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鏡にキスを編
助けられてばっかりだ
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残り時間は20分!それまでにあと2人も亜花君から救わなきゃいけないなんてどうしろってんだ!
「勇者の力を引き出して戦うしかないだろう」
腰の鞘に入れられた魔剣が軽々しく言ってくる。ふざけんなよそんな簡単に出来ることじゃあないんだぞ!
「俺は戦うの苦手なの!喧嘩もしたことないし、この世界で戦うにしても全て魔力に頼ってたからな!身体の使い方なんて赤ちゃんレベルよ!」
「じゃあなぜ防御だけは一丁前にできてるんだ」
「俺の幼馴染に殴られまくってたからな!防御ができないと死んじゃうんだよ!」
「ならその幼馴染の真似事をしてみればいいだろう」
「あいつの攻撃は速すぎて俺の目じゃ追えないの!真似できないレベルなの!」
「じゃあどうやって防御していたんだ」
「勘!なんとなく攻撃が来る場所がわかるから防いでたの!」
………今思うと凄まじいことしてるな俺。勘だけであの化け物の攻撃を防御し続けてたなんてどうかしてるぜ。
「ならばカウンターだな。小僧はカウンターを極めるべきだ」
「確かにそりゃあ合理的だ!じゃあ練習してくるか!」
ひとまず方針が決まったのなら実践あるのみ!俺は逆戻りし亜花君の元へと向かう!
「数秒前とは打って変わってポジティブだな」
「それしか亜花君を倒す手段がないんだから仕方ないだろ?僅かにでも勝機があるのなら弱っちい俺はそれに縋るしかないのさ!」
ほんのちょっと喋っただけでこの分からず屋の意識を変えるとは、グレンという男は凄いな。これなら昴や亜花と仲良く出来るのもよく分かる。外見は無法者だが指導者気質なのだろうな………魔剣はそう思いながら狩虎を見つめていた。
「そういや魔剣って形変えられるの?」
「ん?ちょっと伸びるぐらいなら……」
「じゃあさ大剣みたくなれたりしない?刀身が幅広いやつ」
「む?むぅ?………やれんことはないが」
魔剣が大剣のような形になった瞬間、俺は魔剣を空中に放り投げた。そして高波を生み出すと魔剣をサーフボード代わりにして波に乗る!
「これで亜花君に突撃だ!」
「おいおい!お前の運動神経じゃ!」
重心移動に失敗した俺は体勢を崩し波に飲み込まれた!自分が生み出した波に揉みくちゃにされ、上下左右が一切わからない状況で俺はよく分からない場所に流された。
「なぜいきなりそんなことしたんだ小僧!」
「ゲホゲホッ!………いや、身体の動かし方を学ぶのに1番手っ取り早いのはさ、やっぱりサーフィンみたいな重心移動を重視するものなんだよな。だからやってみた」
「………小僧の素顔はそっちなのか」
「ん?どういうこと?」
「今までの小僧がいかに消極的だったのかを理解しただけだ」
「仕方ないだろ俺は何もできないんだから。出来るようになるためには人の倍以上努力しないといけないんだよ」
重心移動の感覚は掴めたな。まだ上手くはできないが、[なんとなく]理解できているのは大きな前進だ。この感覚をもってイリナの戦闘スタイルを真似て………
「………イリナの戦い方って真似ない方がいい?」
「よくわかったな。あの小娘の戦い方は常人が真似できる代物じゃない。あれを参考にはするな」
やっぱりそうだよな。イリナの戦い方は全部独学で癖があまりにも強すぎる。あれはイリナにしか出来ない戦い方だ。
「………やっぱり宏美が1番なのか」
「宏美とは幼馴染のことか?それならばそうだろうな。小僧が大半の攻撃を防御できるのは、宏美とやらが格闘技における基礎的な動作を基に攻撃していたからだろう。真似るのならば間違いなく宏美だ」
あいつの攻撃はほとんど目視できてないが、それでもやってみるか。参考にできるものは全部使う。それが今俺に出来ることなのだから。
「よし、そうと決まればさっそく亜花君で練習だ!いくぞ!」
俺は高波を生み出し、サーフィンで重心移動の練習をしながら亜花君を探し始めた!
~1分後~
「………なにこれ」
波に飲み込まれた俺は溺れかけながら亜花君の目の前に流れ着いた。あっ、やばい。肺に水入ってる、マジやばいこれ。水の魔力で肺から水を引き摺り出し、むせ返りながら俺は立ち上がる。
「というわけで殴ってきて?」
「え?大丈夫この人?」
「大丈夫だってカウンターの練習がしたいだけだから。ほら殴ってきて」
「そんなこと言われて殴る人いるの?」
「いやでも亜花君は俺のこと倒さないといけないんだから殴らないと」
「えぇぇ………気が乗らないんだけど。逃げ惑う人を殴るのが僕好きなのに」
君の方こそ大丈夫なのか?
「じゃあこっちからいかせてもらうよ!」
俺は右脚を大きく振り上げるが途中で止めミドルキックへと変更する!しかしなんかもう全然遅すぎる!普通に亜花君にガードされたんだけど!
「………本気でやってる?」
「これでも頑張ってるんですぅ!」
俺の頭の中では完璧なんだけどなぁ、側から見たら形にすらなってないんだろうな。とにかく宏美のあの動きを徹底的にトレースするんだ。今俺ができることなどそれぐらいしかない!
頑張って殴りかかろうとするが、そもそも亜花君の方が俺なんかよりも圧倒的に速い!攻撃し切る前に彼の攻撃が俺にぶち当たる!しかし俺は頑丈さだけが取り柄なサンドバッグ野郎だ。これだけで倒れはしない!亜花君に3発殴られながらも反撃で1発ぶん殴る!だがそれすらも簡単にかわされ俺は殴られまくる!
「何度やったって変わらないよ!」
グリンッ!
「おっ」
「おっ!?」
俺がぐらついた所に放たれた渾身の一撃!それを左手で軽く触れることで逸らし攻撃する!しかし相変わらずヘナチョコパンチだ、ダメージはない。でも別のコツは掴んだぞ。
亜花君の攻撃の全てを必要最小限の動きで逸らしていく。魔王の力は封印されたが、動体視力と耐熱性能だけは無くなっていない。おかげで亜花君の攻撃の全てが止まって見えるぞ。あとはその軌道上に手を置いていい感じに攻撃をそらすだけだ。
亜花君が右手でパンチを放つのと同時に俺は両腕を動かし、左手で攻撃を逸らし右手で反撃する。しかしその反撃は相変わらずダメージになってないが、俺の方もダメージを負わなくなってきた。
「…………」
一瞬、亜花君が別方向を見た次から彼の攻撃パターンが変わる!俺が攻撃を逸らそうとしたときに彼の攻撃のベクトルが変更されてクリーンヒット!吹き飛ばされる!そりゃあ亜花君の魔力を使えばこんな芸当簡単だよなぁ!
「ほら、もっと本気出さないと僕を倒すことはできないよ」
「1分経過だ」
しかし途中でグレンが声をかけてきて俺達の戦いは終わる。………だが、俺からすればここからが本番なのだ。
「んじゃあ20秒間練習タイムだな」
俺は動けない亜花君に向かって殴りかかる。もちろん彼はそれを全部防御するが、それでもお構いなく俺は殴り続ける。ひとまず攻撃する感覚を掴まないと話にならないのだが、1番手っ取り早いのが生身の人を殴ることだ。俺が殴りかかればどういう生体反応をするのか観察しながらとにかく殴り続ける。
「はい20秒終わり」
そして完璧に攻守が入れ替わり殴られ続ける!攻撃を逸らそうとしても攻撃のベクトルが変更されクリーンヒットの連続!それでも構わず俺は彼に立ち向かい続ける!
「お兄さんいいの?あと13分しかないよ?僕から2人を守らなきゃいけないのに、殴られっぱなしじゃあ試験不合格になっちゃうよ」
喋りながら俺を殴り続ける亜花君。絶対俺のこと心配してないよねこれ。
「まぁ見てろってさっき言っただろ?」
俺はとにかく亜花君に立ち向かい続ける。攻撃のコツを掴む為に!
「………亜花、さっさとこいつ倒せ。もう力をセーブする必要はないぞ」
時間経過の報告しかしていなかったグレンが口を開いた。
「こいつ、制限時間までお前を拘束して[生き残った受験者全員を助けた]って屁理屈こくつもりだ。ぶっ殺す勢いでやれ」
ちっ、やっぱこの人頭が良いな。俺の狙いを簡単に理解しやがった。
グレンの言葉を聞いた瞬間、亜花君の威圧感が変わった。それに気圧された俺は彼の攻撃をかわすために背後に飛び退き完璧に攻撃をかわす!
バギィ!!
攻撃をかわしたはずなのになぜか攻撃が当たり俺の体勢が崩れた!エネルギーだけが伸張しやがった!現実から乖離しすぎて頭がバグりそうだ!
そのまま続けて放たれる攻撃を無防備で喰らい続ける!ヤバイ、ヤバすぎる!彼の能力は常識を簡単に覆す!まともに戦うなんてどうかしてる!
俺は魔剣の空間転移能力で20mだけワープすると一呼吸だけ息を吸い込み、彼に向かってすぐさま飛び出す!
バチィインン!!!
俺が亜花君の懐に入ろうとした瞬間、見えない空気の壁に顔面をモロにぶつけた!こいつ俺の真似しやがった!
「あれ結構痛かったんだからね」
反射的に顔を両手で覆って防ぐが、亜花君はその防御ごと俺の顔面を殴り吹き飛ばす!!
肉弾戦だけでも勝ち目がないのに、今度は魔力で遠距離攻撃までし始めやがった。どうすりゃいいんだよ。
「……………」
何も思いつかない俺はそれでも立ち上がり亜花君の所へと向かう。今の俺の取り柄は頑丈な部分だけだ。それを最大限に活用できるのは、身を挺して彼を拘束すること以外にはない。とにかくこれを時間目一杯まで続けるしかないんだ。力がないんだからそれしかないんだ。
「………1分経過」
グレンの言葉と共に亜花君が防御体勢に入る。いやそもそも、さっきみたいに空気の壁を作り出して俺を近づけさせてくれないかもしれない。俺の作戦がバレた以上、彼が今まで通り俺に付き合ってくれるかなんて分からない。この20秒で攻撃のコツを掴めなきゃ、次の一分間でまず間違いなく彼は俺を戦闘不能にするだろう。彼にはそれだけの破壊力があるのだから。
「でもやるしかないんだよなぁ」
俺が死ぬとか、勇者領が大変な目に遭うだとか、そんなもの最早どうでもよかった。ああ、そう言えば俺って負けず嫌いなんだっけか。最近は負けて死ぬことばっかり考えてたから忘れてたな。
軋む身体に鞭打って走る。傷口から流れ出る血液に目を止めることなくとにかく走る。失敗ばかりじゃやるせない。成功しなきゃ話にならない。
「才能のない俺が成功するには、成功するまで諦めてはいけないんだ!」
射程距離に捉えた亜花君に向かって殴りかかる!
ガンッ!!
しかし攻撃がトップスピードに乗り切る前に、硬質化した空気に腕がぶつかり俺の攻撃が止まる!!なら!!左手で殴りかかるがそれすらも止められ、右脚と左脚で蹴るもそれすらも見えない壁によって阻まれる。わかっちゃいたが、やっぱ亜花君を相手にするのは無理か……
「お腹に力を入れるんですよ。当たると思った瞬間に全力で力むんです。そうしたらきっと上手くいきますよ」
「…………」
バリン!!!
俺の右手が空気の壁を貫いた。
「うっそぉ!?」
そして隙だらけの亜花君の右脇腹にパンチを叩き込む!彼はなんとか両腕で防御するが、それでも俺の攻撃の威力に吹き飛ばされる!!
「…………本当に俺は彼らに助けられっぱなしだな」
俺の中に眠るカイの記憶がアドバイスしてくれた。初めてこの世界に来たイリナに向けたアドバイスなのだろうが、まさかそれが俺に役立つなんてな。
「さぁ、あと12分だ。君を全力で止めて受験者全員助けてしまおうか」
血だらけボロボロふらふらの俺はそれでも亜花君へと立ち向かう。
「勇者の力を引き出して戦うしかないだろう」
腰の鞘に入れられた魔剣が軽々しく言ってくる。ふざけんなよそんな簡単に出来ることじゃあないんだぞ!
「俺は戦うの苦手なの!喧嘩もしたことないし、この世界で戦うにしても全て魔力に頼ってたからな!身体の使い方なんて赤ちゃんレベルよ!」
「じゃあなぜ防御だけは一丁前にできてるんだ」
「俺の幼馴染に殴られまくってたからな!防御ができないと死んじゃうんだよ!」
「ならその幼馴染の真似事をしてみればいいだろう」
「あいつの攻撃は速すぎて俺の目じゃ追えないの!真似できないレベルなの!」
「じゃあどうやって防御していたんだ」
「勘!なんとなく攻撃が来る場所がわかるから防いでたの!」
………今思うと凄まじいことしてるな俺。勘だけであの化け物の攻撃を防御し続けてたなんてどうかしてるぜ。
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「確かにそりゃあ合理的だ!じゃあ練習してくるか!」
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「それしか亜花君を倒す手段がないんだから仕方ないだろ?僅かにでも勝機があるのなら弱っちい俺はそれに縋るしかないのさ!」
ほんのちょっと喋っただけでこの分からず屋の意識を変えるとは、グレンという男は凄いな。これなら昴や亜花と仲良く出来るのもよく分かる。外見は無法者だが指導者気質なのだろうな………魔剣はそう思いながら狩虎を見つめていた。
「そういや魔剣って形変えられるの?」
「ん?ちょっと伸びるぐらいなら……」
「じゃあさ大剣みたくなれたりしない?刀身が幅広いやつ」
「む?むぅ?………やれんことはないが」
魔剣が大剣のような形になった瞬間、俺は魔剣を空中に放り投げた。そして高波を生み出すと魔剣をサーフボード代わりにして波に乗る!
「これで亜花君に突撃だ!」
「おいおい!お前の運動神経じゃ!」
重心移動に失敗した俺は体勢を崩し波に飲み込まれた!自分が生み出した波に揉みくちゃにされ、上下左右が一切わからない状況で俺はよく分からない場所に流された。
「なぜいきなりそんなことしたんだ小僧!」
「ゲホゲホッ!………いや、身体の動かし方を学ぶのに1番手っ取り早いのはさ、やっぱりサーフィンみたいな重心移動を重視するものなんだよな。だからやってみた」
「………小僧の素顔はそっちなのか」
「ん?どういうこと?」
「今までの小僧がいかに消極的だったのかを理解しただけだ」
「仕方ないだろ俺は何もできないんだから。出来るようになるためには人の倍以上努力しないといけないんだよ」
重心移動の感覚は掴めたな。まだ上手くはできないが、[なんとなく]理解できているのは大きな前進だ。この感覚をもってイリナの戦闘スタイルを真似て………
「………イリナの戦い方って真似ない方がいい?」
「よくわかったな。あの小娘の戦い方は常人が真似できる代物じゃない。あれを参考にはするな」
やっぱりそうだよな。イリナの戦い方は全部独学で癖があまりにも強すぎる。あれはイリナにしか出来ない戦い方だ。
「………やっぱり宏美が1番なのか」
「宏美とは幼馴染のことか?それならばそうだろうな。小僧が大半の攻撃を防御できるのは、宏美とやらが格闘技における基礎的な動作を基に攻撃していたからだろう。真似るのならば間違いなく宏美だ」
あいつの攻撃はほとんど目視できてないが、それでもやってみるか。参考にできるものは全部使う。それが今俺に出来ることなのだから。
「よし、そうと決まればさっそく亜花君で練習だ!いくぞ!」
俺は高波を生み出し、サーフィンで重心移動の練習をしながら亜花君を探し始めた!
~1分後~
「………なにこれ」
波に飲み込まれた俺は溺れかけながら亜花君の目の前に流れ着いた。あっ、やばい。肺に水入ってる、マジやばいこれ。水の魔力で肺から水を引き摺り出し、むせ返りながら俺は立ち上がる。
「というわけで殴ってきて?」
「え?大丈夫この人?」
「大丈夫だってカウンターの練習がしたいだけだから。ほら殴ってきて」
「そんなこと言われて殴る人いるの?」
「いやでも亜花君は俺のこと倒さないといけないんだから殴らないと」
「えぇぇ………気が乗らないんだけど。逃げ惑う人を殴るのが僕好きなのに」
君の方こそ大丈夫なのか?
「じゃあこっちからいかせてもらうよ!」
俺は右脚を大きく振り上げるが途中で止めミドルキックへと変更する!しかしなんかもう全然遅すぎる!普通に亜花君にガードされたんだけど!
「………本気でやってる?」
「これでも頑張ってるんですぅ!」
俺の頭の中では完璧なんだけどなぁ、側から見たら形にすらなってないんだろうな。とにかく宏美のあの動きを徹底的にトレースするんだ。今俺ができることなどそれぐらいしかない!
頑張って殴りかかろうとするが、そもそも亜花君の方が俺なんかよりも圧倒的に速い!攻撃し切る前に彼の攻撃が俺にぶち当たる!しかし俺は頑丈さだけが取り柄なサンドバッグ野郎だ。これだけで倒れはしない!亜花君に3発殴られながらも反撃で1発ぶん殴る!だがそれすらも簡単にかわされ俺は殴られまくる!
「何度やったって変わらないよ!」
グリンッ!
「おっ」
「おっ!?」
俺がぐらついた所に放たれた渾身の一撃!それを左手で軽く触れることで逸らし攻撃する!しかし相変わらずヘナチョコパンチだ、ダメージはない。でも別のコツは掴んだぞ。
亜花君の攻撃の全てを必要最小限の動きで逸らしていく。魔王の力は封印されたが、動体視力と耐熱性能だけは無くなっていない。おかげで亜花君の攻撃の全てが止まって見えるぞ。あとはその軌道上に手を置いていい感じに攻撃をそらすだけだ。
亜花君が右手でパンチを放つのと同時に俺は両腕を動かし、左手で攻撃を逸らし右手で反撃する。しかしその反撃は相変わらずダメージになってないが、俺の方もダメージを負わなくなってきた。
「…………」
一瞬、亜花君が別方向を見た次から彼の攻撃パターンが変わる!俺が攻撃を逸らそうとしたときに彼の攻撃のベクトルが変更されてクリーンヒット!吹き飛ばされる!そりゃあ亜花君の魔力を使えばこんな芸当簡単だよなぁ!
「ほら、もっと本気出さないと僕を倒すことはできないよ」
「1分経過だ」
しかし途中でグレンが声をかけてきて俺達の戦いは終わる。………だが、俺からすればここからが本番なのだ。
「んじゃあ20秒間練習タイムだな」
俺は動けない亜花君に向かって殴りかかる。もちろん彼はそれを全部防御するが、それでもお構いなく俺は殴り続ける。ひとまず攻撃する感覚を掴まないと話にならないのだが、1番手っ取り早いのが生身の人を殴ることだ。俺が殴りかかればどういう生体反応をするのか観察しながらとにかく殴り続ける。
「はい20秒終わり」
そして完璧に攻守が入れ替わり殴られ続ける!攻撃を逸らそうとしても攻撃のベクトルが変更されクリーンヒットの連続!それでも構わず俺は彼に立ち向かい続ける!
「お兄さんいいの?あと13分しかないよ?僕から2人を守らなきゃいけないのに、殴られっぱなしじゃあ試験不合格になっちゃうよ」
喋りながら俺を殴り続ける亜花君。絶対俺のこと心配してないよねこれ。
「まぁ見てろってさっき言っただろ?」
俺はとにかく亜花君に立ち向かい続ける。攻撃のコツを掴む為に!
「………亜花、さっさとこいつ倒せ。もう力をセーブする必要はないぞ」
時間経過の報告しかしていなかったグレンが口を開いた。
「こいつ、制限時間までお前を拘束して[生き残った受験者全員を助けた]って屁理屈こくつもりだ。ぶっ殺す勢いでやれ」
ちっ、やっぱこの人頭が良いな。俺の狙いを簡単に理解しやがった。
グレンの言葉を聞いた瞬間、亜花君の威圧感が変わった。それに気圧された俺は彼の攻撃をかわすために背後に飛び退き完璧に攻撃をかわす!
バギィ!!
攻撃をかわしたはずなのになぜか攻撃が当たり俺の体勢が崩れた!エネルギーだけが伸張しやがった!現実から乖離しすぎて頭がバグりそうだ!
そのまま続けて放たれる攻撃を無防備で喰らい続ける!ヤバイ、ヤバすぎる!彼の能力は常識を簡単に覆す!まともに戦うなんてどうかしてる!
俺は魔剣の空間転移能力で20mだけワープすると一呼吸だけ息を吸い込み、彼に向かってすぐさま飛び出す!
バチィインン!!!
俺が亜花君の懐に入ろうとした瞬間、見えない空気の壁に顔面をモロにぶつけた!こいつ俺の真似しやがった!
「あれ結構痛かったんだからね」
反射的に顔を両手で覆って防ぐが、亜花君はその防御ごと俺の顔面を殴り吹き飛ばす!!
肉弾戦だけでも勝ち目がないのに、今度は魔力で遠距離攻撃までし始めやがった。どうすりゃいいんだよ。
「……………」
何も思いつかない俺はそれでも立ち上がり亜花君の所へと向かう。今の俺の取り柄は頑丈な部分だけだ。それを最大限に活用できるのは、身を挺して彼を拘束すること以外にはない。とにかくこれを時間目一杯まで続けるしかないんだ。力がないんだからそれしかないんだ。
「………1分経過」
グレンの言葉と共に亜花君が防御体勢に入る。いやそもそも、さっきみたいに空気の壁を作り出して俺を近づけさせてくれないかもしれない。俺の作戦がバレた以上、彼が今まで通り俺に付き合ってくれるかなんて分からない。この20秒で攻撃のコツを掴めなきゃ、次の一分間でまず間違いなく彼は俺を戦闘不能にするだろう。彼にはそれだけの破壊力があるのだから。
「でもやるしかないんだよなぁ」
俺が死ぬとか、勇者領が大変な目に遭うだとか、そんなもの最早どうでもよかった。ああ、そう言えば俺って負けず嫌いなんだっけか。最近は負けて死ぬことばっかり考えてたから忘れてたな。
軋む身体に鞭打って走る。傷口から流れ出る血液に目を止めることなくとにかく走る。失敗ばかりじゃやるせない。成功しなきゃ話にならない。
「才能のない俺が成功するには、成功するまで諦めてはいけないんだ!」
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ガンッ!!
しかし攻撃がトップスピードに乗り切る前に、硬質化した空気に腕がぶつかり俺の攻撃が止まる!!なら!!左手で殴りかかるがそれすらも止められ、右脚と左脚で蹴るもそれすらも見えない壁によって阻まれる。わかっちゃいたが、やっぱ亜花君を相手にするのは無理か……
「お腹に力を入れるんですよ。当たると思った瞬間に全力で力むんです。そうしたらきっと上手くいきますよ」
「…………」
バリン!!!
俺の右手が空気の壁を貫いた。
「うっそぉ!?」
そして隙だらけの亜花君の右脇腹にパンチを叩き込む!彼はなんとか両腕で防御するが、それでも俺の攻撃の威力に吹き飛ばされる!!
「…………本当に俺は彼らに助けられっぱなしだな」
俺の中に眠るカイの記憶がアドバイスしてくれた。初めてこの世界に来たイリナに向けたアドバイスなのだろうが、まさかそれが俺に役立つなんてな。
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