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四章 二つ目の国
森からの脱出
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次に目を覚ましたときは木々の隙間から朝日が見えるころだった。
結局アランはあの後もずっと寝ずに番をしていてくれたらしい。
こういうことがサラッとできるあたり、良い人間だなぁと思う。
「あ、起きたか」
そう言って微笑む彼は少しやつれた顔をしていたけれど、どこか満足げな表情をしていた。
「ありがとね」
「別に。それよか体、大丈夫か?」
彼が寝ずに番をしてくれたのも、昨日僕がボッコボコにされていたからだろう。
なんていうか今までまともにダメージを貰うっていうのが狼のところで止まってたから、ある意味油断していたんだと思う。
神様もなんとかできたんだからこれくらいーってのが頭の片隅にあったんだろうね。反省反省。
「きっちり魔法使ってあるから、大丈夫だよ」
魔法は本当に便利だ。あれだけの傷が跡形すらない。折れていたであろう左手も問題なく動く。
今落ち着いて考えてみれば、最初っから本を出して射線が通ったと同時に氷の魔法辺りで串刺しにしちゃえばよかったんだよね。
寝起きの焦りと油断からきた負傷ってことだ。今後はよく考えて動かないと、今度こそ命はないかもしれない。
「そっか……まぁいいけどさ。それよりほら、飯食おうぜ!」
朝食として出てきたものは、硬いパンと干し肉だった。
正直味はあまり良くなかったし、保存のために塩辛くしてあるのか舌がピリピリする感じもあった。
でもまぁ保存食とは大体こんなもんだ。
軽く朝食を済ませると、昨日ぶん投げてしまったメイスを探す。
それはほどなく草むらの中に転がっているのを見つけることができた。
昨日のこれを投げたときのつながる感覚は一体なんだったんだろう。
「ね、アラン。メイスを投げる直前になんかこー、変な感覚があったんだけど何かわかる?」
「そりゃスキルの取得した感覚じゃないか?」
あー、なるほど。昨日の行動が何かのスキルの条件を満たしたっていうことか。
今度本があるところで何を取得したのか確認しておきたいな。
兎も角、今は他の獣とかが寄ってくるかもわからないから、早く森を出てしまわないと。
「その前に、石回収しねぇと」
あ、トロルは魔獣の扱いなんだ。
まぁたしかにあれだけの巨体で自由に動き回れるあたり何某かあってもおかしくないよね。
夜は暗くて見えなかったトロルの死体をアランが漁る。
うーん、こうやってまじまじとみると怖い顔をしてるし、この巨体に殴られてよく死ななかったなと思う。
アランが石を回収すると、血の汚れを水でながし、この場を離れることにする。
「典型的な剛腕の石だけど、大きさはまあまああるな」
道中、回収したスキル石を光に透かす様にして確認しながらアランが言う。
大きさは丁度親指と人差し指で作った輪っかくらいだろうか。
以前の遺跡で回収した石の大半が爪くらいの大きさだという事を考えると結構な大きさだ。
「売って金にすれば、しばらくの宿代位にはなるだろ」
そう言いながら彼は革袋の中に石を大事そうにしまいこんだ。
そんなこんなで街に着いたころにはすっかり日が暮れてしまっていた。
この街自体は変哲もない普通の街だった。教会が一番町で大きい建物らしく、遠くからでも一目でわかるほどだ。しかしすでに門は閉じられていたため、僕達は大人しく宿を取ることにした。
「しっかし、今回は結構散々だったな」
「僕がしっかり魔法でやっとけば多分楽だったんだろうけど、ごめんね」
食事をしながら、今回の一戦での反省会だ。
特に今回は僕が悪い。アランのフォローやスキルの取得がなければ僕は今頃ミンチになっていたに違いない。
「いや、なんつーか俺も魔法の重要性を思い知ったよ。俺がもうちょっと思い切って前にでてあいつの攻撃惹きつけとけば、メルタだってもっと動きやすかっただろうし」
「まぁお互い反省するところがあるってことで。心が重くなる話はここまでにしようよ」
しかし、今回の一戦で僕のメイスと盾はボロボロだ。盾はひしゃげてるし、メイスは板金が大きく欠けてしまった。メイスの方は使えないことはないだろうけど、盾はもう無理そうだ。
「なーんか盾が使う度に毎回曲がっちゃうから、いっそ盾無しでって考えちゃうなぁ」
「その曲がる分でダメージ抑えてる面があるからなぁ…… 盾がなかったら腕、折れるどころじゃ済んでないと思うぞ」
だよねぇ。といってもひしゃげる度に買い直したりするのもコスト的には痛いんだけど。
「今までぶつかってる相手が相手だからなぁ…… つーかタニヤにも言われてただろ。受けること考えすぎなんだって」
だってこっちに向かって突き出される武器とか拳って怖いじゃない。それをとっさに防ごうって思っちゃうのは仕方ないと思うんだ。
「岩トカゲん時みたいに積極的なぐらいでちょうどいいんだよ。受けに回ると今回みたいなでかいヤツ相手には分が悪い」
ご尤も。もっとこう上手い人みたいに盾でパーンって弾いて隙を作ってドカンと一発! みたいにできればいいんだけど、何分そこまで僕には腕がないんだよね。
「取り敢えず、飯冷めちまうからくおうぜ」
まぁここからまた教会のある街までの道はほぼ平原だから、移動中にアラン相手に練習でもしよう。
そう心に決めると、僕もアランに合わせて目の前の夕食に手を着けた。
結局アランはあの後もずっと寝ずに番をしていてくれたらしい。
こういうことがサラッとできるあたり、良い人間だなぁと思う。
「あ、起きたか」
そう言って微笑む彼は少しやつれた顔をしていたけれど、どこか満足げな表情をしていた。
「ありがとね」
「別に。それよか体、大丈夫か?」
彼が寝ずに番をしてくれたのも、昨日僕がボッコボコにされていたからだろう。
なんていうか今までまともにダメージを貰うっていうのが狼のところで止まってたから、ある意味油断していたんだと思う。
神様もなんとかできたんだからこれくらいーってのが頭の片隅にあったんだろうね。反省反省。
「きっちり魔法使ってあるから、大丈夫だよ」
魔法は本当に便利だ。あれだけの傷が跡形すらない。折れていたであろう左手も問題なく動く。
今落ち着いて考えてみれば、最初っから本を出して射線が通ったと同時に氷の魔法辺りで串刺しにしちゃえばよかったんだよね。
寝起きの焦りと油断からきた負傷ってことだ。今後はよく考えて動かないと、今度こそ命はないかもしれない。
「そっか……まぁいいけどさ。それよりほら、飯食おうぜ!」
朝食として出てきたものは、硬いパンと干し肉だった。
正直味はあまり良くなかったし、保存のために塩辛くしてあるのか舌がピリピリする感じもあった。
でもまぁ保存食とは大体こんなもんだ。
軽く朝食を済ませると、昨日ぶん投げてしまったメイスを探す。
それはほどなく草むらの中に転がっているのを見つけることができた。
昨日のこれを投げたときのつながる感覚は一体なんだったんだろう。
「ね、アラン。メイスを投げる直前になんかこー、変な感覚があったんだけど何かわかる?」
「そりゃスキルの取得した感覚じゃないか?」
あー、なるほど。昨日の行動が何かのスキルの条件を満たしたっていうことか。
今度本があるところで何を取得したのか確認しておきたいな。
兎も角、今は他の獣とかが寄ってくるかもわからないから、早く森を出てしまわないと。
「その前に、石回収しねぇと」
あ、トロルは魔獣の扱いなんだ。
まぁたしかにあれだけの巨体で自由に動き回れるあたり何某かあってもおかしくないよね。
夜は暗くて見えなかったトロルの死体をアランが漁る。
うーん、こうやってまじまじとみると怖い顔をしてるし、この巨体に殴られてよく死ななかったなと思う。
アランが石を回収すると、血の汚れを水でながし、この場を離れることにする。
「典型的な剛腕の石だけど、大きさはまあまああるな」
道中、回収したスキル石を光に透かす様にして確認しながらアランが言う。
大きさは丁度親指と人差し指で作った輪っかくらいだろうか。
以前の遺跡で回収した石の大半が爪くらいの大きさだという事を考えると結構な大きさだ。
「売って金にすれば、しばらくの宿代位にはなるだろ」
そう言いながら彼は革袋の中に石を大事そうにしまいこんだ。
そんなこんなで街に着いたころにはすっかり日が暮れてしまっていた。
この街自体は変哲もない普通の街だった。教会が一番町で大きい建物らしく、遠くからでも一目でわかるほどだ。しかしすでに門は閉じられていたため、僕達は大人しく宿を取ることにした。
「しっかし、今回は結構散々だったな」
「僕がしっかり魔法でやっとけば多分楽だったんだろうけど、ごめんね」
食事をしながら、今回の一戦での反省会だ。
特に今回は僕が悪い。アランのフォローやスキルの取得がなければ僕は今頃ミンチになっていたに違いない。
「いや、なんつーか俺も魔法の重要性を思い知ったよ。俺がもうちょっと思い切って前にでてあいつの攻撃惹きつけとけば、メルタだってもっと動きやすかっただろうし」
「まぁお互い反省するところがあるってことで。心が重くなる話はここまでにしようよ」
しかし、今回の一戦で僕のメイスと盾はボロボロだ。盾はひしゃげてるし、メイスは板金が大きく欠けてしまった。メイスの方は使えないことはないだろうけど、盾はもう無理そうだ。
「なーんか盾が使う度に毎回曲がっちゃうから、いっそ盾無しでって考えちゃうなぁ」
「その曲がる分でダメージ抑えてる面があるからなぁ…… 盾がなかったら腕、折れるどころじゃ済んでないと思うぞ」
だよねぇ。といってもひしゃげる度に買い直したりするのもコスト的には痛いんだけど。
「今までぶつかってる相手が相手だからなぁ…… つーかタニヤにも言われてただろ。受けること考えすぎなんだって」
だってこっちに向かって突き出される武器とか拳って怖いじゃない。それをとっさに防ごうって思っちゃうのは仕方ないと思うんだ。
「岩トカゲん時みたいに積極的なぐらいでちょうどいいんだよ。受けに回ると今回みたいなでかいヤツ相手には分が悪い」
ご尤も。もっとこう上手い人みたいに盾でパーンって弾いて隙を作ってドカンと一発! みたいにできればいいんだけど、何分そこまで僕には腕がないんだよね。
「取り敢えず、飯冷めちまうからくおうぜ」
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そう心に決めると、僕もアランに合わせて目の前の夕食に手を着けた。
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