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二章 新たな出会いと冒険
新たな出会い
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木々の隙間から見えたのは、僕と同じくらいの背格好で革鎧を着けた黒髪の男の子が剣を構えて立っているところだった。
「ごめんね、ちょっと勢いが出過ぎちゃって」
「お、おお? 人間か。真逆の薬草取りで熊か魔物が出たのかと思ったぞ……」
取り敢えず僕を確認すると、剣を収めてくれた。
イノシシすっ飛ばしたの謝るけど、女の子指して熊とか魔物とかはちょっと酷くないかな? しかもまだ血がベッタリのメイスを見て、明らかに引いてる顔だ。
「お前の獲物なら、持ってけよな。あと、さっさと血抜きして解体しねぇと狼がくるから、急げよ」
どこかぶっきらぼうに言うと、転がるイノシシから一歩離れる。
「で、解体って、どうするの?」
現代日本に生きてきて、イノシシ解体なんてした事あるわけない。魚なら捌けるけど、それとは絶対都合違うだろうし。僕のより燻んだ鎧をつけているのだから、きっと彼はこういうのの先達に違いない。
「…… もしかして初めてなのか?」
「そうだよ、今日が初仕事。それでイノシシとばったり出会うんだからツイてないよね」
「丸ごと抱えてくのも、無理そうだし…… 教えてやっから、やってみろよ。そんで、ちょっとくれ。晩飯の足しになる。」
断る理由はない。一発で覚えられるとは思わないけど、大まかな流れがわかればいいし、同じ位の歳で薬草取りで森に来ているって事はもしかしたら友達くらいにはなれるかもしれない。
「ありがとう。で、どうするの?」
「お、おう。本当はまず川につっこむんだけど、この状態だからな。まず尻の方からナイフを入れて――」
「うんうん」
やり方を確認する為に自然と近くに寄り添う形になる。
「はらわたを破んないように、首…… あー、この辺りまで開くんだ」
ちょっとグロテスクな光景が目の前に広がる。まぁ匂いとかはちょっとキツイけど、魚もおんなじだよね。
それより彼、名前知らないけど、若干顔が赤くなってる。なに、今までこんな反応された事ないから面白いんですけど。
敢えてもうちょっとぴとーってくっついてみる。
「こ、こっからはむ、難しいから見て覚えろよ。用意するから、枝の下に穴だけ掘ってくれ。ちょっと深めで」
慌てて飛び退いてから自分の荷物を漁る男子。うん、男子だ。スティーグにはバカにされ倒したけど、このくらいの男の子には僕の事は通じるらしい。ふふん見たか、人生2度目だからこそ滲み出る女の色気ってやつよ! いやー、西洋顔の黒髪少年が赤面するサマはおいしいですなぁ。んふふふふ。
さて、穴を掘れと言われたものの、道具なんて持ってない。まぁ手で掘るかしかないか。あー、でもいちいち鎧の腕はずして手袋とらないとだめかぁ。
「ん」
ずい、と目のまえにシャベルが差し出される。なになに、この世界あの世界リスペクトなの?
「ん!」
ちょっと感動していると、早くしろと言わんばかりに再度差し出される。
自分の親以外の人間が良い人ばっかりでありがたいね。まぁ贅沢いうならもっと異世界転生テンプレに沿ってほしいもんだけど。
シャベルを受け取り穴を掘る。流石に森の中だけあって、地面は柔らかくてそんなに労力をかけることなくそこそこの穴を掘ることができた。
「よーし、あとはこうして」
いつのまにかイノシシの足に縄をかけていた彼が、枝にその縄をかけて一気に引き上げる。おーっとここからはかなーりグロテスク。ちょっぴり乙女には辛い光景だ。
「目ぇそらしてどうすんだよ…… まぁ気持ちはわかるけど」
うひゃーと顔を覆う僕をよそに、解体が進められる。うん、なんだかんだ言って大きさの差はあれど、手順が魚に近いみたい。多分狼よけのためだろう、大まかに肉を取り去ったあとは僕が掘った穴に埋められた。
「ありがとう、助かったよ。えーと……」
「アラン。別に俺は肉分けてもらうから別に構わねぇよ」
「それでも僕は助かったからね。穴を掘る道具もなかったし、最悪ほったらかしで他の人に迷惑がかかるところだった」
「まぁ俺のところにイノシシが吹っ飛んできたのはある意味ラッキーだったな、お互いに。そ、そんでお前は?」
どこか照れた様子で僕に問うてくる。多分名前を聞きたいんだろうけど、ここはちょっと意地悪をしたい。
「ん?」
わざとらしいくらい首をかしげて聞き返す。
「名前」
あ、そっぽむいちゃった。いやー、反応が初々しくていいですな。なんかこう、田舎から出てきて仕事一直線だった感が半端ない。
「僕? メルタだよ。アランは冒険者になってからしばらく経つの?」
「もう2年かな。なんとか生きてこれたって感じさ。今日は使っちまった分のポーションの材料集めでこっちにきたんだ」
「良かったらさ、色々教えてくれないかな。さっきも言ったけど今日が初仕事なんだ」
「いいぜ、ていっても俺もそんな教えられることなんてないと思うけど…… 」
自分の頭を掻きながら、快諾してくれるアラン。これでなんとかしばらくは生きていけるかもしれない。あ、もちろん彼に頼りきるつもりはないよ。手探りでお金が目減りしていくのを防げるかもしれないって意味だ。
兎にも角にも、冒険の友達ができたのは良いことだ。だから僕は若干の悪戯心も含めて彼の手を取った。
「ありがとう」
その一言で真っ赤になり、そらしてる顔をさらに反らそうとする彼はなかなかの見ものだった。
「ごめんね、ちょっと勢いが出過ぎちゃって」
「お、おお? 人間か。真逆の薬草取りで熊か魔物が出たのかと思ったぞ……」
取り敢えず僕を確認すると、剣を収めてくれた。
イノシシすっ飛ばしたの謝るけど、女の子指して熊とか魔物とかはちょっと酷くないかな? しかもまだ血がベッタリのメイスを見て、明らかに引いてる顔だ。
「お前の獲物なら、持ってけよな。あと、さっさと血抜きして解体しねぇと狼がくるから、急げよ」
どこかぶっきらぼうに言うと、転がるイノシシから一歩離れる。
「で、解体って、どうするの?」
現代日本に生きてきて、イノシシ解体なんてした事あるわけない。魚なら捌けるけど、それとは絶対都合違うだろうし。僕のより燻んだ鎧をつけているのだから、きっと彼はこういうのの先達に違いない。
「…… もしかして初めてなのか?」
「そうだよ、今日が初仕事。それでイノシシとばったり出会うんだからツイてないよね」
「丸ごと抱えてくのも、無理そうだし…… 教えてやっから、やってみろよ。そんで、ちょっとくれ。晩飯の足しになる。」
断る理由はない。一発で覚えられるとは思わないけど、大まかな流れがわかればいいし、同じ位の歳で薬草取りで森に来ているって事はもしかしたら友達くらいにはなれるかもしれない。
「ありがとう。で、どうするの?」
「お、おう。本当はまず川につっこむんだけど、この状態だからな。まず尻の方からナイフを入れて――」
「うんうん」
やり方を確認する為に自然と近くに寄り添う形になる。
「はらわたを破んないように、首…… あー、この辺りまで開くんだ」
ちょっとグロテスクな光景が目の前に広がる。まぁ匂いとかはちょっとキツイけど、魚もおんなじだよね。
それより彼、名前知らないけど、若干顔が赤くなってる。なに、今までこんな反応された事ないから面白いんですけど。
敢えてもうちょっとぴとーってくっついてみる。
「こ、こっからはむ、難しいから見て覚えろよ。用意するから、枝の下に穴だけ掘ってくれ。ちょっと深めで」
慌てて飛び退いてから自分の荷物を漁る男子。うん、男子だ。スティーグにはバカにされ倒したけど、このくらいの男の子には僕の事は通じるらしい。ふふん見たか、人生2度目だからこそ滲み出る女の色気ってやつよ! いやー、西洋顔の黒髪少年が赤面するサマはおいしいですなぁ。んふふふふ。
さて、穴を掘れと言われたものの、道具なんて持ってない。まぁ手で掘るかしかないか。あー、でもいちいち鎧の腕はずして手袋とらないとだめかぁ。
「ん」
ずい、と目のまえにシャベルが差し出される。なになに、この世界あの世界リスペクトなの?
「ん!」
ちょっと感動していると、早くしろと言わんばかりに再度差し出される。
自分の親以外の人間が良い人ばっかりでありがたいね。まぁ贅沢いうならもっと異世界転生テンプレに沿ってほしいもんだけど。
シャベルを受け取り穴を掘る。流石に森の中だけあって、地面は柔らかくてそんなに労力をかけることなくそこそこの穴を掘ることができた。
「よーし、あとはこうして」
いつのまにかイノシシの足に縄をかけていた彼が、枝にその縄をかけて一気に引き上げる。おーっとここからはかなーりグロテスク。ちょっぴり乙女には辛い光景だ。
「目ぇそらしてどうすんだよ…… まぁ気持ちはわかるけど」
うひゃーと顔を覆う僕をよそに、解体が進められる。うん、なんだかんだ言って大きさの差はあれど、手順が魚に近いみたい。多分狼よけのためだろう、大まかに肉を取り去ったあとは僕が掘った穴に埋められた。
「ありがとう、助かったよ。えーと……」
「アラン。別に俺は肉分けてもらうから別に構わねぇよ」
「それでも僕は助かったからね。穴を掘る道具もなかったし、最悪ほったらかしで他の人に迷惑がかかるところだった」
「まぁ俺のところにイノシシが吹っ飛んできたのはある意味ラッキーだったな、お互いに。そ、そんでお前は?」
どこか照れた様子で僕に問うてくる。多分名前を聞きたいんだろうけど、ここはちょっと意地悪をしたい。
「ん?」
わざとらしいくらい首をかしげて聞き返す。
「名前」
あ、そっぽむいちゃった。いやー、反応が初々しくていいですな。なんかこう、田舎から出てきて仕事一直線だった感が半端ない。
「僕? メルタだよ。アランは冒険者になってからしばらく経つの?」
「もう2年かな。なんとか生きてこれたって感じさ。今日は使っちまった分のポーションの材料集めでこっちにきたんだ」
「良かったらさ、色々教えてくれないかな。さっきも言ったけど今日が初仕事なんだ」
「いいぜ、ていっても俺もそんな教えられることなんてないと思うけど…… 」
自分の頭を掻きながら、快諾してくれるアラン。これでなんとかしばらくは生きていけるかもしれない。あ、もちろん彼に頼りきるつもりはないよ。手探りでお金が目減りしていくのを防げるかもしれないって意味だ。
兎にも角にも、冒険の友達ができたのは良いことだ。だから僕は若干の悪戯心も含めて彼の手を取った。
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