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二章 新たな出会いと冒険
初仕事
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さあ、生きる為に働こう! っていってもいきなり討伐系に身を乗り出すほど、ぼくだって無鉄砲じゃない。
稼ぎは少ないかもしれないけど、生きる事を前提に堅実に行きたいのだ、僕は。
なので、初仕事として選んだのは周辺の地理の確認も兼ねた、クラーンの北部の森に生える薬草の採取だ。畑のものよりこういった自生のものの方が効能が良いらしく、基本的にずーっとある依頼らしい。スティーグも似たような仕事やってたもんね。
勿論危険がないわけじゃない。森に分け入る分、僕のトラウマになっている狼もそうだし、魔物の類に遭遇する可能性もある。だからこそ冒険者ギルドに依頼がいくわけで、冒険者に最低限の装備が必要なわけだ。
街の北の門番さんに挨拶をして跳ね橋を渡る。視線の先にあるのは畑と草原と道、遠目に目的の森が見えるくらいで、あとは何もなし。幸いな事に空も青ガラスみたいに澄み切っていて、雨が降るような気配はない。
さぁ、一仕事行こうか!
ーーーーーーーーーーー
森に入ると当然ながら道からは外れるし、先程までの青空も遮られてしまった。少し湿ったような地面は、一足ごとに土の匂いを伝えてくる。
腰程の草むらは既に抜けて、地面にはポツポツと小さな草花が咲く程度だ。その中に目当ての薬草がある、はず。
鎧の胸元、自分で言いたくないくらい丁度良い隙間に入れていた、ラウラさんから貰った薬草の絵を確認する。写真なんて当然存在しないし、本は高すぎる。紙っていってるけど、僕が持ってるこの絵だって、羊皮紙だし貴重だから後で返さないといけない。
一通り確認するように薬草の絵を見直して再び懐にしまう。しゃがんで地面の草を一個づつ見る。慣れるともっと早くできるんだろうけど、こんなの経験ないからね。間違ったものを採ってしまう事は避けたい。あ、でも鮮度も大事って言ってたからちょっとは効率も考えないと。
「うーん、こっちはあたり…… こっちは、ちがう」
絵面としてすっごい地味だなぁとは思う。思うけど薬草取りにホラーとかアクションを盛り込まれても困るし。
なにせこの薬草取りは僕の日銭だ。稼げなければ数日で干上がってしまう。そうなれば後はたけのこ生活して、外に出れなくなって、最後は…… うわー、想像もしたくない。
半ば必死に地面に縋り付いて薬草を探す。特徴的な葉っぱと花のお陰で、見分け自体はつきやすい。ただ育ってなくても育ちすぎててもダメらしく、薬師さんの指定する程よい大きさを探すのは少し難儀だ。
摘んだ薬草は根元を軽く縛って腰に下げる。この世界には便利なアイテムボックスとかはないらしい。そこは神様になんとか頑張って欲しかったけど、どうにかできないかなぁ……
一つ二つと薬草を摘んでいると、背後から不意に草音が僕の耳を掠める。おっと、まさかのエンカウント? 複数は聞こえなかったから、単独。運が良ければ同業者、悪ければーー
「ほんっとついてないなぁ、もう」
イノシシだ。瓜坊サイズなら可愛いらしいんだけど、どう見ても僕の腰位までの大きさがある。しかもオス、牙付き、興奮中ときたもんだ。ついてないにも程がある。
あ、でも大きさ的にはこんなファンタジー世界なのでまだマシなのかもしれない。
何れにせよ目は合ってしまった。
腰に提げたメイスに手を伸ばす。イノシシは重いし早い、僕に出来る事は追い払うか、ぶん殴るかしかない。
「出来る、出来る、出来る」
背中を向けるなんて死にに行くような真似はできない。獣の視線に足がすこし震える。
これは武者振るい、怖くない、怖く、ない!
僕の心が決まる同時にイノシシの突進が始まった。やる事は単純、避けながら頭にぶちかます!
イノシシの頭の位置的にメイスをバットを振るようなフォームで構える。
「いーーまぁっ!」
その瞬間の集中力は過去最高だったと思う。それくらい紙一重で突進を躱し、メイスを振り抜く。
砕ける音と感触、そして断末魔。終わってみればそれが全てだった。
血と、見たくない何かが中空にちらばり、猪の体が綺麗な放物線を描いて吹っ飛んでゆく。
振り抜いたメイスに目をやると、見た事を後悔する様な有り様だった。
ここは本当なら猪は回収して、ギルドに持ってって食肉にとかしなきゃならないんだろうけど、回収時にメイスを振り抜いた結末を見たくないし、安堵で足がガクついてそれどころじゃない。
兎も角一息つけようと地面にぺたんと座り込む。
「うおおお!? 何でこんなスプラッタなイノシシが降ってくるんだ!」
あ、女の子座りになるのって久々だなー。とか思っていると、イノシシが吹っ飛んでいった先からは叫び声が聞こきた。おっとー、これは誰かにニアピンしちゃったかな? 謝らないと。
震える足を何とか立たせ、叫び声の聞こえたほうへ向かった。
稼ぎは少ないかもしれないけど、生きる事を前提に堅実に行きたいのだ、僕は。
なので、初仕事として選んだのは周辺の地理の確認も兼ねた、クラーンの北部の森に生える薬草の採取だ。畑のものよりこういった自生のものの方が効能が良いらしく、基本的にずーっとある依頼らしい。スティーグも似たような仕事やってたもんね。
勿論危険がないわけじゃない。森に分け入る分、僕のトラウマになっている狼もそうだし、魔物の類に遭遇する可能性もある。だからこそ冒険者ギルドに依頼がいくわけで、冒険者に最低限の装備が必要なわけだ。
街の北の門番さんに挨拶をして跳ね橋を渡る。視線の先にあるのは畑と草原と道、遠目に目的の森が見えるくらいで、あとは何もなし。幸いな事に空も青ガラスみたいに澄み切っていて、雨が降るような気配はない。
さぁ、一仕事行こうか!
ーーーーーーーーーーー
森に入ると当然ながら道からは外れるし、先程までの青空も遮られてしまった。少し湿ったような地面は、一足ごとに土の匂いを伝えてくる。
腰程の草むらは既に抜けて、地面にはポツポツと小さな草花が咲く程度だ。その中に目当ての薬草がある、はず。
鎧の胸元、自分で言いたくないくらい丁度良い隙間に入れていた、ラウラさんから貰った薬草の絵を確認する。写真なんて当然存在しないし、本は高すぎる。紙っていってるけど、僕が持ってるこの絵だって、羊皮紙だし貴重だから後で返さないといけない。
一通り確認するように薬草の絵を見直して再び懐にしまう。しゃがんで地面の草を一個づつ見る。慣れるともっと早くできるんだろうけど、こんなの経験ないからね。間違ったものを採ってしまう事は避けたい。あ、でも鮮度も大事って言ってたからちょっとは効率も考えないと。
「うーん、こっちはあたり…… こっちは、ちがう」
絵面としてすっごい地味だなぁとは思う。思うけど薬草取りにホラーとかアクションを盛り込まれても困るし。
なにせこの薬草取りは僕の日銭だ。稼げなければ数日で干上がってしまう。そうなれば後はたけのこ生活して、外に出れなくなって、最後は…… うわー、想像もしたくない。
半ば必死に地面に縋り付いて薬草を探す。特徴的な葉っぱと花のお陰で、見分け自体はつきやすい。ただ育ってなくても育ちすぎててもダメらしく、薬師さんの指定する程よい大きさを探すのは少し難儀だ。
摘んだ薬草は根元を軽く縛って腰に下げる。この世界には便利なアイテムボックスとかはないらしい。そこは神様になんとか頑張って欲しかったけど、どうにかできないかなぁ……
一つ二つと薬草を摘んでいると、背後から不意に草音が僕の耳を掠める。おっと、まさかのエンカウント? 複数は聞こえなかったから、単独。運が良ければ同業者、悪ければーー
「ほんっとついてないなぁ、もう」
イノシシだ。瓜坊サイズなら可愛いらしいんだけど、どう見ても僕の腰位までの大きさがある。しかもオス、牙付き、興奮中ときたもんだ。ついてないにも程がある。
あ、でも大きさ的にはこんなファンタジー世界なのでまだマシなのかもしれない。
何れにせよ目は合ってしまった。
腰に提げたメイスに手を伸ばす。イノシシは重いし早い、僕に出来る事は追い払うか、ぶん殴るかしかない。
「出来る、出来る、出来る」
背中を向けるなんて死にに行くような真似はできない。獣の視線に足がすこし震える。
これは武者振るい、怖くない、怖く、ない!
僕の心が決まる同時にイノシシの突進が始まった。やる事は単純、避けながら頭にぶちかます!
イノシシの頭の位置的にメイスをバットを振るようなフォームで構える。
「いーーまぁっ!」
その瞬間の集中力は過去最高だったと思う。それくらい紙一重で突進を躱し、メイスを振り抜く。
砕ける音と感触、そして断末魔。終わってみればそれが全てだった。
血と、見たくない何かが中空にちらばり、猪の体が綺麗な放物線を描いて吹っ飛んでゆく。
振り抜いたメイスに目をやると、見た事を後悔する様な有り様だった。
ここは本当なら猪は回収して、ギルドに持ってって食肉にとかしなきゃならないんだろうけど、回収時にメイスを振り抜いた結末を見たくないし、安堵で足がガクついてそれどころじゃない。
兎も角一息つけようと地面にぺたんと座り込む。
「うおおお!? 何でこんなスプラッタなイノシシが降ってくるんだ!」
あ、女の子座りになるのって久々だなー。とか思っていると、イノシシが吹っ飛んでいった先からは叫び声が聞こきた。おっとー、これは誰かにニアピンしちゃったかな? 謝らないと。
震える足を何とか立たせ、叫び声の聞こえたほうへ向かった。
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