメだ、私は磁力を発生させ大地に反発させて空を飛び回る。炎の海を飛び越え、たまに起きる大きな波をかわし、くぐりぬける。
ギィィインン!!!
私目掛けて飛んできた炎の柱を光剣の側面で受け止め吹き飛ばされる!馬鹿げた威力だ、光剣じゃなければ今の一撃で間違いなく死んでいた。
「グレン!あんたはどうすんの!」
「大地の聖剣借りてっからそれでなんとかする予定だ」
ミフィー君の攻撃は全てを消滅させるが聖剣なら消されない。聖剣を盾にして近づくしかないだろう。
私は空中で体勢を立て直すとミフィー君めがけて空を駆ける!私に放たれる炎の攻撃を全てかわし残り1km!右脚に力を込め、はちきれんばかりに空を蹴り飛ばし最後の一歩を踏み込む!
「それじゃあダメだ」
踏み込んだと同時に私の前方を遮る炎の壁!炎の壁を切り裂き窮地を脱出する!けど!
ズドォォオオンンン!!!
炎の柱が高速で突出して吹き飛ばされる!!私の動きの細部が見られている!!
「おいイリナ、狩虎はお前の動きの全てが見れていると考えるべきだ。考えなしに突っ込んでもいいことはないぞ」
「でも私にはそれしかないんだけど!?」
私の戦い方は近づいてぶん殴る。それだけだ。それを超える戦い方などないんだ。通じないと分かっていても、通じるまでそうするべきなんだ!
「……お前は自分の強さを押し付けるのは得意だが、逆に敵の弱さを攻めることに慣れていない。狩虎に強さを押し付けたって勝てないだろ?奴の弱さを攻めてみたらどうだ」
「彼の弱さ?そんなの………」
私は考える。彼の弱さ?全ての範囲を無条件で焼ける彼に弱さがあるとは思えないんだけど…………
「………お前だよ」
グレンはミフィー君の方を見ながら呟いた。
「あいつの力ならこの戦場を一瞬で消滅させられる。それでもしないのは、お前を巻き込まないようにするためだ。奴はお前を殺せない。お前が攻めても吹き飛ばすことしかないのがいい証拠だろ」
「…………そんな……」
「お前と狩虎の間に何があったのかは知らないが、カイを殺しただけであそこまでお前に執着するわけがない。もっと複雑な………不可解な理由があるんだろうな」
私は………。やはり私はまだ、彼のことを知らない。彼が今なにを思い何に悩んでいるのか一切分からない………でも苦しんでいることだけはよくわかる。
「だからイリナ、お前は戦わずにやつに接近しろ。攻撃を避けるな。一直線に行ってこい。馬鹿正直に、徹底的に、真っ直ぐに。お前にしかできないことだ」
私は………頷いた。集中しすぎて自分が頷いたのかどうかも分からなかったけれど、きっとそうだ。
つま先で地面を小気味良くつつき、私は呼吸を整える。かわさない、かわさない………徹底的に、全力で。
その一歩で空気が破裂した。破裂音と共に進む私の進行。ただ速さだけを求めて私は空を駆ける。
「………マジかよ」
そしてその姿を見てミフィー君が呟いた。剣も持たず馬鹿正直に直進する様を見て悟ったのだ。それでも彼は私に向けて攻撃を放つ。何百と炎が飛んでくるが、しかしそれは私には当たらずにどっかに消えていく。私目掛けて炎の柱が突出するが、それもまた外れ空高く消えていく。
「…………くんじゃねぇ!」
そして私の目の前を完全に塞ぐ高さ100mの炎の壁。
「いいや!」
壁を光剣で切り裂き私は彼の前に躍り出る!
そして私は真正面から飛び蹴りをかました!
「助けに来た!」
「いって……ふざけんなよ!助けるってなんだよ!倒すの間違いだろ!」
彼は起き上がり私から一歩距離をとった。
「いいや正しいよ。私は君を助けに来たんだ」
「だからなんで!?今ここの人達殺してるじゃん!大体8割は殺したよ!?そんな俺を助ける!?馬鹿なことを言うな馬鹿なことを!」
だから私は一歩踏み出す。
「それに俺は一年前に大量の勇者を殺してカイも殺した!そんな俺を助ける!?ありえない!殺さなきゃいけないんだよ俺は!そういう存在だ!」
「…………そんなこと言ったら私だって沢山の魔族を殺している。何年もかけて皆殺しにした。数だけで言えば君を余裕で超えるよ」
人を助ける為に大量の魔族を殺した私の手は血で汚れている。
「君が前、私に言ったことが今になってようやくわかるよ。私はカイを失った。でも本当は私にその資格はなかったんだ。それまでに私はたくさんの命を奪って、その隣で笑っていた人達を不幸にした。………私は英雄である前に最低な人間だった。それを自覚できてなかったんだ」
彼と出会って私はわかった。魔族だろうとなんだろうと私は人を殺し、そのおかげで世界が平和になっていると浮かれていた。
「君が一年前、あの場で勇者を殺したのは私と同じ行為だった。自分の信じる正義の為に人を殺すっていう、私が今までしてきたことのバチが返ってきた……それだけだったんだ」
私は希望の象徴であると同時に、沢山の命を奪った絶望の象徴なのだ。だからきっと………
「私たちからすれば君は絶望の象徴だけれど、魔族からすれば希望の象徴………立場が逆なだけなんだよ」
たったそれだけの違いなんだ。だから私達は手を取り合うことができるはずなんだ。
私は手を差し伸ばした。
「………いいや、俺にはまだやることがある」
しかし彼は私の手を取らなかった。キツく固めた握り拳を微動だにもさせない。
「ここでカースクルセイドを殺しきれなかったら勇者領は終わる。俺の力が解放されたってことはそういうことだ」
炎が渦巻き、私達が喋っている間も彼は人を燃やし続ける。悲鳴をあげる間もなく消えていく命。怨嗟が炎と共に渦巻いている。
「俺は寿々乃井さんに[現状をどう頑張っても打開できそうにも、助かりそうにもない時にボタンを敵に渡してくれ]と頼んでいたんだ。そしてこれだ。第二類勇者は裏切り、もう勇者領に反撃する力はない。………俺がここの主要戦力を殺し、最後にイリナに殺されれば今後は安泰だろう。魔王を殺したお前という脅威が強く人を縛り付け誰も裏切ろうとしなくなる。これが1番なんだ、これ以上の選択肢はない」
「いや!君が生き残って勇者領の味方になればいい!そうすれば全てが丸く収まる!」
「今までの勇者の反応を見ればわかるだろ?無理だって。俺はたくさんの勇者を殺し、そして今回、俺は裏切りまた多くの人間を殺した。こんな奴が受け入れられるなんて不可能なんだよ」
ああ言えばこう言いやがって………
「それでも!頑張れば認められるかもしれないじゃん!」
「無理だよ………ほら」
炎が壁を作り出すとその壁面が爆発した!更に更に!何度も立て続けに爆発する!魔力による一斉砲撃だ!誰だ!?この状況で指揮できるような人なんて………
「ユピテルさんだな。あの人はちゃんと俺を恨んでくれていた。やっぱりあの人にボタンを渡してよかったよ」
ユピテルさんが指揮する勇者の一部隊は交互に魔力を放ちミフィー君を攻撃する。しかしそんなもので彼の防御を崩すことはできない。何も起きてないかのように彼はユピテルさんから視線を外した。
「人は結果しか見ない。感情だとか過程なんてあやふやなもので判断を下さない。………今のユピテルさんのように裏切った俺を勇者は誰も許さないよ。だから」
彼が私のお腹に手を置いた。次の瞬間、私は凄まじい勢いで吹き飛ばされる!これは………なんて推進力だ!ジェットか?いやもっと原始的な………っ!!
「俺を殺さずに止めるなんて不可能なのさ。さぁこいよ、止めたいんだろ?殺戮を俺の死をもって終わらせてみろ」
私は体勢を立て直すとユピテルさんの方へと向かう!
「手を貸してユピテルさん!」
「手を貸すと言っても具体的に何をすればいい!奴は魔王だぞ!有効策などない!」
どうやって移動していたのかと思ったが、なるほど。誰かの魔力で浮遊をしていたらしい。空を飛ぶ彼らの隣に立ち、私は光剣を光らせる。
「私と彼が戦っている時、一度だけ壁を作って欲しい。彼が逃げられないようにね」
「流石のイリナと言えど近づけないだろ!」
「大丈夫、彼は私を攻撃できないから」
「………なんだそれは」
光剣が光り輝く小手に変化し私の両腕に装着される。なるべくこれだけは使いたくなかったけど………相手が相手だ、どうしようもない。
「とにかく!私が戦っている間はなんとか生き残って!」
私は空を駆け抜けミフィー君に襲いかかる!!
ッッパァァアアンンン!!!!
拳を振るい炎とぶつかり衝撃波が発生した。光剣のグローブ形態は光速に近い速度でぶん殴れるようになる。ただしあまりの破壊力に私の拳が破壊されてしまうのだが、そんなこと言ってられない。私は粉砕骨折した右手で再度炎をぶん殴った!炎が弾け飛び彼への道が開かれる!
ギィインンン!!!
しかし私目掛けて放たれる炎を両手でガードすると私は吹き飛ばされた!!くそ!!くそくそ!!ダメだ彼の魔力は無尽蔵だ!!隙なんてあってないようなもの!!………この間にもたくさんの人が殺されてしまっている!!なんとかするんだ!!
無尽蔵に生み出される炎の壁を何度も何度も、何度も何度も殴り続ける!!その度に両腕から血が噴き出し骨が粉末になっていく!!もっと………もっと力を!!
全力でぶん殴ると目の前にあった炎の壁が全て吹き飛んだ!!何だこの威力!!私は自分の身体を見ると光り輝く鎧が私の上半身を包んでいた。……進化している。光剣のその先の力を引き出しつつある!
「頼むから私に力を貸して!!」
私の想いに呼応するかのように光り輝き、私の身体全てを鎧が覆った。雷を弾かせながら光り輝く鎧は、まるで何も着ていないかのように軽い。
「死舞羽衣・神鳴闘貴」
ミフィー君の炎によって晴れ渡っていた空が、鎧の顕現と共に曇天へと変わり雷を落とす。不安定すぎる気圧の変化が私と彼の力のぶつかり合いでようやく正常化したのだ。大地に落ちる前に蒸発する雨、降り注ぎ炎と混ざり合い火花を散らす雷。
私は飛び出した!
イリナは鎧の力で光速の10分の1の速度、約時速3万kmで駆け抜ける。鎧が生み出す雷が空気を焼くことで空間に通り道を作りようやく可能なこの速度。ロケットの速度とほぼ同じこの速度を視認から反撃することは至極困難である。さらに言えば完璧に撃退することなど不可能だろう。彼女は引き絞り拳を振り払った。
ッパパァアンンン!!!!
が、狩虎にはそれが「見えていた」。イリナの攻撃に完璧に合わせ、腕が伸びきり最大到達点に至る前に彼はカウンターを成功させてしまった。炎によって顔面を叩かれ、炎の海の上で気絶するイリナ。
魔族は運動能力が絶望的だが五感と魔力が突出している。さらに勇者に対抗する為なのだろうか特に視力が凄まじい。魔王にもなるとイリナの動きなど止まって見えるだろう。ただ今回のイリナの速度は勇者が、いや、生物が出していい速度を大きく超えている。いくら魔王といえど反応しつつ完璧なカウンターを決めれるものではないのだ。
だが狩虎は日本屈指の進学校で首席をとるような人間だ。本人は努力しただけだと言うが、努力しただけでそんな地位を取れるものではない。間違いなく才能であり、その才能が光速に近い状況で全ての情報を処理しカウンターを成功させたのだ。魔王という天災と知性の天才が合わさり生み出された超天才。それが飯田狩虎なのである。
「イリナ、お前は強いよ。勇者の中で間違いなく1番強い。光剣に選ばれ、色んな人に認められて悪を倒してきた。窮地に陥っても奇跡を信じ悪を倒しきる。強いよ、間違いなく」
赤色の炎がうねり世界を覆っていく。雨雲も空も、漆黒の壁も、世界の全てが赤色に染まり飲み込まれる。
「だが俺だけは話が別だ。奇跡なんて起きやしない。希望なんて生まれやしない。そんなもの、生まれようとするその場で焼断する」
一年前から始まった飯田狩虎の終わりの物語。それはこの戦場にいる全ての命を巻き込み、彼自身の命も巻き込み………最後は恒久的な平和という形で締め括られようとしていた。
「それでも人は夢を見て希望を作り出すものじゃ。歴史はそう繰り返してきた。なぁ狩虎ちゃん、お前もそうじゃろ?」
腰に佩びた剣を引き抜きクソジジイが歩いてくる。現勇者領の最高階級。全ての希望を生み出したとされる始まりの王であり希望の王。それが剣をもって狩虎の前に立ちはだかる。
「俺は例外だ。俺には夢も希望もない」
「いいや。心の底に沈め込んだその希望を掬い出してやる」
勇者の王と魔族の王が対峙した。
「ふんっ………ボロボロのくせによーやるよ」
後ろからグレンが追い抜いていった。彼は一度もイリナに振り向くことなく進み続ける。
「うるさいなぁ。彼を止めなきゃいけないんだから仕方ないでしょ」
そしてイリナの歩く速度が増し、グレンに追いつく。
「狩虎かぁ………あいつは大変だな。いろんなもの背負いこんで身動き取れなくなっちまってる。俺の知り合いにも同じようなやつがいるからわかるよ。………しょうがねぇから救ってやるか」
いつのまにか現れていた鎧を着た小間使いが私の穴が空いた身体に触れていた。すると回復の魔法でも働いているのかあっという間に傷口が塞がった。
「新しい組織を作っただけだ。ダメージは残ってるが、まぁ、お前なら大丈夫だろう」
「………昨日とか顔を見せてたのも、ミフィー君を気にしてたから?」
塞がった傷口は確かに痛むがさっきよりはマシだ。これでなんとかして動ける。
「あいつだけじゃねぇ、お前と狩虎とユピテルを見てると不安でな。雰囲気が張り詰めているっていうか……ちゃんと互いに理解しあってないんだなってよく分かったからな。しょうがねぇから見に行ったんだ」
………グレンが昴さんと知り合いだった理由がよく分かった気がする。彼は人に気を使いながら正しい行動が出来る人なのだろう。
「んなことはどうでも良いだろ、狩虎を止める。話はそこからだ」
私は頷いてミフィー君の方を見る。彼は炎を撒き散らし、無差別に人を殺し続けている。真っ赤に燃え上がる世界で赤黒く輝く彼は、他の人からすればとても恐ろしく映るのだろうけれど………やっぱりわたしには彼が泣いているようにしか見えない。
「ひとまず1発ぶん殴るのを目標にして動くぞ、いいな」
「もちろん、言われなくても」
私達は飛び出した。
今この大地は全て炎で満たされている。地上を歩いてはダメだ、私は磁力を発生させ大地に反発させて空を飛び回る。炎の海を飛び越え、たまに起きる大きな波をかわし、くぐりぬける。
ギィィインン!!!
私目掛けて飛んできた炎の柱を光剣の側面で受け止め吹き飛ばされる!馬鹿げた威力だ、光剣じゃなければ今の一撃で間違いなく死んでいた。
「グレン!あんたはどうすんの!」
「大地の聖剣借りてっからそれでなんとかする予定だ」
ミフィー君の攻撃は全てを消滅させるが聖剣なら消されない。聖剣を盾にして近づくしかないだろう。
私は空中で体勢を立て直すとミフィー君めがけて空を駆ける!私に放たれる炎の攻撃を全てかわし残り1km!右脚に力を込め、はちきれんばかりに空を蹴り飛ばし最後の一歩を踏み込む!
「それじゃあダメだ」
踏み込んだと同時に私の前方を遮る炎の壁!炎の壁を切り裂き窮地を脱出する!けど!
ズドォォオオンンン!!!
炎の柱が高速で突出して吹き飛ばされる!!私の動きの細部が見られている!!
「おいイリナ、狩虎はお前の動きの全てが見れていると考えるべきだ。考えなしに突っ込んでもいいことはないぞ」
「でも私にはそれしかないんだけど!?」
私の戦い方は近づいてぶん殴る。それだけだ。それを超える戦い方などないんだ。通じないと分かっていても、通じるまでそうするべきなんだ!
「……お前は自分の強さを押し付けるのは得意だが、逆に敵の弱さを攻めることに慣れていない。狩虎に強さを押し付けたって勝てないだろ?奴の弱さを攻めてみたらどうだ」
「彼の弱さ?そんなの………」
私は考える。彼の弱さ?全ての範囲を無条件で焼ける彼に弱さがあるとは思えないんだけど…………
「………お前だよ」
グレンはミフィー君の方を見ながら呟いた。
「あいつの力ならこの戦場を一瞬で消滅させられる。それでもしないのは、お前を巻き込まないようにするためだ。奴はお前を殺せない。お前が攻めても吹き飛ばすことしかないのがいい証拠だろ」
「…………そんな……」
「お前と狩虎の間に何があったのかは知らないが、カイを殺しただけであそこまでお前に執着するわけがない。もっと複雑な………不可解な理由があるんだろうな」
私は………。やはり私はまだ、彼のことを知らない。彼が今なにを思い何に悩んでいるのか一切分からない………でも苦しんでいることだけはよくわかる。
「だからイリナ、お前は戦わずにやつに接近しろ。攻撃を避けるな。一直線に行ってこい。馬鹿正直に、徹底的に、真っ直ぐに。お前にしかできないことだ」
私は………頷いた。集中しすぎて自分が頷いたのかどうかも分からなかったけれど、きっとそうだ。
つま先で地面を小気味良くつつき、私は呼吸を整える。かわさない、かわさない………徹底的に、全力で。
その一歩で空気が破裂した。破裂音と共に進む私の進行。ただ速さだけを求めて私は空を駆ける。
「………マジかよ」
そしてその姿を見てミフィー君が呟いた。剣も持たず馬鹿正直に直進する様を見て悟ったのだ。それでも彼は私に向けて攻撃を放つ。何百と炎が飛んでくるが、しかしそれは私には当たらずにどっかに消えていく。私目掛けて炎の柱が突出するが、それもまた外れ空高く消えていく。
「…………くんじゃねぇ!」
そして私の目の前を完全に塞ぐ高さ100mの炎の壁。
「いいや!」
壁を光剣で切り裂き私は彼の前に躍り出る!
そして私は真正面から飛び蹴りをかました!
「助けに来た!」
「いって……ふざけんなよ!助けるってなんだよ!倒すの間違いだろ!」
彼は起き上がり私から一歩距離をとった。
「いいや正しいよ。私は君を助けに来たんだ」
「だからなんで!?今ここの人達殺してるじゃん!大体8割は殺したよ!?そんな俺を助ける!?馬鹿なことを言うな馬鹿なことを!」
だから私は一歩踏み出す。
「それに俺は一年前に大量の勇者を殺してカイも殺した!そんな俺を助ける!?ありえない!殺さなきゃいけないんだよ俺は!そういう存在だ!」
「…………そんなこと言ったら私だって沢山の魔族を殺している。何年もかけて皆殺しにした。数だけで言えば君を余裕で超えるよ」
人を助ける為に大量の魔族を殺した私の手は血で汚れている。
「君が前、私に言ったことが今になってようやくわかるよ。私はカイを失った。でも本当は私にその資格はなかったんだ。それまでに私はたくさんの命を奪って、その隣で笑っていた人達を不幸にした。………私は英雄である前に最低な人間だった。それを自覚できてなかったんだ」
彼と出会って私はわかった。魔族だろうとなんだろうと私は人を殺し、そのおかげで世界が平和になっていると浮かれていた。
「君が一年前、あの場で勇者を殺したのは私と同じ行為だった。自分の信じる正義の為に人を殺すっていう、私が今までしてきたことのバチが返ってきた……それだけだったんだ」
私は希望の象徴であると同時に、沢山の命を奪った絶望の象徴なのだ。だからきっと………
「私たちからすれば君は絶望の象徴だけれど、魔族からすれば希望の象徴………立場が逆なだけなんだよ」
たったそれだけの違いなんだ。だから私達は手を取り合うことができるはずなんだ。
私は手を差し伸ばした。
「………いいや、俺にはまだやることがある」
しかし彼は私の手を取らなかった。キツく固めた握り拳を微動だにもさせない。
「ここでカースクルセイドを殺しきれなかったら勇者領は終わる。俺の力が解放されたってことはそういうことだ」
炎が渦巻き、私達が喋っている間も彼は人を燃やし続ける。悲鳴をあげる間もなく消えていく命。怨嗟が炎と共に渦巻いている。
「俺は寿々乃井さんに[現状をどう頑張っても打開できそうにも、助かりそうにもない時にボタンを敵に渡してくれ]と頼んでいたんだ。そしてこれだ。第二類勇者は裏切り、もう勇者領に反撃する力はない。………俺がここの主要戦力を殺し、最後にイリナに殺されれば今後は安泰だろう。魔王を殺したお前という脅威が強く人を縛り付け誰も裏切ろうとしなくなる。これが1番なんだ、これ以上の選択肢はない」
「いや!君が生き残って勇者領の味方になればいい!そうすれば全てが丸く収まる!」
「今までの勇者の反応を見ればわかるだろ?無理だって。俺はたくさんの勇者を殺し、そして今回、俺は裏切りまた多くの人間を殺した。こんな奴が受け入れられるなんて不可能なんだよ」
ああ言えばこう言いやがって………
「それでも!頑張れば認められるかもしれないじゃん!」
「無理だよ………ほら」
炎が壁を作り出すとその壁面が爆発した!更に更に!何度も立て続けに爆発する!魔力による一斉砲撃だ!誰だ!?この状況で指揮できるような人なんて………
「ユピテルさんだな。あの人はちゃんと俺を恨んでくれていた。やっぱりあの人にボタンを渡してよかったよ」
ユピテルさんが指揮する勇者の一部隊は交互に魔力を放ちミフィー君を攻撃する。しかしそんなもので彼の防御を崩すことはできない。何も起きてないかのように彼はユピテルさんから視線を外した。
「人は結果しか見ない。感情だとか過程なんてあやふやなもので判断を下さない。………今のユピテルさんのように裏切った俺を勇者は誰も許さないよ。だから」
彼が私のお腹に手を置いた。次の瞬間、私は凄まじい勢いで吹き飛ばされる!これは………なんて推進力だ!ジェットか?いやもっと原始的な………っ!!
「俺を殺さずに止めるなんて不可能なのさ。さぁこいよ、止めたいんだろ?殺戮を俺の死をもって終わらせてみろ」
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「大丈夫、彼は私を攻撃できないから」
「………なんだそれは」
光剣が光り輝く小手に変化し私の両腕に装着される。なるべくこれだけは使いたくなかったけど………相手が相手だ、どうしようもない。
「とにかく!私が戦っている間はなんとか生き残って!」
私は空を駆け抜けミフィー君に襲いかかる!!
ッッパァァアアンンン!!!!
拳を振るい炎とぶつかり衝撃波が発生した。光剣のグローブ形態は光速に近い速度でぶん殴れるようになる。ただしあまりの破壊力に私の拳が破壊されてしまうのだが、そんなこと言ってられない。私は粉砕骨折した右手で再度炎をぶん殴った!炎が弾け飛び彼への道が開かれる!
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全力でぶん殴ると目の前にあった炎の壁が全て吹き飛んだ!!何だこの威力!!私は自分の身体を見ると光り輝く鎧が私の上半身を包んでいた。……進化している。光剣のその先の力を引き出しつつある!
「頼むから私に力を貸して!!」
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「死舞羽衣・神鳴闘貴」
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私は飛び出した!
イリナは鎧の力で光速の10分の1の速度、約時速3万kmで駆け抜ける。鎧が生み出す雷が空気を焼くことで空間に通り道を作りようやく可能なこの速度。ロケットの速度とほぼ同じこの速度を視認から反撃することは至極困難である。さらに言えば完璧に撃退することなど不可能だろう。彼女は引き絞り拳を振り払った。
ッパパァアンンン!!!!
が、狩虎にはそれが「見えていた」。イリナの攻撃に完璧に合わせ、腕が伸びきり最大到達点に至る前に彼はカウンターを成功させてしまった。炎によって顔面を叩かれ、炎の海の上で気絶するイリナ。
魔族は運動能力が絶望的だが五感と魔力が突出している。さらに勇者に対抗する為なのだろうか特に視力が凄まじい。魔王にもなるとイリナの動きなど止まって見えるだろう。ただ今回のイリナの速度は勇者が、いや、生物が出していい速度を大きく超えている。いくら魔王といえど反応しつつ完璧なカウンターを決めれるものではないのだ。
だが狩虎は日本屈指の進学校で首席をとるような人間だ。本人は努力しただけだと言うが、努力しただけでそんな地位を取れるものではない。間違いなく才能であり、その才能が光速に近い状況で全ての情報を処理しカウンターを成功させたのだ。魔王という天災と知性の天才が合わさり生み出された超天才。それが飯田狩虎なのである。
「イリナ、お前は強いよ。勇者の中で間違いなく1番強い。光剣に選ばれ、色んな人に認められて悪を倒してきた。窮地に陥っても奇跡を信じ悪を倒しきる。強いよ、間違いなく」
赤色の炎がうねり世界を覆っていく。雨雲も空も、漆黒の壁も、世界の全てが赤色に染まり飲み込まれる。
「だが俺だけは話が別だ。奇跡なんて起きやしない。希望なんて生まれやしない。そんなもの、生まれようとするその場で焼断する」
一年前から始まった飯田狩虎の終わりの物語。それはこの戦場にいる全ての命を巻き込み、彼自身の命も巻き込み………最後は恒久的な平和という形で締め括られようとしていた。
「それでも人は夢を見て希望を作り出すものじゃ。歴史はそう繰り返してきた。なぁ狩虎ちゃん、お前もそうじゃろ?」
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「俺は例外だ。俺には夢も希望もない」
「いいや。心の底に沈め込んだその希望を掬い出してやる」
勇者の王と魔族の王が対峙した。
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マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
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−−−−−−
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