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二章 新たな出会いと冒険
仲間との食事
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「んで、メルタはなんで冒険者なんてやってんだよ」
あの後、イノシシ肉は泊まっている鶏マークのお宿の大男さんに渡して調理を頼んだ。アランは本当は別に宿をとっていたんだけど、明日から待ち合わせとかするの面倒だからといって、同じ宿に合わせてくれた。もちろん部屋は別だけどね。
そんな夕食のとき、急に彼が食事の手を止めて聞いてきた。長々喋るのもどうかな、とは思ったんだけどついつい今までの道のりを口に出してしまう。
「――ということで、目標にしてる冒険者がいるんだ。だからかな。」
「結構きっつい状況でここまで来たんだな…… いや、そのスティーグって冒険者の事は知らねぇけど、お人よしすぎるだろ。真似すんのはやめとけよ。お前が食われるぞ」
「そうだよねぇ、スティーグは結構変わった人だったんだろうなって思う。食われるって、人なんて食べるの?」
「ばっか、ちげーよ。こう、女がほいほい男についてったらだな…… 少しはわかるだろ!」
「ふーん、そんなに僕って誰にでもくっついてくイメージある?」
「初対面の俺にくっついてきた奴が何言ってんだよ……」
アランにちょっと棘のある言葉で聞き返してみるも、返ってきたのは呆れ声だ。
いやいや、何も考えずにくっついてたわけじゃないんですよ? 先輩冒険者として色々教えてもらうってのを考えてたわけで。
「ま、いいや。アランは今までどうなのさ」
「え、俺? 家が農家でさ、俺5人兄弟の末っ子で食わす飯もないからって放り出されたから、冒険者になるくらいしか道がなかったんだよ」
なんだかんだで似た境遇なのかもしれない。そう思うとまたスティーグとは違った親近感ともいえる感情が湧く。
「まぁ、俺もまだ子供だからなのかもしんねぇけど、今まで仲間らしい仲間とかいなかったから、声かけるのも掛けられるのも久々だ」
「そうなんだ。まぁでも見た感じ年も近いみたいだし、明日からよろしくね」
背は僕の方が高いみたいだけどね。しかし、しゃべり方がスティーグに近いせいか、どこか話しやすい気さくな雰囲気を感じる。
「お、おお」
こつんと手に持ったコップを合わせる。この世界に乾杯って文化があるのかどうかはしらないけど、ここはそういう場面だよね。
アランはというと、合わせたコップを慌てて手元に戻しながら大きく切ったイノシシ肉のカツを口に運んでいた。
あぁ、そういえばスティーグとここで初めてした食事もカツだったなぁと思いながら僕も同じようにカツを食べる。うーん、なかなか会話がつながらない。実際意地悪なことをしてる僕自身も、男の人に慣れているってわけじゃない。スティーグとはたまたま大人と子供って立ち位置があったからこそうまくいっていただけだ。同列の人ってなると何を話していいのか、僕もわからない。
冒険者としての話だって僕は初日だし、アランだってぐいぐい聞いてくるのは引くかもしれないし。
「メルタは、しばらくこの街にいるつもりなのか?」
そんな空白の時間を何とか埋めようと思ったのか、コップの中身を飲み干したアランが再び僕に質問を投げかける。
「今までいたから居るだけで、もし他にいい街があるなら行ってみたいかな」
答えると、うーんと考えるような動きをする。
「もしよ、嫌じゃなけりゃだけど、こっからもっと北に行った所にアスラントって街があってさ。ここよかでっかい街だからもっと割の良い仕事があるかもしれねぇんだ。一緒に、行かねぇか?」
今まで居たこの街を離れる。どこか後ろ髪をひかれる気持ちはあるし、そもそも今日会ったばっかりの人、しかも男の子と一緒に旅っていうと若干の気おくれがする。でもやらなきゃいけないことは待ってくれないし、次の神様の情報だって集めなくちゃいけない。うん、チャンスの神様は前髪しかないっていうから、これはきっと掴むべきチャンスなんだ。
「うん、じゃあ1日だけ頂戴。今までお世話になった人にあいさつしたいから」
「いいぜ。俺は明日旅の道具でも見てくるよ」
「でも、僕ここで冒険者になったばっかりだけど、すぐに他の街にいくのってありなの?」
ギルドでもらったメダルにもクラーンにてって刻まれてるし、なんか手続きとかいるんじゃないんだろうか。
「冒険者ギルドなんてどこでもあるし、それこそ冒険者なんて次から次に移動することも多いんだから気にしねぇだろ。ギルドに一声だけかけときゃ大丈夫だよ」
「そっか、そんなもんなんだ」
この街に僕と会う前にも後にも長くいたスティーグは結構特殊な部類だったみたいだ。まぁ言われてみればそうだよね。その日その日で稼がなきゃいけない冒険者なんだから、稼げる街に移動したりするのは当たり前なんだろう。
こうして憧れの人との別れたその日に新たな仲間をゲットするというミラクルCを達成した僕は、夕食後アランと別れると明後日からの冒険に空想をめぐらし、眠りについた。
あの後、イノシシ肉は泊まっている鶏マークのお宿の大男さんに渡して調理を頼んだ。アランは本当は別に宿をとっていたんだけど、明日から待ち合わせとかするの面倒だからといって、同じ宿に合わせてくれた。もちろん部屋は別だけどね。
そんな夕食のとき、急に彼が食事の手を止めて聞いてきた。長々喋るのもどうかな、とは思ったんだけどついつい今までの道のりを口に出してしまう。
「――ということで、目標にしてる冒険者がいるんだ。だからかな。」
「結構きっつい状況でここまで来たんだな…… いや、そのスティーグって冒険者の事は知らねぇけど、お人よしすぎるだろ。真似すんのはやめとけよ。お前が食われるぞ」
「そうだよねぇ、スティーグは結構変わった人だったんだろうなって思う。食われるって、人なんて食べるの?」
「ばっか、ちげーよ。こう、女がほいほい男についてったらだな…… 少しはわかるだろ!」
「ふーん、そんなに僕って誰にでもくっついてくイメージある?」
「初対面の俺にくっついてきた奴が何言ってんだよ……」
アランにちょっと棘のある言葉で聞き返してみるも、返ってきたのは呆れ声だ。
いやいや、何も考えずにくっついてたわけじゃないんですよ? 先輩冒険者として色々教えてもらうってのを考えてたわけで。
「ま、いいや。アランは今までどうなのさ」
「え、俺? 家が農家でさ、俺5人兄弟の末っ子で食わす飯もないからって放り出されたから、冒険者になるくらいしか道がなかったんだよ」
なんだかんだで似た境遇なのかもしれない。そう思うとまたスティーグとは違った親近感ともいえる感情が湧く。
「まぁ、俺もまだ子供だからなのかもしんねぇけど、今まで仲間らしい仲間とかいなかったから、声かけるのも掛けられるのも久々だ」
「そうなんだ。まぁでも見た感じ年も近いみたいだし、明日からよろしくね」
背は僕の方が高いみたいだけどね。しかし、しゃべり方がスティーグに近いせいか、どこか話しやすい気さくな雰囲気を感じる。
「お、おお」
こつんと手に持ったコップを合わせる。この世界に乾杯って文化があるのかどうかはしらないけど、ここはそういう場面だよね。
アランはというと、合わせたコップを慌てて手元に戻しながら大きく切ったイノシシ肉のカツを口に運んでいた。
あぁ、そういえばスティーグとここで初めてした食事もカツだったなぁと思いながら僕も同じようにカツを食べる。うーん、なかなか会話がつながらない。実際意地悪なことをしてる僕自身も、男の人に慣れているってわけじゃない。スティーグとはたまたま大人と子供って立ち位置があったからこそうまくいっていただけだ。同列の人ってなると何を話していいのか、僕もわからない。
冒険者としての話だって僕は初日だし、アランだってぐいぐい聞いてくるのは引くかもしれないし。
「メルタは、しばらくこの街にいるつもりなのか?」
そんな空白の時間を何とか埋めようと思ったのか、コップの中身を飲み干したアランが再び僕に質問を投げかける。
「今までいたから居るだけで、もし他にいい街があるなら行ってみたいかな」
答えると、うーんと考えるような動きをする。
「もしよ、嫌じゃなけりゃだけど、こっからもっと北に行った所にアスラントって街があってさ。ここよかでっかい街だからもっと割の良い仕事があるかもしれねぇんだ。一緒に、行かねぇか?」
今まで居たこの街を離れる。どこか後ろ髪をひかれる気持ちはあるし、そもそも今日会ったばっかりの人、しかも男の子と一緒に旅っていうと若干の気おくれがする。でもやらなきゃいけないことは待ってくれないし、次の神様の情報だって集めなくちゃいけない。うん、チャンスの神様は前髪しかないっていうから、これはきっと掴むべきチャンスなんだ。
「うん、じゃあ1日だけ頂戴。今までお世話になった人にあいさつしたいから」
「いいぜ。俺は明日旅の道具でも見てくるよ」
「でも、僕ここで冒険者になったばっかりだけど、すぐに他の街にいくのってありなの?」
ギルドでもらったメダルにもクラーンにてって刻まれてるし、なんか手続きとかいるんじゃないんだろうか。
「冒険者ギルドなんてどこでもあるし、それこそ冒険者なんて次から次に移動することも多いんだから気にしねぇだろ。ギルドに一声だけかけときゃ大丈夫だよ」
「そっか、そんなもんなんだ」
この街に僕と会う前にも後にも長くいたスティーグは結構特殊な部類だったみたいだ。まぁ言われてみればそうだよね。その日その日で稼がなきゃいけない冒険者なんだから、稼げる街に移動したりするのは当たり前なんだろう。
こうして憧れの人との別れたその日に新たな仲間をゲットするというミラクルCを達成した僕は、夕食後アランと別れると明後日からの冒険に空想をめぐらし、眠りについた。
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