異世界島流しの罪名は、世界樹の枝を折ったから!? ~一難さってまた一難な僕っ娘冒険記~

矢筈

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三章 王都にて

逢引

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「はい、おまたせー」
 
 ほんっと神様って人の話を聞かないって共通点でもあるのかな。
 あの後気が付けば元の小聖堂に戻されていた。
 神様の中にもクレーム受付の部署があってもいいと思うよ、本当に。
 
「それにしても、メルタは信心深いんだな」
「うーん、別にそういうわけじゃないんだけど…… それについては後で話すよ」
 
 神様への文句をあきらめた僕は、足早に聖堂を去る。次の神様こそは文句をきちんと伝えておこう。
 
「それで、この後どうするつもりなんだ?」
「んー、王都って色々お店もあるって聞いたから、見て回りたいかな」
 
 ちょっとだけ軍資金はあるしね。食事と軽い買い物くらいはできるはず。
 
「ならさ、俺ちょっと行ってみたい店あるんだけど、いいかな」
「いいよー、お昼間でまだ時間あるしね」
 武器防具とか道具関係だろうか。武器は僕もみたいかな。
 この格好でぶん回したりはできないけど、大体の重さとか値段とかは見てみたい。
 
「な、なぁ」
「なぁに?」
「手、繋がねぇのか」
 
 ……おっとーアラン選手またもリピートのご希望だー!
 先程と同じように手を取ってそのまま腕を絡め取る。
 でもこうしていると、僕の鼓動も跳ね上がってるのが彼に勘付かれるかも。
 僕だって自分からこうやって男の子にアプローチというか近づこうって行動するのは初めてなんだから許してほしい。
 僕の中にあるこの感覚が何なのかは薄々理解してはいる。でもそれをまだ認めたくないのと、認めてしまったらいつか来る終わりの時が怖くて、こうやってごまかしているだけなんだ。
 それでも、今はこうしていたい。
 
「ここだよ、ここ」
 
 そうして彼に引かれるままに着いていった先は、喫茶店だった。
 しかも結構人気があるらしく、窓から見える席はそのほとんどが埋まっている。
 
「あれ、アランがこういう店って珍しいね」
「お前の手紙みて、友達に聞いたんだよ」
 
 そこは自分の手柄にしておけばいいに、でもこういう正直なところが彼らしくて好感がもてる。
 多分彼も宿舎で玩具にされたんだろうなぁ……
 なら、少しでも彼を楽しませる方向にしておかないとね。
 中に入ってみれば、やっぱり人が多い。店員さんに案内されて奥側の席に着く。
 渡されたメニューは喫茶店らしく紅茶やコーヒーの名前とケーキの名前が羅列されている。
 僕はコーヒーが昔から好きだったけど、彼はどうだろうか。何を頼むのかすごく興味がある。
 ケーキには絵が添えられているが、味がなかなか想像できない。前世の定番だったショートケーキのようなものはなく、何かややこしい名前のケーキばかりだ。とりあえずこの雪玉のようなやつにしておこう、多分一番無難そうだ。
 
「えっと、僕はこのシュネーベルと、ブレンドコーヒーで」
「お、俺も同じのを」
 
 ここで僕と同じもの頼むのは若干ポイント減だぞー。
 でも彼、こういう店来るの自体始めてだろうし、コーヒー飲めるんだろうか。ちょっと心配になってしまう。
 注文を終えてしばらくすると、すぐに飲み物もケーキもでてきた。
 目の前に置かれたカップから漂う香りが鼻腔を刺激してくる。一口飲むと苦みが広がりつつもほんのりとした酸味を感じる。あぁ、これは良いものだ。
 横目で彼を見てみると、ちびちびと飲んでいる。
 あ、想像通り苦手そうだ。
 
「苦かったら、そこの砂糖入れるといいよ」
「お前よくこれ、平気で飲めるな」
 
 ふふん、大人のレディの嗜み嗜み。
 目の前のボールの様なケーキも、つついてみれば揚ドーナツのようなものだった。似たような商品が某ドーナツ店であったのを思い出すね。
 一口食べてコーヒーを飲めば、口の中の甘みを苦味が溶かしてくれてほどよい塩梅に調整してくれる。
 紅茶もいいけど、甘味にはやっぱコーヒーだね。僕の視界の端ではアランがコーヒーに少し砂糖を加え、僕のマネをしてケーキを食べてからコーヒーを飲む。
「あ…… 美味い」
 そうだろうそうだろう。その美味しさを砂糖抜きで楽しめるようになったら一端だ。
「それで、さっきの話なんだけど」
「?」
「僕がなんで神様の縁を辿ってるのかって話」
 人が多くて僕らに誰も注意を払っていない今が最大のチャンスとばかりに話し出す。
 前世の話はさすがに抜いたけど、神様の話、世界の話、そしてこれからどうするつもりなのかも。全部。
 これを知って、彼が僕から離れていくならそれはそれで仕方ない。元々一人でやりきる予定だったことだ、今までが特別な状態だったのがもとに戻るだけ。
 そう思っていたんだけど、彼からの返答は意外なものだった。
 
「じゃあ俺は俺でちょいと他の神様の場所調べてみっか。クラスにやたら頭良いやつがいるから聞いてみるよ」
「えーと、それは遠回しに着いてくるっていってる?」
「メルタが嫌じゃなけりゃな。乗りかかった船って言うだろ。そりゃ最終的な世界をどうこうってのはメルタしかできねぇかもしんねぇけど、そこまでの道のりの半分くらいは俺だって背負えるだろ」
 
 そんな言葉を気負うことなく、平然と言ってのけた。
 どこに行くかもわからない、命の危険だってどうかわからない。それもあと最低でも7箇所巡らないといけない。それを知った上で、そう言ったのだ。
 内面イケメンすぎないだろうか。
 
「嫌、じゃないよ。でも普通は気味悪がって離れるかなって思ってた」
「だってお前、そんな妙なウソいちいちつくやつじゃねぇだろ。それに……手前、放り出すなんてできっかよ」
 
 途中、うまく聞き取れないところはあったけど、アランの心は堅そうだ。
 
「判ったよ、ありがとう。じゃあお言葉に甘えていいかな? 僕のこの旅には、きっとアランが必要だから」
 
 喫茶店の端っこ、これが僕達が本当に相棒になった思い出の場所になった。
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