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二章 新たな出会いと冒険
翌朝ドッキリ
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「ふぁっ」
少々肌寒い風が吹き込むと共に目が覚める。窓の外はすでに日が昇り、四角く切り取られた青空が見えた。
昨日買取してもらってからどうしたんだっけ…… 頭の中は未だ覚醒していないらしく、体は鉛のように重い。
なんとか体を起こそうとすると、まるで布団に掴まれているような感覚が……
「って、アラン!?」
布団を気合でめくり、視線を移せばそこには彼が僕に半ば抱き着く形で眠っていた。えっ、まさかの朝チュン? 昨日本当に何があったんだっけ?
何気にアランの右手ば僕の胸にのっかってるのはさすがによろしくないので、引きはがす。というか、なんで僕が抱き枕みたいにされてるのさ。
ベッドから降りると布団をもとに戻し、とりあえず体を動かして確認する。
ちなみに、まさかのまさかなんてことないよね? 幸い体のどこにも痛みや違和感はなく、その可能性は否定された。
なんだろう、アラン相手にはよく若干のラッキースケベられが発動するなぁ。
嫌悪感はないし、冒険者の男の割りには僕がいるせいかそこそこ身なりには気を使ってくれてるからマシだけど。
それにしても昨日なにがどうしてこんなことになっているんだろう。
布団から解放された体を思いっきり引き延ばす。疲れが残っているのだろう、みちみちと伸びる背筋が気持ち良い。
そうこうしていると少しづつ意識がはっきりするとともに記憶が戻ってくる。
スキル石を買取にだした後、そこそこのお金を得た僕らは宿でお互いに生還を盛大に祝った。
そしていつ頃かに、アランがエールを飲もうといいだして、二人分頼んだのだ。
僕は最初エールっていってもジンジャーエールしか頭に思い浮かばなかったので、炭酸ジュースの類だと思ってたんだけど、一口飲んで察した。あ、これお酒じゃんって。
でもまぁ食べているご飯も奮発してお肉系が多かったのが功を奏したのか、酸味のあるその赤いエールは思ったよりも飲みやすく、お互いのお祝いの雰囲気にのまれてついつい流されるままに飲んでしまったのだ。もう完全に途中から記憶はない。お酒は飲んでも飲まれるなっていうけど、流れにのまれるのもダメだね。
その結果がこれだ。僕からしたらギリセーフな朝チュンである。というかアランだけ良い思いしすぎじゃなかろうか。そろそろ僕の異世界生活にもうるおいが欲しい。
とりあえずアランが起きる前に部屋を脱出して自分の部屋に戻らないと、って僕の荷物があるんだからこっちが僕の部屋じゃん。
もう、寝ているアランは置いといて、ちゃちゃっと着替えて朝ごはん食べにいこうかな。
そう思って服の裾に手をかけたとたん、ベッドからごそりと音がする。
「んー、もう朝かー?」
タイミングがいいのか、悪いのか。持ち上げかけた服を戻し、彼の下へ向かう。
「僕のベッド気持ち良かった?」
ここは何か悪戯でもしないと、腑に落ちない。上体を起こしたままぼやーっとしてる彼の耳元でささやく。途端に彼の体がビクンと震えて、耳を押さえたままこちらを驚いた表情で見てくる。
「えっ、ちょっ、えっ?」
「良いお目覚めだね。着替えるから早くでてってよー」
わざとらしく今一度服の裾に手を添えて持ち上げる仕草をすると、アランはものすごい勢いで慌ててベッドから飛び降りるとドアにぶつかりながら外へでていった。
ふふん、ちょっとくらい痛い目を見ればいいのさ。
開きっぱなしにされたドアを閉めて服を脱ぐ、昨日は本当はご飯の後に湯浴みでもしようと思ってたのにできなかったから、どこか体がべとべとする。水筒から昨日の残りの水を布にかけて体を拭うと、その冷たさで頭の芯に残った眠気も溶けていく。
体を拭き終えて着替えていると、ドアから控えめなノックが聞こえてきた。多分アランだろう。
今日は盾を買いなおしたり、色々買い物をしたいからチュニックスカートスタイルだ。着替え終わってから、見られたくないものが外に出ていないことを確認して扉を開けると、なんかもう真っ赤な顔で冷や汗だらっだらって感じの彼がおとなしく待っていた。
「はいはい、安心して。僕が抱き枕にされたくらいでなにもないから」
「いやっ、そのっ、わ、わるかった……」
まぁ寝てる間乙女の柔肌を楽しんだんだ。ちょっとジト目で見るくらい許されるだろう。
「エール、禁止」
僕の言葉に必死で頷くアラン。今回はセーフだけど次回はわからないもんね。釘は刺しておくにことはない。
「今日は買い物とかするから、休みでいいかな?」
「お、おう。俺も買い物するし、一緒でいいんじゃないか」
ほほう、乙女の買い物に付き合うつもりとは良い度胸をしておる。というのは冗談にしても、盾と予備の武器選びには付き合ってもらいたかったからちょうどいい。
「ん、いいよ。ご飯食べたら見て回ろう。はいはい、行った行ったー」
彼の肩を掴んでぐるんとまわし、廊下を押しのける。
今日の買い物はもしかしたら、色々楽しめるかもしれないね。
少々肌寒い風が吹き込むと共に目が覚める。窓の外はすでに日が昇り、四角く切り取られた青空が見えた。
昨日買取してもらってからどうしたんだっけ…… 頭の中は未だ覚醒していないらしく、体は鉛のように重い。
なんとか体を起こそうとすると、まるで布団に掴まれているような感覚が……
「って、アラン!?」
布団を気合でめくり、視線を移せばそこには彼が僕に半ば抱き着く形で眠っていた。えっ、まさかの朝チュン? 昨日本当に何があったんだっけ?
何気にアランの右手ば僕の胸にのっかってるのはさすがによろしくないので、引きはがす。というか、なんで僕が抱き枕みたいにされてるのさ。
ベッドから降りると布団をもとに戻し、とりあえず体を動かして確認する。
ちなみに、まさかのまさかなんてことないよね? 幸い体のどこにも痛みや違和感はなく、その可能性は否定された。
なんだろう、アラン相手にはよく若干のラッキースケベられが発動するなぁ。
嫌悪感はないし、冒険者の男の割りには僕がいるせいかそこそこ身なりには気を使ってくれてるからマシだけど。
それにしても昨日なにがどうしてこんなことになっているんだろう。
布団から解放された体を思いっきり引き延ばす。疲れが残っているのだろう、みちみちと伸びる背筋が気持ち良い。
そうこうしていると少しづつ意識がはっきりするとともに記憶が戻ってくる。
スキル石を買取にだした後、そこそこのお金を得た僕らは宿でお互いに生還を盛大に祝った。
そしていつ頃かに、アランがエールを飲もうといいだして、二人分頼んだのだ。
僕は最初エールっていってもジンジャーエールしか頭に思い浮かばなかったので、炭酸ジュースの類だと思ってたんだけど、一口飲んで察した。あ、これお酒じゃんって。
でもまぁ食べているご飯も奮発してお肉系が多かったのが功を奏したのか、酸味のあるその赤いエールは思ったよりも飲みやすく、お互いのお祝いの雰囲気にのまれてついつい流されるままに飲んでしまったのだ。もう完全に途中から記憶はない。お酒は飲んでも飲まれるなっていうけど、流れにのまれるのもダメだね。
その結果がこれだ。僕からしたらギリセーフな朝チュンである。というかアランだけ良い思いしすぎじゃなかろうか。そろそろ僕の異世界生活にもうるおいが欲しい。
とりあえずアランが起きる前に部屋を脱出して自分の部屋に戻らないと、って僕の荷物があるんだからこっちが僕の部屋じゃん。
もう、寝ているアランは置いといて、ちゃちゃっと着替えて朝ごはん食べにいこうかな。
そう思って服の裾に手をかけたとたん、ベッドからごそりと音がする。
「んー、もう朝かー?」
タイミングがいいのか、悪いのか。持ち上げかけた服を戻し、彼の下へ向かう。
「僕のベッド気持ち良かった?」
ここは何か悪戯でもしないと、腑に落ちない。上体を起こしたままぼやーっとしてる彼の耳元でささやく。途端に彼の体がビクンと震えて、耳を押さえたままこちらを驚いた表情で見てくる。
「えっ、ちょっ、えっ?」
「良いお目覚めだね。着替えるから早くでてってよー」
わざとらしく今一度服の裾に手を添えて持ち上げる仕草をすると、アランはものすごい勢いで慌ててベッドから飛び降りるとドアにぶつかりながら外へでていった。
ふふん、ちょっとくらい痛い目を見ればいいのさ。
開きっぱなしにされたドアを閉めて服を脱ぐ、昨日は本当はご飯の後に湯浴みでもしようと思ってたのにできなかったから、どこか体がべとべとする。水筒から昨日の残りの水を布にかけて体を拭うと、その冷たさで頭の芯に残った眠気も溶けていく。
体を拭き終えて着替えていると、ドアから控えめなノックが聞こえてきた。多分アランだろう。
今日は盾を買いなおしたり、色々買い物をしたいからチュニックスカートスタイルだ。着替え終わってから、見られたくないものが外に出ていないことを確認して扉を開けると、なんかもう真っ赤な顔で冷や汗だらっだらって感じの彼がおとなしく待っていた。
「はいはい、安心して。僕が抱き枕にされたくらいでなにもないから」
「いやっ、そのっ、わ、わるかった……」
まぁ寝てる間乙女の柔肌を楽しんだんだ。ちょっとジト目で見るくらい許されるだろう。
「エール、禁止」
僕の言葉に必死で頷くアラン。今回はセーフだけど次回はわからないもんね。釘は刺しておくにことはない。
「今日は買い物とかするから、休みでいいかな?」
「お、おう。俺も買い物するし、一緒でいいんじゃないか」
ほほう、乙女の買い物に付き合うつもりとは良い度胸をしておる。というのは冗談にしても、盾と予備の武器選びには付き合ってもらいたかったからちょうどいい。
「ん、いいよ。ご飯食べたら見て回ろう。はいはい、行った行ったー」
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今日の買い物はもしかしたら、色々楽しめるかもしれないね。
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